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* ある生徒の苦闘

日時: 2015/09/26(土) 23:44:40 メンテ
名前: おもいつき

はじめまして
・初投稿です。
・小説を書くのは初めてです。
・二次創作ですが設定がどこか違うかもしれません。
・思いつきで書いているのでどこかで止まるかもしれません。
 
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* Re: ある生徒の苦闘 ( No.136 )
日時: 2016/09/25(日) 22:43:23 メンテ
名前: おもいつき

あの結婚式は俺に絶望を与えた。
ハイグレ奴隷にされた俺だが、いつの日か必ず、ハイグレ魔王を倒してみせると思っていたのだ。
だが………
5年の月日が経って、見せられたのはアレである。
さらに俺に追い討ちをかけたのがみんなからの絶縁宣言だ。
「今回は魔王様の御命令だったからな。特別に招待してやったのだ」
「そうですわ。そうでなければ何故あなたのようなハイグレ奴隷を……」
「いいわね!2度と顔見せんじゃないわよ」
「僕たちはハイグレ魔王様とパンスト兵様が幸せにしてくださるんだ。君も奴隷なりに幸せを探すといいよ」
「全く。何故私はこのような奴隷を嫁などと……」
「私のことは早く忘れて。私もそうする」
「これが最後の逢瀬ってことよ。まあ、魔王様の御命令でしかたなくね」
「いいですね。私の教え子なんて外で言わないでくださいよ。ハイグレ奴隷との関わりがあるなんて知れたら…」
「わかったかい。本当は始末してやりたいけど。魔王様のご慈悲に感謝して生きるんだよ」
みんなはもう、俺と関わったことを人生の汚点であるかのように思っていたのだ。
「なんでだよ。おかしいだろ!侵略されて、洗脳されて、おまけにパンスト兵なんかの奴隷妻なんて…」
ここでみんなの目の色が変わる。
「貴様!パンスト兵様に向かってなんだその態度は!」
「ハイグレ奴隷の分際で!パンスト兵様はハイグレ魔王様に長年お仕えしてきた存在。何故その御方の偉大さがわかりませんの?」
「C−3988号様はね!ハイグレ奴隷のアンタなんかより何百倍も素晴らしい御方なのよ!」
「違う!そんなはずはない!あいつは侵略者だ!最低の悪魔なんだ!そんな奴と結婚なんかしたら…」
必死に訴える俺だが、洗脳されてしまったみんなに届くことはない。
むしろ、憐みの視線を送ってくる。
「どうしてわからないのかなあ?パンスト兵様の奴隷妻だよ?ハイグレ人間の女なら誰もが憧れる地位なんだけど」
「所詮はハイグレ奴隷ということか。こんな奴隷に想いを寄せていたとは以前の私はどれだけ低能だったのだ」
「もういいよ。ハイグレ奴隷が何をいっても関係ない。私はD−7820号様の子をいっぱい産んで幸せになるの」
「そうよ。これも全て魔王様が私たちはハイグレ人間にしてくださったから。
人間のままだったら一生得られなかった幸せをハイグレ魔王様は、パンスト兵様は与えて下さったのよ」
「織斑君。貴方もいつまでもハイグレ奴隷でいたくはないでしょう?
貴方もハイグレ魔王様が偉大な方であることを認めて、心を入れ替えてハイグレ魔王様に尽くすんです。
そうすれば貴方も必ずハイグレ魔王様の支配の下で幸せになれますよ」
憐れむみんなに続き、山田先生はまさしく、教師が生徒を指導するように言った。
ハイグレ魔王に従え。と
「ここ数年で魔王様の支配領域は凄い勢いで広がってるからね。
私たちも魔王様の為に働く兵士をいっぱい産んで育てないといけないのさ
この子もきっと魔王様の為に働くいい兵士になるよ」
そう言って束さんは自分の腕の中にいる赤ん坊を見つめる。
あんな束さんは初めて見る。あんな慈愛に満ちた表情の束さんは。
だけど、それはまやかしなんだ。
みんなは奴隷妻。パンスト兵の大勢の女の中の一人なんだ。幸せになんかなれるはずがない。
「頼む!みんな目を覚ましてくれ!あいつらは、みんなを愛してなんかいない!
女を記念のメダルやトロフィーのようにしか思ってない!
大勢の女を侍らせているのがその証拠だ!こんなの絶対におかしい!」
そうだ。一夫一妻が正しいんだ。
こんな歪んだ結婚を認められるか!
「何を言っているのだ一夏?そのようなことは当たり前ではないか」
だが、箒の返答は常軌を逸していた。
「な!?箒、何言って……」
「そうですわ。偉大なハイグレ魔王様の使いのパンスト兵様が大勢のハイグレ人間を従えるのは当然のことですわ」
「何よあんた。まさか、パンスト兵様とハイグレ人間が同格だとでも思ってるの?ふざけんじゃないわよ!
パンスト兵様は私たちとは比較にならないような絶対的な上位者なのよ!」
セシリアと鈴が箒の言葉を肯定する。
「そんなパンスト兵様に僕たちは奴隷妻として求められたんだよ?どうして『おめでとう』って言ってくれないの?」
「人の歴史でも明らかだ。古代より王侯貴族は多くの女性を娶り、その血筋を保つ。
パンスト兵様も同様に多くの奴隷妻を娶り、子をなす。私たちはハイグレ魔王様の支配の礎となるのだ」
シャル、さらにラウラからも呆れを含んだ意見が出る。
「私は、嬉しかった。D−7820号様の奴隷妻になれる。って聞いて……
今日の結婚式も、首輪を締めて頂いて、夢なんじゃないかと思った位」
「夢じゃないわ簪ちゃん。これは現実。
簪ちゃんはD−7820号様。私はE−1500号様の奴隷妻になったのよ」
簪と楯無さんは自分の首輪。パンスト兵の奴隷妻であることの証を触りながらそう言った。
現実であることを確認するかのように……
「織斑君。奴隷妻というものはハイグレ人間の女性にとって誰もが目指し、憧れ、羨むものです。
私たちは間違いなく幸せです。貴方の価値観を押し付けるのはやめてください」
IS学園で教師をしていた頃と同じように俺に言う。
でも話の内容は、ハイグレを全面的に肯定した内容だ。
全て、ハイグレ魔王による、洗脳のせいで……
「じゃあ何か!?今日のスコールみたいに、パンスト兵の椅子になるのが正しいっていうのか?」
あんなの妻じゃない。まさに奴隷だ!俺は、みんながあんな風になるのは絶対に…
「当然だ!」
「そうですわ。奴隷妻にとってパンスト兵様の家具になるのは当たり前ですわ」
「正式な奴隷妻になる前に一年間奴隷妻修行するのよ。椅子?そんなの基本中の基本よ!」
……嘘だろ?
「そうだよ。僕もやったよパンスト兵様のテーブルになったり、枕になったり」
「奴隷妻の序列上位の方が指導してくださるからな。私もタオルや皿になったぞ」
……ありえない
「家具になるだけじゃない。身の回りのお世話もする。私もパンスト兵様のお風呂の練習したよ」
「え?簪ちゃんそこまでやったの?
私はそこまでやっていただけなかったわ。家具の後は身辺警護の心得や訓練ばっかりで」
「更識さんの御主人様のE−1500号様は奴隷妻が少ないですからね。
きっと作業が多くて手がまわらなかったんですよ。でも、数が少ないということはチャンスですね。
序列一位も夢じゃありませんよ」
「山田先生。私達はパンスト兵様の奴隷妻です。奴隷妻は共に協力し、パンスト兵様に奉仕する存在です。
そのような奴隷妻の間で競争を煽るような発言は不適切です!」
「そ、そうですね。すみません」
話が脱線しかけたところで。注意が入る。
「まあ束さんは天才だからね。奴隷妻修行なんてラクチンだったよ。
修行を終えたその日のうちにA−1006号様のところに飛んで行って子作りしたのさ」
束さんは赤ん坊を抱えて胸を張る。
そんな……
こんなのが正しいって言うのか?
こんな、狂ったハイグレの常識が?
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.137 )
日時: 2016/09/25(日) 22:45:16 メンテ
名前: おもいつき

