window
 
トップページ > 記事閲覧
* ファイアーエムブレム短編集

日時: 2019/03/01(金) 22:44:21 メンテ
名前: 牙蓮

FEファンの重金属さんに0106さん、そしてぬ。さんや香取犬さんといった小説書きの方々からチャットで「FE×ハイグレは絶対に需要がある!」と後押しして頂き、こうして新ジャンルへ進出してみる事にしました。
とは言っても私のFE歴は封印〜新暗黒竜までとかなり短い幅に過ぎず、最後にFEシリーズをプレイしたのもテイルズに比べ随分前という……。
しかもヒーローズも分からないキャラが多くてリリース直後にちょっと触ってみたっきりという始末。
そんな原作重視、というか原作の情報だけで展開していく牙蓮の「ハイグレ×FE作品」ですが、需要ありそうだなぁと思えば続けていきます。


   新着

FE小説も第三弾となり、今回はハイグレ光線も登場させてみました。
と言ってもハイグレ魔王様や魔王軍の面々は未登場なので、原作の設定に馴染ませたそれっぽい物に過ぎませんけど……。
皆さんの中ではハイグレ光線単体で登場させて、魔王軍の侵略兵器って側面を削ぎ落した作品はアリでしょうか?
個人的には作品を考える上で設定の幅が広げられるし、撃つ方も撃たれる方も個性が活かせて入り込めるから私は好きなんですよね〜。

(注)多少ネタバレになってしまいますが、本作は男性ハイグレが出てきますので苦手な方はご注意ください。


   目録

・聖魔の光石 ハイグレ支援会話 〜イタズラ呪術士〜(New)
・蒼炎の軌跡 ハイグレ支援会話 〜テリウス大陸の聖天馬騎士〜
・封印の剣  支援会話 〜絆紡ぎしハイグレの刻〜

 
Page: [1]
* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.1 )
日時: 2019/01/26(土) 13:33:46 メンテ
名前: 牙蓮






     支援会話 〜絆紡ぎしハイグレの刻〜




* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.2 )
日時: 2019/01/26(土) 13:36:22 メンテ
名前: 牙蓮


 透き通るような青みを帯びた大空に、宮殿の如き荘厳な入道雲が雄々しくそびえ立つ。そんな平穏無事を絵に描いたかのような空模様がどこまでも、どこまでも広がっている一方、麓の大地には鉛色の奔流が紛れ込む。
 金属の鎧兜、厳つい武器が陽光を浴びて鈍い輝きを辺りに放ち、時折パッと散発しては消えていく超自然の光。そんな野を荒らし、川を汚す『戦乱』という営みが、ここエレブ大陸では至る所で巻き起こっていた……。

「ぐはぁっ!?」
「た、隊長っ!? くっ、貴様っ!」
「――ファイア!」
「なっ!? でか――ギャアァッ!?」

 喚く男達を前に少女が高々と掌を掲げると、虚空より火の玉が湧き出して彼ら目掛け飛来する。筋肉に包まれた屈強な体も、職人達が鍛え上げた分厚い鎧も魔術の炎の前には何の意味も持たず、辺りには鉄の焦げた嫌な臭いが立ち込める。
 大陸東方の勇、ベルン王国が各地へ侵攻を開始してから早半年余り。大陸全土へと広がった戦禍は激しさを増す一方であり、彼女、亡きオスティア侯ヘクトルの娘リリーナも、祖国再興の夢を追って慣れない戦場をひた走っていたのだった。

「ふぅ……。これで、頼まれていた部隊は全部殲滅できたかしら? ロイのお陰であんまり戦場を見ないではすんでいるんだけど……。やっぱり、人が傷付く所はあんまり見たくないわ」

 祖国のためにはこの動乱を勝ち抜いて、何が何でもベルン国王ゼフィールの首を獲らなければいけないという事は彼女自身も分かってはいる。しかしいくら圧倒的な魔力を有し、『猛将の血を引く賢者』と恐れられようとも、彼女はまだ十五を過ぎたばかりの少女に過ぎない。敵を屠った際には返り血を浴び、時には接近を許した刃に我が身を斬り裂かれる……。そんな血生臭い経験を繰り返すうちに彼女の心にはいつしか、世継ぎの重責とは異なった疲労が降り積もっていた。

「ちょっと、休ませてもらっても……、大丈夫、よね……?」

 そう言うと辺りに敵の気配がないことを念入りに確認し、適当な木陰へ腰を下ろす。普段はこの背後に広がる自然豊かな木立も、ただの目隠ししてしか認識できない。そんな現状の世知辛さに心痛めながらも一つ深呼吸をして、ゆっくり乱れた気を整えていくと――。

「――リーナ。リ、リリーナ」
「えっ? きゃあっ!?」

 急に声を掛けられ、慌てて飛び上がる。

(こんな事じゃ、セシリアさんに叱られちゃうわね……)

 目を開けた時にはもう来訪者の影にすっぽり覆われていたのだから、申し開きの余地もない。戦場で気を抜き過ぎていたと内心反省しつつ、ローブの汚れを払ったリリーナはぎこちない笑みを浮かべ応える。

「……ゴンザレス、こんな所でどうしたの?」
「おれ、敵倒して、山、越えてきた。
 リリーナこそ、どうした? どこか、痛いか?」

 その姿はまるで、背後の山岳の主である猛々しい巨木の如き。ぼさぼさの髪に人間離れした筋肉、そして布切れのようなぼろの上下はまさに野生児という印象だけを与えてくる。
 しかしその言動からは裏腹に、温かな思いやりが滲み出る。外見が醜いというだけで賊の使いっ走りにされてきたこの大男はリリーナとの交流を通じているうちに、次第に人としての在り方を見いだしつつあった。

「いいえ、大丈夫よ。ちょっと疲れたから、ここで休憩していただけ」
「よかった。リリーナ、いなくなったら、おれ、おれ……」
「もう、あの時みたいに悲しい事は言わない約束でしょう? それより、あなたも別動隊を倒し終えたんだったら、そろそろ本隊と合流しなくちゃ」

 先程までのか弱い少女はどこへやら、瞬く間にリキア同盟軍を支える諸将の一人へと戻ったリリーナは率先して本隊が目指しているであろう敵の拠点目掛けて歩み出んとする。しかし――。

