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* ハイグレクリスマス

日時: 2014/08/16(土) 22:05:02 メンテ
名前: ナッシー

初小説です。誤字脱字諸々の駄文と思いますがよろしくお願いします。
 
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* Re: ハイグレクリスマス ( No.1 )
日時: 2014/08/16(土) 22:05:43 メンテ
名前: ナッシー

クリスマス、それは大人から子供まで世界の人々が夢を見て、楽しむ日。クリスマスには奇跡も起こると信じられているが私にはそこまで楽しむ意欲は湧かなかった。
華やかなイルミネーションが彩り光り、楽しげなクリスマスソングが鳴り響き街もまたクリスマスムード一色になっていた。ふと見渡せば所々でコスプレサンタが居て、クリスマス便乗商売に燃えている。
そんな時、数多くいるサンタの内の一人が商店街入り口前で道行く人にタダでプレゼントを配っていた。
普段なら絶対不信がって受け取らない人でもクリスマスのサンタからのプレゼントというだけで無意識にもらってしまうもので、私もまた何気無くそのプレゼントを受け取ってしまった。
ウチに着くと母と弟がクリスマスの夕飯について和気藹々と話していた。
「ただいま」
「あっ、鈴香おかえり。」
「おかえりねーちゃん!」
「なーに、まだ夕飯決まらないの?朝からずっと話し合ってるのに?」
「倒置法まで使って嫌味言わないでよ」
「だって、何にしようか迷っちまうんだもん!」
弟は中学二年だが、今だ幼さというかガキっぽさが抜けずにいる。
「あんたね、仮にももう中二男子よ、ちょっとは硬派になったら。クリスマスとかキョーミねーし!的な台詞吐くのが普通でしょ!」
「ねーちゃん、普通ってのが一番普通じゃないんだよ!」
「あーはいはい、そーですか」
「あんたってホントにこういう季節の慣習にキョーミないわよね」
「そーでもないけど、皆の方こそ盛り上がりすぎよ。なんでそこまで盛り上がれるのかが私には謎だわ。」
「だって楽しいじゃない!」
どうやら弟の大人になれない原因はこの母から譲り受けたDNAである可能性が高い。
「まぁー好きにしてよ。じゃあこれあたしからのクリスマスプレゼント。」
そーいって私は先程サンタから貰ったプレゼントを机に置く。
「あらこれ。お母さんもさっき貰ったわ!」
「俺も!」
そういって二人も同じ箱を机に置く。
「もしかして商店街前のサンタに貰った?」
「いいえ。お母さんは郵便局の前に居るサンタから貰ったわ」
「俺は学校の通学路の途中にあるコンビニの前に居たサンタから貰った。」
どういうことだろう?クリスマスだからあちこちにサンタが居るのは分かるが、同じプレゼントをそこら中で配っている。大手企業の広報戦略か?はたまたテロ組織による爆弾散布であり、無差別テロでも企んでるのか?私は頭の中であらゆる想像をした。そんな私の警戒などまるで無駄かの様に母と弟は開けてみようと浮き足立っていた。
「えっ!あっ、ちょっと待っ・・・」
制止は一歩遅く、二人は箱を開封してしまった。すると次の瞬間箱からピンクの眩い光が放出された。
「きゃああああああ!」
「うぁああああああ!」
「な、なに!ちょっと、お母さん!照!大丈夫!?」
数秒後、光は収まり視界が戻るとそこには目を疑う光景があった。
「ちょっ、お母さん、照、何それ?」
そこに居た二人は何故か先程まで着ていた服が無くなり、代わりに女物の切れ込みの激しいハイレグ水着というやつを着ていた。
「な、なに」
私が唖然としていると突然二人は腰を落としてガニ股になり、コマネチを始めた。
「「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」」
「ちょ、ちょっと二人共!」
お母さんも照も顔を赤らめ恥ずかしそうにしているが、動きを止めようとはしない。しかし、今時こんな水着を着る人は少なく、見慣れない為か本来着ていても可笑しくはない母が着ているのでさえ異様であり(歳のせいである可能性もあるが・・・)、ましてや絶対着るはずのない男の照が着るとそれは異様を通り越して、異常である。加えてコマネチポーズをとると照は元より母も最早変態のカテゴリーに属している。
「二人共、どうしちゃったのよ!」
二人に呼び掛けるも二人は私の呼び掛けを無視して例のポーズを続ける。
「「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」」
「ホントにどうなってるのよ・・・」
私はふと床に落ちていたプレゼントの箱を見る。これからあの変な光が出て二人を変えた。つまりこれはあのサンタの仕業。私は箱を手に取り家を飛び出した。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.2 )
日時: 2014/08/17(日) 12:10:26 メンテ
名前: ナッシー

走って商店街を目指す途中でも信じられない光景を目撃する。
公園で小学生位の子供達やママ友らしき軍団がお母さん達と同様にこの寒い中で無防備な水着姿となってあのポーズをとって叫んでいた。
「「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」」
「ちょっと嘘でしょ・・・」
私の中で危ないと大音量のアラームと真っ赤な警報ランプが光って警告してくる。
私は怖さを押し殺して商店街前へ行くとそこでは更に多くの人が老若男女関係無しにあの姿にされていた。
「「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」」
この季節にもそして普段でもそぐわない色とりどりのハイレグ水着を着た人々が一様に例のポーズをとっていた。
「うわぁ・・・」
私は最早呆れ返ってしまった。
すると携帯の着信音が鳴り響く。
「あっ!とっ!」
慌てて画面を見ると友人の千夏からだった。
「もしもし?今ちょっと立て込んでて」
「わかってる。だから電話したの。」
「えっ?」
「とりあえず今どこにいる?」
「商店街前」
「えっ!ちょっ!馬鹿ねそこ一番危ないでしょう!」
「馬鹿とは何よ!馬鹿とは!」
「とりあえずウチに来て!」
「えっ?なんで?」
「何でも!」
「わ、わかったわよ」
また走るのか・・・。ふと考えたのはそんな事であり、私はこんな状況でも何処か気楽な自分の性格が良いと思えた。
商店街から千夏の家までは走って五分足らず、ということは商店街が一番危ないと言っていたが、そこから僅か五分で着くこの家も充分危ない。そんな事を思ったが深くは考えなかった。
ふと遠巻きにあの格好にされた中学生位の女の子が恥ずかしそうにあのポーズをしている姿が入る。
「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」
彼女は一体どうしてしまい、どうなるのだろうか?そんな疑問を抱えつつ千夏の家に入る。
「もう遅いよー!」
「どこが!走って五分のところ僅か三分よ!表彰もんよ」
「ヤッホー鈴香ちゃん!」
「あっ、竜馬くんも来てたの?」
「こいつが慌てた声で来い!って言うからさ」
竜馬くんは千夏の彼氏である。どんな時でも明るくユーモラスな彼はどんな場でも人を和ませ、落ち着かせてくれる。
「ところで商店街から走って五分のこの家は安全なのかしら?」
「二人して同じこと言わないで!」
「やっぱそうだよね!」
どうやら竜馬くんにも同じことを言われた様だ。
「とにかく今街で起きてる事はかなりヤバいのよ!この街だけじゃないみたいだし」
「え?」
* Re: ハイグレクリスマス ( No.3 )
日時: 2014/08/17(日) 18:40:10 メンテ
名前: ナッシー

千夏がテレビをつけると報道番組の中継映像が映し出される。
そこには雪の降る中にコートを着た女性アナウンサーが映る。
「こんにちわ、ジャパンTVアナウンサーの赤土 里奈です。えー、視聴者の皆様、今日本の街は異様な光景に包まれいます。街の至る所で男女も大人子供も関係なく人々がハイレグの水着姿となり、謎のポーズをとるという現象が起きています。これは夢か現実か?私は今その現場にきています。これが今の街の様子です」
画面が切り替わると私が見たのよりも更に多くの人があのポーズをしているある意味圧巻の街の姿が映し出された。
「この人々は一体どうしてしまったのか?何故こんな風になってしまったのか?詳細な事は今だよく分かっていません」
アナウンサーの深刻そうな声が事態のヤバさを物語っていた。
画面が赤土アナウンサーに切り替わる。
「一部情報ではサンタのプレゼントが原因いう情報が入ってきています」
この異常な状況を懸命に伝え様とする赤土アナウンサー。その背後、画面の隅に不気味なサンタの姿が映る。
アナウンサーは気づいていないが、カメラマンは気づいたみたいで先程からカメラが微妙にカタカタと震えていた。
「あ、あ、赤土さん・・・」
「はい?」
「う、後ろ・・・」
「後・・・ろ?」
赤土アナウンサーが振り向くとそこにはプレゼントを持ったサンタクロースが何人もいた。そしてプレゼントの蓋を開けると、次の瞬間テレビ画面が母や弟をおかしくしたあの光で一杯になり、悲鳴が上がる。
「きゃあああああああ!」
カメラが地面に落ちたのか、画像が乱れる。
光がおさまって再び画像が戻った時にはカメラは床に落ちた状態で横を向いていた。画面の半分が地面を映し、そしてもう上半分の左半分に映し出していたのは先程まで懸命に今日本で起きている異常事態を伝えていた赤土アナウンサーの変わり果てた姿だった。
左半分の姿しか見えないが確かに赤土アナウンサーは赤いハイレグとなり街の人々同様のポーズをとっていた。
豊満なボディが寒空の中惜しげもなく披露されている。恐らく視聴率は上がっているだろう。とまたどうでもいい事を考えてしまう私はつくづく呑気と自分で思ってしまう。
中継の音声もバッチリ聞こえ、赤土アナウンサーの声だけでなく、画面には映ってないものの他にも何人もの男女の例の声がはっきり聞こえてくる。
「「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」」
これはつまりテレビ取材陣御一行様がまとめて変えられたということだ。
画面は中継からスタジオに戻った。
「えー、一体どうなっているのでしょうか?今後の情報をお待ち下さい」
千夏がテレビを消す。
「思った以上にヤバそうね」
「一体何なの?誰が何の為にあんなことするの?」
「新手の宗教洗脳か?それともテロか?」
「宇宙人の仕業とか?」
「まさか〜」
こうして私達はどうすることも出来ずに、時間だけが過ぎていた。
するとまたしても携帯が鳴り響く。
「あっ!とっ!」
慌てて画面を見ると今度は恋人の俊也からだった。
「もしもし?」
「俺だ、俊也だよ」
「分かってるけど、どぉしたの?慌てて?」
「どうしたのじゃねぇだろ?ニュースとか見てないのか?」
「え?今さっきまで見てたけど」
「だったら何かヤバイの分かるだろ?お前大丈夫か?」
「えっ?うん大丈夫だけど?・・・ん?その大丈夫かは私の身の安全の事を言ってる?それとも私の呑気な脳構造の事を言ってる?」
「どっちもだよ!」
「あーそうですか?お陰様でどっちも大丈夫ですよ!」
「そっか。で、今何処にいるだよ?」
「千夏ん家」
「分かった!じゃあ俺もそっち行くしそこで待ってろ」
「えっ?あっ!ちょぉー!」
そう言って通話は一方的に切られた。
「どしたの?」
「俊也、何か一人で勝手に慌ててる。それでこっちに来るんだと。いい?」
「私らは別に全然構わないよね」
「あぁ。」
私も千夏も竜馬くんも俊也も皆同じ高校に通っており、竜馬くんと俊也に至っては小学校からの親友なのであった。なので私達はよく四人で連んでいる。
数分後、自転車の急ブレーキ音が鳴り響き、俊也の到着を教えてくれた。
「よ、よぉ・・・」
息を荒くして入ってくる俊也。
「大丈夫?」
「ダッシュで来たからな。それより街マジでヤバいぞ。あの姿の人間がドンドン増えてる気がするしよ」
俊也がそう言った瞬間テレビがつく。
「え?ちょっ、誰かテレビつけた?」
「いや、俺は触ってない」
「私も・・・」
勝手についたテレビ画面は砂嵐を映し出していたと思うと、少しずつ収まりボンヤリと何かが映る。全員が緊張してテレビ画面を注視する。
画面に現れたのはモヒカン頭に右が青、左が黄色に塗られ不気味に笑う仮面をつけたマント姿の謎の人?だった。
「何こいつ・・・?」
千夏が怖がった声で呟く。
すると画面の人物が喋りだした。
「ホホホホホ、地球人よ。私の名前はハイグレ魔王。ハイグレ星からあんた達の支配者となる為に来たの。さぁ、早くハイグレ光線を浴びてハイグレに御成なさ〜い」
そう言うと画面はまたしても勝手に消えた。
「なに?ハイグレ?魔王?ハイグレ光線?」
私の悪い頭が余計にこんがらがる。ふと他の面子の顔を見ると皆の頭も今の放送でこんがらがった様だ。
「ハイグレ星からって言ってたよな?てことは、これは宇宙人の侵略ってことか!!」
「おそらく・・・」
高度な科学力をもった宇宙人の侵略ならこの異常な侵略にもそれなりに辻褄は合うがどの可能性よりも非現実的である気がする。
「ねぇ、ちょっとこれ見て」
突然千夏がスマホの画面を皆に見せる。そこにはよくわからないツイートが大量に呟かれ、例の姿で例のポーズをしている写真が大量に添付されていた。
『ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ魔王様!!』
『ハイグレ魔王様万歳!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!』
『この世をハイグレに!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!』
「うぁ!何だこれ!」
「これ皆おかしくされちゃった人達?」
もしかしてあの姿にされると洗脳されるの?ふと私の脳裏にそんな予測が飛んだ。
するとインターフォンが鳴り、全員ビクッと背筋を伸ばした。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.4 )
日時: 2014/08/19(火) 14:12:01 メンテ
名前: ナッシー

