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* ハイグレの塔(TOLink)

日時: 2018/03/02(金) 23:53:08 メンテ
名前: 牙蓮

半年以上に渡って執筆してきましたハイグレの塔シリーズも無事、完結まで辿り着く事ができました。
本作は“ハイグレポーズによる美少女バトル”をベースに様々な要素を織り交ぜてみた意欲作でしたが、一話毎に頂ける皆様の温かいコメントがとても励みに、そしてネタを編む上での参考になりました。
サラ達の冒険はこれで一区切りとなりますが、今後とも自称「ハイグレ×テイルズSS作家」である牙蓮をどうぞ、よろしくお願いします!



 (2017.06.24)
今作は連作構想ですので久々に新スレ立てました。
レイズに続きスマホゲームの“テイルズオブリンク”をベースとした多シリーズキャラによるハイグレRPG作です。
リンクの戦闘システムを活かしたハイグレバトルを繰り広げて参りますので、どうぞお楽しみに!

 (2017.12.02)
スレで「登場キャラが多いので各キャラの名前と状態を纏めてほしい」とのご助言を頂きましたので、第六層の巻末にここまでの軌跡を掲載しました。
予定通りに進めばもう折り返しを過ぎておりますので、随時更新も削除もせずこのまま幕間という形で残しておこうと思います。
次層も鋭意執筆中ですので、今しばらくお待ちください。
 
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* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.38 )
日時: 2018/01/13(土) 22:23:41 メンテ
名前: 牙蓮


「えっ、えっ? 本当に還っちゃったの――――きゃあぁっ!?」

  ドシィィィィィン――

 呆然と立ち尽くすカナの言葉を遮り、突如、大地を揺るがす轟音が響き渡る。まるで超パンスト兵が伏した時を思い起こさせる、腹にズンと来る振動。ハラマキレディの退場によって浮力を失った三枚のアクリル板が成す術なくその場に倒れ込んだのだった。

「うわっ、下から見るとすっごい食い込み……。――って、まずは助けないと!」

 率直な感想は一先ず心に留め置いて、サラは仲間達と共にアクリル板の側へ駆け寄る。回転の慣性に従い倒れた結果、アリーシャ達はいずれもうつ伏せの恰好で各々の個性が光る長髪を存分に見せつけていた。
 彼女達の体から離れ、ただ一本の髪の毛が金糸のようにアクリルの中へ浮いている様は超常的な芸術性を感じさせる。だからといってこんな姿にされた仲間を放っておく事などできるはずもなく、彼女達はあらゆる手を尽くし救出を試みる。

「――コルムントワルツ!」
 「――メディテーション!」

 すっかりこの塔の理に馴染んだディグリータ、ティアはオーラの流れを巧みに引き出し、アクリルの排除を試みる。しかし傍目には何の成果も見られず、当人達も得物を手放しながら唇を噛み締めるしかなかった。

「くっ、傷一つ付かぬとは……」
「回復どころか、状態異常を解除した手応えすら感じられないわ……」
「そんなっ! 一体、どうしたら――」

 斬撃もダメ、打撃もダメ、果ては回復術すら効果なし……。そんな八方塞がりの状況に重苦しい空気が漂うが、ふと無邪気な声がその風向きを変えていく。

「――あれ、何かしら?」

 小首を傾げながら指差すカナに釣られて出口へ視線を向けると、扉に添うように置かれた厳つい鉄の塊が目に入る。

「これは音機関? ――いや、それに類する異世界の機構か」

 真っ先に駆け寄ったリグレットが周囲を見回し、操作盤らしき凹凸へと手を沿える。すると幾度かの起動音の後に、ゴオッという重厚な調べがサラ達の心を震わせた。

「リグレットさん! この機械って、まさか――」
「あぁ、どうやら“アクリル石化”の解除装置のようだ。奴自身もこれは“実験”だと言っていたように、不測の事態に備えて準備していたのだろう」

 彼女の冷静な分析に、仲間達からも歓声が上がる。しかしそんな雰囲気にも決して流され浮かれる事無く、リグレットは淡々と文字盤を叩き情報を集めていく。

「それじゃあ私はこの装置の使い方を確認しておくから、まずはアリーシャをここへ運んできてくれるかしら?」
「はいっ!」

 教官の指示に従い、八人のハイグレ美女は再びアリーシャを閉じ込めたアクリル板へと戻り周囲を取り囲む。改めて近くで見ると本当に、セットされた縦ロールヘアがお姫様って感じで憧れちゃう! 絶対にここから助け出してまたガールズトークに花を咲かせようと、決意を新たにサラは元気よく仲間達へ合図を出す。

「じゃあみなさん、行きますよ! ――せぇーのっ!」

  ゴトッ……

 普段から前衛として鍛え上げたサラ、コハク、ディグリータ、エィンシアが四隅を担当して持ち上げられたアクリル板はアリーシャを内包しているにも関わらず、割とすんなり膝丈くらいまで浮き上がった。そして互いに目で示し合わせると、サラ、コハクに先導され部屋の隅へと慎重に進んでいった。

「よし、こちらの準備は完了した。後はアリーシャをそこのベルトコンベアの上に、セットしてくれ」
「分かり、ましたっ」

 とはいえ持ち運ぶとなれば、やっぱり重い……。息を切らしながらも何とか台座の麓まで辿り着き、リグレットの指定したポイントへ無事にアリーシャを送り届ける。

「では、これより処置を執り行う。――貴方達も、巻き込まれないよう十分注意しなさい」

  ――ピッ

      ゴオォォォッ――

 つまずきかけたカナを見てそう付け加えると、リグレットは開始ボタンへ手を掛ける。直後、ブザー音と共にアリーシャを載せた台座が回転を始め、機材の脇に開いた漆黒の大穴へ彼女を呑み込んでいった。

「教官を信用してないわけじゃないけど、中の様子が見えないのは不安になるわね」
「そうだね。こんな事ならちゃんとリチアに機械の使い方、教えてもらっとけばよかったな……」

 ティアやコハクに限らず、技術を持たない少女達はただ不安気な面持ちで見守る事しかできない。そんな彼女達に気を利かせ、リグレットは幾度か操作盤を叩くと彼女達を呼び寄せた。

「大丈夫よ。解除は滞りなく進んでいるわ」

  ギュイィィィィン――

 画面には先程までの複雑な数字の羅列とは異なり、アクリル板の見取り図が映し出されている。そして下部中央に踊る“切除20%”の文字が、サラ達の不安をホッと拭い去ってくれた。

「この音にそして、“切除”って……。ずいぶん原始的な方法で処理しているのね」

 身も蓋もない二コラの感想に思わず笑みが零れる。しかし刃物で削り取るという“原始的な方法”は着実に成果を挙げているようで、アリーシャ自慢のロールヘアを覆うものは既に粗方処理されたようだった。

「じゃあ、フィリア達も運んできてもらえる? 一刻も早く、あの中から助け出してあげましょう」

  『はいっ!』

 穏やかな空気の中、少女達は明るい返事を響かせ広場の中央へと戻っていく。みんなで力を合わせれば、きっと何だって乗り越えられる! そんな希望を胸に抱いて、再び十二人で笑い合うため身を引き締めるサラであった……。










 ――しかし、彼女達はまだ知らない。ハラマキレディが何故、このような親切設計のアフターケアを準備していたのか、その本当の理由を……。



 …………
 ……
 …









  ――彼女らが第七層を攻略した、ほんの数刻の後……



 次元を隔て、遠く離れたある惑星において、一つの企画展が開催されていた。この星の文明と成り代わったハイグレ文化を象徴する一大施設、“侵略記念博物館”。新たな主人ハイグレ魔王と彼が率いるハイグレ魔王軍の功績を分かりやすく顕示するため建造された、今や誰もが知る超人気のスポットにおいてこの度新たな展示品がお披露目されたのだった。

  『ハイグレ騎士姫』
  『ハイグレ神官』
  『ハイグレドジっ娘』

 数々のハイグレオブジェが並ぶ空間の最奥に据えられた、三枚のアクリル板作品。その中でアリーシャは見事なハイグレポーズを披露し、フィリアは敬虔な祈りを捧げ、そしてコレットは処理された腋を見せつけ人々の目を楽しませていたのだった。
 解除装置の造りが原始的であった所以は、切断に細かな採寸が必要であったから。様々な寸法を測ると同時に、あらゆる角度から彼女達のレプリカ情報を抜き取り纏め上げ、この遠く離れた魔王軍の拠点へ送信し複製できるよう仕組まれていたのだった。その結果、彼女達と瓜二つのハイグレ人間達は生ける彫像としてアクリル板の中で埋め込まれ、無様な姿を魔王軍の戦利品として晒す事となる。

「へぇ、この像のモデルは騎士? 姫? だったのね、ププッ! こんな必死になっちゃって、生前のプライドとか何もなかったのかしら?」

 「随分熱心に祈ってるみたいだけどよ、こいつ。頭の中は絶対『食い込み気持ちいい〜』だけだぜっ!」

「まぁこの娘ったら、腋なんかアピールしてはしたない! こんなハイグレの素晴らしさも分からない娘なんて、娼婦にでもすべきザマスわ!」

 何処の誰とも分からない異星人から、謂れのない罵りを受けるアクリル石像達。彼女達の責め苦はこの星が滅びるまでの間、いや、ハイグレという文明が滅びない限り未来永劫続くのであった……。









* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.39 )
日時: 2018/02/03(土) 22:31:47 メンテ
名前: 牙蓮






     第八層 冷酷非情なホモ




* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.40 )
日時: 2018/02/03(土) 22:34:28 メンテ
名前: 牙蓮


  カツッ カツッ カツッ――

 階段を上り詰めた先に広がる、平坦な踊り場。次なる戦地へと誘(いざな)うこの門前の空間において、甲高いヒールの音が幾重にも重なり響き合っていた。

「いよいよ、第八層……。あと少し、よろしくお願いします!」

 平地へ踏み入れ一息つこうと荒れた息や食い込みを整える仲間達の間を練り歩き、サラは盛んに士気を昂らせていく。地上階で示された地図によれば、確かゴールはすぐ目の前にまで迫っているはず。そんな彼女の意図を察した乙女達一人ひとりからも威勢のいい言葉が次々と返されてくるが、唯一最前列の三人だけは押し黙ったままであった。

「?? アリーシャさん、大丈夫ですか?」

  「………………」

「あの〜、アリーシャさ――」

  「ひぃっ!? ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 呼び掛けにも全く応じない彼女を不審に思い、軽く肩に触れた瞬間状況は一変する。アリーシャはまるで何かに怯えるかの如き甲高い悲鳴を上げたかと思えば、一心不乱に股を開いてただハイグレポーズを繰り返す。
 艶のある肌はほんのりと気色ばみ、湿った布地にはくっきりと淫猥な割れ目が浮き立って見える。その姿からは塔に入ってからも騎士として、王族としての身だしなみに人一倍気を付けていた彼女の面影など微塵も感じられず、サラはやり場のなくなった右手を上げたまま呆然とする他なかった。

  一体何が、アリーシャさんをこんなに駆り立てているんだろう……?