「ま、待って」
「えっ? なあに?」
「今なら時間、ある。おれ、聞いてほしい」

 そんな彼女を呼び止めたゴンザレスは徐にズボンのポケットへ手を突っ込んだかと思えば、薄い紙束を取り出した。

「リリーナ、おれ……。これ、読んでみた」
「こ、これって……!」

 受け取ったそれは、こないだ進軍中に立ち寄った町でリリーナがプレゼントした子供向けの絵本だった。幼い時から迫害されてきたゴンザレスは、当然ながら文字が読めない。その事を戦場で言葉を交わしているうちに知ったリリーナは休息の折りにも彼と時間を共にするようになり、読み書きやマナー、訪れた土地の名所や産物等様々な事柄について教えていった。そして遂に、簡単な文章なら何とか読めるようになった事を記念して、この本をプレゼントしたのだった。

「すごいわ、ゴンザレス! 一人で読めたの?」
「あ、あぁ、多分。絵、きれいで、おれ、楽しかった」
「もう……」

 これではちゃんと理解したのやらどうやら……。でもそれならまた、二人で一緒に読めばいい。そう心に温かな物を感じたリリーナに対し、ゴンザレスは尚も語り掛けてくる。

「それで、あの……。おれ、この話、好きになった。ありがとう」
「えぇ、えぇ……!」
「だから、リリーナにも、その……。――『ハイグレ人間』に、なって、ほしい」
「――えっ?」

 リリーナは絵本を握ったまま――、『アクション仮面とハイグレ魔王』を握り締めたまま固まってしまった。私が、ハイグレ人間、に……? 痺れた頭の中でその言葉だけが何度も再生され、思考が上手く纏まっていかない。

「ゴ、ゴンザレス? 私も買った時に中身は読んでみたから分かるんだけど、ハイグレ人間っていうのは本当には存在しなくて――」
「わかってる。だからおれ、ハイグレ人間のまね、してほしい」

 ――スッ

 そう言って更に差し出されてきたのは、小さな白色の包み。純白のそれを見ただけで何なのか容易に想像できてしまう、そんな自分が恐ろしい。

「これ、やる。リリーナがくれた、絵本のお礼。
 大丈夫。おれ、盗み、してない。バアトルがくれたものだから、安心してほしい」
「…………」

 恐る恐る受け取って広げてみると案の定、包みは真っ白なハイレグ水着であった。何故バアトルが女物のハイレグ水着を持っていたのか? 何故それがゴンザレスの手に渡る事となったのか? 考えれば考えるたげ安心できなくなってしまうけど、そりよりもまずどう反応していいものやらほとほと困り果てていた。

「リリーナ、ハイグレ人間、なってくれないか?」
「ごめんね……。だって、私あんまりスタイル良くないし、それに水着姿になるなんて――」
「あ……、う、うぅ……」
「――ッ!?」

 目の前で立ち上った悲痛な慟哭に、リリーナは思わず押し黙ってしまう。ゴンザレスの厳つい頬には二筋の渓流が止めどなく溢れ、瞳は幼女のように濡れて揺れ動く。それはあの、以前『別れ』を告げられた時のように……。

「――分かったわ。ちょっとだけなら、その……。ゴンザレスのためにハイグレ人間に、なってあげるわ」
「…………? あ、あぁっ!?」

 ぽかんとしていたかと思うと一転して泣き止み、心根の優しい山賊は歓喜の雄叫びを上げる。

「リリーナ、リリーナ! おれ、嬉しい! ありがとう! ありがとう!!」
「そ、そんなに喜ばれると、何だか照れちゃうわ。じゃあ、このハイレグ水着に着替えて、ハイグレ人間になりきればいいのね」
「あぁ、ありがとう!」
「分かったわ。じゃあ、ちょっと着替えてくるから絶対にその場を動かず、静かに待っているのよ」
「わかった!」
「恥ずかしいから森の中を覗いてみたり、入って来ちゃ駄目よ!」
「あぁ!」

 言うなりゴンザレスはグッと目を瞑って、リリーナの言いつけを忠実に実行する。その素直さにリリーナも思わずクスっと微笑んで腕を撫でて応えると、脇を抜け背後の森へと向かっていく。
 こうして数奇な議論の結果、リリーナはハイレグ水着片手につい先程まで天然の要塞だった森の中へと分け入っていった……。



 …………
 ……
 …



* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.3 )
日時: 2019/01/26(土) 13:49:35 メンテ
名前: 牙蓮


「こ、この辺りなら、大丈夫かしら……?」

 簡単に通り抜けられる目隠し程度の木立とはいえ、一度奥地へ入り込むとたちまち人の気配は断たれてしまう。そんな敵味方問わず戦場では要害として利用される街道沿いの森林へ立ち入って、リリーナは独り辺りを伺っていた。

「あっ! こんな所に、丁度いい切り株があるわ。とりあえずここにハイレグを置いて、っと……。
 じゃ、じゃあ、いよいよ……。着替える、わよ……!」

 誰にともなくそう宣言し、リリーナは『導きの指輪』の輝きによって授けられた賢者のローブへと手を掛けていく。

  ――パサッ

 大いなる魔力を秘めし羽衣がふわりと持ち上がり、そして古株の上へとひらひらと舞い降りる。体の大部分を覆っていた純白のローブが取り払われた事で否応なくスーっと森特有の冷えた空気が足元から這い上がってきて、華奢な体がブルっと縮み上がる。
 しかしリリーナは「武人の娘たるもの」と心で唱え耐え凌ぎ、続けて下着類の脱衣に取り掛かっていく。まずはお気に入りの白いキャミソール、続いて精霊の加護を受けしロングブーツに伴い、黒のパンティストッキング……。控えめな胸元を隠していたブラのホックを外して拭い去ると、遂に一番大切な場所を守っていた無垢なる白衣が脚線を伝って落ちていく。

「あ、あはは……。私ってば本当に、外で裸になっちゃった……」

 木々の香りを多分に含んだ風がそよそよと吹き抜けていく中、青空の如き長髪がひらひらとたなびき父親から貰った赤いカチューシャも小気味よい音を立てて喜ぶ。しかし、それ以外は何一つとして身に纏ってはいない。そんな侯爵令嬢としてあるまじき破廉恥な姿で、リリーナは木立の中へ立ち尽くしていたのだった。