「誰?」
「ウチのお母さんかも」
千夏がゆっくりと玄関に向かう。リビングの入り口からその様子を覗き込む私と俊也と竜馬くん。
「はーい?どちら様?」
「ただいまー。お母さんよ開けて」
千夏はゆっくりと鍵を開ける。
ドアを開けた瞬間千夏を始め私達に再度衝撃が走る。
「お、お母さん・・・」
千夏のお母さんもまた例に漏れずハイレグ姿となっていた。頭には雪を少し乗せていて、明らかに凍死してもおかしくなさそうだが、千夏のお母さんは霜焼けも唇の変色すらしておらず、普通に立っていた。
「あら千夏、貴方まだハイグレになってなかったの?早くハイグレ光線浴びて、ハイグレにしていただきなさいよ。ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「お母さん・・・」
身震いする千夏、それを見て危険を感じた私達はバッとリビングのドアから駆け出していき、私が千夏の手を掴んで開いたままの玄関から外へ飛び出した。
しかし、最後に出ようとした竜馬くんの手を千夏のお母さんが咄嗟に掴む。
「あっ!」
「竜馬!」
「竜馬くん、駄目じゃない。千夏の彼氏はハイグレ人間じゃないと私は認めないわ。」
「は、離して下さい」
竜馬くんが振り払おうとするもはたからみてもビクともしていなかった。
「しょーがないわね。千夏の彼ってことで私がハイグレにしてあげる。」
「や、辞めて下さい!」
いつも温厚な竜馬くんが大声で叫ぶ。
私達はどうすればいいか分からず固まってしまっていた。
すると千夏のお母さんは何処からともなく百円ショップで売っているオモチャの光線銃の様な物を取り出した。
「さっ、ハイグレ光線を浴びてハイグレになりましょう!」
銃口を竜馬くんの胸に押し当て、有無を言わさず引き金を引いた。
銃口からあのピンクの眩い光線が放たれて一瞬にして竜馬くんを包む。
「うぁああああああ!」
光の中で大の字になって叫ぶ竜馬くん。
「竜馬!!」
千夏も叫ぶ。
光は数秒で消え、そこには先程のブレザーの制服から緑のハイレグ水着に変わった竜馬くんがいた。
「あらとっても素敵よ竜馬くん。さぁハイグレをしましょ!ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」
「あっ・・・あぁ・・・」
大の男子高校生が白昼に彼女と彼女の母親と友人達の前でハイレグの水着姿にされるというのはどれほどのものなのか?私には想像できなかった。
「さぁさぁ竜馬くん!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
千夏のお母さんに促されゆっくりとガニ股になる竜馬くん。そしておもむろに切れ込みに手を添える。
「ハ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」
「竜馬・・・」
「いい感じよ!それでこそ千夏の彼だわ。」
私は目の前の現実をただただ唖然としてみていた。
「竜馬・・・竜馬・・・」
千夏の呼び掛けにも答えず竜馬くんはただただ苦しそうに、そして必死にあのポーズをとって叫んでいた。
「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」
そんな竜馬くんの姿を見て満足そうな千夏のお母さんがこちらを向く。
「さて次は千夏あなたよ。親も彼氏もハイグレ人間になったのだから、あなたも当然ハイグレ人間になるのよ。」
その瞬間私の中の警報装置がまたしても警告アラームを鳴り、私は我に返った。
「はっ!や、ヤバいよ!逃げよ!」
私は慌てて千夏の手を掴み、そして俊也の背中を叩く。
「ほら早く!!」
「お、おぉ!」
私達は全力で駆け出した。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.5 )
日時: 2014/08/23(土) 15:14:14 メンテ
名前: ナッシー

暫くして振り返ったが追っ手の気配は無かったので、私達は路地裏の物陰に隠れて一息ついた。
「竜馬が・・・竜馬が・・・」
千夏はあれからずっと壊れたラジカセの様に竜馬くんの名前を呟いていた。
「千夏・・・。大丈夫よ!直ぐに国でも世界でも何かしらして直ぐ元に戻るって!」
私はまるで根拠の無い慰めをしてしまった事を少なからず後悔したものの、千夏がそれを聞いて少し落ち着いてくれたのを見て、まぁ良しとした。
「で、でも・・・これからどぉするの?」
千夏が不安そうに言う。
「そーねー、こういう時はやっぱり警察じゃない?」
私が提案する。
「はぁ〜」
俊也が溜息の様なモノを吐く。
「あっ!今あんた幼稚とか思ったでしょ!」
「おぅ、思った!」
「何よ!じゃあ他にいい案あるの!」
私はグイッと顔を突き出して俊也を睨む。
「んな、いきなり案とか言われてもよ」
「ほーら、何もないじゃない。ならここは一先ず私の案に乗っかりなさい」
「へいへい」
渋々俊也は納得した。
そうして私達は警察を目指した。
十分程歩くと目的地に着いた。
「おい、本気か?」
「何がよ?」
「何がって、何でここなんだよ?」
「だって警察でしょ。ここ。」
「警察は警察だけど・・・」
そこには大きな建物が威圧感たっぷりに重鎮していた。
「何でいきなり県警本部なんだよ!普通は街の交番とか無くても所轄署とかだろうが!何でいきなり本拠地来てんだよ!」
「だってここが近かったし、それにニュースとかの状況見てたら交番とかは既にやられちゃってるかもしれないじゃない」
「なるほど」
千夏は納得してくれた。
「だからってよぉ・・・」
俊也はまだ食い下がる。
「それに、こういう所の方が警備とかは絶対安全確かでしょ!」
「わかんねぇぞ。侵略するなら先ずはこういう所から襲うのが計略的なんじゃないのか?」
「つべこべ言う前に行こ!こんなとこで喧嘩してたらまたなんちゃら人間に捕まっちゃうわよ」
そうして私達は県警本部に入った。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.6 )
日時: 2014/08/27(水) 21:18:55 メンテ
名前: ナッシー