 自分達の知らない所で、――あのアクリル板の中で何かされたのだろうか? だとすればフィリアやコレットといった他の仲間者は、大丈夫なんだろうか? そんな疑問が次々とサラの頭に浮かんでは消え、グルグルと渦巻いていくものの、反対に体は自然と動き出していた。

「アリーシャさん!」

  ギュッ……

「大丈夫、もう大丈夫ですから……」

 我を忘れて痴態を晒し続ける姫騎士の背中を、サラは夢中で抱き締める。日々の鍛錬の中で鍛えられた彼女の体はびっしょりと汗ばんでおり、恐怖のためか緊張のためか、絶えず小刻みに震え続けていた。

「みんなここにいますから……! アリーシャさんはもう、独りじゃないんですよ!」
「あ、あぁ……」

 互いの薄布一枚ずつを挟んで、うら若き少女二人が密接に肌を重ね合う。その穏やかな温もりは未だ石化したままのアリーシャの心に雪解けをもたらし、足刳へ添えられた両腕もゆっくりと引き剥がされていった。

「大丈夫ですか?」
「――あぁ、ありがとう。私は本当に、あそこから帰って来られたんだな……」

 我が身を抱き締めるサラの手をアリーシャも強く握り返し、二度と離すまいと一指一指ギュッと絡ませていく。ハイレグ水着越しに伝わる彼女の体温がアリーシャに生の喜びを思い起こさせ、その顔には一人の少女としての微笑みを取り戻させていった。

「すまない、また迷惑をかけてしまったな……。そういえば、フィリアとコレットは大丈夫なのか?」
「はい! コハクさん達が、駆け付けてくれたみたいです」

 太陽のような笑顔で語るサラに促されて視線を巡らすと、それぞれコハク、マルタに支えられたフィリアとコレットがしっかりと抱き合う自分達を温かな瞳で見つめていた。当然、辺り一面全員の視線がアリーシャ達二人に集中……。その状況に、急に気恥ずかしさを覚えたアリーシャは自らサラの体を離してわざとらしく咳払いを響かせた。

「――よし! 私達はもう大丈夫だから、先へ進もう。みんな、準備はいいな?」
「はいっ!」

  ギィィィ――

 元気な返事を背に、アリーシャは力強く扉を押し開けていく。その反対側ではコレットとフィリアも力を合わせて道を切り拓いており、たとえまだ万全でないとしてもその事実を傍目にはまるで感じさせない。
 さすが、英雄石に名が刻まれるだけの方々……。私も頑張って、この人達のように強くならなくちゃ――! 彼女達の姿にまた新たな誓いを胸に秘め、持ち場である最後尾へ元気よく戻っていくサラであった……。









* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.41 )
日時: 2018/02/03(土) 22:36:53 メンテ
名前: 牙蓮

 扉を抜けた先にはこれまで通りの桃色空間が広がっているものの、その趣は少々異なっていた。地上階から一貫して次層へ続く階段の前に据えられていた、重厚な扉が何処にも見当たらない。あるのはただぽっかりと大口を開ける洞穴のみであり、その両端では門番にしては何とも頼りないハラマキレディ達を象った彫像が並び立つ。
 そして入口のサラ達からも僅かに伺える、次層への階段……。螺旋を描かずスッと直線的に伸びていくその姿は塔という構造物の終焉を暗に示しており、彼女達にこの旅の終わりをはっきり意識させた。

「ったく……。いくらハイグレ魔王様の命令とはいえ、何でこの俺様がハラマキレディースの実験台に付き合わなくちゃいけねぇんだ……」

 そんな階層の雰囲気に緊張した面持ちを浮かべる少女達の心など露知らず、部屋の中央に突っ立った大男は女々しい愚痴を零していく。

「やい、モルモット共! この俺、Tバック男爵様が直々に相手してやるんだから、ありがたく思いやがれ!」

 手の甲だけを包むオープンフィンガーグローブに守られた右手を突き出し、サラ達をビシッと指差す超パンスト兵にも劣らぬ巨漢、Tバック男爵。顔のほぼ半分を隠す豊かな髭面にサングラス、そして巨大な肩当てで武装したいかにも武人らしい風貌が目に留まる一方、Tバック一枚という無防備な下半身に女性だけのパーティには生理的な嫌悪感が漂う。

「はぁ……。やはり、“モルモット”か」

 そんな中リグレットは深い深い溜息を零し、憶する事無くTバック男爵に事の真偽を問いただす。

「私達を弄んだあの術はただの酔狂などではなく、お前達なりに何らかの目的があっての事だったのだな?」
「おうよ! 新たな刺激を欲するハイグレ魔王様にお喜び頂くため、ハラマキレディースの奴らが開発した新型洗脳法って奴を試し――」

  『――Tバック!』

    ズガァァァァンッ!!

 刹那、流暢に語るTバック男爵の言葉を遮り、人工の雷が炸裂する。同時に脳内へ響くハイグレ魔王の甘ったるい声とは対照的に、鉄が焼け焦げた刺激臭が辺りへ立ち込め一同の顔を歪ませる。そんな“次はないわよ”という主人のメッセージをまざまざと突き付けられ、さすがの彼も口を慎み殊勝な態度を示す。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――申し訳ありません、ハイグレ魔王様。すぐにこいつらを地上階へ追い返しますので、見ていてください!」
『ホホホッ、期待してるわよ♪ じゃあアタシは最上階でゆっくり見物させてもらうから、しっかりやりなさい。オホホホホッ――』

 耳障りな高笑いと共に、異質な存在が頭の中から急速に後退していく。ハイグレ魔王の気配が完全に消え去るとみるや、Tバック男爵は一転して当初の傲慢さを取り戻し、高々と宣言する。

「おい、おめぇらっ! もう話す事は何もねぇんだから、さっさと地上階に戻りやがれっ!!」
「させません! 私達は必ず、このダンジョンをクリアしてみせますわ!」

 何とも頭の悪そうな彼の口上へ、ただ一人フィリアだけを除いてまともに取り合おうとする者はない。しかし、むさ苦しいお尻を締め上げているTバックからやたらファンシーな見た目の銃を抜き出した途端、たちまちピリッとした緊張感がパーティに走る。

「みんな、油断しないで! 正面からだけとは限らないわ!」

 ティアの言葉に全員が頷き、全神経を研ぎ澄ましていく。対するTバック男爵は未だ余裕の笑みを崩さず、左手をもゆっくりとグリップへ添えて万全の構えを整える。

「ガハハハッ! これでも、喰らいやがれぇっ!!」

  カチッ

    ――ドォォォンッ!

 Tバック男爵が引き金を引いた瞬間、轟音が広場に響き渡る。しかし、その発射音は彼が入念に構える拳銃の銃口からではない。
 変化が起きたのはもっと、上。彼の頭よりも更に高い位置へ突然、筒状の砲身が現れたかと思うとU字型の兜と合体して即席の大砲を築き上げる。そしてその砲口からは目や口といった擬人化イラストがあしらわれしふざけた砲弾が撃ち出され、サラ達目掛けて火を噴き駆け出したのだった。

「――ッ!?」

 ハラマキレディ達のフェイントに比べれば多少見劣りするものの、不意を突くギミックにアリーシャ達最前列の戦士は迎撃の股を開く。しかし体格のいいTバック男爵の頭頂部から放たれた弾丸は彼女達の遥か頭上を過ぎ去っていき、真っ直ぐ壁面へと向かっていく。

「あれ? 故障か――」

  『キャアァァァッ―!!』

 これでもうだいじょぶとコレットが何気ない言葉を述べようとした刹那、後方から悲鳴が立ち上る。

「ブハハッ、引っ掛かってやんのぉ〜!」

 嘲笑するTバック男爵のサングラスに映り込む姿は、哀れな三人の少女達。一直線に壁へと突き進むかに思われた擬人化砲弾は丁度最後列に並ぶサラ、コハク、マルタの頭上に差し掛かった瞬間、その瞳から桃色の光線を眼下へ向け発射したのだった。

「ハラマキレディースの実験にも参加せずに、のうのうと後ろで休めるなんて思うなよ! これでお前達も俺様の手下だぜ、ガハハハハッ!!」

 まさに壁面スレスレという地点で行われた、死角からの不意討ち。唾をまき散らし破顔するTバック男爵の言葉通り、彼女達はもはや光線による処置を受け入れる他はない。ハイレグ水着に包まれた体を強制的に浮き上がらされて、赤青と点滅する光の中で両手両足を伸ばして叫び続ける。そんな屈辱の数秒間を終えて再び地に降り立った彼女達を迎えたものは、驚きに見開かれた九人の仲間達の視線であった……。










* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.42 )
日時: 2018/02/03(土) 22:40:12 メンテ
名前: 牙蓮

「みんな、どうした――――きゃあぁぁぁぁっ!?」
「えっ、えっ? えぇっ!?  なんで私、こんな格好なの!?」
「ってか、ビキニとかないのっ!? さすがにこれだけとか、あり得ないでしょ!」

 ゆっくりと見下ろした自らの姿に困惑し、うぶな乙女の如く胸と股元をがっちりガードするサラ、コハク、マルタの控え組三人。まさか隊列にすら並んでいないこの場所を、半ば禁じ手のような形で狙われると思っていなかったばかりか、こんな格好に着替えされられるだなんて……。光線による強制早着替えは地上階で着せられたハイグレ水着を剥ぎ取り、彼女達の意志を無視してTバック男爵とお揃いの真っ赤なTバック水着ただ一枚だけの姿へドレスアップしたのだった。

「まさか、水着で男装させられるなんて思いもしなかったわ……。縛られただけの私達なんて、本当に可愛い物だったのね」
「そ、それに後ろから見たら本当に丸見えで……。これじゃあもう、裸よりもむしろ……」
「でも、前から見るとまだブルマみたいじゃない? これならまだサラにとってはいつもの――」
「カナッ!? ――さすがに今は、何も言わないでやろう……」

 しみじみと同情する二コラに、体を捻ったコハクの姿を見てより一層困惑するエィンシア。そしてカナが放ちかけた一言をアリーシャが慌ててフォローするように、動揺はパーティ全体へ確実に拡散していた。
 そんな中またもや空気を一切読まずに、混乱の種は投げ込まれる。

「ほらほら、お前達は俺様付のハイグレ人間なんだから、さっさとご主人様に挨拶しやがれ!」

  「うぅ……。    ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
  「そんな……。   ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
  「さいっあく……。 ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

    プルンッ プルンッ プルンッ

 Tバック男爵の放った一言は凄まじい支配力を発揮し、裸に等しい格好のサラ達は今は無きハイグレラインを名残惜し気に自らの体へ刻み込んでいく。ハイレグ水着だと辛うじて隠れていたおへそや胸の膨らみすらも全て、今や白日の下に晒されている。ポーズの度にプルンプルン跳ね回るコハクの形のいい乳房が、そして彼女とは対照的にピンと張った乳首だけが上下するサラとマルタの未発達な体が野武士のような男の視線に幾度となく犯されていった。

「ブハハッ、全く無様な奴らだなぁ〜。もっと俺様を楽しませてみろ!」

 「ハイグレッ!! ハイグレッ!! ハイグレッ!!」
 「ハイグレッ!! ハイグレッ!! ハイグレッ!!」
 「ハイグレッ!! ハイグレッ!! ハイグレッ!!」

 彼の言葉に呼応し、よりダイナミックな全裸ポーズを披露するTバック乙女達。余りに凄惨な光景に言葉を失う仲間達を始め、その姿は見る者の心を大きく揺さぶっていったのだが……。

「はぁ、やっぱりしっくり来ねぇな……。ったく、女のハイグレなんかいくら見たって、何がいいんだかさっぱりだぜ。――ほら、お前ら。もうやめていいぞ」

 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハァ――」
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハィ――」
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグ――」

 敵対する者達からは“冷酷非情なホモ”として恐れられている評判通りに、Tバック男爵はすぐに目の前の女体から興味を失い、投げやりな命令を少女達へぶつける。そんな彼の気まぐれに振り回された三人は俯いて息を整えるとブルブル肩を震わせるばかりであり、義憤に駆られたカナが代わりに声を張り上げた。

「あなたねぇ! 女の子の体を何だと思ってるの!? そんな分からず屋は私が絶対に、成敗し――」
「カナ、待って……」

  ブオッ――

 いつもの決まり文句で宣戦布告しようしたところ、サラの呼び声が彼女を押し留めた。決して大きくはなかったのによく通る、不思議な声色……。そんな疑問を頭の片隅で感じた直後、背後で爆発的なマナが膨れ上がりカナは慌てて振り返る。

「みんな。ここは私達に任せて……」
「あ、あぁ……」

 普段の快活さはすっかり鳴りを潜め、ドスの効いたコハクの一言に名高い“革命の女王”ディグリータまでもが二つ返事で首を縦に振ってしまう。今や三人の体を濃青のオーラが埋め尽くさんばかりに包み込んでおり、禍々しい輝きを以て彼女達の怒りを具現化させていた。
 そして、天より飛来せし得物を手に取る際も全員が尽く無言を貫き、さすがのTバック男爵も気圧されて半歩後ずさる。
 刹那――、

「やあっ!」
「――ッ!?」

 裂帛の気合いと共に、サラの姿が掻き消えた。その光景に一言かけようと歩み出ていたカナさえも唖然とする他なく、全員が彼女を追って視線を巡らせる。
 そんな仲間達の視線が追い付くよりも前に、顔を引きつらせるTバック男爵へ向けて褐色の残像が連なり像を結んでいく。限界を超えた力を発揮してまさに文字通りに、華奢なサラの体が彼の眼前へと“湧き出て”きたのだった。

「――鳳華閃皇衝!」
「なっ、なにぃっ!?」

  ピキッ――!

 鳳凰の闘気を纏った光剣が神速の嘴の如く突き出され、Tバック男爵の左肩を抉る。鋭い破裂音と共に異界の肩当ては粉々に砕け散ってしまい、頭三つ分はあろうかという巨体が呆気なく仰け反らされる。

「――女の敵はっ! 絶対にぃっ!!」

  ザンッ ザンッ ――ドガッ!