「リリーナァーー! まだかぁーー!?」
「ご、ごめんね、ゴンザレス! もうちょっとだけ待っててね!」

 冷静に我が身を見返す間もあればこそ、背後から咆哮の如き問いかけが飛ばされ視線は森の外へ。慌てて返事をすれば「わかったーー!」と威勢のよい声が返ってきたので、リリーナは裸のまま自然林を歩き回り切り株の下へ歩み寄る。

「よし……! いよいよ、これね……」

 改めて何の可愛気もない白布を目の前へ垂らすと、その面積の少なさに圧倒されそうになる。大丈夫、今ここにいるのはゴンザレスだけなんだから……。気持ちはまだ全然納得できていないけれども、敵を見据える時のような鬼気迫る瞳で己の迷いを拭い去っていく。
 まずは肩口を支点にするすると水着を寄せ集めていって、足を通しやすいように大きな二穴をはっきりと広げ固定させる。そしてそのまま両手を押し下げる形で、ゆっくり足下目掛け屈んでいくと……。

(はうっ……。私ってばきっと、とんでもない格好してるのよね……?)

 体勢を下げるに従って、お尻の辺りが何とも言えないムズムズとした感覚に襲われ身を捩りたくなってしまう。そう、それはまさしくお風呂から上がった時にスーッと広がるあの開放感のように……。森の新鮮な空気に目一杯触れ、ぱっくりと開いたワレメがヒクヒクと呼吸する度に何とも恥ずかしく、それでいて情けなくなってしまうのだった。

(うぅ……、で、でもっ……!
 えっと、まずは足を通して、それから……)

 足下まで下りてきた白い空穴は滑らかな素足が滑り込んで見事に埋め立てられ、寄せ集められた薄布がきめ細やかな脚線をスルスル登っていく。
 パンティやストッキング、絹のローブとも違った独特の肌触りが何ともくすぐったい。そんな感覚に見悶える間もなく脛、太腿と駆け抜けると遂に敏感な股間部へと食い込みが到着する。

「んっ……」

 クロッチのない股布がアソコと一つになり、その可愛らしいタテスジをぷっくり浮き立たせる。その後も何度か手を当て布の位置を調整すると、リリーナは次の手順へ進んでいく。
 過度に股布を食い込ませないよう注意しながら水着を引き上げていくと、恥骨の辺りまで切れ上がる鋭角なVラインが姿を現し、ハイグレ人間の下半身を形成する。そして華奢な腰回り、小皿を被せたような慎ましい胸回りを厳しい締め付けの中へ押し込んでいくと、いよいよ肩紐がパチンと持ち前の張力を発揮すると全ての行程が完了する。

「あぁ……。で、できちゃった……」

 足刳はグイっと切れ上がって、胸の膨らみは浮き彫りに。そして窪んだおへそがキュートに魅せる、うら若きハイグレ人間の姿がそこにはあった。

「リリーナーー! リリーナァ〜〜!?」
「い、行かなきゃ……!」

  ――キュッ

 完成した自分の姿を省みる事もせず、最後にもう一度だけ食い込みを直してリリーナは切り株を後にする。
 生い茂る草木で素肌とハイグレを傷付けないように……。慎重に、でも急いで……。

  ――ガサガサッ

 最後に目眩ましとなっていた藪を踏み越えた瞬間、一陣の風がびゅうっと吹き抜けた――!





* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.4 )
日時: 2019/01/26(土) 13:59:33 メンテ
名前: 牙蓮

「リ、リリーナァ?」

 それなりの音も立っていたし、気配はとっくに感じ取れているはず。それなのに未だ言いつけを守ろうとする素直な山賊の姿にリリーナもふっと表情を和らげ、足取り軽く彼の正面へと回っていく。

「ど、どうかしら、ゴンザレス? 似合って、る……?」
「あ? ――う、うおぉっ!?」

 回り込んでみればやはりと言うべきか、ゴンザレスは離れた時同様目も瞑ったままだった。そんな中リリーナに問いかけられ久方の光に目をしょぼしょぼさせていると、いきなり素っ頓狂な悲鳴を上げた。

「ちょっと、何か言ってよ……。何も言われないのも、結構、恥ずかしいのよ。あははは……」
「リリーナ……。あぁ、リリーナ……!」

 愛想笑いも何のその、ゴンザレスは我がペースで瞳を潤ませ拙い言葉を紡いでいく。

「いい! とっても、いい! よく、似合っている!」
「あ、ありがとう。でも、やっぱりこんな時代遅れの水着なんて、変じゃないかしら?」
「そんなこと、ない。いつもと同じピカピカで、とっても、いい! リリーナ、ハイグレ、似合う」
「うーん、いつものローブと一緒って言われるのも、何だか複雑ね……。
 ――それで、ゴンザレス。やっぱり次は『アレ』、よね?」
「あぁ! おれ、リリーナのハイグレ、見たい!」

 キラキラと少年のように目を輝かせて、ゴンザレスは迷いなく言い放つ。リリーナもその言葉を予期していただけにもう慌てふためく素振りなどは見せず、ゆっくり両腕を下ろしていくが……。

「えっと……。ハイグレッ、ハイグレッ?」
「ちがう、リリーナ。もっと足、広げて」
「わ、分かったわ」

  ――ザッ、ザッ

「ハイグレッ、ハイグレッ、ハイグレッ」
「まだ、違う。腰、落として、がに股、開けて!」
「うぅ……」

  ――グッ

「はっ……、ハイグレッ、ハイグレッ、ハイグレッ」

  ビシッ、ビシッ、ビシッ――

 最初は恥ずかしそうに腕を上下させていたリリーナだったが、ゴンザレスの細かいリクエストに応えていってあの絵本に描かれていたような水着がキュッと食い込むハイグレポーズで街道に立ち尽くしていた。
 ただでさえサイズがちょっと小さめの水着なのだから、大きく股を開いたポーズはアソコがチクチクと痛い。でもそれ以上に、「私のお股はこんなに食い込んでますよー!」と盛大に見せびらかしているこの事実の方が何より痛かった。