県警本部に入ると思った以上にエントランスは静まり返っていた。
「広ーい」
私のぼやきが広く静まり返った吹き抜けのエントランスで響き渡る。
「やけに静かだな?」
中に入ってから私達が十歩ほど歩くと突然周囲からの殺気を感じた。
「止まれ!!」
私達の本能は瞬時に身の危険を感じたのか身体を硬直させた。
「な、なに?何なの?」
千夏の身体が怯えて震えている。
「わかんない・・・」
私の身体もまた極度の焦りで固まって動かなかった。
周りを見ると十数名の警官が私達を取り囲み銃口をむけていた。
「なんなの?私達どうなっちゃうの?」
千夏が震えた声で言う。
「落ち着けよ。見たところここの警官達はまだあの姿にされてないから敵ではないはずだ。」
「そぅ・・・だね」
私は心を落ち着かせて警官達を見つめる。
「若松、豊橋、持田、ボディチェックだ。」
「「はい」」
名前を呼ばれた二人の婦警さんと一人の男性警官が私達に近づいて来る。残りの人達は今だ銃口を私達に向けていた。
私の足が僅かに震える。
三人の警官は私達に近づくと拳銃を締まって私達の身体を触り、不審物がないかを確かめる。その後、驚きの一言を言われる。
「ちょっと制服の下を見せてもらってもいいかしら?」
「えっ!?えぇええ!!」
私の出した素っ頓狂な声はまたしても建物内に響いた。
「悪く思わないで、貴方達もここまで来たらならわかるはずでしょ。外が、世の中が今どうなってしまっているのか」
ふと私の脳裏にこれまでの出来事が蘇った。
「これは貴方達を信じる為なの」
その強い目と言葉に私達は納得し、制服下を見せ、私達がまだ普通であることを証明した。
私達の身辺確認を終え、私をチェックしていた婦警さんが「大丈夫です」と言い、続いて千夏をチェックした人、俊也をチェックした人が大丈夫ですの言葉と一緒にOKサインを手で送る。
「全員銃を下ろせ」
命令の言葉で周りの警官達は力を抜いた様に銃を下ろした。
「若松、豊橋、持田、彼らを会議室に連れて行って、休ませてあげなさい」
「わかりました」
そうして私達は婦警さん達に連れられて会議室1と書かれた部屋に連れて来られた。
椅子に座ると全身の力が一気に抜けて、背もたれに全身を委ねた。
「怖い思いをさせてしまってごめんなさいね」
先程の真剣で険しい表情から一変優しい笑顔で気遣ってくれる婦警さん。
「あっ、いえ・・・ちょっとビックリしちゃいましたけど。仕方ないですよね」
「これを」
そう言って男性警官の人がタオルを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
私達は雪で濡れた頭や顔を拭く。タオルの暖かさが気持ちを落ち着かせてくれる。
「それとこれも」
そういって渡されたのは内履きズックだった。
「靴、濡れてグジョグジョだろ。」
そう言われて自分達の靴を見ると、薄っすらとはいえ降り積もった雪の中を歩いて、走ってを繰り返した為にベチャベチャになっていた。他の事に気をとられていたから気付かなかったが、靴下までもグシャグシャになっている。
「「ありがとうございます」」
私達は靴を履き替え、出された温かいお茶を飲んで一息つくと、婦警さんが話し出す。
「そーいえばまだ名前聞いてなかったわね。先ずは私達から自己紹介ね。私は地域課所属の若松 眞奈美巡査長です。よろしくね」
この若松さんが一番の年長者だろう。
「同じ地域課所属の持田 咲子巡査です」
「同じく地域課の豊橋 賢治巡査です」
あとの2人はまだまだ若そうだ。
続いて私達の紹介にはいる。
「三桜高校二年の里中 鈴香です。」
「同じく、巻森 俊也です」
「同じく川崎 千夏です」
「「よ、よろしくお願いします」」
挨拶を一通り終えると俊也がおもむろに尋ねる。
「一体何がどうなっているんですか?」
尋ねられた三人の警官は互いに顔を見合せる。
「どうなっていると言われても、私達もまだ状況をよく把握出来てはいないわ。多分私達が分かっていることはここまで逃げ延びた貴方達が知っている事と同じよ」
やはりいくら警察といえど今回のは常軌を逸脱している。そんな直ぐに詳しい事はわからないのだろう。
「ただ、詳しい事は言えないが奴らは我々を遥かに超える科学力と計略で侵略を進めている。」
豊橋さんが意味深に語り出す。
「と、言うと?」
「今や日本は奴らの手に陥落したに近い。日本警察のトップである警察庁、そして警視庁、いや、最早首都東京が奴らの手に堕ちただろう」
「えっ・・・」
そこまでこの異常事態が進んでいることに私は驚いた。
自分達の想像以上の現状に私達はその後黙りこんでしまった。
「まぁ、そのウチ状況打開の何かが見つかるわよ。それよりも今日は色々あって疲れたでしょ。ゆっくり休んで」
そういって私達は休息室に案内された。
私と千夏が休息室で一息着いて外と時計を見る。
「六時か・・・」
私がこの騒動の始まりである母と弟の変化を目にしてから五時間程が経っていた。人の人生、いや世界そのものが僅か五時間の間にこうも変わってしまうものなのだろうか?
二人は今どうなってしまっているだろうか?父は無事か?
「ねぇ、私達これからどうなっちゃうんだろう。誰が私達を助けてくれるのかな?」
千夏のふとした問いかけに私は上手く答えれなかった。だって、もしかしたら誰かが私達を救うのでは無く、私達が誰かを救わなければならないかもしれないから。そんな事を気持ちが沈んでいる今の千夏には言えなかった。
それから暫くして身体中の疲れが込み上げてきて、私も千夏も眠ってしまった。
そんな私達が目を覚ましたのは千夏のスマホのLINEがのトーク通知の呼び出し音だった。
目を覚ました千夏はスマホの画面を確認すると愕然とした表情になってスマホを床に落としてしまう。
私は悪いと思いつつもスマホの画面を覗き込む。
「えっ・・・!」
* Re: ハイグレクリスマス ( No.7 )
日時: 2014/08/28(木) 08:32:28 メンテ
名前: ナッシー

【トーク相手:中野 竜馬】
『ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!千夏大丈夫か?お前ももうハイグレ人間になれたかな?もしまだなら早くハイグレ人間になってくれ。俺はお前と二人でハイグレがしたいんだ!連絡待ってる。ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!』
「こ、これって・・・」
横を見ると千夏は震えて愕然としていた。
「千夏・・・」
千夏の目に涙が溜まっていく。
それから暫く千夏は泣いていた。そして三十分程泣くと、ようやく落ち着きを取り戻し寝込んでしまった。
そんな千夏の顔を見て、ぼぉーっとしていると不謹慎な私の腹の虫が鳴る。
「お腹空いた・・・」
すると部屋をノックする音が聞こえ、ドアを開けると俊也と豊橋さんが立っていた。
「どうしたの?」
「腹も減ってきたし、食堂に飯食いに行こうぜって」
グッドタイミングである。
「あれ?千夏は?」
「えっ?あぁ、千夏ちょっと寝込んじゃって」
「そっか」
「起こした方がいいかな?」
「いや、でも、疲れてるみたいだしそっとしといてやればいいんじゃね?」
「そーだね」
この時私は部屋に残って千夏の側に居てあげるか、起こして一緒に連れて行くか、一人にしてあげてゆっくりさせてあげるか迷ったが、ここなら大丈夫だと思い千夏を一人残して俊也達と食堂へ向かった。
食堂でうどんを食べて、お腹も満たされ少し穏やかな気持ちで休息室に戻った私にまたしてもサプライズが飛び込んでくる。
千夏が居ない。
「嘘!」
私は休息室の隅々や外のトイレを探すも何処にもいなかった。
慌てて隣の休息室の俊也の元へと行く。
「俊也!ねぇ俊也!」
「何だよ騒々しいな」
「千夏が、千夏が居なくなってる」
「はぁ!居ないって、何で?」
「わかんない。戻ってきたら居なくて、慌てて部屋とかトイレ探したんだけど見当たらないの」
「とにかく俺も探してみる」
「慌ててどうしたんだい?」
私の慌てた様子を見て豊橋さんが戻って来てくれた。
「実は千夏が居なくなってて・・・」
「えっ!それは大変だ。とにかく手分けして探そう」
私達は建物内を隈なく探した。途中、若松さんと持田さんも一緒になって千夏を探してくれた。
探し始めて三十分、一旦持田さん以外のメンバーが集まる。
「どぉ?居た?」
「いえ、こっちには居ませんでした」
「こっちも見当たらなかったです」
「しかしどうして居なくなってしまったんだろ?」
「私がいけなかったんです」
ふとした私のつぶやきに皆が注目する。
「鈴香ちゃん、どういうこと?」
私は竜馬くんからのLINEのこととそれに対しての千夏の状況を話した。
「そうだったのか」
「辛かったのね」
私のせいだ。あの時選択肢があったとしても、残るか連れて行くかのどちらかだけで迷うべきであって、不安定な千夏と一緒に居ることは前提条件のはずだった。私が一人にするという最も間違った答えを出してしまったせいで千夏は居なくなってしまった。
私の胸が事件以来で一番苦しくなる。
「とにかく、もう一度探してみましょ」
そう言って探しに行こうとした時、持田さんが戻って来た。
「今経理の子から聞いたんだけど、女子高生が一人でエントランスに向かうの見たって」
「ホントに!」
「えぇ。でも見たのがかれこれ三十分以上前って」
「そっか・・・。」
「でも三十分前っていったら俺達が千夏を探している時だからそれって鈴香を見たって可能性もあるんじゃ」
「確かにそうね。分かったわ!こうなったら今から監視室いって監視カメラの映像見ましょ!それで確かめよ!鈴香ちゃんは私と一緒に来て。後の三人は引き続き建物内を探してくれる」
そういって私と若松さんは監視室に向かい、他の三人は引き続き広い県警本部内を探しに行ってくれた。
県警本部の監視室、一般人が入る事など先ず出来ないこの部屋に今まさに入ろうとしていて、私の胸が緊張とちょっとした好奇心でバクバクする。
ドアを開けると二人の男性警官が椅子に座りモニターを注視していたが、突然の来訪者に驚き二人揃って画面から目を離しこちらを見た。
「わ、若松!なんだいきなり!?ってそっちにいる子一般人だろ?」
「一般人入れたらダメなんだぞ」
「悠長な事言ってる場合じゃなんですよ!今から二時間程前のエントランスの監視カメラの映像録画したの見せて下さい!」
「えっ?だ、ダメだダメだ。捜査状見せる場合しかダメなんだから、まして一般の人に見せる訳には・・・」
「この子の友達が居なくなったんですよ!外に行ったか確かめるだけなんでお願いします!」
恐らくこの二人は若松さんからして先輩であるんだろうが、若松さんは怯む事なく熱心に頼み込んでくれた。
「わ、わかったよ。ただし見るのはここで、俺達の立会いの元だぞ」
「わかりました。ありがとうございます」
そう言って見せてもらった録画映像、私達が入って来た時同様エントランスにはこんな状況のせいか人の出入りは無く、静まり返っていた。ふと私が休息室を出てから二十分後位の映像に人影が映る。
「止めて下さい」
私の声に慌ててビデオを止める。
「この姿、警察官じゃないわね」
「あぁ、どう見ても学生の制服だな」
シルエットからしても明らかだった。何よりこの時間私も俊也も食堂におり、この三桜高校の制服を着ていて尚且つこの時間に一人だったのは誰でもない千夏である。
「あれ?彼女外に行っちゃったよ!」
これで千夏がこの建物内に居ない事がハッキリした。
私は身体の力が抜けてしまった。
「ありがとうございました」
監視室を出て、俊也達にも千夏が出て行ったことを伝えた。追いかけ様とも言ったが外は危ないし、何より時間が経ちすぎていてもう近くには居ないと皆に言われてしまった。私はそのまま休息室に戻った。
窓の外に降る雪を見つめていると不意に思った。
クリスマス、もしサンタさんがいてくれてプレゼントをくれるなら、昨日のあの時に戻して、そしてこんな事が無かった事にして欲しい。私はそんな事を考えぼっーとしているうちに眠ってしまった。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.8 )
日時: 2014/08/30(土) 22:49:38 メンテ
名前: ナッシー