 剣を引きつつすぐさま後ろへ跳躍したサラと入れ替わるようにマルタが空いた懐へ潜り込み、スピナーを縦横無尽に振り抜く。無防備な胸当てには次々と刀傷が刻み込まれていき、Tバック男爵に息つく暇も与えない。
 そして、唯一ハイグレ魔王に奪われなかった“お気に入りの靴”から放たれし特技、“燕舞斬”のラストを彩る渾身のサマーソルトキックが毛むくじゃらな顎を捉え、天まで届けとばかりに蹴り上げた。

「ぐ、ぐえぇっ……」

 呻きと共に飛び散った唾が自らの頬を汚そうとも、拭き取る余裕はない。フラフラと鞭打ちになった顔をやっとの思いで持ち上げたTバック男爵の目の前にはもう、三人目の鬼神が迫っていた。

「――許さないんだからっ!!」

  ブルンッ

 先の二人から闘気を受け取ったコハクが、美乳を弾ませスッと右足を引き上げる。目の前で見せつけるように、うら若きTバック美女が一本足で股布をグイグイ食い込ませ、剥き出しの胸をブルンブルン振り乱す、この状況。並の男であれば呆けて見惚れる他ない絶景においても、元来の趣味嗜好に加え命の危機にまで追い込まれた今のTバック男爵にとっては、なりふり構ってなどいられなかった。

「やっ……やめろぉ、やめてくれっ!! た、助けてく――」
「――砕心脚!!」

  ズガアァァァァァァァンッ――!!











* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.43 )
日時: 2018/02/03(土) 22:42:55 メンテ
名前: 牙蓮

 懸命の命乞いも虚しく、熊の如き大猪を沈めたという伝説の足技がTバック男爵の鳩尾を捉える。直後、彼の巨体は彗星の如き一直線の軌道を描いて広場の端まで飛翔していき、けたたましい破壊音を響かせる。
 これまで何をしても壊れなかった、ハイグレの塔を彩る異界の装飾。それがまさに肉弾として飛び込んだTバック男爵の質量によって見るも無残に崩れ落ちてしまい、立派なハラマキレディ像はただの瓦礫の山と化してしまったのだった。

  「…………」

 隣の像と見比べると丁度股下辺りの高さまで積み重なった“トラッシュマウンテン”からは、呻き声一つ聞こえてこない。これまでの異星人達と同じく既にハイグレ粒子へと還っていったのか、はたまたハイグレ魔王にいびられ鍛えられた体が災いして未だもがき苦しんでいるのか……? 彼の末路を知る術はもはや残されていないものの、彼女達にとってはそれ以上に優先すべき事があった。

「ってか、私達の水着はどうなったの!?」
「――マルタさん、あれ!」

 サラが指差した方向へ目を向けるや否や、三人は脱兎の如く駆け出した。残された彫像の台座へ無造作に並べられているのは、三色の薄布。そのすぐ側まで辿り着くと誰の目を気にする事も無く忌々しいTバック水着を脱ぎ捨て、内側にほんのりと湿り気が残るハイレグ水着を愛しそうに抱き上げた。

「やっぱり、これが落ち着きますね!」

 慣れた手付きでクシュクシュに縮めた水着を持ち上げ、秘裂へ宛がったサラが嬉しそうに語る。その顔はいつもと変わらない、快活な少女の笑顔に相違ない。しかしTバック水着からハイレグ水着へと、公開露出生着替えを行っている今の状況においては酷く違和感を抱くものであった。

「……んっしょ、と。この感覚、もう癖になっちゃってるのかも」

 ピタッと張り付いた布地へ胸の果実を押し込んだコハクが、恍惚の吐息を漏らす。その先端にはピンとした尖塔が突き出ているというのに、それを隠す素振りすら微塵も見せない。

「最初は色々あったけど、ここまで乗り越えてきた証でしょ、それ! そんな事より早く“アレ”、始めましょ?」

  パチンッ パチンッ

 小気味よく肩紐を打ち鳴らして着替えを終えたマルタが、二ッと八重歯を輝かせる。その笑顔にサラとコハクも二つ返事で答え、着替えという重労働を強いられた体を労わる“整理体操”を始めたのだった。

  「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
  「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
  「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 腰を包む布地に健康的な皺を何度も生み出しながら、サラ達はハイグレポーズを繰り返していく。その顔は先程Tバック男爵に命じられて行った“Tバックハイグレ”などとは比べ物にならない程の、満面の笑みで満たされていた。

「やっぱり! ハイレグ水着でのハイグレポーズが落ち着きますね!」
「うん! これでどんな相手が来てもまた、ボコメキョにするよ!」
「でも、そろそろ終わりにしないとマズくない? みんなを待たせても悪いし」
「そうですね」

 マルタの提案に頷いた彼女らは両腕をクロスさせ大きく沈み込む。そして、高々と勝利を告げる、特大のハイグレコールを広場に木霊させたのだった。

  『ハイグレエェェ〜〜ッ!』



 …………
 ……
 …










「いよいよ、みたいですね……!」

 数々の試練を乗り越えてきた十二人のハイグレ乙女達は、第八層の広場を超えて次層へと続く階段の前に並び立っていた。これまで通りのパターンに従えば再び螺旋状の廊下が待ち受けているはずなのだが、今回は違う。等間隔に据えられた灯りが遥か彼方まで一直線に連なっている、無限の上り階段が真っすぐにサラ達の行く手を指し示していたのだった。

「この先に、ハイグレ魔王が……。何だか不安になってきたわ」
「心配するな。みんなで力を合わせてここまで上ってきたんだ。最後まで我らの意志を貫いて見せよう!」

 震えるエィンシアの肩をポンと叩いて語る、アリーシャの力強い言葉に仲間達も次々と頷いていく。

「うん! みんなと一緒なら、どんな事も怖くない!」
「“勇気は夢を叶える魔法”……、私も頑張らなくちゃ!」
「えぇ。私達の平和な日常を、取り戻すために!」

 コハクが、マルタが、フィリアが発したそれぞれの決意を受け、コレットも自らの想いを形にする。

「そだね……。それにもう、誰も私達みたいな間違いは繰り返して欲しくないから。こんな所に迷い込んで犠牲になっちゃうなんて、絶対ダメだから……」
「そうね。復讐する心すら奪おうとする存在を、私は許せそうにないわ」
「同感だ。人の意志は人に委ねられるべきだと私は思っている。私は、私の信念に従ってこの戦いを終わらせる!」

 二コラとリグレットの咆哮が、少女達を奮い立たせる。その思いをいざ行動に移すべく、二人の軍人が進軍の狼煙を上げた。

「後ろは心配するな。そなた達は、そなた達の道だけを見据えて進みなさい」
「行きましょう! あなた達の未来を、ハイグレ魔王達に書き換えさせたりはしないわ!」

 ディグリータとティアに背中を押されたカナが、先頭に躍り出る。永遠の牢獄から還ってきたこの少女はあの時と変わらない笑顔でサラの手を取り、変わらない声で語りかけた。

「さあ、行きましょう、サラ! みんなでゼファー達の所へ帰るために!」
「うん!」

 差し出された手を握り返し、サラも元気よく段差を踏みしめる。そんな少女二人を後押しし決意に満ちた表情で見守る英雄達を引き連れ、十二人の戦士達は最後の舞台へと歩を進めていった……。









* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.44 )
日時: 2018/03/03(土) 00:00:42 メンテ
名前: 牙蓮






     最上層 異界の魔王




* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.45 )
日時: 2018/03/03(土) 00:02:49 メンテ
名前: 牙蓮


「…………っん、プハァ〜!」

  カラン カラン……

 “毒と薬は表裏一体”という言葉は、このアイテムのためにあるのだろうか? まるで絵の具をそのまま溶かしたかのような水色の液体が怪しく波打つ薬品、ライフボトル。生と死の狭間を彷徨う者をも引き戻すという、驚異の活力を秘めたこの秘薬を一気に飲み干した天界の妖精リッピは大きく息を吐きしみじみと呟く。

「これであと少しばかり、持ち堪えられそうでございます……。お二人共どうかあともう一息、頑張ってくださいませ!」

 すっかり傾いた西日で茜色に染まる木目調の床の上をリッピが手放した空き瓶はコロコロと転がっていき、乾いた音を立てて止まる。テーブルの脇には今し方ストッパーの役割を果たした容器を始め、これまでに飲み尽くされたライフボトル、エリクシール、オベロナミンCといった様々な回復アイテムの残骸が山のように積み重なっている。

「はぁ……。今日一日だけで一体、どんだけ飲み食いしてんだ俺達? 軽く数万ガルドは超えてそうだな……」

 ぼんやりとした頭でザっと数えてみただけでも、頭が痛くなってくる。やれやれと首を振って思考を切り替えるとゼファーはゆっくりオレンジグミを頬張り相棒へ語り掛けた。

「おい、アレン。アイテムの残りって、あとどれくらいあるんだ?」
「えっと……、ボトル系は今リッピが飲んだ分で最後だね。あとは、ミラクルグミが丁度一人一つずつあるだけかな?」

 って事はもう、そんなに余裕はないのかよ……。すっかり薬漬けとなった体を何とか支えている補給経路すら断たれてしまい、ゼファーの焦りもいよいよ大きくなってくる。

「あと一、二発で決めてくれねぇと、俺達の方がヤバいな、こりゃ……」
「えぇ……。ですが、その点に関しましてはむしろ問題ないかと思われます」

 ブルブルと犬のように身震いさせて不快な空気を一掃すると、リッピは懸命に言葉を紡いでいく。

「ここまでの道程で各層、一つずつの宝箱ドロップが確認できました。そして現在、第九層でございますから――」
「――サラ達一人ひとりに与えられる、九個目の防具になるってことだね?」

 リッピの意図を汲み取って、アレンが後を引き継ぐ。昨日例の鍵が持ち込まれたお茶会で聞いた、八千代の数値を示すという超弩級の防具の話が思い出される。それは一体どんな形状をしているのか、そもそも何故女性限定であるのだろうか? 結局、外野の自分達には何一つとしてその実態を知る機会のないままここまで来てしまったけれども、費やした資材と労力を鑑みれば是が非でも手に入れないと割に合わない。 

「まぁ、ここまで想定外続きだったとはいえ、こいつが最後のボスって事なんだよな? 頼むから、クリアまで保ってくれよ――!」

 必死に召喚の魔力を絞り出しながら、三人は額を擦り合わせて画面を覗き込む。その先ではもはや見慣れた真っ黒な画面の中央で、“通信中”の文字が規則的に点滅していた……。





  **********




* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.46 )
日時: 2018/03/03(土) 00:05:52 メンテ
名前: 牙蓮


  カツッ カツッ カツッ

 静寂の和を乱す反響音は、もはや極僅か……。永遠に続くかと思われた長い長い直線階段の終わりは、もう目と鼻の先まで迫っていた。
 一行を取り囲む空間はこれまでのショッキングピンクの鉄板から漆黒の壁面へがらりと趣を変えており、満天の星空という心落ち着く装飾が終焉の刻を思わせる。そして、その予想を現実の物とすべく、ぽっかりと口を開け待ち構えている飾り気のない白穴。

  ――たとえこの先に何があったとしても、もう迷わない!

 幾多の試練を乗り越え、仲間との絆を紡ぎ合った十二人の少女達は静かに決戦の地へと踏み出していく……。





「…………ここが、頂上?」

 目の前に広がる光景に、サラはやっとの思いでその一言を絞り出す。まず目に飛び込んできたのは、茜色に染まる澄み切った大空。塔に入ってからの紆余曲折をまさに象徴するシンボルとして輝く真っ赤な太陽が、もう間もなく地平線に差し掛からんとジリジリ高度を落としていく。
 しかし、そんな大自然に見惚れたのもほんの一瞬の事に過ぎない。地平線から少しでも目線を下げると否応なく割り込んでくる、山裾から眼下に至るまで連綿と広がる例えようもない景色に誰もが言葉を失っていた。

「なに、これ……!?」

 パーティを代表して零したエィンシアの呟きに、応えを持ち合わせている者はいない。塔の周囲へ確かに存在していたはずの雑木林は影も形も見当たらず、代わりに石塔のようでもありお城のような建物にも見える、彼女達には余りにも馴染みのない箱型の建造物が大地を埋め尽くさんばかりの勢いて立ち並んでいた。

「この様な建物、書物でも見た事ありませんわ。もしかしてここは、彼らの言っていた“ハイグレ星”なのでしょうか?」

  いや、違う……

 誰にともなく問いかけるフィリアの言葉に、サラは密かに思う。幼い頃から海ばかり眺めて培われた自慢の視力が、必死に訴えかけてくる。あの建造物の屋上や等間隔に刻まれた窓枠、更には外付けの階段といった至る所に見て取れる、ハイレグ水着を着込んだ人々。その誰もが一心不乱にハイグレポーズを取って止まないのだからきっとここはハイグレ星人の母星などではなく、彼らの魔の手に蝕まれたどこか別の異世界なのだろう……。



  ――ホホホッ! やっぱり決戦の地といったら、この場所に限るわね!