「一夏」
「千冬姉……」
今まで一度も口を開かなかった千冬姉。
千冬姉、俺は、俺は……
「まさか、お前がここまで愚かだとは思わなかった。あの日から5年。
まだハイグレ魔王様の偉大さを認めていなかったか」
!?ち、千冬姉。
「ハイグレ洗脳を受けていないことは知っていたが、魔王様が着々と支配下に置いた星を増やしているというのに。
何故わからん。ハイグレ魔王様は宇宙を支配するに相応しい御方だ。我々はその偉大な御方に支配していただき、
繁栄を謳歌する。何が不満なのだ?」
「侵略者を受け入れるなんてできるわけないだろ!しかも洗脳して従わせるなんて!あんな奴!」
「ハイグレ魔王様を侮辱するな!魔王様は侵略者などではない!あの御方は宇宙の支配者であり、
我々の偉大な主だ。魔王様に仕えることができる幸せと名誉が何故わからん?
魔王様は愚かな人間に過ぎない私たちをハイグレ人間という高貴な存在に引き上げてくださったのだぞ。
これは救いだ。ハイグレ魔王様は私たちの救世主なのだ
その証拠にハイグレ洗脳を受けていない未洗脳者であっても抵抗することなく、
ハイグレを受け入れる者もいるのだ」
そ、そんな、こんな変態みたいなものを受け入れている?
「無論。洗脳効果のあるハイレグを着せているがな。
愚かにも魔王様を騙そうとする者も直ぐに心から魔王様に従うようになる」
やっぱり洗脳してるのか!
「ハイグレ魔王様という絶対の支配者を崇め、従うことは全ての生命の義務だ。
魔王様に従わない者は魔王様のことを知らないだけだからな。実に哀れだ。
ハイレグを纏い、魔王様の素晴らしい理想を知れば、みな魔王様にひれ伏す
これは魔王様が宇宙で最も尊い存在であることの証明だ。
一夏。お前も…」
ハイグレ魔王に従えと?冗談じゃない!
「地球を襲った奴になんか従えるか!みんなを奴隷みたいに扱うパンスト兵もだ!
あんな奴ら必ず俺が!」
千冬姉は額に手を当て大きく溜息をつく
「はっきり言っておく。私はこの結婚に満足している。
私はA−0012号様の116番目の奴隷妻としてあの方に仕え、子を産む。
それは私にとって幸せなことだ。余計なことをするな」
千冬姉は目を瞑り、愛おしげに首輪を撫でる。
そんな、千冬姉……
「それと地球などという星は存在しない。
今私たちがいる星は、『第5ハイグレ支配星域、惑星ハイグレーン』だ。覚えておけ」
千冬姉が何を言ってるのかわからなかった。
「な、なんだよそれ!あいつ。星の名前まで!」
「私たちが魔王様にお願いしたのだ。この星全てにハイグレの祝福がもたらされた日にな。
ハイグレ魔王様に抵抗した名残をすべて消し去って欲しくてな。
魔王様もご多忙で時間が掛ったが、この星に新たな名前を与えて下さった。
ようやく、ようやくこの星のすべてがハイグレに染まったのだ。
わかるか?このハイグレーンという名前は特別だ。
他の星では先頭に『ハイグレ』の『ハイ』あるいは、末尾に『ハイグレ』の『グレ』をつける名前が一般的だ。
『ハイグレ』という単語が使われているのはここだけだ。
これはハイグレ魔王様が私たちに特別目をかけてくださっているということだ」
感無量。そのタイトルの彫刻が俺の目の前にある。そう思った。
どうしてだ?しっかりと言葉は通じているのに……
どうしてこんなに会話が噛み合わないんだ。
ちーちゃん。
束さんが千冬姉をつつく。
千冬姉はひとつ咳ばらいをして俺に向き直る
「よく聞け一夏。私はお前の姉であり、お前は私の弟だ。だが………
それ以前に私はハイグレ人間であり、お前はハイグレ奴隷だ。
これは魔王様がお決めになった法だ。今後は立場をわきまえろ!
ハイグレ魔王様に逆らった罪を償い、ハイグレ人間になることができたら、
その時はもう一度お前を弟として認めよう。それまで、絶対に私の前に現れるな!!
わかったな!ハイグレ奴隷織斑一夏!!」
千冬姉のその言葉を最後にみんなは去っていく。
「ま、待ってくれ!千冬姉!」
みんなは足を止めない。
だが、そんな中千冬姉だけは足を止めた。
「言ったはずだ。今のお前。ハイグレ奴隷の織斑一夏は私の弟ではない!
一日も早く、お前が魔王様に忠誠を誓うハイグレ人間に……」
「千冬。いつまで奴隷に構っているんだ?もういいだろう。早く来なさい」
俺と千冬姉の会話を止める者。それは…
「はい♪A−0012号様♪」
千冬姉の夫となったパンスト兵A−0012号。
夫の声に従い。走り出す千冬姉。
「千冬姉!待ってくれ!千冬姉!千冬姉!千冬姉ぇ〜〜!」
だけど、千冬姉はもう止まらなかった。
俺の呼びかけを完全に無視して、パンスト兵A−0012号の元へ。
自分の夫にして主人の元へ走っていった。
千冬姉だけじゃない。
箒もセシリアも鈴もシャルもラウラも簪も楯無さんも山田先生も束さんも
みんな、みんな。
それぞれの夫となったパンスト兵の元へ向かっていく。
くそっ!だめだ!こんなの認められるか!
こんなのが幸せなはずがないんだ!
絶対におかしいんだ!
だが、みんなを引き戻そうとする俺の肩が掴まれる。
「時間だ。オマルに乗れ。ハイグレ奴隷の居住区に戻るんだ」
俺を連れてきたハイグレ人間が言う。
「そんな!こんな状況で帰れるか!」
「口答えするな!ハイグレ奴隷ごときがハイグレ人間に逆らうな!」
抵抗する俺を二人がかりで引きずる。
必死に両足で踏ん張るが俺の体はジリジリと後退する。
放せ!ちくしょう!みんなが!みんなが!
「わかっているのか?そうやって抵抗すればお前の姉。織斑千冬の立場が悪くなるのだぞ!」
な?千冬姉が?なんで?
「当然だろう。いかにパンスト兵様の奴隷妻といえど、反逆者ハイグレ奴隷が身内にいる。
しかも、未だに反抗的ともなれば、彼女を色眼鏡で見る者も出てくる。
『こいつも反逆するのではないか?』とな。お前は自分の姉を不幸にしたいのか!」
俺が?千冬姉を不幸に?馬鹿な?そんなこと、俺は考えていない。
俺は千冬姉を、みんなを、守りたくて……
引きずられながらもう一度みんなを見る
パンスト兵のすぐ傍で笑顔のみんな。
パンスト兵に密着し、甘える。
媚びて、しなを作り、寄りかかる。
ああ。そうか。
俺は、守れなかったんだ……
何も……
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.138 )
日時: 2016/09/26(月) 10:06:11 メンテ
名前: 名無しさん

ハイグレ人間側の狂気が感じられますね…。
逆に他の奴隷達の反応も気になるところです。
廃人同然か、はたまた反乱を計画しているか…。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.139 )
日時: 2016/10/02(日) 13:42:35 メンテ
名前: おもいつき

ハイグレ奴隷の居住区にようやく戻れた。
いまでこそ慣れたが、初めてここに押し込まれた時は驚いた。
テレビで見るようなスラムが広がっていたからだ。
日本にもこんな場所があったのか。と。
ハイグレ奴隷という身分は侵略軍に大きな被害を与えたり、長期間に渡って潜伏した者などがその身分になる。
彼らは粗末な作りの家を建てたり、もとからあった建物に住んだりしている。
その中で俺は崩れかけたビルの一室で暮らしている。
当然のことだが、今までの生活レベルからは格段に落ちる。
IS学園の環境はとてつもなく金がかかっていたし、
完全にハイグレの支配下に収まった現在では、ハイグレの進んだ技術が流れ込んだ影響で、
ハイグレ人間居住区はまるでSFの近未来のような街並みに作り替えられつつある。
だが、そこに住む者はハイレグ水着一枚であの変態ポーズを繰り返すばかり。
こちらはみんなジャージ。どっちがマシなんだかわからない。
そこでふと気付く。
俺の目の前を紙袋が歩いてた。
左右にヨタヨタと不安定に揺れている。
俺は紙袋に近づき、持ち上げる。
「まどか。俺が持つよ」
「兄さん」
紙袋の向こうから現れた黒のジャージを着た小柄な女性。
名前は織斑まどか。
一応、俺の妹、みたいなものだ。
ある日、ハイグレ奴隷の居住区にやってきたまどかを見て俺は驚愕した。
あまりにも千冬姉にそっくりだったのだ、違うのは身長くらいだろう。
一緒に暮らすようになってから5年経つが身長は全く伸びていない。
彼女もまた、亡国機業の一員としてハイグレ魔王の侵攻に抵抗していた。
だが、アフリカで本隊がついに壊滅、必死に逃れようとする残党に対し、ハイグレの追撃は過酷を極めた。
海を渡りアメリカについた時には自分1人になっていたそうだ。
一方のアメリカでもハイグレ魔王の侵攻に対し、戦力の増強を急ピッチで進めていた。
そこへ現れた優秀なIS操縦者であるまどかは文字通り大歓迎された。
過去のいきさつ、正体などは一切問われなかった
編成された新たな部隊、そのメンバー達と生活し、わずかながらもしがらみが生まれ、
何か不思議な感情が宿ったまどかは闘う決意を固めた。
そして始まる決戦。
だが、まどかの決意、そして仲間たちはあっさりと吹き飛んだ。
投入されたハイグレ人間たちの戦力はまどかの想像を超えていた。
倒しても倒しても途切れることなく湧き出るハイグレ人間。
防衛線は次々と決壊し、無事な拠点は包囲殲滅される。
次々とこちらの戦力がハイグレ側に寝返っていく。
数を増やし、さらに攻勢を強めるハイグレ軍。
味方のはずの通信回線を埋め尽くす「ハイグレッ!」という叫び。
亡国機業では主に奇襲攻撃。
防戦に回れば即逃走という方針で統一されていたため、
このようなことはまどかにとって初めての経験だった。
勝機などない。
ただ押しつぶされ、飲み込まれるだけ。
戦いにさえなっていなかった。
地球最後の砦は落ちた。
あっけなく、ハイグレ魔王に一矢報いることもなく。
終わってしまったのだ。すべてが。
洗脳されることもなく捕らわれたまどかは裁判にかけられた。
ハイグレ人間になるか、ハイグレ奴隷となるか。
その裁判の最中、ひときわ豪華なイスに座る仮面の男。ハイグレ魔王を発見する。
警備員を殴り倒し、ハイグレ魔王に飛びかかるまどか。
これでまどかの運命は決まった。
その場でまどかはハイグレ奴隷になったのだ。
後で知ったことだが、その裁判ではスコールがなんとかまどかがハイグレ人間になれるようにと。
必死に根回しを行っていたのだそうだ。
当然その根回しが水の泡になり、スコールは激怒。
協力していたオータムと簪も呆れた。
そして、まどかは見捨てられ、俺のところに流れて来たのだ。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.140 )
日時: 2016/10/02(日) 13:43:25 メンテ
名前: おもいつき

「1人か?響は一緒じゃないのか?」
俺はまどかが1人でいたことに疑問を感じ、問いかける。
「迎えが来たんだ。響は、ハイグレ人間になった」
「そうか」
まどかの言う迎えと言うのは、ハイグレ人間への昇格である。
ハイグレ奴隷はハイグレ魔王に抵抗した罪を償えばハイグレ人間になることができる。
だが、あまりにも膨大な時間、かつ危険度の高い労働が必要であり、現実には不可能に近い。
「大勢のハイグレ人間が迎えにきた。響は友達が多かったのだな」
それはまどかに友達がいなかったからじゃ……
響はシンフォギアという兵器?力?でハイグレ魔王に抵抗していたらしいのだ。
仲間が次々とハイグレ人間になる中、まどかと共に戦い、最後まで抵抗したのだそうだ。
そして裁判の結果ハイグレ奴隷となり、この居住区に住んでいた。
まどかも響のことを慕っていた。
「そんな顔をしないでくれ兄さん。大丈夫だ。私たちもいつか必ずハイグレ人間になれるはずだ」
「あ、ああ。そうだな」
ハイグレ奴隷はおおまかに2種類に分類される。
俺のように意識は人間のまま奴隷になっている者。
もうひとつは、まどかのようにハイグレ洗脳を施された者。
本来であればハイグレ奴隷は洗脳する予定はなかったのだそうだ。
だが、あまりにも激しく抵抗した者、高い能力を持った者を放置するのは危険と判断され、
ある程度の基準を超えた能力を持つ者にはハイグレ洗脳が施された。
それでも全体で見ればその数は少なく、およそ1割ほどの筈だった。
だが、現在の洗脳されたハイグレ奴隷は7割強と言われている。
しばらく後、大規模な洗脳が行われたからだ。
原因は、反乱未遂だ。
打倒ハイグレ魔王!
自由を我らに!
地球を取り戻せ!
徹底闘争!
様々なスローガンの下、人種、性別を超えハイグレ奴隷による反逆が行われるという噂が流れた。
ついにこの時が来たか。
俺も反乱軍に加わろうと、情報を集めた。
だが、駄目だった。
俺が合流する前日、反乱軍は首謀者から下っ端に至るまで全て捕えられてしまったのだ。
まどかや響のような洗脳されたハイグレ奴隷達がハイグレ人間に通報したのだ。
捕えられたハイグレ奴隷達にはハイグレ洗脳が施され、二度とハイグレ魔王に歯向かわないことは誓い、
より過酷な労働環境に放り込まれた。
だが、誰も不満は口にしない。
「魔王様への反逆を企てた自分達を労働だけで済ませてくださるなんて魔王様はなんてお優しい方なんだ」
「私が働くことで魔王様の支配を支えることができるなんて…」
こうしてハイグレ奴隷の有力者たちは洗脳により自由意志を奪われてしまった。
残されたハイグレ奴隷達は希望を失い、
本当に死んだ魚のような目をして活動している。
絶望し、世を去った者もいる。
だが、多くの者は日々の労働でハイグレ人間に気に入られようと働き、懇願するのだ。
「お願いします。私を洗脳してください」と。
洗脳されたハイグレ奴隷は
ハイレグを着ることもハイグレをすることもできない辛い毎日のはずだ、
だが、誰も絶望していない。
ハイグレ魔王を自分達の絶対の主と認識し、いつの日かハイグレ人間となり、
ハイグレ姿でハイグレ魔王にハイグレを捧げることを夢見て、毎日を生きている。
本来俺もそうなっていた可能性があったのだが…
「流石兄さんだ。造反者達の情報を調べていたのだな」
俺が合流の為に調べた情報を見ながらまどかはそんなことを言い。
「兄さんも洗脳を受けていたのだな。どうして教えてくれなかったんだ。
もう隠す必要はない。一緒に魔王様の為に頑張ろう」
と、完全に俺が洗脳済みと信じてしまった。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.141 )
日時: 2016/10/02(日) 13:44:19 メンテ
名前: おもいつき