目が覚めると日付は変わっていた。休息室の畳の上で寝入ってしまっていた様だ。
ここに居るということは昨日の事全てが現実であるということか・・・。
「はぁ〜」
何だが気分が悪い気がする。
するとノック音がなる。
「はい?」
「若松よ」
「どうぞ」
「おはよう。大丈夫?昨日は色々あったけどゆっくり休めた?」
「えぇまぁ。有難い事に能天気な頭なんで、どんな時でも寝る事はできるんです」
「そっか。良かった」
「若松さんも私達の為に昨日はホントに色々とありがとうございました」
「あぁ全然気にしないでよ。市民の為に何かをする。それが警察官でしょ」
私はこの若松さんの姿に格好良さと憧れを持った。
そこへまたしてもノック音が鳴り、俊也と豊橋さんがドアを開けた。
「おっす、大丈夫か?」
「まぁね。あんたは元気そうね〜?」
「あん?まぁ身体は元気だぜ」
「そっ・・・。ところでどうしたのよ?」
私の問いには俊也ではなく、豊橋さんが答えてくれた。
「皆で朝ご飯食べに行こうと思って、お誘いに来ました」
「あら豊橋くん、可愛い彼女がいるのにナンパ?」
「ち、違いますよ!そんなんじゃありませんて!!!だ、第一本部内で一般の方をナンパとか確実に免職でしょ!」
かなり慌てる豊橋さん。そんなやりとりを見て少し元気がでた。
「まっ、お腹も空いてきたしそのお誘いに乗ってやるかな。行こう鈴香ちゃん」
「あっ、はい」
話によるとこの非常事態に迅速に対応対処する為に若松さんや豊橋さんも昨日からずっとこの場所に缶詰めにされ、食事や睡眠もここでとっているらしい。
食堂が見えてきて私のお腹の空き具合も丁度良くなってきた頃、突然建物全域に警報が鳴り響く。
「なに?」
若松さん達も驚いた様子という事は本当に非常事態なのだろう。
『至急!至急!各員へ伝達!各員へ伝達!異星人並びに異星人により洗脳された民間人多数が県警本部に接近!繰り返す、地球侵略の異星人並びに異星人により洗脳された民間人多数が県警本部に接近!各員、指示に従い行動せよ!」
放送は暫く繰り返されていた。
若松さんと豊橋さんが慌てた様に早歩きになる。
「二人ともついて来て」
「「は、はい・・・」」
私と俊也は呆気にとられながら若松さん達の後に着いていく。
本部内全体が慌ただしく厳戒態勢に入っていた。
着いて来た所は若松さん達の配属されている地域課だった。
「課長、若松ならびに豊橋来ました。」
課長と呼ばれた人がこちらを向く。私のお父さん位の年なのに凄く体格の良さが冬の制服の下からでも分かる。
「おぉ来たか。二人はそこの高校生並びに他にも避難している民間人の方々を安全な場所に避難させろ」
「「りょーかいしました」」
そーいわれて私達はまた若松さん達の後に着いていく。
「私達以外にもここに避難した人が居たんですね」
「まぁね。でもホントに少数よ。市民を守る警察といっても本部なんて早々思いつかないし、思っても中々来れないだろうし」
若松さんの言葉を聞いて何だか少し恥ずかしくなってふと顔を横に逸らすと俊也がほら見たかといった何ともムカつく顔でこちらを見ていた。
「なによ!?」
「別に」
そうして私達は他の避難者の人達や持田さんとも合流した。
ご年配の老夫婦の方と若い女性一人と小学生位の男の子と幼稚園生位の女の子とそのお父さんお母さんの四人家族、加えて私と俊也の合計九人よ避難者が揃い、私達は避難を開始した。
「皆さんこれから地下を通って避難します。持田が先頭を歩きますので、着いて来て下さい。」
そうして持田さんが先頭を歩き、続いてご年配の夫婦その横に豊橋さん、家族連れ、若い女性、私達、そして若松さんという構図で避難を開始した。
一方で侵攻は進んでいる様で流れてくる放送もより緊迫感を増してきた。
地下を暫く歩いていると前方から何かがやって来た。
「止まって下さい」
持田さんの合図で全員が止まり前方を注視するとそこにはパンストを被って変な物を背負って空飛ぶオマルに乗った物体が二体こちらに向かって来ていた。
「あ、あれって宇宙人よね」
「走って!」
若松さんの合図で全員が逆走を始める。
私も振り返らずにもと来た道を若松さんの後に続いて走った。
すると後ろであの見たことのある光が瞬くのが視界の隅に入る。
「きゃあああああああ!」
あれは持田さんの声。
「振り返っちゃダメ!!」
私をはじめ俊也や他の人も振り返りそうになったが、若松さんのその一言で皆足を止める事はしなかった。しかしそれから少しもしない内に二発目、三発目の光が瞬く。
「うぁあああああ!」
「あぁあああああ!」
声からしてあのご年配のご夫婦だろう。私の中に改めて恐怖が込み上げてきた。
それから必死に走り、脇道に逸れて何とか追跡を間逃れたが、持田さんをはじめ三人もがやられてしまった。
「ママ・・・どうなっちゃうの」
女の子がお母さんにしがみつきながら不安そうに尋ねる。
答えに悩むお母さんは若松さんの方を見た。他の人も若松さんの方を見ていた。
皆の視線を受け止め若松さんが話始める。
「この地下まで奴らが来たと言う事は上、並びにこの県警本部はやられてしまったということでしょう。」
「そんな・・・」
「なので今からここから出て、別の場所に避難します」
「別の場所って・・・あてはあるんですか?」
若い女性が尋ねる。
「一つだけあります。ここからそう離れては居ませんが、見つけにくいので一先ずはそちらへ向かいましょう」
この状況の危なさは皆肌で感じているのだろう、誰も若松さんの意見に反対することなく私達は若松さんの提案にのって県警本部から脱出をした。





* Re: ハイグレクリスマス ( No.9 )
日時: 2014/09/05(金) 22:23:19 メンテ
名前: ナッシー

地下の別ルートを通って県警本部から脱出した私達。道中では何人もの警察官の人があの姿に変えられ、あのポーズを取る姿を見てしまった。
周りに警戒しながら慎重に進み、暫くすると目的地に辿り着いた。
「ここよ」
「ここって・・・?」
辿り着いた先は古びて今は使われなくなった雰囲気のアパートだった。
「ここは以前警察寮だった建物よ。今は新しいのが立って使われなくなったけど・・・」
すると遠くの方から人の声が聞こえた。
「とにかく中に入りましょ」
アパートの中は1Kの風呂トイレ付きで部屋はキッチン三畳、部屋七畳という広さなので、人数的に少し窮屈だった。
「とにかく暫くはここなら安全のはずよ」
「でももう周りは敵だらけだ。もうお終いじゃないか!」
家族連れのお父さんが言う。
「そうね。お終いね。でもお終いは新たな始まりにもなるんじゃないの?」
若い女性の意味深な台詞を私は聞き逃さなかった。
「えっ?どういう意味ですか?」
「確かにもうお終いよ。でもそれは愚かな人間として。そして今から素晴らしいハイグレ人間として生まれ変わる」
その言葉に若松さんと豊橋さんは身構える。
「あ、貴方一体!!?」
皆が女性から離れる。
「ふふふ、私は・・・!」
そう言って彼女は服を脱ぎ捨て赤いハイレグ姿をさらけ出した。
「ハイグレ魔王様の忠実なる奴隷にしてスパイ!ハイグレ人間山瀬 瑠奈よ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「な、なんですって!」
「私未洗脳者の捜索をしていてね、貴方達が他の未洗脳者の所へ連れて行ってくれるかと思って泳がせといたけど、そんな様子なさそうね。ということでここで皆大人しくハイグレになるのよ。」
私は恐れた。竜馬くんの時といい、奴らの光線を浴びると姿だけでなく思考までもが変えられてしまうのだと。
ハイグレ人間の女性は千夏のお母さんが持っていたのと同じ銃を構えて命令する。
「さぁ全員壁際に並んで。下手な気を起こそうとした人から優先的にハイグレよ!」
そういわれ私達は抵抗も出来ずに壁際に並んだ。
「そーねー、誰からハイグレになってもらおうかしら?」
吟味する女性。私はこの後自分の身に起こる事が分かっているせいで余計に恐怖が増していた。
「じゃあ先ずはレディーファーストで!お嬢ちゃん、おいで!若い子順にハイグレにしてあげる」
女性に見つめられ、女の子は怯えた様子でお母さんの服の裾をグッと握り締めた。
「怖がらなくていいのよ!とっても気持ちいいんだから」
その様子を見て女の子の父親が叫ぶ。
「や、やめろ!俺の家族に手を出すな!」
その余りにも突然で強く大きく逞しい声に私を含めその場の全員が唖然とした。しかし女性だけはまるで平然として、冷静な目で叫んだお父さんの方を見る。
「お父さん勇ましいのね。素敵よ!そんな人こそハイグレ人間になるべきだわ!」
銃口が女の子からお父さんの方に変わる。
身震いするお父さん。すると今度は若松さんが叫んだ。
「待って!市民を撃つというのなら先ずは私を撃ちなさい!!」
その言葉を聞いて女性は銃口はお父さんの方に向けつつ、若松さんを見つめる。
「どの人もこの人もせっかちね。心配しなくても皆直ぐにハイグレになるんだから慌てないで。」
そう言って銃口はお父さんの方に向いたままだった。
「先ずはこの勇敢だけど余りお利口じゃないお父さんからよ。」
女性は悪戯な笑みを浮かべて銃の引き金を引く。
あの光がまたしても視界一杯に広がり、耳からは叫び声が聞こえる。
「うぁあああああ!」
光が収まるとまたしてもあの光景が私の視界に飛び込んでくる。
「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」
黒いハイレグ水着であのポーズをとるお父さんの姿に女の子も奥さんや息子さんも、赤の他人の私達でさえも呆気にとられてしまう。
「素敵よ!さぁてお次は?」
次に銃口を向けられたのはお母さんだった。
「い、いゃああああああ!」
光線は何の迷いもなく女の子のお母さんに命中し、お母さんもまた白いハイレグ姿となってしまった。
「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」
私はこの現状に諦めを抱いていたが、ふと横を見ると若松さんと豊橋さんが何か合図を送りあっている、私がそう思った次の瞬間、豊橋さんと何故か俊也の手には拳銃が銃口の方を持つ形で逆さまに握られていた。そして持ち手の方を思い切り女性の膝裏目掛けて振り当てた。
「いっつ!」
自分の計画が順調に進んでいて油断したのであろうか、強力な膝かっくんという不意の攻撃を受けて大きく動揺しバランスを崩す女性、そんな隙をついて若松さんが足掛け技をして更にバランスを崩し、女性の銃を持つ手を捻る。
「うっ!」
痛みで持っていた銃を落とす女性、その落ちた銃をすかさず豊橋さんが拳銃で破壊する。
バンッという発砲音と同時に光線銃が壊れる。
「今のウチよ!」
若松さんが叫びながら男の子と女の子の手を引き、私達も続いてアパートを出た。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.10 )
日時: 2014/09/08(月) 22:17:21 メンテ
名前: ナッシー