「――ッ!?」

 すると突然、耳障りな笑い声が辺りに響き、全員の視線が屋内へと引き戻される。振り向けばいつの間にか上ってきたはずの階段は姿を消しており、正六角形の地面一杯に描かれた紋様は最初からそうであったように継ぎ目一つ見られない。そして高度特有の突風が一つ吹き抜けた直後、戦乙女達の前へ赤いモヒカン頭の人物が独り足下からせり上がってきたのだった。

「あなたが、ハイグレ魔王……?」
「そうよ、ハイグレ人間サラ♪」

  バサァッ……

 サラの質問に声を弾ませると、ハイグレ魔王は颯爽と黒マントを脱ぎ捨てその姿を露わにする。引き締まっていながらもどこか優美さを感じさせる、しなやかな筋肉に覆われし青い素肌。そんな中性的な肉体にぴったりと張り付く赤いハイレグ水着の股元では、彼女達にはない膨らみが控えめに自己主張していた。

「フッ、悪趣味な仮面の下に今度は時代遅れの厚化粧かしら? このハイレグ水着にしてもそうだが、異界人のセンスというのは理解し難いわね」
「あらあら、お褒めに預かり光栄だわ♪」

 リグレットの皮肉も何のその、仮面を投げ捨てると同時にハイグレ魔王は余裕の笑みで彼女の言葉を受け流す。眉の下へ塗りたくられた桃色のアイシャドウも然ることながら、左頬へプリントされた星形のタトゥーはその存在感を一層高めている。生来の青肌と赤で統一した衣装、そして一歩も退かない堂々とした立ち居振る舞いは確かにこれまで相対してきた者達を率いる長としての風格を漂わせていた。

「まぁ、どうせならもっと華々しい場所にしてもよかったのだけど、この塔の意義を考えればこれ以上相応しい場所もないわよねぇ? ――さぁ、アタシのカワイイ子猫ちゃん達! ここまで上ってきた成果を、このアタシに見せてご覧なさい!」
「せ、成果って?」

 突然の要求にキョトンと首を傾げるコレットに対し、魔王は意味ありげな笑みを浮かべ答えていく。

「ホホホッ、そんな身構える必要なんてないワ♪ アナタ達はただ、アタシの合図に従って……」

  ――スッ

 もったいぶった口の動きに合わせ、ゆっくりと持ち上げられる青い右腕。そして――、

「――洗脳完了の証を、その身で示してくれればいいのよっ!!」

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレェッ!!』

    ビシィィィッ……


* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.47 )
日時: 2018/03/03(土) 00:08:28 メンテ
名前: 牙蓮


 茜色の大空に、清々しい斉唱が響き渡る。ハイグレ魔王が右手を振り下ろした瞬間、サラ達十二人の乙女はまるで日々練習してきたかのような一糸乱れぬ動きでハイグレポーズ三唱を披露したのだった。

「どういう事!? 体が、勝手にっ……!」
「あらあら、完璧じゃない〜? これでアナタ達も晴れて立派なハイグレ人間へ、転向できたみたいね♪」
「な、何ですってっ!?」

 衝撃的な物言いにマルタはたちまち食ってかかるものの、その姿は滑稽そのもの。肘を折り曲げてビシッと足刳を指し示した体は指一本動かす事叶わず、ただがに股姿勢を保ったまま支配者を睨みつける事しかできなかったのだから……。

「“転向”って、あんた……! 私達の体に一体、何したのよっ!?」
「ホホホッ、そんな人聞きの悪い事言わないで頂戴♪ アナタ達の体を作り変えたのは他ならぬ、アナタ達自身なんだから」

 もはや隠し立てする必要はないと見たのか、ハイグレ魔王は凄惨な笑みを湛えてハイグレポーズを維持する一行に真実を告げる。

「確かにアタシは最初、『力を分ける』とは言ったけれども、それはあくまでアナタ達が着ている“ハイグレ星製ハイグレ”だけのこ・と♪ その後アタシの言葉に従って、自分達はハイグレ人間だと勝手に言い聞かせてその通り演じ、自らのポーズで生み出したハイグレ粒子を浴びて自己暗示を本物の洗脳へと昇華させたのが、今のアナタ達ってワケ」
「くっ……。では、この塔は……!」
「そう。察しがいいわね、ハイグレ人間ディグリータ。この機構、ハイグレの塔の真の名は“ハイグレ人間自助生成システム”。ハラマキレディース達が低コストな上に色んなプレイが楽しめる、新たな洗脳アトラクションとして研究・開発してくれたのはいいんだけど、中々実践する機会がなかったのよねぇ〜。だから未侵略のまま撤退せざるを得なかったこの地へダメ元で設置して、ちゃんと稼働するか確認させてもらったってワケ。これまでにない貴重なデータの数々を取らせてくれて、どうもア・リ・ガ・ト♪」

  ――チュッ♡

「――ッ!?」

 饒舌な演説の締め括りに右腕を唇へと運び、粘っこい投げキッスを送るハイグレ魔王。その直後、サラ達の体からは急速に緊張の糸が解けていくものの、素直にそれを喜ぶ事はできなかった。
 結局の所、彼らの言う“異文化交流”とは単なる文化の押し付け合いですらなく、もっと理不尽な侵略行為そのものだったのだ! その言葉の意味を今になってようやく理解した後悔の上に、もう後戻りできない所まで踏み込んでしまっている現実がのしかかり押し潰されそうになる。でも……、

「……でも! たとえ体が作り変えられたとしても、私達の心まであなたに渡さない!」

 そう……。ここには、支え合って前に進む仲間がいる! そして、この真っ黒なスマホ画面の向こうには、帰りを信じて魔力を送り続けてくれる大切な友が待っている! そんな温かい絆を力に変えて、少女達は臆する事無く異界の王と向かい合う。

「ホホホッ、そうでなくっちゃねぇ〜。――無意識のうちにハイグレを受け入れていた“心”、ですって? そんなちっぽけなもの、このアタシが完全に握り潰してアゲルわっ!!」

  ――ドンッ!

 そんな彼女達に呼応してハイグレ魔王も闘気を昂らせていくと、中央の地面が盛り上がり円形の台座が形成される。そしてキラリと黄金色の光が弾けた直後、二振りの長剣が互いに斬り結ぶかの如く台座の真ん中で向かい合って直立していたのだった。

「どうかしら? ここまで上ってきたアナタ達に相応しい、正々堂々とした戦士の一騎討ちで決着をつけるっていうのは?」
「一騎討ち……」

 返事を待つことなく眼前の刃を徐に引き抜くと、ハイグレ魔王は余裕の笑みでサラ達に切っ先を突き付ける。相手の実力も判然としない上、用意された得物は簡素な長剣ただ一振りのみ。しかしそれら点を考慮したとしても、この戦いに挑む勇士の名は既に決まっていた。

「サラ……。私は、お前を推薦しようと思う。この戦いは確かに私達全員の戦いでもあるが、何よりリーダーとしてここまで頑張ってきたお前の手に委ねられるべき一戦だ」
「みんな一緒に、リアフィースへ帰りましょう! サラ!」
「アリーシャさん、カナ……! ――うん! みんなの想いに私、絶対に応えてみせるから!」

 力強いサブリーダー二人の言葉にニッコリと、いつもと変わらない元気な笑顔を浮かべてサラは独り歩み出る。

  ――ブゥンッ

 一思いに台座から長剣を引き抜き、くるりと掌の中で回して順手に持ち直す。慣れた動きで正眼に構えられたその刃は鈍い銀色ではなく、鮮やかなライムグリーン。サラの闘志に呼応して、ありふれた長剣は冒険者としていつも苦楽を共にしてきた愛剣、十得輝装・ブレードへと変質していたのだった。

「その一騎討ち、私が挑戦します。あなたの言葉を信じて頑張ってきたみんなにこんな酷い結末を用意するなんて、絶対に許せない!」
「ホホホッ、いいわねぇ〜。そんな眼をされると俄然、ハイグレで染め抜いてあげたくなるわ〜♪」

  ――パチンッ!

 供物のなくなった台座はいつの間にか姿を消しており、今やハイグレ魔王とサラを遮る物は何もない。そんな中突然、ハイグレ魔王が指を掻き鳴らすと、一迅の風が吹き抜け舞台は一変してしまう。



  『――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』



「えっ? ――み、みんなっ!?」

 突然響き始めるハイグレコールに慌てて振り返ってみると、確かにそこにいたはずの仲間の姿はどこにもない。彼女らは再び人間としての尊厳を踏みにじられ、ハイグレ魔王の傀儡として辱めに等しい任務を与えられる。

「何を驚いているのかしら? 一騎討ちにギャラリーなんて必要ないでしょ? あの娘達には精々、アタシ達が落っこちないよう“ハイグレ人間の壁”になって舞台を盛り上げてもらう事にするワ」

 魔王の言葉通り、十一人の仲間達はそれぞれ二人ずつペアになって六角形の一辺を塞ぐ生身の障害物として据えられていた。しかも、責め苦はそれだけに留まらない。サラ達二人の戦士を取り囲むようにハイグレポーズを捧げる彼女達は何と、ここまでの道のりで受けてきた状態異常に再び蝕まれていたのだった……。



  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

 ポタポタと母乳を垂らし、その偽りの快感に無理矢理上気させられたカナ、リグレット、エィンシア。

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

 その彼女達とペアを組まされたティアは師の横で夕日に輝くロケットおっぱいを振り乱し、ディグリータは地へ楔として打ち込まれた乳首の拘束具に絶えず白目を剥かされている。そして貧乳のエィンシアに並んで束縛された二コラは脚を震わせながら背面ハイグレポーズ、通称“背グレ”を刻んでいく。

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

 そんな彼女達以上に、マルタとコハクの姿は見ていて居た堪れなくなってしまう。この場所はザっと見てもレアバードやリアンハイトで飛翔するような超高度であり、風音だけでも凍てつく冷たさが伝わってくる。幸い今はハイグレ人間化しているからか寒さを感じないものの、上空で上半身剥き出しのTバック水着姿でハイグレポーズを続ける彼女達が気の毒でならない。

  『……………………』

 そして、最も見たくなかった姿がこの三人。アリーシャ、フィリア、コレットはまたもやアクリル板の中に埋め込まれてしまい、文字通りただの壁としてその場に佇み続けている。特にアリーシャは、サブリーダーとして端数を補う特注の大盤で一辺全てを賄わされている始末。大きさが違う事で何か不都合があるのかは分からないものの、切除により時間がかかってしまうというだけでも彼女にただただ同情してしまう……。



* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.48 )
日時: 2018/03/03(土) 00:10:30 メンテ
名前: 牙蓮


「――ホホホッ、当然アンタも負ければあの“ハイグレ人間の壁”に参加する事になるのよ〜。そうねぇ……、その時は罰ゲームらしく、更にメニューを追加する事にしましょう! Tバックだけじゃなくてお友達の母乳責めも併せて、直にハイグレ母乳を垂れ流す! あらあら、中々よさそうじゃないの〜♪」
「くっ……」

 負けてもまだ、チャンスはある――! そんな言葉に一瞬心が揺らぎかけたものの、すぐに必勝の炎が再び燃え上がる。あんな紐みたいなTバック水着をもう一度着せられるばかりか、乳首から直接母乳が噴き出す瞬間をみんなに見られるなんて考えたくもない……。すっかり汗を吸って肌に吸いついたもう一つの相棒、真っ赤なハイレグ水着をギュッと握り締めて心を落ち着かせると、周囲の喧騒から距離を置いていよいよ戦闘モードへと神経を研ぎ澄ませていく。

「………………」
「………………」

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――』

 サラウンドに鳴り響くハイグレコールの中、ハイグレ魔王も表情を引き締め左足を浮かせた独特な構えで上段を取るとキッとサラを見据える。そしてピチャッと、地に跳ねた母乳音を皮切りに、二人は一斉に駆け出した――!

「はあぁっ――!」
「イヤァッ――!」

  ガキンッ!