「これを見てくれ兄さん」
まどかはジャージのポケットから何かを取り出す。
持っていたのは1枚のチラシだった。
次の侵略予定の惑星においてハイグレ奴隷を中心とした部隊を編成し、第一陣として送り込むという内容だった。
戦果によっては正式にハイグレ人間への昇格を認めると。
対象地区は……ココ!?
「凄いだろう兄さん。私たちがハイグレ魔王様の為に働けるのだ。ホラこれも貰って来たんだ」
まどかの手には白と黒の布。いやこれは。
「ハイレグだ。ハイグレ奴隷部隊はこのハイレグを着て侵略活動を行うようにと言われたんだ。
一時的にではあるがハイレグを着ることが許されるんだ。凄いぞ。流石ハイグレ魔王様だ。
罪深い私たちに、機会を、こんな素敵なものをくださったんだ。明日はこれを着て集合するんだ。
もしかしたら、ハイグレ魔王様にもお会いできるかもしれない!」
まどかは興奮している。
うれしいのだ。ハイグレ魔王の為に働けると言うことが。
「早く帰ろう兄さん。明日に備えなくては」
そう言ってまどかは俺の前を歩く。
ハイレグを着て侵略活動?俺が?
それは、ハイグレ人間、ハイグレ魔王のしもべそのものだ。
大勢の罪もない人々を洗脳するのか?
それは、でも、そうすれば人々は争いから解放される。
ハイグレ魔王の支配の名のもとに。
ハイグレを着て、ハイグレ人間として、この星のみんなと同じように。
ハイグレ人間になったみんなが言っていた。
それこそが真の幸せ。
ハイグレ魔王の支配こそが正義だと。
千冬姉は言っていた。
ハイグレ人間になれて幸せだと。
箒は言っていた。
ハイグレ魔王様に支配していただいて幸せだと。
セシリアは言っていた。
ハイグレを捧げることができて幸せだと。
鈴は言っていた。
ハイグレ姿になれて幸せだと。
シャルは言っていた。
ハイグレ魔王様に仕えることができて幸せだと。
ラウラは言っていた。
ハイグレ魔王様の支配に協力できて幸せだと。
簪は言っていた。
ハイグレという素晴らしい存在を知ることができて幸せだと。
楯無さんは言っていた。
ハイグレ魔王様のしもべの1人になれて幸せだと。
山田先生は言っていた。
ハイグレ魔王様の偉大さを広めることができて幸せだと。
束さんは言っていた。
ハイグレ魔王様の役に立つことができて幸せだと。
そう。みんながそう言う。
ハイグレ魔王に洗脳され、ハイグレ人間になったみんなが
ハイグレ魔王様のおかげで毎日が幸せだと。
こんな狂った世界が幸せだと言うのだ。
俺は、俺は間違っていたのか……?
俺はこんなにも不幸だと思うのに……
俺がハイグレ魔王に抵抗することはみんなの幸せを破壊する行為なのだろうか?
みんなは幸せだと言っている……どうして俺だけが……不幸なんだ?
それは、俺が、人間、だから……?
そうだ人間だからだ。
当たり前だ。ハイグレ人間はハイグレ魔王に尽くす、そしてハイグレ魔王はハイグレ人間を幸せにする。
誰も人間のことなんか考えていない。
俺と言う『人間』は全く考慮されていないのだ。
『ハイグレ人間』でない存在のことなど、だれも。
俺が『ハイグレ魔王様』の支配を受け入れさえすれば……
俺が『ハイグレ魔王様』に洗脳していただければ……
俺が『ハイグレ魔王様』に『ハイグレ人間』にしていただければ……
さっきまどかから貰った白い布、ハイレグを見つめる。
これを着て、俺が『ハイグレ人間』になれば、
そうすれば、俺もきっと……
「兄さん何をしているんだ!早く帰ろう!」
まどかが俺に呼びかけ、思考を中断する。
「ああそうだな。帰ろう」
「明日が楽しみだ。明日になればハイレグを着ることができるのだ!」
そう言ってまどかは再び歩き出し、俺もそれを追う。
そうだ。もう抵抗する意味はない。
人間に戻ることなんてだれも望んでいない。
ハイグレ人間になった今が幸せだというなら、もういいじゃないか。
俺も『ハイグレ人間』になろう。
いや、『ハイグレ魔王様』に『ハイグレ人間』にしていただくんだ。
そうすれば、俺もきっと幸せになれる。
『ハイグレ魔王様』の支配によって、みんなと同じように。
1人の『ハイグレ人間』として。

【ある生徒の苦闘番外編 もうひとつのミライ2】 終わり

長かった。こんなに長くするつもりはなかったんですけど。
一夏がハイグレ魔王を倒した場合のifです。
実際には倒していませんが。
バッドエンドということで主人公を絶望させ、心を折ることを考えました。
ハイグレ魔王が侵略を完遂し、ヒロイン達はみんな侵略者に奪われ、自分は最下層。
ハイグレの支配下で、狂ったハイグレの常識の中、ハイグレ人間達はだれもが日々の幸福を満喫する中。
自分はハイグレ奴隷として辛い毎日。
そして、自分は間違っていた。ハイグレ人間になろうと考える。
そんな感じです。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.142 )
日時: 2016/10/04(火) 08:57:21 メンテ
名前: 名無しさん

素晴らしい!見事なまでのバッドエンドで読み応えが
あります!
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.143 )
日時: 2016/12/12(月) 23:04:02 メンテ
名前: 名無し

今更ですが
ハイグレ魔王からの視点で描かれた展開も見てみたいですね
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.144 )
日時: 2017/03/26(日) 15:31:22 メンテ
名前: おもいつき

・本編とは関係ありません
・光線銃で洗脳という形はありません

ある生徒の苦闘番外編 静かな侵攻

僕はどうしてこんなことしてるんだろう。
IS学園にやってきて、色々あって一人の女の子として学校に通って、
環境に慣れて、友達もできて、一夏という好きな人もできた。
きっとこういうのを充実した学園生活というはずだ。
だから今の僕がやっている行為もそのはずだ。
充実した学園生活の一部のはずだ。
きっと、たぶん。
「離せシャル!これは一大事だ!すぐに軍と連絡をとって対策を立てねばならん!」
ルームメイトは僕の腕の中で暴れていた。
ドイツ軍の少佐であるラウラはさっきから本国に連絡を!叫んでいる。
そして、それを止める僕。
だってしょうがないよ。向こうだってきっと迷惑だろうし。
宇宙人の地球侵略への対策なんて言われても。

事の始まりはテレビ番組だった。
日本ではよくあるオカルト番組で、ネッシー、チュパカブラ、ビッグフットなど
未知の生物の特集が組まれていた。
それを見ながらラウラは
「ほほう」とか「なんと!」とかえらく感心していた。
そして宇宙人についてのコーナーだった。
いくつものUFOと思われる写真、映像。さらに某国で行われているという宇宙人の技術研究。
さらに現在の科学では解明できない怪奇現象の数々が紹介され、それらがすべて宇宙人の仕業だというのだ。
これらを一切声をあげることなく真剣な目で見るラウラ。
そこで締めくくりの言葉。
「私たちの住む地球は狙われている。明日にも宇宙人の侵略が始まるかもしれない!」
真剣なラウラには悪いけど『胡散臭い』心から僕はそう思った。
番組が終わると同時にラウラが立ちあがった。
「どうしたのラウラ?」
ラウラは、
「こうしてはおれん。直ぐに宇宙人に備えなくては!」
え?
「何を茫然としている?シャルも見ていただろう?地球が狙われているのだぞ!」
まさかラウラこれを真に受けてる?
「えーとねラウラ。これはほとんどウソで…」
「そんなことが何故断言できる?宇宙は広い。悪意を持った宇宙人の存在を何故否定できる?」
ど、どうしよう?
「私は軍人だ。民間人の生命、財産を守るのが仕事だ。
宇宙人が地球を侵略するというのであれば、軍人は民間人を守る為に戦わねばならん」
編入初日にその守るべき民間人の一夏をいきなり殴ってたよね?
「何より、嫁を守るのは夫の義務だ」
うん。いつものラウラだ。
大真面目に宇宙人の危機をドイツ軍に伝えようとするラウラ。
それを止める僕。この争いが落ち着いたのは日付が変わってからだった。

目を開く。
暗闇に浮かぶ天井。
微かに聞こえるルームメイト、シャルの寝息。
「眠れん」
ベッドの中で上体を起こす。
何故だ。何故シャルは宇宙人の危機を認めようとしない?
結局あの後連絡はできなかった。
どれだけ私が地球が危ないといってもシャルは聞く耳を持たなかった。
何故わからん?地球が侵略されれば私たち地球人はどうなるかわからんのだぞ。
!?地球人が?
も、もしやシャルは?宇宙人なのか?
侵略の機会を窺っているのに対策をされてしまっては困る。そういうことか?
そう考えると辻褄は合う。だが、まさかそんな。
シャルの方を見ると規則正しい寝息を立てている。
あれは眠ったフリなのだろうか?
私を観察し、組織に情報を伝えているのではないだろうか?
ありえん。そんなはずはない。
シャルは……地球人だ!
待て、何も地球人だから味方というわけではない。
歴史を学べば分かる。
戦いには裏切り者が付き物だ。
勝算なしと判断すれば自分の保身の為に、味方を売ることぐらい……
シャルがそんなことを?バカな!ありえん!
シャルが地球人でありながら私たちを裏切り、悪の宇宙人とつながっている。
そして時がくれば背後から……
それはある日突然未知の宇宙人が襲いかかってくるということの何百倍も恐ろしいことのように思えた。
違う!シャルがそんなことをするはずがない。
そうだ。友を疑うなど。だが、もしそれが自分の意志でなければ?
そうだ!さっきテレビで言っていたではないか!
インプラントだったか?
宇宙人にさらわれ、体に機械を埋め込まれてしまうことがあるのだと言う。
そして奴らに操られるままにスパイ行為を………
くっ!何と言うことだ!おのれ宇宙人め!よくもシャルを!
私はカーテンのかかった窓に向かって歩く。
宇宙人。奴らはどこから来るのだ?いつ来るのだ?
今は夜中だ。やはり、来るなら夜襲か?
そのようなことを考えながら、カーテンをめくる。
………?
なんだこいつは?
窓ガラスの向こうに人影があった。
仮面をかぶり、何か水着のようなものを着ている。
「あら?見つかっちゃたわ」
そう言って奴は私の方に指を………
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.145 )
日時: 2017/03/26(日) 15:32:10 メンテ
名前: おもいつき