またしても寒空の下に出るハメになってしまった私達。ただでさえ寒いのに先程の出来事は拍車をかける様に気持ちを凍えさせた。
「パパ・・・。ママ・・・。」
女の子は泣き出してしまうもお兄ちゃんの方は兄としての覚悟か、小学生としてのプライドか、はたまた男としての意地か、とにかく辛い筈なのに必死に涙を堪えていた。
「もう・・・どうしようもないんですかね・・・」
柄にも無く私は弱音を吐いてしまう。
「大丈夫とは言えないけどまだ諦めるには早すぎるわ」
「そーだよ。まだ解決の糸口すら見つけてもいないけど、それはつまりこれから希望を見つけられるって事だよ」
若松さんと豊橋さんが励ましてくれる。
「まぁなんとかなるだろ。俺たちでさえこうやって何とか逃げ延びてんだから、他にも日本中で逃げ延びてる人は沢山いるだろうからな」
そうだ。その通りだ。たださえ子供達は不安なのに私まで不安になってはいけない。三人の言うとおりこれからが大切なんだ。
「そっか。そうだね。これから何とかしていかなくちゃいけないんだよね」
私は笑った。そしてかがんで子供達の方は見る。
「お父さんやお母さんの事辛かったね・・・泣きたい時は・・・泣けばいいんだよ。」
私の言葉に女の子は更に泣き、堪えていたお兄ちゃんも涙を流した。私はそんな二人を抱きしめた。
「ぼ、僕達・・・ど、どうなるの?」
涙声でお兄ちゃんの方が訪ねる。
「ごめんね、まだどうなるかはお姉ちゃん達にも分からないの。分からないけど、皆一緒だから。一人じゃ無いから」
私はそう言って更に優しく強く抱きしめた。
行く当ても無く、冬真っ盛りの今、空気も風も冷たく体力を奪っていく。
「早く何処かに身を潜めないとね」
「そうですね。しかし何処に?」
若松さんと豊橋さんが懸命に考えていた。
「なぁ、妙に静かじゃねぇか?」
俊也のふとした呟きで改めて周りに気を張り巡らすと確かに街は不気味な程静まり返っていた。
「てっきり街の至る所からあの変な掛け声が聞こえ、そこら中あの姿にされた人達が居ると思ってたけどな」
「確かにそうだね」
「あの格好でこの寒さの中出歩くのは流石にキツいのかもな」
「どうだろ?千夏のお母さんはヘッチャらそうだったけど」
私達が呑気な話をしている間に若松さん達の話が終わった様だった。
「皆とりあえずここに居ても見つかるか凍えるかだけで危険だから移動しましょ」
「とりあえずってことは向かう当ては無いって事ですか?」
俊也が尋ねる。
「今の所ね・・・。何処かいい所ないかしら?」
「うーん・・・」
私も俊也も考えるがまるで思いつかなかった。
「とにかく移動しましょ」
そうして私達はまたしても周りに注意を払って慎重に移動したが、進めど進めどあの格好の人に会うどころか声すらも聞こえ無かった。
「どういう事でしょうかね?誰もいないって・・・」
「不気味ね・・・」
歩き続けると一つの学校が見えてきて、近づくに連れて何かが聞こえてくる。その何かは直ぐに分かった。
そしてこっそり近づいた私達は想像以上の光景を目撃してしまう。
「「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」」
この寒空の下学校のグラウンドでこの辺一帯の人々であろうか大人から子供までかなりの人数が居て、まるで運動会の最初の体操の時の様に縦横に綺麗整列して色とりどりのハイレグ姿で一糸乱れぬ息合いであのポーズをしていた。
周りには人々を囲む様に異星人らしきものが立ち、人々が向く正面には一人の人が代表の様に台の上でポーズをとり、その更に正面の学校の三階位の人々を見下ろせそうな位置には巨大なモニターの様な物が浮かんでいた。
モニターには不気味な仮面にモヒカン頭でマント羽織った人?の様なモノが映っていた。
「ここまで侵略が進んでいたとは・・・」
「これは予想以上ですね・・・」
「おいおいマジか・・・」
皆が唖然とする。女の子など先程から恐怖でか私のスカートの裾をグッと握っている。
思わず呆気にとられてしまうその異様な光景はこの先に待つ未来なのかと思うと私はやっぱり怖くなった。
私達が見ているとモニターの中の人物がサッと手を上げると人々はポーズを辞め、起立の体制になる。それを見てモニターの中の人物は話し始めた。
『ほほほ、素敵なハイグレだったわ。いい事、お前達は私達のハイグレ光線を浴びたその瞬間から愚かな人間を捨てハイグレ人間として生まれ変わったのよ。これよりお前達、そして全地球人はハイグレ人間となり私の忠実なる奴隷として生きてゆけるの!そしてこの星はハイグレ第三惑星となるのよ」
「「おぉおおおおお!!」」
一気に歓声が上がる。
「ハイグレ魔王様万歳!!」
「ハイグレに栄光を!!」
「全人類をハイグレに!!」
「ハイグレに栄光を!!」
「ハイグレ魔王様万歳!!!」
グラウンドは熱気に包まれる。
「でもまだまだハイグレの素晴らしさに気付けず、ハイグレを拒み、ハイグレで無い奴らが沢山居るのも現状よ。そこで全員一丸となってハイグレ化を頑張って頂戴ね!じゃっよ・ろ・し・く!」
「「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」」
モニターが消えると正面の台に立っていた女性が話し始めた。
「皆さん、ハイグレ魔王様の有難いお言葉の通り、私達は幸運な事にハイグレ光線を浴びてハイグレ人間へと生まれ変わり、魔王様の奴隷として新たな幸せの道を歩み始めることが出来ました!しかし、世界も、日本も、そしてわが街にでさえもまだこのハイグレの素晴らしさに気付かず、ハイグレになっていない者が居るのです!ハイグレに成らなければ世界も!社会も!そして人間自身も決して平和にも、平等にも、幸せにもなれません!荒んだ地球を美しきハイグレ第三惑星とする為、人々の輝かしい未来の為、そして我らが偉大なるハイグレ魔王様の為にも全人類のハイグレ化を一日も早く致しましょう!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ魔王様万歳!!ハイグレに栄光を!」
「「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ魔王様万歳!ハイグレに栄光を!」
「こりゃ二進も三進も行かなくなってきましたね・・・」
「でも、諦めたら終わりよ・・・諦めちゃダメ・・・絶対に」
私達は足早にそっとその場を抜け出した。




* Re: ハイグレクリスマス ( No.11 )
日時: 2014/09/12(金) 18:30:39 メンテ
名前: ナッシー

‘‘神は七日間を費やし世界を創り上げられた”
映画で聞いたのか、小説で読んだのかは忘れたけど、突然この台詞を思い出したのは何故か?それは今世界で起きている事を暗示している様に思えたからかもしれない。
今の世界、変えられた人々にとってはあの宇宙人達は神様の様なものであるのだろう。その神が今私達の古い世界を壊し、新しい世界を創ろうとしている。まさに神の世界の創造の始まりだ。とうことはもしかしたらあと五日後にはこの世界は完全に生まれ変わってしまっているのかもしれない・・・。新しい世界として・・・。
その世界では、私は何処にいるのだろか?何をしているのだろうか?
考えが頭の中を巡っていると耳から大きな声が入ってきてその考えを中断させた。
「おい!鈴香!聞いてんのか?」
「えっ!なに?ゴメン!聞いて無かった・・・」
私は素直だ。
「たくっ、これからどおするかって話だよ」
「大丈夫?相当疲れてるんじゃない・・・」
若松さんが気にかけてくれる。
「大丈夫です大丈夫です!」
私は笑顔を見せてアピールする。
そんなやりとりを戸惑った様に見る兄妹を見て若松さんが思い出した様に尋ねる。
「そういえば、僕達の名前まだ聞いてなかったね?お名前は?」
若松さんが優しい笑顔で尋ねるとお兄ちゃんの方が小声で答える。
「西村・・・悟史。」
「悟史くんか。私は?」
続いて女の子の方にも聴くが、照れているのか、怯えているのか黙ったままだった。そんな様子を見て悟史くんが代わりに教えてくれた。
「こいつは心。」
「心ちゃんか。綺麗な名前だね」
私がそう言うと少し笑ってくれた様に見えた。
その後私達の自己紹介もして、話を本題に戻した。
「いつまでもここら辺に留まったり、うろついたりするのは危険過ぎるわ。何処かひと気が無くて、見つかりにくい場所を見つけないと。体力だって消耗するばかりだし・・・」
少しの間を置いて俊也が提案する。
「あ、あの・・・」
「何?」
「ひとつだけ、ひとつだけ隠れれそうな場所あるんすけど・・・」
「「本当に!!」」
皆が俊也に注目する。
「あんた何でもっと早く言わないのよ!」
「いや、何でって、隠れれるつったてさっきのアパートみたいなとこじゃなくて、俺がガキの頃に見つけて秘密基地にしてた本当にボロくてしょーもない所だからよ。それにまだ残ってるかどうかも怪しいし。ちょっと変わった爺さんも住み着いてて安全とは言えなかったし・・・」
「でも今はここで立ち往生してるよりそこに向かった方が良さそうね!俊也くん案内してくれる?」
「は、はい」
私達は俊也の秘密基地へ向かった。
「秘密基地なんて可愛いとこあったんだ」
「うるせー!」
街中にあの姿の人々がいると思い私達は慎重に目的の場所へと進んだ。俊也の話では小学生の足なら45分位で着いたというが慎重に進んだので、軽く一時間以上は移動開始から経っていた。
だが、そのおかげでこちらからは何人かあの姿の人を見つけたが、此方が見つかる事はなかった。
「もう直ぐです」
街からもだいぶ離れて来て、私達の中にもどこか少し安心と油断が出来たその時だった。
「未洗脳者!!」
見つかった!私達は咄嗟に声の方を振り返る。するとそこに居たのは、二人の青いハイレグ水着姿となっていた婦警さんだったが、更に驚いたのその内の一人がつい十何時間前まで私達と共に逃げていた持田さんだったのだ。
「持田さん!!」
豊橋さんが驚いた様子で叫ぶ。
「持田巡査・・・」
「若松さん。やはりまだハイグレになっていなかったんですね。それに豊橋くんも鈴香ちゃん達も・・・」
持田さんは私達一人ひとりをジッと見つめる。
「さぁ皆さんももう疲れたでしょう。無駄な抵抗もここまでにしてハイグレになりましょう」
そういって持田さんと隣の婦警さんはハイレグの上から付けていたベルトのホルスターから拳銃・・・ではなく例の光線銃を取り出しこちらに向けてくる。
私の身体が諦めの気持ちで固まっていると隣から鼓膜を破る発砲音が響く。
バンッという銃声がして持田さんの隣の婦警さんの光線銃が粉々ぬ砕ける。
「若松さん!!?」
みるといつの間にか若松さんは拳銃を引き抜き、構えていた。銃口からは煙が出ている。
「豊橋くん、皆を連れて逃げて」
「えっ?ですが・・・」
「いいから」
しかし豊橋さんも私達もそこから動こうとしなかった。すると若松さんが今までで一番の大声をあげる。
「豊橋 賢治巡査!命令です今すぐ民間人を連れてこの場から退避しなさい!」
「は、はい!」
その迫力に圧倒されて豊橋さんは敬礼した。
「み、皆・・・行こう」
「でも・・・」
「今は行くんだ!」
「鈴香!!」
「愚行よ。若松さん、貴方のしていることは愚かで惨めな行いなのよ」
「だからなに?愚かでも惨めでも構わない!私はこの街の警察官よ。この街の人々を守る為なら愚かでもいい!惨めにだってなるわ!もう・・・もう決して、恐怖や迷いで誰も守れかったなんて嫌なの・・・。早く!」
「逃がさないわ」
持田さんが光線銃を構えるが即座に若松さんが発砲、光線銃は粉々に砕けてしまう。
「くっ!柏木さん応援を!」
「はい!」
持田さんに言われもう一人の婦警さんが走り去って行く。
「ダメ!」
「おっと逃がさないわ。他はともかくとして貴方だけは逃がさない」
そう言って持田さんが若松さんに掴みかかる。
「増援が来るわ!豊橋くん早く!早くここから離れて!!」
若松さんの叫びに答えて豊橋さんと俊也が走り出す。
「おい、行くぞ鈴香!!」
俊也に背中を叩かれて私もまたゆっくりと走り出す。
「前を向いて、自分を信じて・・・鈴香ちゃん」
最後に小さく呟かれた若松さんの言葉は私の耳にも胸にも確かに届いた。
私達は振り返る事なく、辛い思いを胸に抱えてその場を走り去った。