「うぅっ……。やっぱり、これでおしまいよっ! もう、いいでしょ……?」
「リリーナ……、うぅ、リリーナァ……!」
「ッ……!?」

 真っ赤な顔して精一杯向き合ってみれば、また真っ赤な顔が出迎える。リリーナが恥を捨て去り行ったハイグレポーズは見事に結実し、ゴンザレスは立ち尽くし男泣きしていた。

「リリーナ、ほんとに、すごかった! ほんとの、ハイグレ人間みたい、だった。おれ、またあんたに、教えてもらった。ハイグレすごい、ありがとう」
「そ、そんなに喜んでもらえるなんて思わなかったわ。やっぱり恥ずかしさもあるけど、私も何だか……。
 ――ゴンザレス。そんなに気に入ったんだったら、もうちょっとだけ……、見せてあげよっ、か?」
「あ? あぁ! リリーナのハイグレ、もっと見たい!」

 喜色満面、元気に答えるゴンザレス。その泣きながら笑う無邪気な仕草にリリーナも思わず魅せられ、頬に妖艶な朱を帯びる。

「ふふっ。――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「リリーナ、今度はおれ、クロスハイグレも、見てみたい」

「分かったわ。――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「うおぉっ!? じゃあ、じゃあ、今度は、えっと……。これ、言って」

 興奮を抑えられないゴンザレスは絵本をバサバサと捲っていき、あるページをリリーナに突きつける。

「えっと……、これね。ゴンザレスはこのシーンが好きなの?」
「あぁ、おれ、好き。リリーナにスパイ、なってほしい」
「じゃあ、いくわよ……!」

 リリーナは宣言するや不適な笑みを浮かべ、じりじりと後退っていく。

「ふふふ、バレたら仕方ないわね。いかにも、私はハラマキレディース様のスパイよ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレェン♡」
「ぶ、ぶほぉっ!?」

 次第に自分の演技に酔ってきたのか、アドリブでしなを作って挑発してみせるリリーナ。耐性のないゴンザレスは見事にその毒牙にかかってしまい、盛大な鼻血を吹き上げたのだった。

「えっ? ちょっと、ゴンザレス!? えーっと、何か紙切れか布は……」
「だい、じょうぶ。これ、ある」

 慌てるリリーナを余所に、ゴンザレスはズボンから薄汚れた手拭いを引き出す。リリーナはそれを受け取るや、慣れた手付き裂いていってまだ白い一面をゴンザレスの鼻の穴へ押し込む。

「ご、ごめんなさい。こんな事になるとは思わなくて……」
「リリーナ、なんであやまる? おれ、リリーナのスパイ、とってもうれしかった」
「た、確かに今の鼻血は、嬉しいから出た物に違いないんだけれど……」
「なら、だいじょうぶ。おれ、もう元気」
「本当に……?」
「あぁ! だから、次は、これ!」
「もう、ゴンザレスったら……。えーっと、これね」

 気を取り直して、リリーナは再びハイレグ姿で緑の中へ立つ。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――ハイグレ人間リリーナ、洗脳完了しました! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「うおぉっ、リ、リリーナァー!」

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――ハイグレ魔王様、万歳!」

 すっかり勝手を掴んだ二人は間髪入れずに、リクエストを立て続けにこなしていく。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――ハイグレにおなりなさ〜い♡」
「リリーナ、これ、これ!」

「うっ、体が、勝手に……! ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――こんな事っ! したく、ないのにっ……!」
「じゃあ、次は――」

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――」

 熱を帯びていくやり取りはどんどん激しさを増していき、リリーナにも遠慮はなくなる。そんな二人の密やかなやり取りは、遠く閧の声が響き渡るまで続いていった……。



 …………
 ……
 …



* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.5 )
日時: 2019/01/26(土) 13:57:43 メンテ
名前: 牙蓮


「――という事で、アレン達騎馬隊は北側から回り込んで、敵の側面を突いてほしい」
「はい、お任せください!」
「そして、ゴンザレス」
「あ?」
「君はいつも通り高い山に登って、南から来る小規模部隊を叩いてくれ。これは君にしか頼めない、大切な役目なんだ」
「あぁ、わかった。おれ、頑張る」

 あの木立での寄り道から早数週間……。今日もまた、エレブ大陸の某所では血で血を洗う戦が巻き起ころうとしていた。
 数々の苦難を乗り越え、人ならざる竜をも退けてきたリキア同盟軍。その諸将達が自信に満ちた表情で立ち並ぶ軍議の場において、まだあどけなさの残る少年の声が――、この個性派揃いの軍隊を率いるフェレ侯嫡子ロイの声が朗々と響き渡る。

「よし! それじゃあみんな、出陣してくれ。今回も厳しい戦いになると思うけれども、必ずみんなで勝利を掴み取ろう!」

  『おぉっ!!』

 指揮官の短い演説に、居並ぶ武人達も端的な言葉で檄を飛ばす。後は武運を信じて、敵とぶつかっていくのみ……。各々が自分の役割を胸に刻んで天幕を後にしていく中、当のロイは落ち着かない様子で一人の少女を追っていく。

「待って、リリーナ!」
「えっ、なあに?」

 本陣から少し距離を置いた草原の中、行き交う兵士達に混じって二人の侯子が言葉を交わす。

「どうしたの、ロイ?」
「えーっと、何て言うか、その……。リリーナ、最近あんまり話せてなかったけど、大丈夫かい?」
もう、そんな事言うためにわざわざ追いかけてきたの? 私は大丈夫。それより、あなたの方こそ私は心配だわ。この軍も今では最初の頃と比べ物にならないくらいに大きくなって、色々な立場の方が参加して下さるようになった。その中でみんなを纏めていこうと、あなたが寝る間も惜しんで話し込んでるの、知ってるんだから」
「はは、やっぱりバレてたか。国が違うと考えも戦い方も違ってくるから、みんなの事を少しでも知っておこうって思ったんだけど……。こないだマーカスにも注意されたから、程々にしておくよ」
「あなたはこの軍のリーダーなんだから、自分の事も大事にしなきゃダメよ」
「ありがとう。ところで、僕もリリーナの姿を最近戦場でしか見かけなかった気がするんだけれども、君もやっぱり……」
「えっ? えぇ。そう、ね……。私だって一応、オスティアの代表者なんだから、みんなが軍に馴染めるよう色々と話しかけたりしているの」
「そうなんだ。でも、くれぐれも――」
「大丈夫、無理なんてしてないわ。生きてリキアに帰りたいって気持ちは、あなたと同じだもの。今はとにかく、目の前の戦いに集中しましょう」
「あぁ、分かった。リリーナ、最後まで一緒だよ!」
「えぇ! それじゃあ、また後で」