朝のホームルームが始まるまでのわずかな時間。
学生にとっては貴重な時間だ。
みんなと挨拶を交わして席に着く。
後数分で千冬姉が来る。
ギリギリだな。
「おはよう一夏」
「おはよう。嫁よ」
シャルとラウラの声が聞こえた。
ラウラ俺は嫁じゃない。
そう言ってやろうと思って振り向くと。
え?
「どうしたの一夏?」
シャルはいい。IS学園の制服を着たいつものシャルだ。
「嫁よ。どうしたのだ?」
そうだ。ラウラだ。
「おいラウラ。なんだその格好は?」
ラウラは制服を着ていなかった。
みんなが学園指定の制服を着る中ラウラは一人。水着を着ていた。
昔流行ったタイプで……確か、ハイレグって言うんだったか?
「なんだとはどういうことだ?私の格好が何か変か?」
「いや、おかしいだろう。そんな格好で。千冬姉に怒られるぞ!」
せめてその上に制服を着てくれ。
「一夏何言ってるの?別にラウラはどこもおかしくないよ」
「うむ。どこもおかしくはないな」
「そうですわね。いつもと変わりませんわ」
俺の周りにいたシャル、箒、セシリアが援護射撃してきた。
どこがだよ?水着だぞ。千冬姉に見られたら。
「席につけ。ホームルームを始める」
来ちまったよ。
そして千冬姉はラウラの方を向き
「ボーデヴィッヒ!」
ほらみろ怒られるぞ。
「昨日提出した書類だが、不備がある。直して再提出しろ」
そういって千冬姉は何か書類をラウラに渡す。
「では、ホームルームを始める」
「な?ちょ?ち、千冬姉!!」
「織斑先生だバカモノ!」
わざわざ俺の前までやってきて出席簿を振り下ろす。
いってえ〜。
「それで、どうした織斑?」
一応話は聞いてくれるようだ。
「その、ラウラが」
「ボーデヴィッヒがどうした?」
ラウラを見ながら俺に問う。
「え?だって、あんな格好で…」
「お前は何を言っている?」
それだけ言って教室の前に戻ってしまった。
「では、出席を取る」
ホームルームが始まってしまった。
誰も騒ぐことなく。

おかしい。絶対におかしい。
あのラウラが水着で学校にやってきた。
それに誰も何も言わない。
どうしてだ?
クラスのみんなは勿論。他のクラスの生徒、教師も何も言わない。
そもそも不審を感じていない。
放課後になり、早々に教室を出て行ったラウラ。それを追おうとしたシャルを引き止め、訴える。
「シャル。頼む。ラウラは絶対におかしい。何かあったはずなんだ」
「そうは言うけど一夏。ラウラはどこもおかしくないよ?いつもどおりだったけど…」
そうだ。ラウラは格好こそ水着姿だったが、行動は普段と変わらなかった。
だが、だからこそハイレグ水着を着ていたという事実が際立つ。
「ラウラに聞いてみてくれよ。何かあったのかって?」
「う〜〜ん。でも何もないって言われたらそれまでだよ?僕は別におかしいと思ってないし」
なんでだよ!?おかしいだろ!?という声を必至に飲み込み。もう一度シャルに頭を下げる。
シャルはしぶしぶではあったが了承してくれた。
これで何か分かればいいんだが。
教室を出るシャルの背中を見送りながらそう思った。

「じゃあうまくいったのね?」
「はい!魔王様の仰る通りでした。人間共は私の姿を見ても咎めませんでした」
今日の出来事を報告している。
相手はハイグレ魔王様。
私の主であり、この星の支配者となられる御方だ。
昨晩、私は侵略の準備を行っていた魔王様を発見してしまった。
だが、それは私にとっては幸運なことだった。
この星で、真っ先にハイグレ魔王様からハイグレ洗脳を受け、ハイグレ人間になることができたのだから。
私は魔王様の御命令でしばらく実験を行うことになっている。
「兵士を動員して光線銃で洗脳ってパターンも飽きてきたのよ。こうやってやるのもいいわね」
魔王様の実験とは光線銃を極力使わない侵略。
洗脳効果のある電波で星を覆い、その星の生命を従わせるという方法だ。
「第一段階は成功ね。『ハイグレ姿でも違和感を持たない』うまく効いているわ」
「魔王様。先ほどは成功とお伝えましたが、実は……」
私は嫁のことを伝えた。
「その織斑一夏だけが貴方のことをおかしいと言ったのね?」
「はい」
長い沈黙。魔王様は……
「まあいいわ。効きにくいっていう体質かもしれないし、一人くらいなら放置しても問題ないでしょう。
どうせ何もできはしないわ」
魔王様がそう判断されたなら。私から言うべきことは何もない。嫁は放置だ。
「第二段階『ハイグレをする姿を見ても違和感を持たない』に入るまでもう少し時間がかかるわ。
昨日言ったとおり、今後はハイグレ人間を増やすのよ。ゆっくりとね。
方法はわかっているわね?」
「はい。魔王様から頂いたこのハイレグを着せます」
そうだ。第一段階が効いている人間がこのハイレグを着れば。
「洗脳効果のあるこれを着ればみんな私のし・も・べ。ホホホホホホホ。頼むわよラウラ」
「魔王様。第三段階があると聞いておりますが……どのような効果なのでしょうか?」
「ヒ・ミ・ツ。第三段階に入れば貴方にもすぐに分かるわ。というより忙しくなるわ。頑張ってね」
それを最後に通信が切れる。
早速ハイグレ人間を増やすとしよう。
まずは、やはり同室のシャルだな。
「ラウラ〜。いる〜?」
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.146 )
日時: 2017/03/26(日) 15:33:05 メンテ
名前: おもいつき

なんでこうなる。
「おはよう一夏」
「おはよう。嫁よ」
昨日と同じ挨拶を俺は二人から受けた。
「嫁よ。昨日は心配をかけてしまったようだな。
もう大丈夫だ。昨日シャルが相談に乗ってくれたおかげで。問題は解決した」
「ラウラが元に戻ってくれて本当によかったよ」
元に戻った?どこがだ!?状況は悪化している。
昨日と同じくグレーのハイレグ水着を着ているラウラ。
そして、オレンジのハイレグ水着を着ているシャル。
今日はシャルまでハイグレ水着を着て登校してきたのだ。
どうなってるんだよ?
「よかったですわね一夏さん。ラウラさんが元気になって」
「そうだな一夏。これでボーデヴィッヒばかり見る理由はなくなったな」
セシリアと箒は何も感じないのかよ。おかしいだろ。
教室に水着を着た人間が増えたんだぞ。
「シャル!一体何があった!?」
「……何もないよ一夏。僕はいつもどおりだよ」
そして、ホームルームが始まる。
千冬姉は、何も言わない。
どうしてだ?

さらに翌日の水曜日。
ハイレグ水着を着た人間の数は4人になっていた。
その翌日は8人。
さらに翌日は……8人のままだった。
ハイレグ水着の侵食が止まった。
そう思っていたが、とんでもない。クラスの外にハイレグ水着を着た生徒がいたのだ。
それだけではない。ついに教師にまで浸食が進んでいたのだ。
週末はラウラ達を問い詰める予定だったのだが、
俺のISの調整の為、千冬姉と共に泊まりがけで倉持に行くことになってしまった。

「なんでしょうか?これ?」
私は自室で先ほど同僚の教師から受け取った紙袋を見ていました。
「いいものですよ。山田先生もきっと気に入ります」
そういってどこか色気のある笑みを浮かべながらその教師は私にそれを押しつけていってしまいました。
紙袋の中には何か、黄色いものが見えます。
危険物じゃありませんよね?軽いですし。
テーブルの上で紙袋を横にして中身を引き出しました。
中には、
「水着……?」
黄色い物体は布でした。
おそらくは水着です。
昔流行っていた、足を長く見せる効果のあるV字カットのハイレグと呼ばれる水着です。
なんで私に水着を?
誕生日……じゃないですね。
意図はなんでしょうか?
いくつもに疑問が頭に浮かんでは消えます。
でも……
私はテーブルに広げられたハイレグ水着をジッみつめます。
ええ、凝視と言ってもいいくらい。
「……素敵です」
誰もいない。自分だけの部屋。その空間に私の声が響きました。
素敵なハイレグ水着。
ああ。そう言えばこれを渡した教師もハイレグ水着を着ていました。
1組の生徒達も。学園の中には何人もハイレグ水着を着て生活している人がいます。
私も……
自分がこれを着て学園生活を送るところを想像してみます。
皆と一緒にハイレグ水着を着て授業をして、
ハイグレ魔王様を想ってハイグレを捧げて、
ハイグレ魔王様の為にパンスト兵様に尽くして、
それからハイグレ魔王様の為に……
「いいです!すっごくいいです!」
慌てて口を両手で押さえました。
大丈夫です。ここは私の部屋です。誰もいません。
ひとつ溜息をついてから、立ち上がり、今度はハイレグ水着の肩紐をつまんで自分の体に合わせてみます。
鏡に映った私は頬を紅潮させ、まるで高熱にかかっているかのようです。
でも、これは良い兆候です。
『私は、ハイレグ水着が着たい。ハイグレ人間に、ハイグレ魔王様のしもべになりたい』
心からそう思えました。
そうです。既にハイグレ人間になっているみんなと同じように…。
あの先生には感謝しないといけませんね。
こうしてハイグレ人間になる機会を下さったんですから。
「着替えないと」
私は邪魔な服を脱ぎ始めました。

学園に向かって歩きながら嫌な予感はしていた。
先週までに比べて圧倒的にハイレグ水着を着た生徒の数が多いのだ。
制服を着た生徒とほぼ半々といったところだろう。
クラスに着くと、もっとひどい光景が広がっていた。
もはや制服を着ている生徒は少数派になっていた。
そして、誰もそれに疑問を感じない。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!どうしましたの一夏さん?随分と元気がないようですが?」
俺に声をかけるセシリア。
そのセシリアも既に青のハイレグ水着を着ていた。
先週までは制服を着ていたのに。
おまけに先週まではなかった、奇妙なポーズ。
セシリアだけでなく、ハイレグ水着を着た多くの生徒がいたるところで同じポーズをしているのだ。
もう尋ねる気力もない。
誰も認識していないが間違いない。
何かが起きているのだ。そうとしか思えない。
「席につけ。ホームルームを始める」
いつものように教室に入ってくる千冬姉と山田先生。
だけど一部、先週と違った。
スーツを着た千冬姉に続いて教室に入ってきた副担任の山田先生。
山田先生も多くの生徒たちと同じように黄色のハイレグ水着を着ていた。
生徒だけでなく先生まで。
そして何の疑問も持たない千冬姉。
どうすればいいんだ。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.147 )
日時: 2017/03/26(日) 15:34:31 メンテ
名前: おもいつき