* Re: ハイグレクリスマス ( No.12 )
日時: 2014/09/13(土) 16:14:10 メンテ
名前: ナッシー

若松さんの事は私達にとってショックが大き過ぎた。
私達の中で誰よりも冷静に状況を読み取り、誰よりも希望を持ち、誰よりもその為に行動しようとする強い意志を持っていた。そして私達を引っ張り、希望へと導いていてくれた。
そんな若松さんが居なくなってしまった。
「皆、前へ進もう!僕らがここでとまってしまったら若松さんが僕らを逃がしてくれたのが無駄になってしまう!」
大人として豊橋さんが必死に私達を勇気付けてくれているが、豊橋さんもまた辛いのが分かってしまう。
そんな時私の中にあの言葉が大きくこだました。
『前を向いて、自分を信じて・・・鈴香ちゃん』
若松さんが私に向けて最後に言ったあの言葉が私の胸の中で大きくなっていた。
「前を向いて・・自分を信じて・・・か・・・」
そうだ。私達は進まなくていけない。それまでにどんな辛い事があったとしても進むのだ。
「行こう・・・行かない、始まりも終わりもしない・・・」
「鈴香・・・」
「鈴香ちゃん」
「おねえ・・・ちゃん」
私が言うと皆も何かを感じ取ってくれたのか、私達は再び進み、俊也の秘密基地に着いた。
秘密基地は俊也の説明を聞いて想像していた以上に荒れ放題になっており、ビニールシートと段ボールが申し訳程度に壁と屋根になっていなくもないが、ここが秘密基地と言われなければゴミ捨て場とかし思えなかった。
「ありゃ〜・・・」
「ジジ・・・やっぱ居ねぇのか」
私達は一先ず中に入って腰を下ろす。辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
地面を見ると缶詰やお酒の空き瓶などが幾つも転がっていた。
「ねぇ、人が住んでたってって言ってたよね?」
「あぁ・・・。ホームレスの爺さんが一人住んでたんだ。」
私は余り知らなかった俊也の昔に少し興味があった。
「ちょっとその時話聞きたい」
「聞いてどぉすんだよ?」
「聞くだけ無料でしょ」
「たく・・・。まだ俺が小学三年の時だった。俺、あの頃何か妙に人を避けてたんだ。一人になりたくて、一人になれる場所をずっと探してた。そんな時見つけたのがここだったんだ」
俊也の目は遠くを見ていた。
「静かなここが直ぐに気に入って、毎日の様に通ってた。ゴミが落ちていたが三年生のガキに人が住んでるなんて推察できやしなかった。そんで通い続けてたある日、偶然ここに住んでる爺さんに出会った。俺は自分の場所が取られたっていうショックと怒られるって怯えてたよ」
「取られちゃったんだ・・・」
「いや、実際は爺さんの方が先に住んでたんだよ。それを俺が見つけて、勝手に入って好き勝手しちまったんだ。」
「それで?」
「怒られるって思った。けど、爺さんは何も言わずに俺を秘密基地居させ続けてくれて、俺もそれからも毎日通った。毎日が楽しくてしょうがなかったよ」
そこで俊也は一拍置いて深呼吸をする。
「けど、ある日俺が秘密基地に行こうとするのを同じクラスの女子が見ていたみたいで、後をつけて俺が爺さんと一緒にいるところを見たらしいんだ。そして先生や親に話した。大人達は直ぐに俺と爺さんを引き離したよ。『危ない』だの『よくない影響』だのって言って、よく知ろうとも、見ようともせず、分かろうともしないで、ただ勝手に危ないとかおかしいって決めつけてさ・・・」
私の知らなかった俊也の過去、それは俊也の中の大きな重りになっているのかもしれない。
「と、まぁーこんなとこだ。分かったか?」
「うん。話してくれてありがとう」
話を聞き終わったとき私は改めて誰もが色々な思い出を持って生きているのだなと感じた。そしてこの事件がきっかけで俊也の過去を知れた事は嬉しかった様なそうで無いような複雑な気持ちになっていた。
それから私は暫く降り続ける雪を眺めていた。





* Re: ハイグレクリスマス ( No.13 )
日時: 2014/09/13(土) 17:49:35 メンテ
名前: ナッシー

「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!鈴香お前まだハイグレになっていないのか!?」
「えっ!?
「鈴香ちゃん早くハイグレになりましょう!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「お姉ちゃん、ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「嘘っ・・・。なんで・・・?」
皆がハイグレになってしまっている・・・どうして!?何で!!?
「さぁハイグレに!」
「ハイグレに!」
「ハイグレ!」
「い、嫌っ!」
その時目が覚めた。
「夢っ・・・か」
横を見るとうずくまる様にして悟史くんと心ちゃんが眠っていた。
外に出てみると夜明けまではまだ早く、辺りはまだ薄暗かった。雪は止んでいた。
ザッ、と暗闇の中で音がし、音の方を向くと人影が立っていた。
「きゃあ!!」
私の叫び声に俊也と豊橋さんが飛び出てくる。
「どうした!?」
「大丈夫ですか!?」
目の前に立っていた人影はヨレヨレのコートにチューリップハットという正にホームレスの方という感じの雰囲気だった。
「ジジ・・・?」
「俊坊か・・・」
どうやらこの人が俊也の話していたお爺さんの様だ。
「大きくなったな・・・」
「ジジは変わってねぇな。あれにもなってねぇみたいだし。」
「あれとは?」
「知らねぇのか?今変な奴らのせいで皆変になってるだろ?」
「儂の様なはみ出し者の老いぼれ誰も見向きはせんからな・・・。ところで俊坊や、早くここから離れた方がええぞ」
「もう子供じゃねぇからそんな心配しなくてもいいよ」
「そうではない、その変な姿の奴らが此方向かって来ているぞ」
「「えっ!!?」」
私達はその言葉に驚いた。
「何故!?どおして!?」
豊橋さんの質問にお爺さんは目線を下に向けて答えた。私達もお爺さんの視線を追って下を向く。
「「あっ!!」」
足跡、これが答えだった。こんな街から離れた場所に向かって複数の足跡があり、加えてこっちに進んだのを持田さんも目撃している。そうなれば私達がここにいるのなんて丸分かりだった。
「しまった・・・」
「早く逃げなさい・・・」
私は慌てて悟史くんと心ちゃんを起こす。
「裏の道を使えばひと気の無い山道だ。」
「ありがとうございます。皆行こう」
私達は早速出発しようとすると、俊也がお爺さんに尋ねる。
「ジジは?」
「さっきも言うじゃろ・・・儂の様なはみ出し者の老いぼれは相手にもされんし、変わりもせん・・・じゃから気にするんじゃない・・・」
お爺さんの言葉はもとても寂しいものだった。
「皆・・・さっきに行ってくれ」
「えっ!!?」
俊也の突拍子もない一言に私も豊橋さんも戸惑う。
「ちょっ、突然何言ってんの?」
「よくよく考えたらさ、皆で逃げたところであいつらは追ってくる。こっちはボロボロ、あっちは大勢な上に体力も有り余ってる。逃げた所で直ぐに追いつかれるのがオチだ。だからここで誰かが足止めしねぇと・・・」
「だからって・・・」
「確かに・・・その通りかもしれない」
「豊橋さんまで!」
「しかし、その足止めをするなら市民を守る警察官の僕の役目だ。君は鈴香ちゃん達と一緒に・・・」
「いや、だからこそ俺なんです。豊橋さんには最後までこいつらを守って欲しいんです」
「俊也くん・・・」
「なんで!何でそんな!皆で逃げればいいじゃない!逃げて、進んで、次の道探せばいいじゃない!!」
「それで全員が逃げても追いつかれて捕まっちまったら道は無くなって誰も救えなくなるだろうが・・・。けど今ここで一人が他を逃がして救えば、その救われた他の皆がその一人も、世界も救ってくれるかもしれないから。きっと若松さんもそう信じて俺達を逃がしてくれたんじゃないのかな?」
「でも・・・。」
「お嬢ちゃんは俊坊の事が本当に好きなんだな・・・」
お爺さんの言葉に顔が真っ赤になってしまう。
「えっ、いや、その・・・」
「鈴香・・・、信じてるからよ」
「・・・」
「すまない・・・」
俊也は穏やかで優しい表情をして私達を見送ってくれた。
優しく微笑んでくれる俊也から視線を外せぬままに私は豊橋さんに引っ張られて秘密基地を去って行った。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.14 )
日時: 2014/09/17(水) 08:17:10 メンテ
名前: ナッシー