 癖のないストレートヘアーを蒼海のカーテンの如くはためかせ、リリーナは颯爽と駆けていく。その後ろ姿をどこか頼もしいような、それでいてどこか寂しいような心持ちでロイはじっと見つめていた……。




「えーっと、持ち物は『てつのおの』に、『てつのおの』。後は『てつのおの』があるから、だいじょうぶ」
「――こんな所にいたのね、ゴンザレス」
「あ?」

 進撃の準備を整えつつある軍の中において、一際異彩を放っているゴンザレス。元山賊という経歴を活かして軍事登山に臨む彼の元へ、美しき盟主はゆっくりと歩み寄っていく。

「今日はリブローの杖も届き難い山の奥地への進軍なんだから、傷薬も持って行かなくちゃ。バアトルさんとの約束もいいけど、やっぱり用心もしなくちゃ駄目よ」
「リ、リーナ、ありがとう。おれ、きずぐすり、もっていく」

 リリーナから傷薬の入った袋を受け取り、腰紐へギュッと結わえ付ける。

「じゃあ私、そろそろ行くわね。私は今回、本隊での火力役だからまた夜営の時会いましょう」
「あ、あぅ……」

 今日は一緒に戦う事ができない。その事実にしょげる心を隠せないゴンザレスを嘲笑うかのように、一迅の風がびゅうっと吹き抜ける。

「――きゃっ!」

  ピラッ……

 背を丸める彼の脇を駆け抜けた直後、疾風はリリーナの足下を抜けロングスカートを盛大に巻き上げる。そして押さえつける彼女の手元からチラッと覗く、純白の衣――。
 それはレースの付いた可愛らしいパンティなどではなく、肌へ吸い付くハイグレであった。

「リ、リリーナ。今、それ……」
「ふふふ、バレちゃったら仕方ないわね。――ハイグレッ、ハイグレッ、ハイグレッ♪」

 動揺するゴンザレスを余所に、茶目っ気たっぷりにウインクしてみせるハイグレ人間リリーナ。賢者ドレスの上からではVラインも何も見えないというのに、その腕の動きだけでゴンザレスの気持ちはみるみる高揚していく。

「何だか私もあの日以来、ハイレグ水着着るのが癖になっちゃった。今日は配置の都合で無理だったけど、また時間があったら一緒に『ハイグレごっこ』しましょ? だって私はあなただけの……、ハイグレ人間、なんだから」
「あぁ……、あぁ……!」

 それだけ言い残して立ち去っていくリリーナを、ゴンザレスは雄叫びと共に見送る。

(リリーナ、ありがとう。ありがとう……! おれ、あんたとずっと、一緒にいたい……!)

 紡がれた絆の温かさは山賊の心を震わせ、その武骨な瞳に熱い涙を生み出す。人として大切な何かを手に入れたゴンザレスは今日も、険しい山々へ登っていく……。




* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.6 )
日時: 2019/02/09(土) 00:10:44 メンテ
名前: 牙蓮






     ハイグレ支援会話 〜テリウス大陸の聖天馬騎士〜




* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.7 )
日時: 2019/02/09(土) 00:13:02 メンテ
名前: 牙蓮


エリンシア王女を旗印に戴き、アイクを将として新たに編成されたクリミア正規軍は破竹の勢いで進軍を繰り返し、いよいよ狂王アシュナードが待ち受けるクリミア王都を指呼におさめる。
防衛線の要であるピネル砦、ナドゥス城を失ったデイン軍は戦力を王都に集結させ、徹底抗戦の構えを見せる。
――決戦の刻は近い。
軍全体に独特の高揚感を漂わせる中、クリミア軍は慎重の上にも慎重を重ねて攻撃の準備を行っていた……。



   【支援レベル:C】

エリンシア
 「――やっ! はぁっ!」

   ――ヒュンッ

タニス
 「お見事!
  この短期間によくぞ、ここまで上達されました」

エリンシア
 「ほ、本当ですか!?」

タニス
 「私は嘘も、世辞も申しません。
  神使親衛隊副隊長として、貴女が一国の王女でなければ何としても隊員に勧誘したいほどです」

エリンシア
 「あ、ありがとうございます!
  ……自分でも、信じられません。
  タニス様のご指導がなければ、とてもここまでは……」

タニス
 「新兵の教育も、私の仕事の1つでしたから。
  ただ……、こんなに感謝されては私も戸惑ってしまいそうですね。
  隊ではいつも、鬼呼ばわりされるばかりでしたから。
  なぁ、マーシャ?」

マーシャ
 「えっ!? そ、そんなことないですよ。
  みんな副隊長の事、すごく慕ってましたからっ」

タニス
 「ふっ、まぁいい。
  しかし、姫がこれほど腕を上げられたのならば、そろそろ『アレ』を試す頃合か」

マーシャ
 「え、えぇっ!?
  あ、『アレ』をですか!?
  無理ですよ! ぜーったい無理です!!」

エリンシア
 「タニス様。『アレ』と申されるのは、やはり……」

タニス
 「えぇ。訓練を開始された当初にお話しました、
  我らベグニオン聖天馬騎士団が誇る突撃陣形奥義……。
  『トライアングルアタック』習得へ向けた、特別訓練の事です」