昼休み、学生にとっては至福の時間。
ましてそれが自分の好きな人と二人きりなら尚更だ。
普段なら多くの恋敵と牽制し合うはずの時間が誰もいない。
一夏が振り切って私の所に来てくれたから。
でも今の雰囲気は甘い空気の対極にある。
「鈴。分かるよな?今の学園はおかしい。絶対に何かが起こってるんだ!」
一夏が甘い空気を許さないからだ。
そして私も。
「一夏。悪いんだけど、私保健室に行くわ」
朝から具合が悪かった。
頭が重くて、痛くて、何か幻聴のようなものまで聞こえていた。
休んだ方がよかったわね。
一緒に行く。という一夏を押しとどめ、廊下を歩いた。
頭が、体が重い。すぐ傍のはずの保健室がとてつもなく遠くに感じる。
すれ違う生徒達は私を見て道を譲る。
私どれだけひどい顔してるのかしら?
保険室の中には先生が椅子に座っていた。
少し消毒の匂いがする室内にカーテンが締められたベッド。
誰か寝てるのかしら?
「どうしたの?え〜と、貴方は?」
「1年2組の凰鈴音です。頭が痛くて……」
「風邪かしら?」
先生はスッと席を立ち、多分薬が入っているのだろう。棚に向かう。
翻った白衣の隙間からはハイレグ水着が見えた。
……青?うん。いいわね。なんか知性的な感じ。
私は何色が似合うかしら……
あれ?ハイレグ水着?なんでそんなものを?
何かおかしいような……。おかしい?おかしくなんかないわ。
だってこの星はハイグレ魔王様が支配すべき……!?
誰よそれ!?ハイグレ魔王様!?支配!?
違う!そんなはずない!
おかしい。絶対におかしい!
「先生!」
カーテンの金具が音をたて、中にいた生徒が姿を表す。
「どうですか?似合いますか?」
「ティ、ティナ?」
姿を表したのは同じクラスのティナ・ハミルトン。
午前中は一緒に授業を受けていたが、途中で体調不良を訴え、保健室に行っていた。
「ええ。とても似合っていますよハミルトンさん。
魔王様のしもべ。ハイグレ人間として相応しい。とても素敵な姿です」
ティナは制服を着ていなかった。
彼女の体を包んでいるのは水着だった。確か、ハイレグとかいうタイプの。
「ティナ!あんた!なんて格好してんのよ!」
頭の痛みを堪えて叫ぶ。
「鈴?何言ってるの?私はハイグレ人間になったのよ。ああ、鈴はまだ人間だからわからないのね。
大丈夫よ鈴。今の貴方に聞こえる声に従えばいいんだから」
一瞬だけ怪訝な表情を浮かべたが、まるでなんでもないことのように私に応える。
「そういう事だったのね。凰さん。その頭痛はね、ハイグレ魔王様の洗脳に体が抵抗してしまっているのよ」
せ、洗脳!?学園では絶対に聞くことはないであろう言葉が聞こえてきた。
ヤバイ!とんでもなくヤバイ!
「ホラ鈴ちゃんと見て。ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「凰さんしっかりとハイグレの素晴らしさを感じなさい。ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
二人は何か不思議なポーズを取り始める。
なによ?あれ?
でも…二人とも…とっても気持ちよさそう……
いいなあ……私もハイグレしたい。そうすればきっと……私も……
ハイグレ魔王様の……
え!?何よ今の!?私何考えた!?
マズイわ。よくわからないけど。とにかくマズイ。
逃げなければと思うのに、体は動かない。
そしてさっきから何かが聞こえてくる。頭の中に響く声はドンドン大きくなってくる。
『ハイグレ人間におなりなさい』
なによそれ!?ハイグレ人間って何よ!?あんた誰よ!?
「凰さん。その声に逆らってはいけません。従うのです。ハイグレ魔王様の御言葉に」
「鈴。何も怖くないわ。ハイグレ人間になりましょう」
気付かない内に私は前後を挟まれていた。
前からは白衣を脱ぎ棄て青のハイレグだけを着た先生。
後ろからは黄色のハイレグを着たティナ。
二人に肩を掴まれ、身動きがとれなくなってしまった。
『ハイグレ人間におなりなさい』
うるさい!
『ハイグレ人間におなりなさい』
うるさい。
『ハイグレ人間におなりなさい』
うる、さい…。
『ハイグレ人間におなりなさい』
………
「凰さん。抵抗しても無駄です。さあハイグレ魔王様に全てを委ねるのです」
「鈴。貴方も、みんなと一緒に、ハイグレ人間に」
耳許でささやく二人の声。
ハイグレ人間?それはハイグレ魔王様のしもべ。
ハイグレ魔王様。私達の御主人様。
全ての生命の頂点に立ち、私たちを導いてくださる偉大な御方。
そう。全ての生命はハイグレ魔王様に従わなきゃいけない。
だからなる。私も、ハイグレ人間に……。
そうよ。ならなきゃ!ハイグレ人間に!
私もハイグレ人間にならなきゃ!一刻も早く!
『ダメよ。ダメ』
何か雑音が聞こえる。関係ない。早く、ハイグレ人間にならなきゃ!
私は自分の目の前に差し出されたピンク色のハイレグ水着を掴んだ。
同時に私の頭に聞こえてきた雑音は消えた。
静かだわ。頭痛も消えた。
先生とティナが私を見て微笑む。
「私、凰鈴音はハイグレ魔王様のしもべ。ハイグレ人間になります。
私の全てはハイグレ魔王様のものです。私は宇宙の支配者ハイグレ魔王様に永遠の忠誠を誓います。
魔王様…魔王様…魔王様…魔王様…」

鈴と別れた俺は
生徒会室に向かっていた
生徒会長更識楯無。学園最強のあの人ならきっとなんとかしてくれる。
ノックもそこそこに生徒会室の扉を開けた。
「あら、一夏君どうしたの?もしかしてお姉さんに会いに来てくれたの?だったらうれしいわ」
『熱烈歓迎』そう書いてある扇子を広げ笑顔になる。
楯無さんは俺にISの指導をしてくれた。
裸エプロンで部屋に無断侵入したり、イタズラ好きの少し困った先輩。
それでもとても頼りになる人。
のはずだった。
制服を着てさえいてくれれば。
もう駄目だ。楯無さんも既に水色のハイレグ水着を着てニコニコしていた。
「お茶を入れますね」
そう言う布仏先輩も着ているのは黄色のハイレグ水着だけ。
「失礼します!」
俺は部屋を飛び出すのだった。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.148 )
日時: 2017/03/26(日) 15:35:09 メンテ
名前: おもいつき

「なんだったのかしら?」
「さあ?」
一夏君がやってきた。
でも、何もせずに部屋を飛び出してしまった。
本当になんだったのかしら?
「気にする必要はないのではありませんか?低能な人間のやることなど」
虚ちゃんの遠慮のない言葉に私は内心で頷く。
人間の行動を気にする必要などない。
一刻も早くハイグレ魔王様の偉大さを知らしめ、学園に、この星にハイグレ魔王様を迎えなくては。
再びノックの音。
入って来たのは。
「お姉ちゃん。お願いがあるの」
妹の簪ちゃん。一緒に従者の本音ちゃんもいる。
簪ちゃんは制服姿。本音ちゃんは虚ちゃんと御揃いの黄色のハイレグを着ている。
「あの、その、お姉ちゃん。わ、私」
これは、間違いないわよね。
私は虚ちゃんを見て、さらに本音ちゃんを見る。
二人とも頷く。
「何かしら。お姉ちゃんにできることならなんでも言ってちょうだい」
私は扇子を広げる。内容は『お姉ちゃんにお任せ』
簪ちゃんは、うつむいて、唸ってから顔を上げる。
「お姉ちゃん!私、私、は、ハイレグが着たい!私もお姉ちゃんみたいにハイグレ魔王様のしもべになりたい!」
簪ちゃんの叫び。
ハイグレ人間になりたい。それは人間として当然の欲求。
準備はできている。
この学園の人間は、いや、この星の人間はすべてハイグレ人間となり、
ハイグレ魔王様の為に生きるべきなのだから。
簪ちゃんもそれを分かってくれた。すべてを魔王様に委ねることの幸せを。
私が簪ちゃんにハイレグを差し出す。
手に取った簪ちゃんはうっとりとそれを眺め、いそいそと服を脱ぎだした。
よかった。簪ちゃんもこれでハイグレ人間だわ。
宇宙を統べる偉大な存在。
ハイグレ魔王様に仕えるしもべ。ハイグレ人間。
姉妹でハイグレ人間になれるなんて……
なんて素敵なのかしら。
パチンッと音が響く。
間違いない。これはハイレグ肩紐の音。
音の方向には簪ちゃん…、いえ、
ハイグレ人間更識簪が今まで着ていた醜いではなく、ハイグレ魔王様から賜った神聖な衣。
ハイレグを纏い、立っていた。
「えっと…どうかな?」
少しだけ上目づかいで、恥ずかしそうに、私に聞く。
「素敵よ簪ちゃん。とってもかわいい。どこからどうみてもハイグレ人間にしか見えないわ」
「本当に?そう見える?私も……ハイグレ魔王様のしもべに見える?」
顔をほころばせ、嬉しそうに簪ちゃんは聞き返す。
「はい。とてもお似合いです。簪お嬢様」
「すっごくいいよかんちゃ〜ん。これでかんちゃんも仲間だね〜〜」
そう。ハイレグを纏った者はみんな仲間だ。
共に宇宙の支配者であるハイグレ魔王様に永遠に仕える仲間なのだ。
平等で一切の差別などない。
私の胸に何か温かいものが宿った気がする。
素晴らしいわ。こんな一体感は感じたことがない。
これも全て魔王様の御蔭。
ああ、魔王様ありがとうございます。
私は魔王様に、すべてを捧げ、すべてを魔王様のものにする為に………
「お姉ちゃん。どうしたの?」
気がついたら簪ちゃんが私の顔を覗き込んでいた。
簪ちゃんだけではない。
虚ちゃんも本音ちゃんも。どこか不安そうな顔で私を見ている。
「なんでもないわ。ちょっと、ハイグレ魔王様が素敵な方だってことを確認しただけよ」
それはハイグレ人間にとっての常識。魔王様は宇宙で最も偉大な方なのだから。
「そんなのあたり前だよ」
「そうですお嬢様。魔王様は常に正しく、私たちを導いてくださる偉大な御方です」
「だからまお〜様のことをみんなに教えてあげなきゃいけないんだから〜」
3人の言葉が私の胸にしみた。
「ええ。だから頑張りましょう」
「「「「この星のすべてをハイグレ魔王様のものに!!」」」」
生徒会室で私たちはハイグレ魔王様への忠誠を誓い直した。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.149 )
日時: 2017/03/26(日) 15:35:54 メンテ
名前: おもいつき