 異なった材質の武具がぶつかり合い、鋭い金属音が夕闇の空を引き裂く。そのまま二合、三合と彼女らは斬り結び、激しい鍔迫り合いの中でお互いの視線がバチバチと交錯する。

「ホホッ。中々、やるじゃないのっ♪」
「くっ……、そう言う、あなたこそっ。――やあっ!」

  キイィィィッ――

 刃を滑らせ無理矢理押し返すと、サラは剣を下げ一気に間合いを詰めていく。彼女の立ち回りの巧さに一瞬ハイグレ魔王も目を見張るものの、すぐに迎撃の備えを取るが、しかし――、

「――燕翔刃!」
「キャッ!?」

 振り上げられた刃から同時に疾風の衝撃波が放たれ、魔王の剣を弾き飛ばす。そして、がら空きになった胴へ光刃が颯爽と駆け込み、細長い赤線をくっきり刻んでいった。

「キイィ〜〜〜ッ、よくもアタシの柔肌に、傷を付けてくれたわねぇっ! もう手加減なんてしてアゲないわよぉっ!!」

  ガンッ ガンッ ガンッ  ギイィィィッ――

 激高するハイグレ魔王は温和な態度から一転し、鬼の如き荒々しさで刃を縦横無尽に振るう。性別の差以上に、たとえ塔に刻まれた残留思念とはいえ彼は本物の異界人、ハイグレ星人。その生来の腕力に押されサラはジリジリと後退せざるを得ないが、その瞳に宿る闘志の炎は却って勢いを増していた。

  ――この勝負、イケるっ!

 止む気配のない斬撃を右へ左へ捌きながら、彼女は密かに確信を抱く。確かにハイグレ魔王の剣技は達人と呼ぶに相応しい技量を誇っているものの、裏を返せばそれだけであった。これまでの旅路で相対してきた数々の強敵、――ニーズヘッグの“騎獅”バドラーの如き圧倒的な防御力は先の一太刀から感じられなかったし、“表裏者”シナナのようなギミックも今の所はない。そして何より……、感情を昂らせ乱したその気迫は兄シーザの生み出す、修羅をも凌ぐ闘気とは比べるまでもなかった――!

「そこっ! ――飛天閃!」
「くうぅっ……」

 ハイグレ魔王が大上段に振りかぶったその一瞬の隙を逃さず、サラは再び飛び上がり魔王の視界から消える。残像として炸裂する光の衝撃波が彼の追随を許さず、サラ得意の空中コンボがその身を襲う。

「――閃華光連刃! ――空破穿翔陣!」
「な、なにぃ〜〜〜っ!?」

 振り乱す光剣から放たれた剣閃の光弾が幾度となく魔王の体を穿ち、ベストポイントへと押しやっていく。そして間髪入れずにサラを中心に展開した魔方陣より立ち昇る、大地の奔流。マナの洗礼を浴びてよろめくハイグレ魔王を尻目に、軽やかに降り立ったサラはありったけのマナを光剣へと注ぎ、必殺の連撃を叩き込む――!

「とどめっ! 紅臥襲――」

  「――挨拶っ!」

「えぃグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 しかし、そんな絵に描いたような幕引きは呆気なく頓挫してしまう。ハイグレ魔王が発したその一言によって光剣を覆い尽くす炎は瞬く間に消失してしまい、サラは戦闘中にも関わらず愛剣片手に無様なハイグレポーズを披露したのだった。

「――タアァァァッ!」
「ッ! くうぅっ……」

 突然の出来事に驚くサラよりも素早く立ち直ったハイグレ魔王は、渾身の突きで彼女の胸元を狙う。踏ん張るには開き過ぎたがに股のままサラも何とか反応してみせたものの、結局は先の鍔迫り合いの形まで押し戻されてしまった。

「なに、今の……!?」
「ホホホッ、臣下が王に礼儀を尽くすのは同然でしょう? 精々ハイグレ流騎士道に則って、頑張りなさい♪」
「ひ、卑怯者っ……!」

 しかし、幾ら口で罵ろうとハイグレ魔王の心には微塵も届かない。その後も剣舞の流れがサラに傾きかけ自分が窮地に陥ると見るやすかさず“挨拶”を求め、戦場にはおよそ似つかわしくない醜態を強制的に晒させる。そして何の恥じらいもなくその機に乗じて押し返し、再び対等な立場からの剣劇を繰り返すのであった。

「えいっ! やあっ! たあぁっ!!」
「フンッ! ハァッ! ――イィヤァッ!!」

 もう何度目になるか分からない打ち合いに、サラは焦りを募らせる。確かに今はまだ自分の方が辛うじて優位に立てているとはいえ、その均衡はいつ崩れるとも限らない。時間を追う毎に魔王のキレとスピードは本来の平静さを取り戻し、様々な型を織り交ぜ組み合わせてくる剣技は徐々に脅威となりつつあった。

「そろそろオワリよっ! ――キエェェェッ!」
(っ! 来るっ……!)

  ――ガンッ ガンッ ガンッ

 業を煮やした魔王がスッと剣を後ろへ引いたかと思えば、体全体を使った大掛かりな回転斬りを仕掛けてくる。この型はこれまでに何度か受けたものの、連携の起点として繰り出されるのは今回が初めて。しかしそんな状況においても、サラの頭は冷静に状況を見極めていた。
 強敵達との戦いと同時に、彼女を鍛え上げてきた数々の剣豪達との手合わせ。特にアルベイン流を始めとした使い手達、複数の特技という“型”を組み合わせて奥義へ昇華させた太刀筋は彼女に豊富な対応力を授けていたのだった。

「ェェェイッ! アタァ」

  「――今っ!」

「なにぃっ!?」

 “流浪の騎士”クロエ・ヴァレンスの特技“幻晶剣”の動きをイメージして、回転斬りから次の動作へ移る瞬間を見極め、アラウンドステップで死角に回り込む。しかし、

「挨拶っ!」
「――ぇ、ハイグレッ!? ハイグレッ! ハイグレッ!」

 対する魔王はもはやサラの姿を追う事すらも放棄して、大地へ剣を突き立てたまま魔性の言葉を言い放った。結果、サラは燕翔刃の“え”の字も言わないうちに惨めなハイグレポーズを刻み、折角の優位性を手放してしまう。そればかりか、

「しまっ――」

 今し方繰り出そうとしていた技は、第一刃を浴びせたあの衝撃波を生みつつ天高く斬り上げる一撃。ただでさえ右腕に勢いを乗せていた所へハイグレポーズを命令されてしまい、危うく光剣を投げ出しそうになった掌へ意識が集中する。

(このままじゃ、胴ががら空きっ――!)

 そう思って視線を前へ戻したものの時既に遅く、深紅のブーツが彼女の腹部へと一直線に差し迫っていた。

「フンッ!」
「きゃあぁぁぁーーっ!!?」

  ズサァァァァ……




* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.49 )
日時: 2018/03/03(土) 00:12:36 メンテ
名前: 牙蓮


 強烈な蹴りをみぞおちに喰らい、サラは硬質な地面の上を滑走する。

「ぐうっ!? かはっ……」

 微動だにせず、それでいて弾力のある肉壁へ背中から叩き付けられ、肺の空気が一気に絞り出される。

  ――もう、ここまでなの……?

 圧倒的ハンデを負わされ、一撃を受けただけでもこの有様。終わりの見えない戦いの中で疲弊しきったサラの心は既に、霞む視界同様じわじわと閉ざされつつあった……。

  ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!

 しかし、そんな彼女を包み込むハイグレコールがやむ事はない。眠りを妨げるその調べに誘われゆっくりと顔を持ち上げると、生まれたままの姿でプルンプルン振り乱される形の良い乳房が飛び込んでくる。そしてその向こう側には、自らの醜態そっちのけで心配の眼差しを送るコハクの姿があった。

  ――そうだ。私はまだ、負けられないっ!

 彼女の真摯な瞳に、再び呼び起こさせる。この戦いに懸かっているものは自分の貞操だけなんかじゃない、パーティみんなの運命そのものだ! 今一度心に“約束の場所”を思い描き、ふらつく足で懸命に立ち上がると、Tバック姿でハイグレポーズを続けるコハクから想いの詰まった“スピリア”を受け取って剣闘の舞台へ舞い戻っていく。

「ホホホッ。そんな奴隷みたいな姿で、まだやろうって言うの〜?」
「………………」

 元々靴裏に細工がしてあったのか、それともただ単に蹴りの威力が凄まじかっただけなのか、サラの腹部にはブーツの裏面に刻まれた魔王の仮面を模した紋様がくっきりと残されていた。黒糸で刺繍されたかの如きありありと浮かび上がるその様はまさにハイグレの奴隷、魔王の所有物としての証。しかしサラはその程度の雑音には一切耳を貸さず、静かに思考を巡らせていた。

(どんなに追い込んでも、一瞬でひっくり返されちゃう。だったらもう、守っても仕方がない……)

  ――スゥ……

「へぇ〜?」

 魔王が見守る中、サラはゆっくりと構えを変えた。これまではあらゆる攻防に対処できるよう正段に構えていた光剣を引き戻し、肩を吊り上げるように掲げた上段からの突き下ろしの型に構え直す。

「この一瞬に……、私の全てを賭けるっ!!」
「ホホホッ、特攻でも仕掛けるつもりかしら? あぁ〜、無駄無駄! 可笑しいったらありゃしないっ! ――何だってアタシは、いつだってアンタに命令できるのよ? ほら、今すぐにだって……、ア・イ・サ・ツ♪」

  「――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 刹那、ハイグレ魔王とよく似た上段の構えは呆気なく崩れ去り、サラは忠誠の開脚を主君に捧げる。しかし――、

「――飛燕刃!」

 口の自由が戻るや否や、凛とした声が舞台に響き渡る。直後、彼女の命を受けて足刳に沿えられたままの光剣から、柄頭の先に延びるもう一つの小刃が流星の如き軌跡を描き魔王目掛けて撃ち出されたのだった。

「――っ!?」

 未だにハイグレポーズを保ったまま決行された、文字通り予備動作の一切ない奇襲攻撃。絶対的優位を信じて疑わなかったハイグレ魔王は全く反応する事ができず、頬にあしらったトレードマークの星形タトゥーを真っ二つに分断されてしまう。

「キイィ〜〜っ! 挨拶っ、挨拶よおぉっ!!」
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレェッ!! ハイグレェッ!!」

 一瞬の隙を自ら作り出しサラは勇ましく半歩踏み出ていたものの、再び魔王の魔力が彼女を拘束する。たとえ掠り傷程度とはいえ、人を小馬鹿にした奇襲戦法は確かにハイグレ魔王の逆鱗に触れた。迸る魔力にハイグレ人間の体は自然と反応し、無い胸を精一杯張ったクロスハイグレポーズで自らの急所を敵前へ曝け出した。

「くたぁばりやがぁれぇーーっ!!」
「ハイグレェッ!! ――くっ!」

 そしてハイグレポーズを続けるサラに向けて突き出される、必殺の一撃。その軌道は明らかに命のやり取りを意図しており、サラも動かぬ体を傾けて懸命に光剣で受けようとするが……。

  ガキィンッ!

    ――パリィィィィィン……

 一方的な剣戟は刹那の拮抗を生んだものの、最悪の形で崩れ去ってしまう。剣の腹で刺突を受けたサラの光剣はその衝撃に耐え切れず、まるで花弁の如き破片と化してその刀身を散らしたのだった。

「――ッ!!?」
「オホ、オホホホホホォッ!!」

 驚愕に見開かれる、サラの瞳。一方のハイグレ魔王は確かな勝利の味に高笑い、くるりと一回転するやその刃をサラの喉元に仰々しく突き付けた。

「ホホホッ、どうやらアタシの勝ちみたいね〜」
「…………」
「あら、な〜に? その不服そうな顔。何か言いたい事でもあるのかしら?」
「は、ハイグレッ! ハイグレッ!」

  クイッ クイッ……

 目の前に刃物があるにも関わらず体は勝手にハイグレポーズを刻んでしまい、切っ先に触れた喉元へ薄っすらと血が滲む。こうなればもはや、サラの意志など関係ない。後はハイグレ魔王の描いたシナリオ通りにただ、屈辱の台詞を述べるのみであった。

「未熟なハイグレ人間サラに、どうか……、鍛錬の機会を、お与えください……。立派なハイグレ人間になれるよう、“Tバック母乳ハイグレ”に、勤しみ……、ま、魔王様の御期待に応えて――」

  ――ドスッ!