俊也の後ろ姿なんてとっくの間に見えなくなっていても私は何度も後ろを振り向いてしまう。暫くしたら、何事もなく別れた時のままの俊也が追って来ないだろうか、そんな希望を抱いていた。そして同時に、逆に俊也もがあの姿になって追いかけてきたらそれこそ終わりな気がした。
歩き続け山の中腹辺りに差し掛かった所で私達は休んだ。
流石にこんな山の中にまで彼らは居なかったので、私達は隠れながらも安心して眠りについた。
余程疲れていたのか、目が覚めた時にはまたしても日が沈み夜になっていた。
「嘘っ!寝すぎた!?」
見ると悟史君たちや豊橋さんもまだ寝ていた。
「豊橋さん!豊橋さん!」
「んっ、んんん?」
「起きて下さい。もう夜ですよ」
「えっ!嘘!」
豊橋さんが慌てて起きた。
「ホントだ・・・」
「どうします?」
「んー?夜の道を歩くのは危険だけど、今なら見つかる可能性は低い・・・となると進もうか」
「そうですね」
悟史君たちを起こして、私は山道を進んだ。歩き続けてどれ位経っただろうか、夜明け前に隣街に着いた。
「つきましたね」
「あぁ、でもここの侵略がどれ程か分からないから油断できないね」
少し歩いて街を探るが夜明け前とあって街は静まり返り、人々がどうなっているのか分からなかった。
すると誰かのお腹の虫が鳴る。
「お腹空いた・・・」
心ちゃんが呟く。
そういえば昨日の朝から何も食べてはいなかった。心ちゃんの一言で私のお腹も一気に空腹が込み上げてきた。
「ホントにね・・・」
しかしお金はあるもののこの姿でコンビニに入れば間違いなくアウトだろう。そんなこんなで途方に暮れていると目の前に希望をもたらす物が立っていた。
「あっ!自販機!」
「ホントだ」
あれで少しは空腹が収まる。
「皆はここで隠れていて下さい。私なんか買ってきます」
「えっ?でも・・・」
「大丈夫です!豊橋さんはここで二人を守って下さい!私サッと行ってくるんで」
そう言って私は飛びつく様に自販機の前に来た。
あるある!沢山ある!しかも幸運な事に携帯保存食も売ってるタイプだ。私は千円札を入れて、保存食とホットのコーヒーやお茶、コーンスープも大量に買った。
普段何気無く買っていた自販機がこんなにも有難い存在になるとは・・・。世界も人々も変わってしまった今、変わっていない私達にも別け隔てなく接してくれる無機物の自販機が今の私にはとても暖かい存在に感じた。
「不思議・・・」
私が戻り皆が久々の食事をする。
「あったか〜い!」
「美味しい!」
「コーヒーがこんなに美味いとはね」
ほのぼのとしたしたこの瞬間がとてつもなく大きな幸せに感じた。
一通り食べ終わり私がゴミを纏めて近くのゴミ箱に捨て行く。
「証拠は隠滅しないと・・・」
私もだいぶ逃走生活になれてきてしまっていた。
そうして皆の元に戻ろうとしたその時だった。
「み、未洗脳者!」
しまった!!
わたしと同い年位の女の子がそこには居た。私は慌てて皆のいる方とは反対側に駆け出した。お陰で彼女は他の皆には気付かずに私を追いかけてくる。
「待ちなさい!逃げても無駄よ」
「やっぱりしつこい!」
私はいつの間にかビルが並ぶ街中まできてしまった。幸い夜明けの時間帯で他に彼らの姿は無いがこのまま時間が過ぎれば過ぎる程私の体力もなくなり、逆に彼らの数も増えてしまう。何とかしないと・・・。
しかしいい案も思い付かずドンドンと走るペースが遅くなっきた。
「いい加減観念しなさい」
「その言葉そっくりそのまま返すわ」
私の足が縺れ、転けそうになったその時横から突然手が伸びて来て私の手を掴み引っ張る。
「えっ!!」
* Re: ハイグレクリスマス ( No.15 )
日時: 2014/09/17(水) 08:20:50 メンテ
名前: ナッシー

手の主はそのまま私の身体をサッと抱え込んでビルの影に隠してくれた。
咄嗟の出来事に私を追っていた子は私を見失った様だ。
誰だろう?もしかして俊也!?そう淡い期待を込めて手の主の方を見る。
「あ、ありがとう・・・」
「どう致しまして。それにしてもこの街にまだ無事な人が居たとはね。」
そこに居たのは私と同い年位のの眼鏡の少女だった。
すると彼女は突然に私の服の胸ぐらを引っ張り、服の下を覗き込む。
「ちょっ!なに!?」
「よし、大丈夫ね」
「な、なに!?いきなり」
「何って、今日まで逃げ延びたなら分かるでしょ。確認よ、か・く・に・ん」
「あ、あぁ〜そうか」
「ところで名前は?」
「えっ?あっ!さ、里中 鈴香」
「私は真希、本郷 真希よ。よろしくね」
「よろしく」
「ほんじゃーまぁー、自己紹介もしたし、着いて来て」
「えっ?何処へ?」
「いいから」
彼女に言われるがままに私は着いて行く。大小様々な沢山のビルの隙間の裏通りを右往左往して進む。まるで迷路の様で私は既に何処から入って来たのか、どこの方角に進んでいるのか全く分からなくなっていた。
「着いた」
彼女が言うとそこには古びて、周りのビルに完全に存在感を持っていかれてしまった寂れたビルがあった。
「入って」
そう言われ着いて行くと、ビルの中の一部屋に案内された。
中は少しボロいがキチンと片付けられている事務所の様なところだった。
「まぁ座ってよ」
「じゃあ・・・お邪魔します」
久しぶりにゆっくりとした気がするが、そんな事よりも豊橋さん達が心配だったが・・・。
「ねぇ、この街もやっぱり皆変わってしまったの」
彼女は冷蔵庫からお茶を取り出していた。
「まぁね。変なサンタがプレゼントをばら撒いていたのが発端よ。それからあれよあれよと言う間にね」
やはり私達の街と同じだった。
「この街もって事は貴方別の街から来たの?」
「うん。隣街から」
「そっか。その様子だとそっちの街も似た様なもんなのね」
「うん。似た様というか、全く同じかな・・・」
「あ、あの・・・本郷さん」
「やだ、真希でいいよ!多分同い年位でしょ」
「私は高2」
「なんだ同じじゃない。だったら尚更真希でいいよ!その代わり私も鈴香って呼ばせて」
「うん。で、改めて・・真希・・・」
「何?」
「ずっとここに居たの?」
「まぁね。ここ家の父親の会社でさ、こんなボロくて錆びれた所だからだ〜れも相手にしないから見つかることもなくノホホ〜ンと身を隠してたの」
「そーなんだ・・・。じゃあお父さんとお母さんもここに?」
「ん?両親?死んだ」
「えっ!?」
「この事件が起こった日の朝に借金返せなくなって、夫婦揃ってね。けど死んでも日本中がそれどころじゃない事態に見舞われてさ、死んだ事すらも誰にも気付かれてないだよ。ホント馬鹿みたい・・・」
真希は強がるような言葉とは裏腹に寂しい目をしていた。
「ごめんなさい・・・辛い事聞いちゃって」
「ぜーんぜん!気にしないで」
「もう一ついい?」
「ん?」
「真希は・・・この先どうするつもりなの?」
「私?そーねぇ〜・・・このまま世界の行く末を見守るもよし、壊していいっていうなら壊してもみたいし、あぁなるしかないならそれを受け入れるだけ」
私は彼女の強さに感心した。
「強いんだね・・・」
「でもないよ・・・」
それから少し落ち着いて身体を休めているとテレビを見つける。
「ねぇ、テレビって・・・つくの?」
「つくよ!」
「見ていい?」
「いいけど、どうせあれしか映ってないわよ」
彼女の言うあれが何かは分かるが、ここ二日ほど情報に飢えていたので、何かしらの情報が欲しかった。
テレビをつけると今大人気のアイドルグループが映る。勿論あの姿で・・・。
「はいはいはいはいハイグレぇ〜
茶畑とハイグレのシンデレラと言えば?(かなこ!!)ハイグレポーズは恋の落とし穴!百○夏菜子です!」
「しおりんのあいうえお作文!(うぉー!)(しおりんのし〜!)刺激的〜
(しおりんのお〜)終わらない〜
(しおりんのり〜)リズムにのって〜
(しおりんの…んー?)んー…今日も一緒にレッツハイグレ!泣き虫で甘えん坊なみんなの妹、しおりんこと玉○詩織です!」
「ハイグレポーズ、(ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!)
あーりんのハイグレ(キレキレッ!)
ダボダボ?ピチッピチでしょ!(ピチッピチー)ちょっぴりセクシーでお茶目なハイクロのアイドル、あーりんこと佐々○彩夏です!」
「ちっちゃいけれど元気な(ハイグレ!)
ちょっぴりおばかなももかで(ハイグレ!)最後にみんなで一緒に(ハイグレ!)ちょっぴりおばかな小さなハイグレ巨人、有○杏果です!」
「れにれにハイグレ体操第一いくぞー!(オー!)ガニ股で!手を上下!今日も愉快にいっちゃうよ!いつものんびり(高○れに!)あなたの側に(高○れに!)一家に一台(高○れに!)そんな私は(高○れに!)ハイクロの感電少女、高○れにです!」
「という訳で私達今、会いに行けるアイドルハイグレクローバ〜Z!!」
凄い・・・思わずそう感じてしまった。がすかさずチャンネルを変えてしまった。
次もバラエティ番組の様だ。トーク番組のゲストが出てくる。
「今日のゲストはこの方です。」
そう呼ばれて入って来たのは私の大好きなV○の岡○准一だった。
「うわっ・・・」
大好きなアイドルが・・・。鍛え上げられた体はピッチりと寸分の隙もなくハイレグの水着に包まれていた。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ人間岡○准一です!」
私は即座にテレビを消した。
「だからやめときゃ良かったのに」
何だか色々と酔ってしまった。
「ちょ、ちょっと外出てくる・・・」
「いいけど気をつけてね。あんま遠く行くと迷って帰って来れなくなるわよ」
「わかった。そんな遠くには行かないから」
* Re: ハイグレクリスマス ( No.16 )
日時: 2014/09/17(水) 20:43:12 メンテ
名前: ナッシー

外に出ると夜中だが流石に私の住む街よりは都会なだけあって耳を澄ませば所々であの掛け声が聞こえてくる。
「はぁ〜・・・ん?」
何か掛け声に混じって違う声、子供の泣き声が聞こえてくる。
「誰だろう・・・?」
泣き声は小さいが近くの気がした。私は泣き声の方に向かって歩く。彼らの罠かとも思ったがそこまでするかとも思って恐る恐る泣き声の方に近付いた。
あのビルの角辺りか、私はゆっくりと顔を覗き込ませるとそこには見知った小さな影が二つあった。
「悟史くん?心ちゃん?」
「鈴香・・・お姉ちゃん・・・」
私に気付き二人が私の元へ走ってくる。
「二人とも無事だったんだ。良かった!良かった!」
ふと豊橋さんが居ないのが気になったが、一先ず真希の隠れ家に二人を連れて行った。
「ちょっ!だ、誰よこの子達!?」
「さっき話してた二人よ。そこに偶然いたの。」
「だから!?偶然の再会果たしたからのこのこ連れて来たの?この子らがあっち側に付いてスパイだったらどおするの!?」
「そ、そんな・・・!」
反論しようと思ったがこれまでの事を思い出すと何にも言えなかった。
そうしてすかさず真希によるボディチェックが行われ、直ぐに二人の無実は証明された。
「大丈夫のようね!なら歓迎!二人ともよろしくね!」
彼女の切り替えの早さには驚いてしまう。
「ところで・・・豊橋さんは?」
その一言にまたしても泣いてしまう心ちゃん。
「お巡りさん・・・お巡りさん・・・」
いない時点で大体の察しはついていたので、これ以上追求するのはやめた。
事務所の隣の部屋で二人を寝かしてから戻ると真希がコーヒーを入れてくれていた。
「飲もう!」
「ありがと〜!」
湯気のたったコーヒーがご馳走に見えて途轍もなく嬉しかった。
「あったかい・・・」
心も体もほっこりする。
「子供ら寝た?」
「うん、ぐっすりと。よっぽど疲れてたんだと思う。この二日間だけでも相当心も体もボロボロになってるはずだしさ・・・」
「可哀想にね・・・」
「逃げ延びていることが幸運なんだろうけど、その分だけあの子達辛い目にあって苦しい思いしてる」
「ホントのところどっちがいいんだろうね?自分を失ってしまう代わりに不自由ない暮らしになるか、自分で有り続ける代わりに不自由になるか・・・」
「難しいね・・・」
私はこれまでの事を改めて思い出し、その凄まじさを改めて思い知った。
「ところで鈴香はこれからどうしていくつもり?」
「えっ?私?」
「うん」
「私は・・・分かんないけど、でも私をここまで支えて導いてくれた人達の事を思うとあれには成りたくないし、解決の糸口を探っていきたいなって思ったり・・・」
「そうなんだ。私よりしっかりしてんじゃん!」
「そう・・・かな?」
「そうだよ。」
それから私達はお互いの事を笑い合いながら話し合った。
ここしばらく気持ちが疲れ切っていたから、こんなにも落ち着いた気持ちになれ、楽しいと思えたのは久しぶりだ。このまま時間が進まなければいい・・・そう思った。
* Re: ハイグレクリスマス ( No.17 )
日時: 2014/09/21(日) 18:42:52 メンテ
名前: ナッシー