「千冬姉聞いてくれ!絶対におかしいんだ!」
放課後になり、廊下で一夏が必死に訴える。
普段なら『織斑先生だ!』と出席簿を叩きつけるところだがそれもできない。
それほどまでに一夏からは切迫した雰囲気を感じた。
「わかった。わかった。職員会議が終わったら話を聞いてやる。寮長室で待っていろ」
一夏に鍵を渡し、追い払う。
まだ何か言いたそうだったが、しぶしぶと歩き出した。
一体なんだというのだ。
思い返せば先週から一夏の様子はおかしかった。
うむ。確かボーデヴィッヒがおかしいと言っていたな。
何かおかしかっただろうか?
あの日のボーデヴィッヒは……
そうだ。あの日からボーデヴィッヒはハイレグを着ていた。
だが、それの何がおかしいのだ?
ボーデヴィッヒが人間からハイグレ人間への転向を果たしたというだけだ。
愚かな人間から偉大な指導者、ハイグレ魔王様に仕えるハイグレ人間という存在に。
そしてその日を境に学園にハイグレ人間が増えて行った。
喜ばしいことだ。クラスの生徒たちも次々とハイグレ人間になっていった。
ハイグレ人間になった生徒達は今日も学園中で魔王様にハイグレを捧げている。
正直に言うと羨ましい。私もハイグレ人間になりたい。
だが、話はそんなに簡単ではない。
私は織斑千冬だ。世界にその名を轟かせるブリュンヒルデだ。
如何にハイグレ魔王様が偉大な御方とは言え、私があっさりとハイグレ人間に転向するわけにはいかない。
それが人としての矜持であり…「織斑先生!」
後ろを振り向くと私の同僚の山田先生が立っていた。
彼女はすでに黄色のハイレグを着ていた。
ハイグレ魔王様のしもべの証。ハイレグを。
「なんでしょうか?あまり時間はありませんよ。直ぐに職員会議が始まりますから」
「そんなことよりも大事なことです。織斑先生これを」
そういって私に何か、黒い布きれを…!?違う!これは!
「ハイレグです。織斑先生もハイグレ人間になって魔王様に仕えましょう」
私の手の中に収まったハイレグを見て、私は心が高揚するのを感じた。
ついに!ついに来た!私も!ハイグレ人間に!
ま、待て、落ち着け!ブリュンヒルデの私がたやすく屈するなど、魔王様もそんな私を評価などしないだろう。
私はそんなに軽い女では…
「ハイグレ魔王様は織斑先生のような強い力を持つ者こそ、是非ハイグレ人間として迎えたいとお考えです」
ま、魔王様が、私を……
「織斑先生。悩む必要なんかありません、想像してみてください。
ハイグレ人間になった自分が、この学園のハイグレ人間みんなと一緒にハイグレを捧げる姿を」
魔王様にハイグレを捧げる……
ドクン!
なんと、なんと甘美な響きだ!
私が、ハイグレ人間という集団の一人として魔王様に仕える……
なんと素晴らしい光景だろうか。
したい。私はハイグレがしたい!
これを着て、魔王様の為に、ハイグレを!
「山田先生。すまないが会議には少し遅れると伝えてくれ」
更衣室で着替える時間を考えれば会議には間に合わない。
「大丈夫ですよ。今日の会議は『ハイグレ人間としてどうやってハイグレ魔王様のお役に立つか』ですから
今日織斑先生を転向させることは他の先生方もみんな知ってます」
そうか。私以外の教師は既に魔王様に従っていたのか。
ならば私も急がねば。
私は更衣室に駆け込む。
このような醜い服など着ていられん。
上着を脱ぎ、シャツのボタンを外す。
ええいっ!なんだこれは!手間がかかって仕方ない。
面倒に感じた私はシャツを力任せに引きちぎる。
ボロボロになったが構わない。
こんなものを着ることは二度とないのだ。脱いだ衣服と共に備え付けのごみ箱に投げる。
裸になった私はもう一度魔王様が私に下さった黒のハイレグを見る。
ああ。なんと神々しい。これこそが私の、すべての人間が身に纏うべき布。
魔王様に仕えるハイグレ人間に相応しいものだ。
私は心が命ずるそのままにハイレグを着る。
両足を通し、引き上げる。両腕を通し肩紐を止める。
なんて、なんて素晴らしい感触なんだ。
私の股間を上に持ち上げる力、胴を左右から締め付ける力、さらに肩紐が下へ降りる力。
私の全てがハイレグによって締め上げられる。
魔王様が、魔王様がこんなにも私に、愛を注いでくださっている。
ハイレグを着た私は鏡を見る。
鏡の中の私は全身でハイグレ人間になった喜びを表していた。
ただ立っているだけで、ハイグレ魔王様のしもべになることができた喜びに包まれているのがわかった。
うん?なんだ?
………ゆ。………なさい。あ……の?
何か聞こえる?
『千冬。答えなさい。貴方は何者?』
も、もしやこれは、ハイグレ魔王様の?
私の空耳だろうか?いや、これは間違いなくハイグレ魔王様のお声だ!
私が何者か?簡単な問いだ!
私は大きく足を開き、両手をハイレグの切れ込みに当てる。
そう。ハイグレ魔王様への忠誠を誓う、神聖なハイグレの構えだ。
私もみんなと同じ様にハイグレができるのだ。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!
私はハイグレ人間織斑千冬!ハイグレ魔王様の忠実なしもべです!
ハイグレ魔王様!私にどうか御命令を!どのような御命令でも身命を賭して実行致します!
ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
両手を引き上げ魔王様にハイグレを捧げる。
動作が激しいせいか胸が揺れて少し痛みがある。
だが、それがなんだというのだ。
魔王様への忠誠に比べればその程度のこと。
この痛みもやがて快楽に変わるはずだ。
すべて魔王様のお陰だ。
みんなが待っている。急ごう。
私は更衣室を飛び出し、会議室へ走る。
途中で出会う生徒達は一人の例外もなくハイグレ姿だった。
もしや、私は本当に最後だったのだろうか?
「申し訳ありません。遅れました」
そう言って会議室の扉を開けた私を迎えたのは、
IS学園の教師たち。無論。全員がハイグレ魔王様のしもべの証。
ハイレグを着ていた。
「構いませんよ織斑先生。山田先生から事情を聞いています。無事ハイグレ人間への転向を果たしたようですね」
学年主任を務めているその教師はニッコリ笑ってそう言った。
そして真剣な表情になる。
「織斑先生がハイグレ人間になったことで、この学園の教職員は全てハイグレ人間になりました。
生徒たちもおそらく今日中に全員ハイグレ人間になるでしょう。
今日の議題は『如何に私たちがハイグレ魔王様に貢献していくか』です。
私たちハイグレ人間は魔王様の下、みな平等です。活発で自由な議論を期待します」
「「「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」」」
この場にいる全てのハイグレ人間が魔王様を讃え、魔王様への服従と忠誠の証、ハイグレで返事をする。
こうしてハイグレをしていてもまだ信じられない。
私がこうしてハイグレをする立場になれるとは……
「生徒たちと共に魔王様にハイグレを捧げる時間を作るというのはどうでしょうか」
「まずは人間達に私達がハイグレ魔王様のしもべになったことを知らせ、独立を宣言しましょう。
人間如きと同じ扱いを受けるなどハイグレ人間にとって屈辱以外のなにものでもありません」
「私たちだけで洗脳活動入りませんか?ISを使えばそこまで困難な事だとは思えませんが……」
様々な意見が飛び出す。
どれもこれも魔王様を想い、ハイグレの素晴らしさをを広めようとする使命感に満ちている。
私は魔王様の為に何ができるだろうか?
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.150 )
日時: 2017/03/26(日) 15:36:33 メンテ
名前: おもいつき

「はぁ〜〜〜〜〜〜」
大きく溜息をついて缶ビールの空き缶を袋に入れる。
今ので最後だ。ゴミ袋を縛って、部屋のすみに置く。
袋はこれで3つめ。
ここまでやってようやく。二人が話し合うことができるスペースができた。
千冬姉。俺を寮長室に行かせたのは掃除させるためじゃないよな?
思い返せば家事はほとんど俺がやっていた。
つまり千冬姉は家事ができない。
こんな状態で恋人ができたらどうするんだ?
ゴミ屋敷2、3歩手前の部屋を見られたら。ほとんどの男は逃げだすだろう。
千冬姉が掃除を自力でできるようになるか、
恋人が掃除の達人か、
はたまた、千冬姉と家事が同レベルの人物で掃除ができなくても気にしないか……
想像して、また溜息をつく。
まあいいか。卒業するまでは俺がやればいいんだから。
窓を見るとキレイな夕焼けが見える。
もうそんな時間か。遅いな千冬姉。
そう思った時。
「待たせたな一夏」
ガチャッとドアの開く音と共に千冬姉の声が聞こえてきた。
「千冬姉」
やっと戻ってきた。
そう思って顔を向ける。が、
「どうした一夏?何を固まっている」
…な、なんで?
「なんで千冬姉までそんなカッコしてるんだよ!」
俺の視界に入った千冬姉はさっき鍵を貰ったときの千冬姉ではなかった。
あの時着ていたスーツが消えて、IS学園内で増殖しているハイレグ水着を着ていた。
「何を言っている?この素晴らしいハイグレ姿になることがなにかおかしいのか?」
「え?は、ハイグレ姿?」
千冬姉の言葉が理解できず聞き返す。
「そうだ。ハイグレ姿だ。
この星の、いや宇宙の支配者ハイグレ魔王様に仕えるしもべ。ハイグレ人間の正装だ。
宇宙の生命は皆、ハイグレ人間となり、ハイグレ魔王様に仕えなくてはならない。
魔王様は我々にもハイグレ人間となる機会を与えて下さったのだ。
気付かなかったのか一夏?ボーデヴィッヒがハイグレ姿になっていたではないか」
なっ?
「千冬姉。ラウラが水着だったの分かってたのかよ!?なんで何も!?」
「当然だ。ボーデヴィッヒは皆よりも一足早く魔王様のしもべとなり、
この星を魔王様に献上する為に働いていたのだろう。ハイグレ人間として当然のことだ。
今後は私もハイグレ人間として魔王様の為に人間共をハイグレ人間に洗脳していかねばならん」
「……洗脳って言ったか?」
恐ろしい単語が聞こえた。どうか聞き違いであって欲しい。
「言ったぞ。情けないことだが洗脳せねば魔王様が偉大な存在であることを理解できない者が多いからな。
私も洗脳して頂いたのだ。一夏。お前も早くハイグレ洗脳を受けろ。
そしてこのハイレグを纏い、魔王様の為に……一夏!どこへ行く!?」
もう聞いていられない。千冬姉が白のハイレグ水着を取り出したところで俺は部屋を飛び出し、走る。
廊下を走り、外へ出る。俺の視界で映るたくさんのIS学園の生徒。
だが彼女たちは誰も制服を着ておらず。皆、様々な色のハイレグ水着だけを着た状態だった。
俺が暢気に部屋で掃除をしているうちに侵略は進んでしまったらしい。
また、わずかに残った制服を着た生徒もいたが、どの子も例外なくハイレグ水着を手に持ち、
既にハイレグ水着を着た友人、先輩につかまっていた。きっと数分後には彼女たちも………
考えるな!とにかく学園の外へ向かおう!外にはきっとまだまともな人が……
だが俺は角を曲がったところで、人とぶつかってしまう。
正面からぶつかり、尻もちをついた相手は……
「痛いではないか。何を急いでいるのだ一夏?」
IS学園指定の制服を着た俺の幼馴染。篠ノ之箒だった。

「箒!箒は……まともだな?まだ、大丈夫だな!?」
俺は、目の前で制服を着て、立ち上がる箒を見ながら言う。
IS学園の制服。
なんの変哲もないその衣服は、ハイレグ水着という異常な布が跋扈するこの場では正常な世界へ逃げるパスポートだ。
そう。箒はまだ。洗脳されていないんだ。
「一夏?何を言っている?」
不思議そうに俺の顔覗きこむ箒。それが、そのいつもと変わらないその仕草が俺をさらに安心させる。
だが、そう落ち着いてもいられない。
ここは今宇宙人による侵攻を受けているのだから。
俺は強引に箒の右手を掴む。
「箒!頼む!俺と一緒に逃げてくれ!」
「い、い、一夏!な、何を言うのだ!?意味が分かっているのか!?いくらなんでもいきなり駆け落ちなど……」
顔を赤くして捲し立てる箒。
後半はよく聞こえなかった。
だが俺にはわかる。箒は迷っている。
ここは危険だ。ここにとどまれば箒もいずれ、宇宙人の手に掛ってしまうだろう。
「箒!ここは危ないんだ。俺と一緒に逃げよう。学園を離れるんだ!」
多少強引な手段になっても構わない。
これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。
俺にとって大事な『幼馴染』をあんな姿にしてたまるか。
俺が箒の手を引こうと腕に力を込める。が、箒を腕を振って俺の手を振り切る。
箒?
「学園を離れるだと?何を考えている?そんなことは許されん」
さっきまでと違い。冷静で、少し怒りの感情のこもった目で俺を見る。
「箒。今の学園は普通じゃない。とにかく俺と一緒に…」
「駄目だ。私はまだハイグレ魔王様からハイレグを賜っていない。
ハイグレ人間になり、魔王様にハイグレを捧げるまで私はここを離れることはできない」
………今なんて言った?
「それは一夏も同じだ。人間の身でありながらハイグレ魔王様の祝福から逃れようとするなと正気とは思えん」
正気じゃないのは箒のほうだ。
箒は……もう……
「みつけましたわ箒さん」
「もう。探したわよ」
そこに二人のハイレグ水着を着た女性が現れる。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.151 )
日時: 2017/03/26(日) 15:37:10 メンテ
名前: おもいつき