「がぁっ!?」

 しかし、恥辱の口上は他ならぬハイグレ魔王自身の手によって遮られてしまう。不意に背中を小突かれたかと思えば、一拍遅れて全身に広がる鈍い倦怠感。信じられぬ思いで視線を下げた魔王の瞳には、中性的な胸部を貫き赤いハイレグ水着の中で大きなテントを張っている翡翠の凶刃が映り込んでいた。

「一体どこか――なぁっ!!?」

 驚いて辺りを見回すハイグレ魔王の瞳が、一層見開かれ揺れ動く。勝負はまだ、終わってなんかいない――! 彼の一撃で打ち砕かれたかに見えた光剣はまだその機能を失ってなどおらず、周囲に舞い散った破片はまるで時が止まってしまったかのように宙空へ静止し続けている。そして魔王が“Tバック母乳ハイグレ光線”を撃ち込もうと魔力の流れを切り変えたまさにその隙を伺って、光刃へと変化した一片の花弁が彼の胸元を刺し貫いたのだった。

「やあぁっ!」

  キイィィィンッ――!

 続けて澄んだ金属音が場を制し、白銀の長剣が放物線を描き飛んでいく。今や魔王の支配から完全に逃れ、大きく踏み込んだサラの右手には燦然と輝く輝装の刃が再び握られていた。

「冒険者の意地、見せてあげるっ!」

 無手となり立ち尽くすハイグレ魔王の目の前で、サラが天高く跳躍する。ぐんぐんと加速していく彼女の体からは膨大なマナが溢れ、時の流れから隔絶された破片達も呼応して花吹雪の如く乱れ飛ぶ。そして、最高点であの突き下ろしの構えを取った瞬間、周囲に浮かぶ花弁の刃は一斉に彼女の握る光剣と同質の刃へと変じ、切っ先をズラリと魔王へ向ける。

「私の全力! いっけぇぇぇっ!! ――白華蒼光刃!」
「うぎゃあぁぁぁっーー!?」

 幾重にも連なる螺旋の中で育まれた絆が、今花開く。渾身の斬り下ろしがハイグレ魔王のモヒカン頭を断ち切り、続けて光刃の流星群が次々と飛来する。圧倒的なエネルギーの中でサラは魔王の体が崩れ去り、塔を構成する粒子へ還っていく様を確かに見届けたのだった……。









* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.50 )
日時: 2018/03/03(土) 00:14:44 メンテ
名前: 牙蓮


「はぁ、はぁ……。私も結構、凄いでしょっ……」

 荒い息を整える事も忘れ、サラは独り夕闇の舞台に立つ。未だ仲間達のハイグレコールはやまないものの、ハイグレ魔王が用意した最後の試練を無事乗り越える事ができた! これで元の世界に帰れると安堵した彼女は静かに、その時を待つものの……。



  ――あ〜あっ、負けちゃったわねぇ〜



 すると、気だるげな声が不意に響いたかと思うと、彼女の対面に一塊の光球が滲み出る。それは徐々に人の形へと変じていき、まるで精霊がその試練を終えた後のように回復しきったハイグレ魔王の姿が再び浮かび上がってきたのだった。

「肩書を見た時は大した事ないと思ってアンタを選んだんだけど、正直ここまでやるだなんて思わなかったわ〜」
「まさか、効いてなかったの……!?」

 すっかり余裕を取り戻した魔王の口調にサラは慌てて剣を構えるものの、彼は一切関心を示さない。

「あら、勘違いしないで頂戴♪ 今のアタシはこの塔と一心同体だから、塔のハイグレ粒子が尽きない限り永久に不滅なの。じゃあ、このアタシに勝ったんだから約束通り、アンタ達を元の世界に戻してアゲル……」



  ――なぁ〜んて言うと思ったら大間違いよぉっ!!



「――ッ!?」

 しおらしくしていた態度から一転、傲慢に顔を歪ませた魔王の姿にサラも思わず熱くなる。

「どういう事っ!? 戦士として、一騎討ちで決めるんじゃなかったの!?」
「ホホホッ、残念♪ アタシは戦士じゃなくて、マ・オ・ウ♪ 全てはアタシがルール、騎士道や武士道だなんて知ったこっちゃないわっ! それに……、アンタ達の世界でいう“ラスボス戦”ってのは、二戦目からが本番なんでしょ〜?」

  ――フォッ フォッ フォッ フォッ フォッ!

 言下、不自然に声色が歪んだ直後、魔王の体が急速に膨れ上がり肌も青銅色へと変化していく。自慢のハイレグ水着もモヒカン共々その色を失って白化してしまい、もはや異界の王としての風格は見る影もない異形の怪物と化してサラの前に立ちはだかる。

「なっ、何なの、これっ!?」
「カ゛ク゛ゴ゛シ゛ナ゛サ゛イ゛ィ゛〜!」

 呆然とするサラを尻目に魔物はかつて右腕だった触手を鞭のようにしならせ、彼女へ叩き付ける。咄嗟に剣で斬り落とそうとしたものの、弾力のある皮膚に刃を弾かれ逆に絡みつかれたばかりか、ジュッと嫌な音を立てて刀身が飴細工のようにドロドロと溶け落ちてしまったのだった。

(あのイフリートの炎にも耐えた光剣が、あっという間に溶けちゃうなんて……!)

 即座に接近戦の不利を悟ったサラはバックステップで距離を取り、十得輝装をハンドガンタイプへ切り替えて翠緑の弾丸を撃ち込む。

  ――バンッ! バンッ! バンッ!

 しかしユラユラと揺れる軟体に深々と突き刺さった魔法弾も、さしたるダメージを与えているようには見受けられなかった。腹部に空いた三つの銃創はみるみるうちに塞がってしまい、歪みきった魔王の嘲笑がサラに圧倒的な絶望感を植え付けていく。

「剣も銃も、全然効かないっ! 一体、どうしたら……!」

 万事休すとばかりに、唇を噛み締め歩みを止めるサラ。しかしそんな彼女へ向けて、思いもよらぬ人物から助け舟が差し出される。



  ――サラさん、落ち着いてっ!



「えっ……!?」

 声に導かれ顔を上げると、全てを見透かすアメジストのような瞳と視線が重なる。尚も全身を縛られ、“背グレ”というがに股スクワットを強要され続けている“復讐の銃姫”ニコラが必死に語りかけていたのだった。

「まだ奴を倒す手段は、残されているわっ!」
「ニコラさん、どうして……!?」
「フフっ、あなたのお陰よ。あなたがハイグレ魔王を追い詰め、本気を出させてくれたから私達を操っていた魔力に綻びが生じているのよ」

  ――だから、私達には分かるの!

 そして丁度、彼女の対角線上で豊作メロンを誇示しているティアも凛とした騎士の瞳で訴えかけてくる。

「今のハイグレ魔王はハイグレ粒子の化身とでも言うべき存在で、音素(フォニム)の意識集合体や精霊に似た生き物だと思えばいいわ! だから、ルークの超振動のような攻撃でないと……、純粋なエネルギー波による一点突破でないと倒す事は難しいわ!」
「エネルギーの、一点突破……」

 だとしたら、サラに打つ手は残されていなかった。確かに彼女自身も攻撃、回復とバリエーションに富んだ魔術の使い手ではあるものの、それらは冒険者として片手間で覚えた初歩的なものに過ぎない。例えばカナだったらきっと、異空の三女神から授かった力で難なく撃ち払えたとは思うけど……。

「……まさかっ、“ハイグレ光弾”で!?」
「えぇ、その通りよ!」

 導き出した答えに、ティアは力強く頷く。

「自我を取り戻した私達とリンクして最大攻撃を……、OLA(オーバーリンクアーツ)を撃ち込めばきっと、“本物のこの舞台”で勝利を収めた彼らのように奴の魔力を上回れるわ!」
「結局、最後までハイグレ人間として彼の掌で踊らされる事になっちゃうけど、ね……。でも、彼の言葉に従えば、この旅で手に入れた力は間違いなく私達自身のものよ」
「わ、分かりました!」

 矢継ぎ早に説明する二人の言葉にまだ納得はしきれていないけれども、今は他に方法がない。サラは言われた通り輝装を片付けて両手を自由にすると、舞台の中央でグッと腰を落としクネクネと躍る魔王に向かい合う。

「ブォッブォッブォッ……、ム゛ダ゛ム゛ダ゛ァ゛〜!」
「くっ……!」
「――そんなに固くならないで、サラさん。貴女と繋がっているのはほら、私達だけじゃないのよ?」
「えっ?」

 そんな二コラの言葉に誘われてか、宵の訪れが近い寒空の中を爽やかなマナの風が吹き抜けていった……。





  **********




* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.51 )
日時: 2018/03/03(土) 00:17:20 メンテ
名前: 牙蓮


「――っと、やっと繋がりやがったか。ったく、突然の通信障害でボス戦前の会話イベントが見られないなんて、いつの時代の話してるんだか……」
「ははは……。まぁ、今となっては懐かしい不具合だけどね」

 ボスの出現を告げるアラーム音を前に、二人の御使い達は愚痴を零さざるを得なかった。何しろ第八戦を終えてからここまで、サラが激闘を繰り広げている間中ずっと漆黒の通信画面と睨めっこさせられていたのだから。長時間の石詠み術行使によるマナ欠乏症に加え、状況の見えない苛立ちが重なり彼らの疲労もピークに達しつつあった。

「お二人共、お話は後にしてくださいませ! どうやらこの“軟体サボテン”が正真正銘、最後の一体のようでございます!」

 珍しく声を荒げたリッピの言葉に引き戻され、ゼファーはキッと画面の仇敵を見据える。

「よし! 第七戦の百連撃もあって、こっちはLC(リンクゲージ)が溢れかえってんだ。出し惜しみせず一気に決めちまうぞ、アレン!」
「うん!」

 相棒の期待に応え、アレンの右手が画面下部へ伸びていく。

「じゃあ、まずはアリーシャの“スキル”から発動するね」

  ――キュピィーーンッ!

 こうしてアリーシャの顔写真が弾かれると軽妙な起動音が響き渡り、リーダー達にのみ与えられた石詠みの秘技“スキル”の力が解放されていった……。





  **********





 濃密なマナを含んだ微風が場の空気をがらりと一変させ、足元の流れを一つに纏め上げる。

「よかった。アクリル石化しててもアリーシャのスキル、ちゃんと発動できたみたいね!」

 アレンから送られてきたLC(リンクゲージ)の魔力を変換し、パーティ内へ行き渡らせたカナがハイグレポーズを刻みながらニッコリと微笑む。そんな彼女の言葉を引き継ぎ、ディグリータは火照った顔を引き締め王の威厳たっぷりに宣言する。

「では、次は私がやろう。我らもウン・エイ殿からの依頼を受けてやって来た身だ。助っ人リーダーとして、そなたらの道を切り拓く!」

 言下、ジャラジャラと装飾品を揺らす体を意志の力でキュッと制止させると、大掛かりなクロスハイグレポーズと共に絆の魔力を解放する。

  「――スキル、“好物仕様のハイレグ水着”!」

    ゴオォォォッ――!

 プルンと乳首を摘まれた巨乳が天へと跳ね上がると同時に、足元に溢れるマナの流れがグンと太くなる。王ではなく一人の女性“ディグ”として愛してやまない、“苺のミルフィーユ”にちなんだ赤裸々な水着チョイスの記憶が地に眠る力を呼び覚まし、三倍近くにまで引き上げたのだった。

「じゃあ、次は私、ね……」

 サラと同じく誕生日パーティで着たドレスをモチーフにした、水色ハイレグ水着姿のカナ。モジモジと恥ずかしそうに目を泳がせながらも遂に覚悟を決め、クイッと腰を突き出しながら高らかに言い放つ。

  「――スキルッ! くっ、“食い込みヒロイン”!」

    ブウゥゥゥン――!

 さすがカナ、と言うべきか。母乳を噴かせながら叫ぶ称号は破廉恥極まりないものの、その効果は“光弾”という魔法攻撃に徹するサラ達十二人の“魔タイプ”戦士の潜在能力を、三.五倍にまでグングン引き上げていく。

「うぅ……。もうこれきりだって信じたいけど、こんな恥ずかしい台詞二度と言いたくないわ……。――最後はサラ、お願い!」

 涙目な妹分からサラに向けて、LC(リンクゲージ)で練られた絆の魔力が送り込まれてくる。石詠みの力を最大限に高めるべく、石詠みのために作られた決戦兵器。その効果と詠唱が直接頭の中に刻み込まれると、サラは迷いなく自らの股間へ意識を集中させる。

  「――行くよっ! スキル、“一緒にハイグレしよっ!”」

    キュウゥゥゥッ――!