あれから私達は真希の隠れ家で三日間を過ごした。その間にも世界はどんどんと彼らによって支配されていった。
アメリカ、中国、ロシア、ヨーロッパ諸国、人種の壁を越えて次々と人々はあの姿となり、宇宙人達の奴隷となっていた。
侵略から六日目の朝、テレビをつけるとそこには大統領や首脳、王族など各国のトップ達が皆あの姿となりあのポーズをして、あの言葉を叫んでいた。
「「HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!」」
そして順番に何かを叫びだした。
「Allegiance to Haigure devil-like!Haigure Hurrah」
「忠Haigure魔鬼似的!Haigure好哇!」
「Allégeance à Haigure diable-comme!Haigure Hurrah!」
「Верность Haigure дьявола-как!Haigure Ура!」
「Die Loyalität zu Haigure Teufel-like!Haigure Toast!」
「Lealtad a Haigure diablo-como!Haigure tostadas!」
「ว่าจะจงรักภักดีต่อ Haigure ปีศาจเหมือน!Haigure ขนมปังปิ้ง!」
それからも絶え間無く色んな国のトップ達が次々と叫んでいく。
遂には日本の首相と天皇の姿も映し出される。日本も他国と変わらずポーズをとりながら叫ぶ。
「ハイグレに忠誠を!ハイグレ万歳!」
そして各国のトップ達の忠誠の誓いの様なものが終わると一度だけ以前に街の集会の時に巨大スクリーンに出てきた不気味な仮面に黒マントの人?が現れる。
「ほほほほ、ハイグレ人間達、とっても素敵なハイグレだったわ。今や地球人の多くがハイグレ人間へと変わったわ。この瞬間をもって、この星は地球という名を捨て、ハイグレ第三惑星として生まれ変わるのよ!」
「「HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!HAIGURE!」」
途轍もない歓声がテレビからもそして街中からも聞こえてくる。
世界が変わった瞬間だった・・・。
神は七日で世界を創った。この宇宙人もまた古き世界を壊し、神よりも早い六日という時間で新たな世界を創り上げた。世界にとって新たな神の誕生である・・・。
「世界が変わった・・・。」
私はこれからこの世界のどこで?どうして?どの様に生きていけばいいのだろう・・・。
そうすると再び仮面の人物が喋りだす。
「そうそうハイグレ人間達に二つほどお知らせがあるわ!一つは国家の統一よ!ハイグレ第三惑星となった今、言葉の違いはいいけど、お金はスレーヴに統一するわよ〜。これからはお買い物はスレーヴよ!そしてもう一つは・・・ハイグレ剣闘場を創設するわ!」
「剣闘場・・・?」
「ここでは未洗脳者達を戦わせて、負けた人間はハイグレになれるっていう、新しいスポーツみたいなものね!だからこれからは未洗脳者を捉えたらある程度の人間はハイグレ化せずに収容施設に連行してね!」
未洗脳者を戦わせて、負けたらあれにされるですって!?
「酷いもんね・・・」
真希がボヤく。
「それで今日はハイグレ惑星化記念として、第一回大ハイグレ大会を行うわよ!」
えっ!!!
そうして画面に映し出された闘技場の舞台に入場してきたのは・・・。
「若松さん!?俊也!!?」



* Re: ハイグレクリスマス ( No.18 )
日時: 2014/09/25(木) 23:33:53 メンテ
名前: ナッシー

テレビ画面の中の闘技場には確かに若松さんと俊也が映し出されていた。
「そんな・・・」
「知り合いなの?」
「私達をここまで逃がしてくれた婦警さん。それと・・・」
一旦言葉に詰まる。
「私の・・・彼氏」
「・・・」
真希はそれ以上何も聞かなかった。
テレビ画面に戻ると闘技場の観客席にはあの姿の人々が沢山居た。
『さぁ未洗脳者同士がハイグレを賭けて戦うハイグレ剣闘場、今ここに世界のハイグレ化を記念しての第一回ハイグレ大会が行われます!』
アナウンサーの実況にテレビの中の人々が歓声をあげる。
『記念すべき第一試合、選手紹介を行います!北サイド!若松 眞奈美!現役婦警であるので護身術や体術には自信有りか!!?一方、南サイド!巻森 俊也!現役高校生!サッカー部で鍛えられた瞬発力が武器となるか!?両者共に腕自慢!さぁこの勝負を制するのはどちらかレディ〜ハイグレ!!』
アナウンサーの掛け声でゴングが鳴るも二人は一向に動く気配は無く、音が拾えていない為に何を言っているのか分からなかったが、何かを話し合っている様だった。
しかし闘いは突然繰り広げられた。
おもむろに攻撃を繰り出す若松さん、それを反射的に躱す俊也。それからしばらく若松さんの攻撃が繰り返され、俊也は避けて躱す一方だったが、暫くすると俊也の反撃が若松さんの溝に繰り出される。その場に項垂れる若松さん。
私は限界だった。
「もう・・・見てられない!」
私は事務所を飛び出してしまい、そのまま階段で屋上まで駆け上がった。
耳を塞ぎ、目を閉じ、かがみ込んでただ時間が過ぎるのを待った。
「もう嫌!もう嫌!!もう嫌!!!」
これまでの事も、今の状況も何もかもが嫌になった。自分の中の嫌悪感が満ち溢れてくる。
それからどれ位かしていくうちに、徐々に落ち着きを取り戻して事務所に戻るとテレビは消えていて、真希だけがソファに座っていた。
「大丈夫?」
「・・・うん」
「試合・・・結果聞く?」
「今はやめとく・・・」
正直今どころかこれから先だって知りたくは無かったし、真希の今一言は若松さんか俊也どちらかの敗北を表し、どちらかが変わってしまった事を私に容易に想像させた。
その夜、私は考えた。
この事件が起きて一番辛かったことは何だろうか?世界が変わっていくこと?違う・・・では何か?失う事だった。
家族を、友を、大切に思ってくれる人を私は私の身と引き換えに失ってきた。
人はもとより変わる事を恐れても頑として拒ばみはしないし、逆に求める時さえもある。しかし失う事は拒み、進んで何かを失おうとする人も居ない。
私は失った。今迄の当たり前の環境を、関係を、幸せを・・・。
悲しみが込み上げてくるが、それとは別の強い思いが私の中に湧き上がってくる。
取り戻したい・・・。
世界を、私の大事なモノを・・・。
でも誰かと共に取り戻そうとすればまた失ってしまう。だったら・・・。
屋上に上がると世が明けようとしていた。
変わらない。冷たい空気も、吹き抜ける風も、照らす太陽も、青い空も、何も変わってはいない。
気付いたら今日で今年が終わり、新しい年に変わろうとしていた。世界は昨日終わり、変わった。
しかし、年が変わろうと、世界が変わろうと、実際のところ変わっているのは人だけであると知った。広い世界の中の人間だけが変わっていくのであって、それ以外は何も変わってはいない、変わりはしないのだと・・・。
私もまたこの世界の変わらないモノ。
そんな私に出来ること・・・。
「皆に言わなくっちゃなぁ〜、ありがとうって・・・それからさようならって・・・。」
前に・・・進もう。

* Re: ハイグレクリスマス ( No.19 )
日時: 2014/10/07(火) 21:08:53 メンテ
名前: ナッシー

目が覚めた時にはもう遅かった。
「鈴香?あれ?どこ行ったんだろ?」
狭いビルの中の狭い事務所内をあちこち探すも影も形も見当たらなかった。
「ホントにどこいったのかしら?」
ふと気付くと机の上に手紙が置いてあった。
「これって?」
手に取ると、そこには私宛の鈴香からの手紙だった。
【真希へ
突然ごめんね。
この事件が起きてから私ずっと考えてた。このままこの世界を受け入れていいのかって。
考えに考えてたら違うって思ったの。真希みたいに大人じゃないから、受け入れられる覚悟もなくて、段々と取り戻したいと思うようになってて、でも誰かと力を合わせて取り戻そうとしてその誰かを失うのは嫌だから、私は一人でこの世界を、私の世界を取り戻しにいってきます。突然な上に身勝手な事してごめんなさい。
それとこれはお願いなんだけど、真希に悟史くんと心ちゃんを見守っていって欲しいの。あの二人は今はまだ幼いだけで、実はとっても強いから、あの子達が強くなるまで、自分の足で前へ進むその時まであの子達を見守ってあげて下さい。わがままなお願いばかりでごめんなさい。
真希と会えて私は本当に良かった。当てもなくただ呆然と世界に取り込まれそうになっていた私を助けてくれて、感謝してもしきれません。
こんな私を救ってくれてありがとう。
そしてさようなら。
鈴香】
手紙の文章はとにかく言いたい事をザッと書き出した様に雑な文字で書いてあった。
慌てて外へ出るも、もう既に鈴香の影も形も見当たらず、私はただただ鈴香が向かったであろう先を見つめていた。
「ホントに勝手でワガママな願いばっかね。・・・こっちこそありがとうだよ・・・。さよならなんて淋しいじゃん・・・きっと、きっとまた会えるよね鈴香・・・。」
* Re: ハイグレクリスマス ( No.20 )
日時: 2014/12/23(火) 11:27:05 メンテ
名前: 名無しさん

どーもナッシーと申します。
この度ハイグレ同士のソラさんと共にハイグレSS作者の交流の場、‘‘ハイグレSS談話室”なる掲示板を開設させていただきました!
掲示板初めにも書いてありますが、ここではハイグレのSSを書かれる方の意見交換やネタ相談、または「こんなの書いてみては?」という要望、「こんな風なのどうかな?」といったハイグレ講座や''書く時はこんな本を参考にしている''、''こんな音楽聴いて書いてるよ''などハイグレSSに関する皆さん交流の場として活用できたらなと思っていますので、ハイグレSSを書かれている方、書いてみたいなと思っている方皆さんどんどんご活用下さい!

URLは貼れなかったので、自分のブログのハイグレストーリーの宣伝です^^;をご覧下さいm(_ _)m




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