箒の背後に現れたのは
青のハイレグを纏うセシリアとピンクのハイレグを着た鈴。
鈴。昼休みの時はまだ制服着てたじゃないか……
なんで……
「箒さん。これを」
「はやく着なさいよ。そしたら一緒にハイグレするわよ」
セシリアが箒に差し出したのはやはりと言うべきか、赤のハイレグ水着。
「!こ、これは…いいのか?私のような者が魔王様に洗脳して頂くなど、ハイグレ人間になってよいのか?」
ハイレグ水着を手に持ち。瞳を輝かせ、これを着たい。と体を震わせる箒。
「当然ですわ」
「ハイグレ魔王様は全ての人間を御自分のしもべにする御積りよ。例外なんてないわ」
俺の知っているいつもの声、口調でとんでもなく異常なことを口走る二人
「全ての人間を……ハイグレ人間に……私も、ハイグレ人間。ハイグレ魔王様……なんとお優しい」
微かに涙声となった箒の声が聞こえてきた。
そして次の瞬間。箒は制服に手をかけ…
なっ!箒!ここは屋外だぞ!
止めようと一歩箒に近づこうとすると
俺の視界が黒く染まる。
「一夏のエッチ!そんなに箒の裸が見たいの!?」
「嫁よ!私と言うものがありながら…」
目元を手で隠し、二人がかりで強引に俺を引きよせる
どうやら俺の視界を塞いだのはシャルのようだ。
そしてラウラも傍にいる。
俺の腕に触れる制服とは違う感触。
おそらくハイレグ水着なのだろう。
「シャル!放してくれ!箒が!」
「大丈夫だよ一夏。箒もハイグレ人間になるだけだから」
「うむ。偉大なハイグレ魔王様のしもべとして生まれ変わるのだ。これは全ての人間の義務であり、幸福だ」
まったく話が通じない。
洗脳されてしまった二人にとって仲間が増えると言うのは歓迎すべき事態なのだろう。
俺がなんとか逃れようともがいていると
「素敵ですわ箒さん」
「似合ってるわよ」
着替えが終わってしまったのだろう。
セシリアと鈴の声が聞こえてきた。
シャルの手が外される。
俺の目には
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!洗脳完了!
ハイグレ人間篠ノ之箒。これよりハイグレ魔王様のしもべとして、私の全てを魔王様に捧げます!
ハイグレ魔王様万歳!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
箒が赤のハイレグ水着を着て、あの忌まわしいポーズを宇宙人への敬意を示す為に必死にする姿だった。

「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!魔王様!また一人魔王様にしもべを捧げましたわ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!どうか私たちの忠誠をお受け取りください!」
「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」
箒に続き、セシリアと鈴がハイグレ魔王とやらに報告をしている。
実際に伝わっているわけではないはずだが………。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!全ての人間にハイグレの祝福を!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレ魔王様に栄光を!」
「「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」」
シャルとラウラそれに周りにいた大勢のハイレグを着た生徒たち。
みんながあのハイグレというポーズをとっている。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!全てはハイグレ魔王様の為に!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!魔王様に永遠の忠誠を!」
「「「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」」」
さらに楯無さんと簪が加わる。
制服を着ているのは俺一人。一人残らず、全員がハイレグ水着を着て、宇宙人を讃えている
俺は完全に囲まれてしまった。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!素晴らしいハイグレだぞ篠ノ之」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!篠ノ之さん。これからはハイグレ人間として頑張りましょうね」
その中には千冬姉も、山田先生もいる。
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
俺を除いたすべての人が、ハイレグ水着を着て、普段なら絶対しないようなポーズを取り、
そして、わけのわからない『ハイグレ』という単語を叫んでいる。
異常なはずの光景。
だけど誰もそれを異常だとは思わない。
宇宙人によって、それが正しい行為だと思うように洗脳されてしまったから。
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」
俺は洗脳されていない。本当なら俺が正しいはずだ。
だけどここでは……俺が間違っているように思えてしまう。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!さて、一夏。次はお前の番だな」
千冬姉の声に反応し、みんながあのポーズを止めて俺を見た。
俺の知っている顔、知らない顔。様々な人がいる。
だが、ここにいるのは全てハイレグ水着を着て、侵略宇宙人によって洗脳されてしまった人々。
そして、俺をその仲間にしようとしているのだ。
何か目に見えない圧力のようなものを感じて一歩後ずさる。
だが、後ろへ下がると背中に何かがぶつかる
「どこへ行こうと言うのだ一夏。一夏もハイグレ人間に」
「一夏さん。ハイグレは本当に素晴らしいものですのよ」
「ホラ。あんたもはやく着なさいよ。いつまでそんなもの着てるのよ」
「一夏。ハイグレ人間になろうよ」
「魔王様に仕えるにはハイグレ人間にならなければな。嫁よ。夫である私と共に、魔王様の為に」
俺を取り囲むたくさんのハイレグ水着の集団。
俺の知っている顔が普段と変わらない表情と口調で言う。
俺に、ハイグレ人間に、侵略者の奴隷になれと。
異常事態のはずだが、それを誰も気にしない。
ハイレグ水着を着て、侵略者に従うのはみんなの中では既に当たり前のことなのだ。
そんな風にされてしまったのだ。
「一夏君。これがいいと思わない?お姉さんとお揃いの水色よ」
「い、一夏はこっちがいいよ。ホラ」
「どうした織斑?何を固まっている。迷うことなどあるまい。このハイレグを着るんだ」
「織斑君。よければ先生と同じ黄色のハイレグを着ませんか」
皆が手にハイレグ水着を持って一歩近づく。
不気味だ。いや、それを通り越してまるでホラー映画のようであった。
背後にいる箒たち。
そして前に迫る楯無さんを先頭とした人たちが、どんな殺人鬼や幽霊よりも恐ろしく見えた。
「い、いやだ。俺はそんなもの……着ない」
微かに自分の口からこぼれた。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.152 )
日時: 2017/03/26(日) 15:37:46 メンテ
名前: おもいつき

空気が変わる。
さっきまでの集団の恐怖を感じる空気が、今度は生命の危機を感じてしまう。
「一夏!何を考えている!ハイレグを着用しないなど正気か!」
「何をバカな事を!ハイグレ人間にならずに魔王様に仕えることなどできませんわ!」
「アンタ何言ってんのよ!いいからさっさとこれ着なさいよ!魔王様に失礼じゃない!」
「どうしてさ!?ハイグレ人間になれるんだよ!」
「いったいどうしたのだ嫁よ!?魔王様に仕える機会を棒に振る気か!?」
ハイレグを着ない俺をまるで異常者のように皆が責める。
異常なのはみんなの方だ。
「おかしいのは皆の方だ!宇宙人に洗脳されて、おかしくなってるんだ!目を覚ましてくれ!
こんな変態みたいなことをさせる…」
ここまでしか言えなかった。
頭に衝撃が走り、それどころではなくなったのだ。
「一夏。我々ハイグレ人間の、宇宙の支配者であるハイグレ魔王様への忠誠を示す姿、行為を変態と言うか。愚かな。
お前もやはり一刻も早くハイグレ人間になるべきだ。そしてハイグレ魔王様の偉大さを知らねばならん」
右手で拳骨を振り下ろし、俺を黙らせた千冬姉。
左手に持ったハイレグを俺に…
「なかなか面白いことになってるわね〜」
頭上から声がする。
そこには一人の人物が中に浮いていた。
その人物は青と黄色に中央で別れた奇妙な仮面をつけ、
みんなと同じようにハイレグ水着を纏い、俺達を見降ろしていた。
だが、見ていて何か薄いような印象を受ける。
立体映像だろうか。
「「「「「「「「「「は、ハイグレ魔王様!?」」」」」」」」」」
俺を囲むみんなはその人物に叫ぶ。
どうやらこいつがみんなを洗脳した侵略者らしい。
「初めまして。って言うべきかしら。私はハイグレ魔王。貴方達の支配者よぉ♪」
仮面を外しながら奴は、ハイグレ魔王がそう自己紹介する。
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
突然始まるハイグレの大合唱。
周囲を見渡せばこの場にいる全員があのポーズを取りながら叫んでいる。
例外はない。
箒も、セシリアも、鈴も、シャルも、ラウラも、簪も、楯無さんも、千冬姉も、山田先生も……
ただひたすら侵略者に向けてあのポーズを真剣な表情で繰り返す。
俺は何もできず眺めるだけだった。この異常な光景を
「元気なハイグレね。みんなかわいいわ♪」
奴はそう言ってみんなにポーズを止めさせる。
「ラウラ」
「はっ!」
奴の前にラウラが進み出る。
「よくやってくれたわ。第三段階の『ハイグレ人間になりたがる』まで終了。
貴方のおかげで実験は大成功。私に忠実なしもべ達がこんなにたくさん増えたわ。今後はこういう侵略も楽しめそうね」
「もったいないお言葉。これも全て魔王様のお陰です」
ラウラは奴の前で跪き、会話していた。
まるでアイツとラウラに主従関係があるみたいだ。
「で、あれが織斑一夏?あなたが報告していた」
俺の方をチラリと見てラウラに尋ねる。
「はい。原因は不明ですがこの学園において唯一洗脳が効いておりません」
「ふ〜〜〜〜〜ん。なかなかいい男じゃない♪」
パチッとおれにウインク?する。
うん?なんだ今のは?何か寒気が
「織斑一夏!わかるでしょ。貴方のお友達はみ〜〜〜んな私のかわいいしもべになったわ。
あなたも諦めてハイグレ人間おなりなさい。かわいがってあげるわよ」
「お前男だろ!」
反射的に答えていた。
「残念でした。私はオ・カ・マ♪」
俺は精神的によろめいた。こ、こいつそう言う奴なのか。
「ま、魔王様。一夏は魔王様がお相手をする価値はありません」
「その、一夏さんは……礼儀作法などもできておりませんし…」
「そ、そうです。あいつはハイグレを理解しないバカなんです!」
「魔王様。申し訳ありませんが、一夏は……」
みんなが何か俺をこき下ろし始めた。なんなんだ一体。
「魔王様。一夏は私の嫁です。魔王様と言えどお譲りするわけにはまいりません」
力強く宣言するラウラ。
お前洗脳されてるんだよな?
あいつは一瞬だけ呆けて、笑いだした。
「凄い。凄いわ。洗脳されてるのに私に逆らうなんて、愛されてるのね貴方」
こいつは何を言ってるんだ。
「とにかく、この子たちは私のしもべ。私の為ならなんでもする良い子になったの。
この星の人間はみんなハイグレ姿なって私のしもべになるのよ。だってその方が幸せなんだから」
俺の方を向いて、宣言する。