 掛け声に合わせ押し出された股布が、どんどん細くなっていく。このスキルは英雄石に刻まれた英雄達の潜在属性の力を、更に引き出すためのもの。自らのハイグレ粒子によって汚染され、マナが織り成す六属性を“ハイグレ属性”へ塗り替えたサラ達ハイグレ人間の体を刺激し、全ての身体機能を三.五倍に高めていったのだった。

「うっ……!? ただでさえ凄いマナと魔力なのに、体が発情しちゃって暴走しそうだよ〜」
「ふ、ふぅんっ……。踏ん張りなさい、コハク! ここで負けると私達は永遠に、ハイグレの奴隷になってしまう! ――あなた達も、いいわねっ! OLA(オーバーリンクアーツ)に向けた九リンク……、いえ、“十二リンク”用意っ!」

  『はいっ!!』


* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.52 )
日時: 2018/03/03(土) 00:19:31 メンテ
名前: 牙蓮


 リグレットの勇ましい指令に、少女達は闘志を燃やす。その意は厚いアクリルの中へも確かに伝わっていき、コレット、フィリア、アリーシャと繋がったリンクの光がティアの下へ届けられる。

「これはっ――!?」

 彼女達と五感を共有したティアの瞳に涙が溢れ返る。リンクを通して広がった景色は見渡す限り何もない、真っ白な光の世界。その中で唯一据えられた“アクリル板の表面”という鏡に写り込むのはただ一つ、無様な姿勢で固められたコレット、フィリア、アリーシャ自身の、哀れな姿のみ。

「外からはあんなにハイグレコールだけが選別されて聞こえてくるのに……。固まった体はハイグレポーズどころか、身動ぎ一つ許されないなんて! アリーシャ達が終始何かに怯えていたのも、今なら理解できるわ」

 しかし、今は戦闘中。感傷に浸っている暇などない。首を振って涙を落とし、兵士として感情を律するとハイグレ魔王へ向けて最後の連撃を仕掛けていく。

「ハイグレッ!」
 「ハイグレッ!」

    パンッ パンッ――

 前後から撃ち込まれるティア、二コラのハイグレ光弾。しかし変質した魔王を貫くにはまだまだ力不足であり、体表で呆気なく霧散してしまう。

「ゲ゛ヒャ゛ヒャ゛ッ! マ゛ッ゛サ゛ー゛ジ゛ニ゛モ゛、ナ゛ラ゛ナ゛イ゛ワ゛ァ゛〜!」
「マルタ、受け取れ! ――ハイグレェッ!」
「んぎゅうぅぅぅ〜〜っ!?」

 束縛組最後の一人であるディグリータの魔力と快感を吸ったリンクがマルタの下へ届き、声にならない悲鳴が空に響く。ここまで比較的体を弄られてこなかった彼女にとっては、石化も緊縛も未知の感覚。Tバック姿で晒された乳首は哀れな程屹立し、目は焦点を結ばず虚空を漂うが……。

「でもっ……、負けられない! ハイグレッ!」
 「ハイグ、レェッ!」

    ドンッ ドンッ――

 同様に未曽有の重圧に押されるコハクも口端から涎を垂れ流すものの、リンクの流れだけは絶やさない。そして遂に、コレットから数えて九リンクの大台に乗ったバトンが新米兵士の体へのしかかる。

「ハッ、ハァ……。ハイグレェ〜〜ッ!」

  プシャアァァァッ――

 苦しみつつも撃ち出したエィンシアの胸元からは糸を引くように母乳が溢れ出し、足はガクガクと小刻みに震える。それでも気丈に笑顔だけは形作り、未踏のリンクへ挑むリグレット達へ全ての想いを託す。

「うわぁ……。Tバックの開放感、私ハマっちゃったかも?」
「なら、後でマルタに貸してもらいなさいっ。――ハイグレッ!」
 「ハイグレッ!」

「ゲ゛ヒャ゛ッ!?」

  ズガァンッ ズガァンッ――

 限界を超えた光弾は魔王の体を大きく仰け反らせ、回復速度をも上回る損傷をその身に刻み込む。直履きのナイロンニーソを自らの母乳で白く染めたリグレット、そしてもはや紐のようになった股布を精一杯食い込ませるカナが全ての準備を整えリーダーへ繋いでいく。

「次で最後! サラ、お願い!」
「う、うんっ」

 カナの体から溢れる光が、サラの胸にどんどん流れ込んでくる。まともに自慰すらした事なさそうなカナの太腿を滝のように流れ落ちていく、大量の愛液がここからでもはっきり見て取れる……。
 仮に計算しようものなら、九リンクの地点でみんなの魔力や感覚を六倍にまで高めてくれるマナのサポートは十倍近くの倍率となって彼女の体に襲いかかっているはず。そんな常軌を逸した刺激で発情したカナの性感までもが、更に十倍以上になって自分の下へやって来る……。その事実をどこか他人事のように受け止めるサラの初心な体の中で、暴力的なハイグレリンクは一気に解放された。

「――ッッッッッ!!?」

 胸が、お尻が、アソコが……、全てが熱い! もはや肌の一部と化したハイレグ水着の触感が脳にジーンと響き渡り、きつく体中を締め上げる荒縄の痛みさえもその摩擦を楽しむための伴奏に過ぎない。乳首を絞られ、股布で吊り下げられるような感覚が代わる代わる襲いかかって来るものの、敏感になり過ぎた彼女はもはや夢見心地とばかりに自ら受け入れる。
 そんな哀れな姿をみんなに見つめられているのだという事実すらも忘れ、サラの口からはある一言が紡ぎ出された。



「これが夢に見ていた、“世界で一番キモチイイ景色”……。――ハッ、ハイグレェェェッッッ!!」



 限界を突破した膨大な魔力をその身に宿し、サラはハイグレ人間の誇りである足刳を丹念に擦り上げた。直後、眼前で収束したハイグレ粒子は雲を突き抜け立ち上り、空を覆い尽くす長大な魔方陣を形成する。

「ソ゛ン゛ナ゛……、ソ゛ン゛ナ゛ヴァ゛カ゛ナ゛ッ! ――ウ゛ギャ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!?」

  ズガァァァァァァンッ――――

 仲間達の想いと性感が詰まった神雷の如き一撃は魔王の体を貫き、そしてこの世界全てを呑み込んで炸裂する。その余りのエネルギー量に仮初の世界は音もなく崩壊を始め、状態異常に蝕まれた十一人のハイグレ人間達の姿さえも掻き消す。

 そして、何もない純白の空間において、雌雄を決した二人の戦士は向かい合う。

「――ハイグレ人間、サラ……」

 軟体生物への変態が解け、ハイレグ水着姿に戻ったハイグレ魔王はニヤッと小憎たらしい笑みを浮かべ告げる。

「アンタはホントに、アタシの自慢よ……。これで、何処へ出しても恥ずかしくない、立派なハイグレ人間になったわ。これからもハイグレの可能性を、アタシに見せ続けて頂戴……」
「ハイグレ魔王、様……」

 世界を包む光は益々その勢いを増していき、サラの意識は我が身を繋ぎ止める食い込みの中へと消えていった……。








* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.53 )
日時: 2018/03/03(土) 00:22:16 メンテ
名前: 牙蓮






     エピローグ 新たな旅路へ




* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.54 )
日時: 2018/03/03(土) 00:24:46 メンテ
名前: 牙蓮


「――で、結局。手ブラで戻ってきたってわけか?」
「ア、アハハハハ〜」

 柔らかな日差しが降り注ぐ宿の一室に、乾いた笑いが響き渡る。あの時と同じように紅茶やコーヒーの香ばしい匂いが立ち上る、質素な木目調のテーブル。そんな当たり前の日常を再び手にした五つの笑顔は今、見事に咲き誇っていた。

「ったく……。俺達だって、かなりハードな魔力供給してたんだぜ? せめて封印する前に、一目拝ませてくれてもよかったじゃねぇか」
「まぁまぁ、ゼファー。僕達だってすぐに駆けつけてあげられなかったんだし、仕方ないよ」

 そう言って相棒を宥めるアレンの目元には、黒い筋が薄っすらと見て取れる。その痕跡こそまさに、この宿屋の一室こそがもう一つの戦場であったという事実を如実に物語っていた……。

 数日前、あの大冒険の成功を知らせる通知がスマホに表示されたのを最後に、アレンの記憶はパッタリと途絶えてしまった。やり切ったという達成感から張り詰めていた緊張の糸がフッと緩み、限界を超えた魔力消費の反動が重くのしかかってくる。それは彼だけに限らず、ゼファー、リッピに至っても同様であり、全ての力を出し尽くした三人は折り重なるようにして床へ倒れ込んだのだった。
 結果、彼らは文字通り三日三晩寝込み続けた。夜になっても明かりが灯らない事を不審に思った宿屋の主が部屋を覗き込んでくれ、そして偶然居合わせた顔馴染みの諜報員、フォルガーナが色々と手配してくれたお陰で何とか事無きを得たのだから、感謝してもしきれない……。


「――ところでサラ様、カナ様。お二人のお話に従って私(わたくし)も実際に確認してみましたところ、確かに私のスマホにも、カナ様にお貸しした受信用の予備機にも、クリーニング操作の跡が見受けられました。これ程までに念を入れて浄化されるとは一体、塔の中で何があったのですか?」
「えっと、実はね……」

 摩訶不思議とばかりに首を傾げるリッピに促され、サラは何度も頭の中で繰り返してきた物語をゆっくりと語り始める。

「出発前、リッピが教えてくれた“数値八千台の防具”っていうのは実は……、生き血をすすって鍛えられていく魔界の装備品、“魔装備”の事だったの! 最上階にいた魔王の話だと、あの塔は昔“境界衝突(コライドボーダー)”で混乱した地上を狙って、魔族達が建てたものなんだって」
「だから、塔の中は瘴気が一杯で大変だったのよ! おまけに一度入ったらクリアするまで出られない仕掛けになっていて……。何とかみんなで力を合わせて頂上まで上ったのだけど、一番頑張ってたサラが……」

 伏し目がちに言葉を切るカナの様子に御使い二人はゴクッと息を飲み、妖精はムムムと眉をひそめ唸る。

「まさか、魔族共の遺産がこの様な場所に残っていたとは……。お二人共、ご無事で何よりでした」
「それに、レオーネ様に連絡したのはいい判断だったと思うよ」
「ま、カナにしては上出来だったな」
「ア、アハハ……」

 くしゃくしゃと乱暴に頭を撫で回すゼファーの下で、カナはますます顔を引きつらせていく。これは必要な事なんだっていくら頭では理解していても、やっぱり、ゼファー達を騙しているようで心苦しい。

  ――時に、嘘というものは貴女自身の身を守り、そして、大切な人の心を守る事もあるのですよ……

 そんな迷いを見透かしたかのように、あの言葉が再び脳裏を過ぎる。そう、これは私達自身のためなのよ……。必死に自分へ言い聞かせるようにして呟き、カナはこの“ハイグレの旅”の顛末について思いを馳せていく……。



  **********


* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.55 )
日時: 2018/03/03(土) 00:26:14 メンテ
名前: 牙蓮


 事実、ゼファー達に話した通り、カナはハイグレの塔を脱出した直後に一行を見守る天界の女神、レオーネと連絡を取ったのだった。

 あの全てを焼き尽くす十二リンクによるハイグレ光弾の爆発が収まると、彼女達十二人のハイグレ人間はハイグレ魔王と初めて言葉を交わした入口の石段まで戻されていた。階段の下にはまるで供養塔の如くうず高く積まれた突入時の衣服に対し、未だ我が身へピッタリと張り付くハイレグ水着。そんな突然の変化に目を丸くしている暇もあればこそ、今度はアリーシャ達パーティメンバーが、そして、ディグリータ達三人の助っ人までもが一斉に、淡い光と化して消えてしまった。

「み、みんなっ!?」

 少女の叫びが、色を失った森の中へ吸い込まれていく。英雄石への魔力供給が途絶えた今、薄暗いこの場所へサラとカナの二人だけが取り残される。

「はぁ……。もうすっかり陽が落ちちゃってるし、帰るのは明日にし――ひいぃっ!!?」

 だから、野営の準備をしましょう、サラ……。そんな思いで無二の親友の下へ振り返ったカナだったが、そのあまりの姿に愕然とする他なかった。

「あ、あひぃ……」

 カナ自身にも覚えのある、仲間達の責め苦を伝える“ハイグレリンク”。ただでさえ身を裂くような快感に蝕まれるその技を、数十人分にも増幅された究極のOLA(オーバーリンクアーツ)という形で受け止めた衝撃は、サラの心を完膚なきまでに弾け飛ばしていた。
 見開かれた瞳は白目を剥いたまま焦点を結ばず、体中の穴という穴からは絞り出せる限りの液体が垂れ流し状態。一応命には別状なさそうなものの、時折ピクッ、ピクッと腰を浮かせて真っ赤なハイレグ水着が食い込む丘から小噴水を噴かせる姿は絶対アレン達には見せられない。