エリンシア
 「やっぱり、私もまだ、その……。
  それをこなすには、まだ自信がありません……」

タニス
 「いいですか、姫!
  相手はあの、デイン王率いるデイン軍精鋭部隊なのですよ?
  必殺技の1つも習得しないで、どうやって戦うというのですか!?」

エリンシア
 「…………」

マーシャ
 「ふ、副隊長だけでやって下さいよ〜。
  私たちは今まで通り、堅実に頑張っていきますから。
  ねっ、エリンシア姫!」

エリンシア
 「……私、挑戦してみようと思います」

マーシャ
 「えぇ〜〜〜〜!!!」

エリンシア
 「強く……、強く、なりたいのです。
  そのためにならどんな事だって……、もう逃げたりなんかしません!」

タニス
 「よくぞおっしゃいました!
  では、私も……。
  姫の覚悟に答えられるよう、神使親衛隊仕様に戻ります」

エリンシア
 「え……?」

マーシャ
 「うそ…………」

タニス
 「さぁ、時間がないから手加減は一切せんぞ。
  二人とも、しっかりついて来い!!」

エリンシア
 「は、はい!」

マーシャ
 「うぅ……、やっぱり鬼だぁ……」



   …………
   ……
   …


* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.8 )
日時: 2019/02/09(土) 00:15:08 メンテ
名前: 牙蓮


   【支援レベル:B】

タニス
 「では、姫!
  本日より早速、必殺技習得に向けた特別訓練を開始致します」

エリンシア
 「は、はい。よろしくお願いします!
  それで、あの、タニス様……。
  そのお姿は、一体……?」

タニス
 「あぁ、これですか?
  この『ハイレグレオタード姿』こそが、奥義習得へ向けた決意の表れなのです。
  ですから姫も、それ相応の覚悟を持って臨んで頂きたい」

エリンシア
 「は、はいっ! 分かりました!」

タニス
 「お前もだ、マーシャ!
  その『赤ハイレグレオタード』を捨てなかった根性だけは認めてやるが、
  だからといって容赦は一切せんぞ」

マーシャ
 「うぅ……。
  アイクさんが追い掛けてた真っ黒な騎士も見ただけで震えが来ちゃったけど、
  副隊長の『黒ハイレグ姿』も同じように震えが……」

タニス
 「と言うことですので、姫にも早速……。
  我らと同じ、レオタード姿に着替えて頂きましょう。
  僭越ながら私の方で、姫のお体に合うハイレグレオタードを用意させましたので、
  よろしければこちらをお使いください」

エリンシア
 「あ、ありがとうございます。
  では早速、着替えてきますね……」


   シュルッ…… …… ……

   …… …… ……ピチッ


エリンシア
 「ど、どうですか?」

タニス
 「おぉ、よく似合っておいでです」

マーシャ
 「うわぁ……。
  色合いは普段着てらしたワンピースと同じだったはずなのに、
  こんなにも雰囲気変わるなんて……」

タニス
 「では姫の準備が整った所で早速、本日の訓練を開始します!
  まずは私とマーシャで基本の型を示して参りますので、
  姫はよくご覧になっていてください」

エリンシア
 「は、はいっ……」

タニス
 「ではいくぞ、マーシャ!
  ――まずはハイグレ10回1セット、始めっ!」

マーシャ
 「りょ、了解っ!」


   …………

タニス
 「――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
マーシャ
 「――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」


タニス
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

   …………


エリンシア
 「え、えぇっ……!?
  これが、そのっ……。
  奥義習得に向けた特別、訓、練……?」

タニス
 「ふっ……。
  ――えぇ、その通りです、エリンシア姫。
  この『ハイグレポーズ』こそが我ら聖天馬騎士団に伝わる秘伝の心身鍛錬法……、
  天馬騎士として更なる高みを目指す、試練の1つなのです」

 「……それと、マーシャ!
  不摂生の証か、脚の角度がイマイチついてないぞっ!
  ――次はないと思え」

マーシャ
 「は、はいっ! すみません!」

タニス
 「まったく……。
  では姫、次は貴女にも我らに続いてハイグレを行って頂き――」

エリンシア
 「えっ!? でも、そんな……。
  水着姿でま、股を、開くだなんて……」

タニス
 「……貴女も王女ですから、お恥ずかしいのは重々承知しております。
  しかし必殺技習得に向けて、これは避けては通れぬ道なのです」

 「この動作は一見簡単なように見えますが、
  案外強固な体感と足腰の持久力を必要とするのです。
  そしてその力は、宙空で天馬に跨り長時間足腰の筋肉を酷使する
  我ら天馬騎士にとってなくてはならない重要な資質……。
  お話した通り、トライアングルアタックは天馬による空中戦の中でも
  上下左右へ幾度となく高度を変える、目まぐるしい曲芸飛行能力を求められます。
  その中で戦えるだけの基礎体力を養い、強靭な足腰を手に入れるためには
  長時間のハイグレ訓練がもってこいなのです」

エリンシア
 「…………タニス様のお話はよく、分かりました……。
  でも、私は……」

タニス
 「――そんな弱気な事でどうする!?」

エリンシア
 「………っ!?」

タニス
 「いいか、我らが相手にするのはあのデイン国王なのだぞっ!
  奴の前に立った時のプレッシャーといったら、
  これまでの戦場などとは比べ物にならないものだと思え!
  己の恥にも勝てぬ軟弱者の剣が奴の喉元に届こうものなど……、
  ゆめゆめ思わぬ事だなっ!!」

エリンシア
 「…………申し訳、ありません……。
  タニス様のお言葉、胸に沁み渡りました。
  私、まだまだ覚悟が足りてなかったみたいですね……。
  先程のお言葉、心とこの
  オレンジ色のハイレグレオタードに刻み込んで精進しますのでもう一度っ……!
  私にハイグレポーズ、お教えください!」

マーシャ
 「エリンシア姫……」

タニス
 「――失礼、私も少し取り乱してしまいました……」

 「ですが! 貴女のその立ち居振る舞いは十分ご立派です。
  私の叱責に対してあのような物言いを返す隊員など、
  神使親衛隊にもそう多くはおりません。
  私も貴女の覚悟に応えるべく、
  誠意を持ってトライアングルアタックの完成に努めましょう」

エリンシア
 「あ、ありがとうございます!」

タニス
 「では、改めて……。
  姫にも我らと同じく、ハイグレポーズを取れるようになって頂きます。
  私が背後より矯正していきますので、姫はマーシャの真似をしながら
  ハイグレポーズを行ってみてください」

エリンシア
 「分かりました。
  ではマーシャ、よろしくお願いします」

マーシャ
 「こちらこそ、よろしくお願いします!
  ではいきますよ、――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

エリンシア
 「こうでしょうか……?
  ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」

タニス
 「まだまだ甘いっ!
  もっと股を開いて、腰をしっかり落とすのです!」

エリンシア
 「はいっ。
  ――ハイグレッ、ハイグレッ、ハイグレッ」

タニス
 「体が前に傾いている! もっと胸を張れ!」

エリンシア
 「はいっ!
  ――ハイグレッ、ハイグレッ、ハイグレッ」

タニス
 「声が小さい!
  それでデイン軍を圧倒できるとでも思ってるのかっ!?」

   ――パシィーンッ!