「一夏。ハイグレ洗脳は素晴らしいものだ。魔王様に洗脳していただいた御蔭で私はこんなにも幸せになれたのだ」
「一夏さん。ハイグレ魔王様は洗脳することでこの星の生命を幸せにしようと御考えですわ。
ハイグレ人間になり、人間だった頃の愚かな考えを全て洗い流すことで、私たちは新たな生き方、
幸福を手にすることができるのですわ」
「なんであんたはそれを拒否するのよ!ハイグレ洗脳を受けないと幸せになれないじゃない!」
箒、セシリア、鈴は真剣な表情だ。とてもふざけているようには見えない。
本気で、本当に、俺も宇宙人に洗脳してもらうべきだと思っているのだ。
「大丈夫だよ一夏。洗脳は怖くないよ。ほんの一瞬だから」
「そうだ洗脳により、植えつけられる新たな価値観。『ハイグレとハイグレ魔王様への絶対の忠誠』
これが私たちの、宇宙の新たな法則、真理となるものだ」
「魔王様の支配によって私たちは幸せになれる。そう言う風に洗脳してもらえるの」
「ハイグレ魔王様という宇宙で最も偉大な存在に仕えることができるのはハイグレ人間だけ……
人間のままじゃ魔王様のお傍にはいられないのよ。ハイグレ人間になれば、ハイグレ洗脳を受ければ……
私たちはずっと幸せでいられるわ」
さらにシャル、ラウラ、簪、楯無さんが畳みかける。
いかにハイグレが素晴らしいか、洗脳が素晴らしいか、そして侵略者、ハイグレ魔王が偉大な存在であるか……
怒りしか感じない。許さねえ!ハイグレ魔王!よくもみんなを!
こんな、こんな、人の意思を塗りつぶすような…
「織斑君。勘違いしているかもしれませんが、私たちは自分の意思でハイグレ人間として魔王様に仕えています。
切欠はハイグレ洗脳でした。でも、洗脳していただいたおかげで、魔王様に仕えることができるんです」
「そうだ。皆自分はハイグレ魔王様に洗脳されたという認識を持っている。
洗脳された全てのものは人間に戻りたい等という考えは持っていない。
ハイグレ人間でいたい、魔王様に仕えていたい、永遠にハイグレ魔王様のしもべでありたいと思っているのだ。
私も、みんなも、きっとこれからハイグレ人間になる者全てがそうなる。
ハイグレ洗脳は全ての者を幸せにする。例外はない」
山田先生はあくまで自分の意思だと言う。
千冬姉は人間に戻りたくないと言う。
ちくしょう。そこまで歪められてしまうのか。
「そう。例外はないわ。すべての人間はハイグレ洗脳を受けて私の支配を受け入れるの。貴方もそうなるのよ♪」
実に楽しげに、簡単に言う。まるでそれが当然の真理であるかのように。
「ふざけるな!俺はそんなふざけた格好になんかならないぞ!
それにこの星を支配する!?たかが学園一つを支配しただけで地球に勝ったつもりか!!」
俺は侵略者に怒鳴りつけた。
確かに洗脳の力は怖い。
千冬姉を始めとして学園のみんながあいつのいいなりになっている以上、
俺はもう助からないだろう。
俺もハイレグ水着を着て、あの変態ポーズを喜んでやるようになってしまうのだ。
だがそれだけだ。
地球にはまだたくさんのISがあるし、軍隊だって存在する。
この星の人間が一丸となって戦えば、きっとこいつをなんとかできるはずだ。
「学園一つ?………!?学園一つ!?そう!?そうだったわね!?
貴方達は知らないわよね!?じゃあ見せてあげるわ。ホラよく見なさい!」
俺の激昂に対して笑いながらハイグレ魔王は右手を鳴らし、空中にいくつものスクリーンを表示する。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.153 )
日時: 2017/03/26(日) 15:38:37 メンテ
名前: おもいつき

俺は海外に行った経験はほとんどない。
以前千冬姉を応援する為にドイツに行ったことがあるが。
それだけだ。
だからもし、海外の街の写真を見せられても
「これはどこの国のどの街だ」などと言うことはできない。
そんな俺でも分かることがある。
フランスの凱旋門やイギリスの時計台。
そういった有名な観光名所位はわかる。
俺がスクリーンを見て理解できたということは、
今ハイグレ魔王がスクリーンに映しているのはそう言った有名な場所のはずなんだ。
今の日本は夕方だ。ということはヨーロッパは早朝のはずだ。
件の建造物を太陽が照らしていることから考えて間違いないだろう。
建造物は俺の記憶しているものと何も変わらない。
だが、その付近に住む人々はどうだろう。
「そんな。………ありえない」
俺の口からこぼれたその言葉。
それは偽りのない本心だった。
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「ハイグレッ!」」」」」」」」」」」」」」」
スクリーンに映るすべての街。
そしてそこに住む人々はハイレグ水着一枚で。
あの、ハイグレ魔王への忠誠を示す。
自らがハイグレ魔王の奴隷であることの証。
あの忌まわしい、ハイグレというポーズを繰り返していた。
ゆっくりと動き、街の周囲を移すスクリーンには時折、服を着た人物も映る。
だが、それも一瞬のこと。
その人たちもフラフラとハイグレをしている人に近づいて行く。
するとそのハイグレ人間はポーズを中断し、いったいどこに持っていたのか、ハイレグ水着を手渡す。
ハイレグを受け取った人は即座に服を脱ぎ、裸になると大急ぎで、そのハイレグを、
ハイグレ魔王の信奉者の印を着用し、やはり、あのポーズをするようになるのだ。
まるで出遅れた分を取り戻すように力強く。
スクリーンにうつるあらゆる都市にいるのはハイレグ水着を着たハイグレ人間だけだ。
俺はそれを見て頭を抱える。
「ハイグレ魔王様。これはいったい…?」
ラウラが戸惑いを含んだ疑問の声を上げる。
「悪かったわね。貴方に実験をしてもらいながらこの星全土に電波を流しておいたのよ。
そ・し・て。ついさっきハイレグをばら撒いておいたのよ♪洗脳されたこの星の人間達は
そのハイレグに飛びついてハイグレ人間になっていくってワケ。
まあ、例外もいるみたいだけど」
「で、では……私達が魔王様の為にできることはもう……ないのですか?」
ラウラは、いやラウラだけではない。
箒も千冬姉もまわりにいるハイレグ水着人間が皆沈んでいる。
「心配しなくていいわ。この国にはまだ何もしてないの。貴方達の手でハイグレのよさを教えてあげなさい♪
ホラあそこから持って行きなさい」
ハイグレ魔王が指差した場所には大きな……コンテナだろうか?
ピンクや紫の入り混じった毒々しい感じのする金属性の箱が存在していた。
「しっかりやるのよ。私は貴方達を信じて任せるんだから。できるわね?」
「お任せください魔王様!全てをハイグレ魔王様の物に!」
「「「「「「「「「「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」」」」」」」」」」
皆はハイグレをするとコンテナに群がり、その手に様々な色のハイレグを手に持ち、走り出す。
一部はISを纏って飛んで行ったが、多くは陸路を行くのだろう。
駄目だ。そんなことを許したら、地球は本当に、侵略者の物に………。
「一夏」
「千冬姉?」
振り向いた先には千冬姉。
黒のハイレグ水着を纏い、その肢体の多くをさらけ出している。
きっと多くの男なら目がいってしまうだろう胸元、正面からは見えない尻。
全てハイレグ水着を着ているせいだ。
「一夏。もうわかっただろう。この星の全てはハイグレ魔王様の物になる。
人間は皆、ハイグレ人間となりハイグレ魔王様に仕えなければならない。
これを着るんだ一夏。そして共に魔王様に……」
優しい声。学園における厳しい教師としてではなく。
姉として、弟を導こうとしている印象を俺に与えた。
だけどそれは、人の自由意志を奪い、侵略者に地球を明け渡すと言うことだ。
そんなことは認められない。
「冗談じゃない!俺は絶対にこんなこと認めるもんか!千冬姉!
目を覚ましてくれ!千冬姉は洗脳されてるんだ!みんなを守る為に俺と一緒に戦ってくれ!」
多くのハイグレ人間達がハイレグを持って去り、一気に人口密度の減ったこの場に俺の声が響いた。
千冬姉は『ブリュンヒルデ』世界最強の女なんだ。千冬姉が正気に戻れば、こんな侵略者なんか……。
「やはり無駄か。何故人間はこんなにも愚かなのか。やれ!」
その声と同時に首元から引っ張られる感触を感じ後ろに引き倒される。
背中から地面に落ち、痛みを感じるのとほぼ同時に大勢の人間に押さえつけられる。
「いけませんよ織斑君。ハイグレ人間にならないと」
「一夏。ハイグレ魔王様は宇宙を支配する偉大な御方だ。魔王様に歯向かうことは許されん」
俺の右腕を山田先生と箒が
「魔王様に従い、全てを魔王様に捧げる幸せがどうしてわかりませんの?」
「おとなしくしなさい。ハイグレ人間になればあんたにもわかるわ」
俺の左腕をセシリアと鈴が
「ハイグレ人間になろうよ一夏。僕も一夏とハイグレがしたいよ」
「嫁よ。抵抗は無意味だ。ハイグレ人間となり魔王様に従うのだ」
俺の右足をシャルとラウラが
「一夏。きっと似合うよ」
「心配しなくてもいいわ。お姉さんがちゃんとハイグレを着せてあげるから」
俺の左足を簪と楯無さんがそれぞれ拘束する。
総勢8人。
これだけの人数に群がられ、俺は何もできない。
「どうだ一夏。白だ。これがお前のハイレグだ。これを着てお前もハイグレ人間に……。
ハイグレ魔王様のしもべとして永遠に……」
陶酔の表情を浮かべた千冬姉が白のハイレグを見せながら俺にゆっくりと近づいてくる。
い、嫌だ。俺は、俺は、変態じゃない。
「一夏」
「ち、千冬姉……。俺は…」
千冬姉が……笑った。
「お前もハイグレ人間になるんだ」
その言葉が合図だったのか、みんなの腕が俺の体、学園指定の制服に伸びた。
シャツを、ズボンをパンツさえ奪われ、裸になってしまった俺の体に
さっきの、千冬姉の持っていた白のハイレグが着せられる。
両足を通し、股間に布が当たる。
布がさらにあがってくる。腹が、胸が接触する。なんとも言えない不思議な感触に全身が包まれていく。
そして腕が通され、パチンッと音がして肩紐が止められる。
俺は、俺は、ハイグレ魔王様なんかに……絶対に……
みんなが離れていくの分かった。
表情はとても満足気だ。笑顔で俺を眺めている。
なんだよその顔は?何が嬉しいんだ?
「「「「「「「「「ハイグレ!」」」」」」」」」
「「「「「「「「「ハイグレ!」」」」」」」」」
「「「「「「「「「ハイグレ!」」」」」」」」」
「「「「「「「「「ハイグレ!」」」」」」」」」
「「「「「「「「「ハイグレ!」」」」」」」」」
なんで俺にハイグレをするんだ?それはハイグレ人間の挨拶だろ?
俺は人間……じゃないな。ハイグレ人間だ。じゃあ正しい挨拶だ。
あれ?俺はいつハイグレ人間に?
だが、考える余裕はない。
ああ。いいなあ。凄く気持ちがいい。
俺はハイレグ水着を着ることが、
ハイグレ人間になることがこんなにも気持ちいいなんて知らなかった。

【ある生徒の苦闘番外編 静かな侵攻】終わり

洗脳が光線銃ではなく直接着せることで洗脳するという手法です。
本当はもっとゆっくりとハイグレ人間が増えて行くホラーな感じにしたかったのですが、諦めました。
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.154 )
日時: 2017/03/29(水) 13:42:14 メンテ
名前: 名無しさん


キャラの心情描写が上手で凄く読ませるSSですね。
洗脳の浸食感も素晴らしすぎます!
* Re: ある生徒の苦闘 ( No.155 )
日時: 2018/05/17(木) 11:38:54 メンテ
名前: aaa

久々に新作を見たいです。
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