「ど、どうしたらいいのかしら……? 回復術で簡単に治るようにはとても思えないし……。 ――そうだわ! リッピから借りたスマホで、お願いしてみましょう!」

 あたふたと狼狽えながらも何とか天界の秘具を手にし、カナは懸命に祈りを捧げる。レオーネ様、サラを助けてください……! その願いは無事に天まで届けられ、たちまち羽毛を思わせる濃青のドレスを纏った女神が降臨する。

「――カナ、どうかしまし……っ!?」

 穏やかな笑みを浮かべ、迷わず跪いたままのカナへ手を差し伸べる慈悲深き女神レオーネ。しかし、彼女の手を取るや否や、その顔を満たしていた表情は一変する。

「この、禍々しい気配は一体……!? それに、あなたのその格好……。――どうやら、只事ではないみたいですね」

 一転して険しく、それこそかつて“リリウム”に神罰を下す時に見せた有無を言わせぬ眼光で射貫かれ、カナは震え上がる。そして、何一つ隠し立てする事無く、この旅の顛末について語っていくのだった……。

  …………
  ……
  …

「――なるほど、事情は分かりました。むしろこれは、古(いにしえ)の時代に災厄を放置してしまった、私達神々のミスですね。この様な苦しみを再び味わわせてしまって、本当に申し訳ありません、カナ……」
「い、いいえっ! みんな無事だったんですから、気にしないでください! ――ハイグレッ! ハイグレッ!」
「…………」

 心の底から悔いるように目を伏せるレオーネの眼前で、カナはハキハキとハイレグ水着の食い込む股間を指差し応える。その苦しみをそっと押し隠して元気よく振舞う彼女の気遣いは本物であると、理解はできる。しかし一方で、人として大切なものを忘れたかのような破廉恥極まりない振る舞いに、レオーネは事の深刻さをより一層痛感させられる。

「それより、レオーネ様! サラを助けてあげてください! このままじゃ、あまりにも可哀想で……」
「そう、ですね……。私も人の尊厳というものは、守られて然るべきだと思います。では、サラは私の方で一度天界へ導き、神々の秘術で浄化してみましょう」

  パアァァァ……

 ハァッと一つ溜息を零して、凛とした表情を作り直したレオーネは震えるサラの体を温かな光で包み、天へと運んでいく。

「ありがとうございます! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「――あなたもですよ、カナ」
「ハ、ハイグレ?」

 その光景に満面の笑みを浮かべハイグレポーズを捧げていたカナを遮り、世界の守護者は淡々と言い放つ。

「たとえあなた本来の優しさが残されていたとしても、侵略者の尖兵と化したその身をリアフィースに放つわけにはいきません。あなた自身が災厄となってしまう前に、私の手で浄化してみせます!」
「ハッ、ハイグ――」

  パアァァァ……

 危険を感じたハイグレ人間カナは本能的にハイグレ粒子を股間へ収束させたものの、光弾を錬成するには至らない。彼女よりも早くレオーネは封印術を展開させて一切の自由を奪い取り、サラ同様光球に閉じ込め昇天させたのだった。

「あのカナが私に反抗して、洗脳しようとするだなんて……。これはアレンやリッピ達が気絶している今のうちに、徹底的に浄化してしまった方がよさそうですね――」



 こうして、異界の魔王が目論んだ“自律的侵略”はあえなく頓挫してしまった……。

 サラやカナを始め、手塩に掛けてハイグレ人間化させた英雄達の眠る“ハイグレ英雄石”までもが女神レオーネの導きによって天界へと運ばれ、浄化のプロセスを踏まされる。かつては傷を負った天界の兵“御使い”達のために運営されていた慰安施設、“天界温泉”の薬湯に浸かって日々ハイグレ粒子を洗い流していく。そのデトックス効果は絶大であり、初日にはハイレグ水着浴だった一行も三日経てば初々しく恥じらう裸の付き合いへと立ち返っていたのだった。

「これで、あなた達の体は元の人間へと戻り、もうハイグレ粒子とやらに侵される心配もないでしょう。――この旅の苦難を示す痕跡はもう、再び地上へ帰るあなた達だけです。記憶の存在に過ぎない英雄石の皆さんはともかく、サラとカナには新たな重荷を背負わせてしまいますね。私には見守る事しかできませんが、どうかあなた達の旅路に二度とこの様な悲劇が訪れませんよう……」



  ***********


* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.56 )
日時: 2018/03/03(土) 00:28:52 メンテ
名前: 牙蓮


  …
  ……
  …………



(ああ言ってレオーネ様はアレンに英雄石を返して、私とカナを元いた雑木林まで送って下さったけど……)
(やっぱり塔に入ってからの記憶も一緒に、封印してもらいたかったわ……)

 男性陣がおかわりの飲み物をコポコポと注いでいく最中、少女二人は思わず顔を見合わせ苦笑する。彼らが体を起こせるようになった丁度その日に帰還したサラは無事元の快活なブルマ姿に身を包み、カナも真っ白なフードを既に二度ゼファーに引っ張られている。表面上は出立前と何ら変わらない、至って健康そのものであったのだが……、

(確かに、たとえ天界の技術で記憶を封印したとしても、解呪や術の構造を見抜くのが得意なゼファーさんにすぐ気付かれちゃう。だから代わりに“魔装備物語”をでっち上げて誤魔化そうっていう、レオーネ様の作戦は理解できるし、私達も納得したけれど……)
(でも、やっぱり難しいわ……。今もこうしてコーヒー用のミルクを見ているだけで胸がムズムズしちゃって、とっても恥ずかしい……)

 たとえ人間の体が忘れていようとも、脳裏にはハイグレ人間として経験した数々の快感がはっきりと焼き付いている。ポットを開けると漂ってくるこの地方特産の濃厚なミルクの香りに中てられて、噴乳の刺激を思い起こしたカナの顔はみるみるうちに赤く染まっていく。

「――カナ様!? いかがなさいましたか!?」
「な、何でもないわ、リッピ……」

 突然の大声に、ヒラヒラと手を振って何とか誤魔化そうとしているものの、その動きはとても弱々しい。

「そ、それよりっ!」

  ――バンッ

 ボロが出ないうちに、何とかしないとっ! 思い立ったサラはみんなの気を引こうと敢えて強引に立ち上がり、ひっくり返った椅子がけたたましい音を立てる。

「この部屋に泊まれるのって、今日までなんでしょ? だったら今のうちに買い出ししないと……」
「ハハッ、そうだね」

 無意識なのかそうでないのか、残った紅茶を一気に平らげたアレンは屈託のない笑みを浮かべて、サラに同調した。

「じゃあ僕とサラ、リッピで買い出しに行ってくるよ。結局、買い込んだ回復アイテムを全部使っちゃったからね」
「あぁ、任せた。カナの方は俺が見とくから、心配せずに行ってこい。――まぁ、あれだな。高性能装備になんて、そう簡単には巡り会えないって事か……。俺達は俺達にできるやり方で、少しずつ種を浄化していく。それでいいんだよな?」
「はい、その通りでございます!」

 ゼファーの言葉を全力で肯定し、いつしか三人分の食器を片付け終えたリッピは率先して扉へ駆けていく。

「さぁ、サラ様! 救世主様! 冒険の旅に出掛けましょう!」

 世話好きな妖精に導かれ、記憶喪失だった青年は温かな掌を差し出す。そして、その手を力強く握り返した冒険者の少女は元気に、こう言い切ったのだった。



  「――うん、行こう! きっと素敵な冒険がどこまでも、私達を待っているよ!」





* Re: ハイグレの塔(TOLink) ( No.57 )
日時: 2018/03/03(土) 00:31:24 メンテ
名前: 牙蓮


  …
  ……
  …………

「――ふぅ。これでようやく、終わりましたね」

 一方、ここは昼とも夜ともつかない白んだ空が果てしなく広がる、どこか無機質な浮島ばかりがあてどなく彷徨う神秘の世界。そんな“災厄の種”の芽吹きによってすっかり無人の荒野と化してしまった天界のとある小島において、女神レオーネの独白が虚しく響き渡る。

「サラ達に貸し与えた“天界温泉”の一室も無事、“ハイグレの塔”やその進入キーである“ハイグレの鍵”、彼女達が持ち帰った“ハイレグ水着”にそして、源泉かけ流しによる浄化で大量に発生してしまった薬湯“神水(しんすい)”の汚染水と共に亜空間へ封じる事ができました。この空間を内側からこじ開ける事など万に一つも不可能ですし、結界を維持する楔(くさび)には英雄石の力を利用しましたから、この世界が崩壊しない限りは安泰……。ようやくリアフィースへの干渉は防げましたから、後はゆっくり検証する事としましょう……」

 そう言って拠点の一角へ腰を下ろすレオーネの眼前には、大きなモニター画面が据えられている。彼女が手を一振りすると、真っ赤なハイレグ水着姿で滑稽なポーズを取り続けるサラの痴態が浮かび上がってきた。

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

「外部に知られる事を恐れて妨害電波で映像を加工していたようですが、妖精のリッピは騙せても神である私には通用しません。今後の対策を練るためにも、サラ達には申し訳ないですが、スマホに記録されていた映像の全てを確認させてもらいます」

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

 椅子の背もたれに体を預け、じっと見据える女神の前で映像は次々と切り替わっていく。

  『ハイ〜グレッ! ハイ〜グレッ! ハイ〜グレッ!』

    『――ハイグレェッ!! ――ハイグレェッ!! ――ハイグレェッ!!』

 躊躇いがちに腕を引き上げるカナの姿に、ムニッと胸の膨らみを押し潰して両腕をクロスさせたアリーシャは全力で声を張り上げる。地上階に設置されていたという試着ブースへ押し込められ、ハイレグ水着へと着替えた十二人の英雄達はだだっ広い異空間の中で孤独なハイグレレッスンに打ち込んでいた。

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

「あぁ、サラ……。さっきまで瞳を潤ませていたというのに、そんな笑顔で頬を真っ赤に染めて……。――ハイグレポーズというのは、それほどまでに心揺さぶられるものなのでしょうか?」

 食い入るように見つめていたレオーネはそっと視線を外して、背後の台座を振り返る。そこに安置された数々の神器に並んで、一際異彩を放つ真っ青な薄手の布地。席を立った女神は迷わずその薄布の下を訪れそっと持ち上げると、全容を確認するかの如く両手でヒラリと吊り下げた。

「対策に用いようと女神の力で作成してみた、ハイレグ水着の複製品(レプリカ)……。万が一にも汚染されぬよう情報を選別しましたから、彼女達が戦利品(ドロップ)として手に入れた物のように状態異常に関する特性や“HP、攻撃力、回復力の全てが八一九〇”といった破格の性能は持ち合わせていません。ですが……」

 まるで自分自身に言い聞かせるように、無人の世界には全く必要のない言い訳をブツブツと呟いた直後、彼女の体を眩い光が包み込む。

「あっ……」

 一拍置いて踏み出したその足は、膝上まで達する超ロングブーツを脱ぎ捨てた色白の素足。羽衣を思わせる豊かな長髪だけをそのままに、天界最後の女神は青いハイレグ水着一枚だけというあられもない姿で再び降臨したのだった。

「衣装を変えるだなんて、いつ以来でしょうか……? 素足で大地を踏みしめる心地良さ、もはや新鮮に感じます……」

  『ハイグレッ、ハイグレッ、ハイグレッ、ハイグレッ』

 神にとっては必要のない“着替え”という文化に思いを馳せるレオーネを余所に、ハイグレコールは絶えず再生されている。ハイペースで鍛錬を続ける二コラから移り変わってお揃いの青色ハイレグ水着を張り付かせたエィンシアの姿が映し出されると、レオーネはゆっくり股を開いていく。

「えっと、確か……。脚はがに股にして、手は足刳へ……。そして――、ハイグレッ! ハイグレッ!」

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

 様になった動きを披露する新米兵士をお手本にして、神聖な体をグイグイ締め上げる足刳に沿ってシュッ、シュッと腕を上下させる。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――これは、中々っ!」

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

 言葉を紡ぎながらも、がに股ポーズの女神は腕の運動を止めようとはしない。

「私は女神なのにっ、こんな事をしてっ! 何でしょうっ、このっ、背徳感っ!」

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

「もし再びっ、世界をっ、創造するっ! ならばっ!」

  『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』

「こんな世界もっ、いいっ、ですねっ! ――ハイグレェェェッッッ!!」

   …………
   ……
   …

 災厄の目覚めによって神の営みを失った、虚空の世界。その無限の渇きを癒すかの如く、最後の女神が奏でる嬌声がどこまでも、どこまでも木霊していった……。




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