エリンシア
 「ひぅっ!?
  ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 (あぁ、エリンシア姫のお尻叩いちゃった……。
  『神使親衛隊仕様に戻す』とは言ってたけど、ほんとに大丈夫かなぁ……?)

エリンシア
 「――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

タニス
 「うむ、それなりの形にはなってきたな。
  では試しに二人でハイグレ10回1セット、やって見せろ!」
* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.9 )
日時: 2019/02/09(土) 00:18:13 メンテ
名前: 牙蓮


エリンシア
 「はいっ……!」

マーシャ
 「いきますっ……!」


   …………

マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」


マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

   …………


タニス
 「よし、これならいいだろう。
  姫にも十分、合格点を与えられる」

エリンシア
 「ハイグレッ! ハイッ――ふぅ……。
  ありがとう、ござい」

タニス
 「誰が途中でやめていいと言った!?」

   ――パシィーンッ!

タニス
 「いいか、ハイグレポーズは腕を下ろして振り上げきった所で初めて『1回』だ!
  中途半端な所でやめるなど、敵前逃亡に等しき重罪だと知れ!
  いかなる場合であろうと、私は絶対に許さん!」

エリンシア
 「は、はいっ! すみません!」

タニス
 「返事はハイグレッ!」

   ――パシィーンッ!

エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

マーシャ
 「この既視感のある光景……。
  ここって本当にクリミア軍、よね……?」

タニス
 「――よし、これで姫もスタートラインに立つことができた。
  ではいいか、二人とも!
  これからがようやく、本日の訓練メニューだ。
  まずはハイグレ10回1セット、20本。遅れずについてこい!」

エリンシア
 「えっ……? 200回が、『まず』……?」

マーシャ
 「……これが神使親衛隊なんです、エリンシア様。
  諦めてやり抜かないと、お尻が真っ赤になっちゃいますよ」

エリンシア
 「…………」

タニス
 「ではいくぞ、二人とも!
  ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

エリンシア
 「っ……。ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」


   ………

タニス
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」


タニス
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」


タニス
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」



   …………
   ……
   …




* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.10 )
日時: 2019/02/09(土) 00:20:52 メンテ
名前: 牙蓮


   【支援レベル:A】


   ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!

   ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!

   …………


タニス
 「では最後に『クロスハイグレ』1セット、始めっ!」

マーシャ
 「ハイグレッ!」

エリンシア
 「ハイグレッ!」


   …………

タニス
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」


タニス
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――」
マーシャ
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――」
エリンシア
 「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――」


3人
 「ハイグレェ〜〜〜ッ!!」

   …………


エリンシア
 「はぁ、はっ……、はぁ……」

マーシャ
 「ひぃっ……、ふっ、ふぅ……」

タニス
 「はっ、はっ……。
  さぁ立て、二人とも!」

   ――ザッ、ザッ

タニス
 「二人とも、この短期間でよくこれだけの成績を修めたな。
  特に、姫。
  貴女はつい先日ハイグレを覚えたばかりだというのに、
  もはや1日1000ハイグレを超す訓練すらも難なくこなしておられる。
  これだけの持久力と胆力、
  それに我々との呼吸も合っているのならば問題はないだろう。
  後は何度か実地訓練を行って、
  型さえ覚えてしまえば難なく我がベクニオン聖天馬騎士団に伝わりし必殺技、
  『トライアングルアタック』を習得する事ができるでしょう」

エリンシア
 「本当ですか!? ありがとうございます!」

タニス
 「マーシャも、ご苦労だったな。
  今は所属が異なってしまっているが、
  お前の働きには変わらず期待しているぞ」

マーシャ
 「副長……!
  マーシャ、感激です!」

タニス
 「では明日、最後の仕上げに取り掛かるとしよう。
  二人とも、異存はないな?」

マーシャ
 「はいっ!」

エリンシア
 「ハイグレッ! ――あっ」

タニス
 「ふふっ。新兵はみな、しばらくの間そうしたものです。
  お前にも覚えがあるだろ、マーシャ?」

マーシャ
 「そうですよ〜。
  それだけエリンシア様が頑張ったって事ですから、
  気にしないでおきましょ、ね?」

エリンシア
 「ありがとうございます、マーシャ。
  ――ところで、タニス様?」

タニス
 「はい、何でしょう?」

エリンシア
 「このハイレグは、その……。
  頂いてもよろしいのでしょうか?」

タニス
 「聞くまでもない事です。
  そのレオタードはエリンシア姫がこの数日間類稀なる努力を積み重ねられ、
  そして勝ち取った戦利品です。
  貴女に限らず、ベグニオンの天馬騎士達は皆その誇りを胸に抱いて
  戦装束の下には常にハイレグレオタードを纏うのが習わしとなっています。
  我らの想いは軍を脱走しても尚、
  ハイレグを身に着けていたマーシャをご覧になって頂ければ分かるかと思います」

マーシャ
 「それにですね!
  このレオタードって案外、下着としても万能なんですよ〜。
  って言うか、あんまり慣れ過ぎちゃうと
  普通の下着がスース―するように感じてきちゃって……」

エリンシア
 「ふふっ、そうなんですか?
  では私も、ベグニオン聖天馬騎士団員だった曾御婆様に倣って
  ハイレグレオタードを身に着けるようにしてみますね」

タニス
 「これでエリンシア姫も、我ら聖天馬騎士の一員ですね」

エリンシア
 「…………この戦いが終わったら、きっと……。
  私はこの衣装で、貴女達との絆を感じるのでしょうね……」

タニス
 「えぇ。ハイグレは絆を深め合うにも有効なものですから」

エリンシア
 「――あっ、じゃあ!
  絆を深めるために、私から他の方にハイグレをお教えしてもよろしいのですか?」

タニス
 「? それは構いませんが……。
  ですが姫、訓練開始時にも申しましたが、
  ハイグレは聖天馬騎士団の秘伝である事をお忘れなきよう。
  箝口令などは特に出されてないとはいえ、
  あまり公になる事は望ましくないのでご注意ください」

エリンシア
 「分かりました。
  でも、その点は大丈夫です。
  私が絆を深めたいのは信頼の置ける、
  最も近くにいてほしい女性ですから……、ふふっ」

タニス
 「…………」

マーシャ
 「…………頑張れ、ルキノさん……」




* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.11 )
日時: 2019/03/01(金) 22:49:51 メンテ
名前: 牙蓮






     ハイグレ支援会話 〜イタズラ呪術士〜




* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.12 )
日時: 2019/03/01(金) 22:52:11 メンテ
名前: 牙蓮


 転戦を繰り返すこの軍において、休息の刻はない。それは今日のように屋外での夜営を免れ非常時に備え造り置かれた空き砦で一夜を明かす事になろうとも、負傷者の救護や装備品の手入れ、資金、兵糧、その他物資の補給経路の手配に明日以降の行軍予定の打ち合わせと、やる事は枚挙にいとまがない。
 そんな将兵問わず誰もが慌ただしく動き回っている中でも、皆すぐに出撃できるようがっちり兵装を固めたまま。敵国グラドの軍勢、そして人ならざる魔物の集団はいつ何時現れるか分からない。そんな緊張状態の中、彼女もまた分厚いジェネラルの鎧を身に纏い慣れない廊下を歩いていたのだった。

「えっと、確かこの辺りだったはずだけど……」

 無機質な部屋番号を一つひとつ確かめていくその大きな瞳は、まだあどけない少女の面影を残す。しかし「みんなを守りたい」という熱き想いと日々鍛練に勤しむひたむきな性格は、軍内でも随一。そんな『努力の新兵』アメリアは今や並み居る各国の騎士達とも遜色ない実力を身に付け、この軍を支える立派な戦力となっていた。

「あっ、この部屋だ……!」

  ――コン、コン

「おーい、ユアーン!」

 待つ事しばし、中からくぐもった返事が聞こえてくる。

「……アメリア? ちょっと今手が離せないから、勝手に入ってきていいよ」
「えっ? う、うん。分かった」

 促されるまま木の扉をそっと押し開け中に入っていくと、そこは暗黒の世界だった。元は倉庫か何かだったと思われるこの部屋は窓の類いが一切備えられておらず、構造上確かに暗い。しかし天井から吊るされたランタン、部屋の四隅に置かれた燭台にはちゃんと火が灯されているのだから本来そんな印象は持ち得ようがないはず。
 その不可思議を成り立たせているのが、部屋の中央に鎮座する黒い魔法陣だった。五芒星を基礎に床へ直接描かれたそれは暗紫色の光を放ちながらぼんやりと浮き上がっているようにも見え、血に飢えた獣のように術者の呼び掛けに応える。そしてその真上に留まり闇の理を示している、真っ黒な魔力の塊。陣に負けず劣らず禍々しい暗黒を湛えているそれはかなりのエネルギーを秘めているのか、絶えずその残滓とも言える漆黒の帯を流星の如く四方八方へ漂わせていたのだった。

「うわぁ……」

 その様はまさに、呪われた闇の儀式。そんな催事を魔法陣の脇に立ち尽くし司っている人物こそがこの部屋の主、元魔道士見習いであるドルイド、ユアンなのであった。

「――っと、まぁこんなものかな」

 突き出して印を結んでいた両手を下ろしそんな呟きが聞こえてくると、禍々しい魔力の球はぱったりと消え去ってしまった。すると間もなく部屋に蔓延っていた闇の息吹もスルスルと幻の如く解けていき、温かな自然の灯が辺りを照らす。
 無事実験が終わった事に安堵したのかほぅと吐息を一つ漏らすと、素肌を覆い隠す丈長のローブを纏った少年は藍色のフードを取りがてら来訪者の方へ向き直る。

「やぁ、おまたせ、アメリア。こんな時間にどうしたの?」
「う、うん。えっとね……」

 先程までの陰気な雰囲気はどこへやら、街中の日向で出会ったかのような軽い口調で問いかけてくるユアン。そのあまりの落差に面食らいつつも、アメリアは一生懸命言葉を紡いでいく。

「あのね、こないだ教えてくれた石取りゲーム。ユアンの言ってた『コツ』っていうのが分かった気がするから、あたし、確かめに来たの」
「え、ホント!? じゃあ早速、試してみよう!」

 もはや完全に、闇の呪術士たるオーラはない。屈託のない笑顔で答えたユアンはおもちゃを手に喜ぶ子供の如き足取りで魔法陣を飛び越え、奥の荷物から巾着袋を取り出してアメリアへ突き出す。

「善は急げ、早速勝負だよ!
 ――この袋の中には22個の石が入っている。僕とアメリアで交代に石を取り出していくんだけれど、その時取れる石の数は最大3つまで。もちろん3つじゃなくて2つや1つでもいいけど、必ず1つは取らなきゃだめ。そして、最終的に最後の1個を取り出した方が負けっていうのがこのゲームのルールだよ。……改めて確認したけど、ここまではオーケー?」
「も、もちろん!」
「よし、じゃあここからが本番! アメリア、先に取る、後にする?」
「えーっと、石の数は22個だから……。さ、先にやる!」
「うん、わかった。じゃあ何個取る?」
「い、1個で!」
「よし、じゃあ僕は2つ取るよ。残り19個、アメリアはどうする?」

「えぇっ、2個取ったんだから……。あたしも2個!」
「分かった。僕が1個取って残りは16個! アメリア、次は?」

「1個……。1個なんだから、あたしは3個!」
「むむ。じゃあ僕は3個でどうだ!」

「ユアンが3個ってことは、残り10個……。あたしは1つ取るよ」
「僕はまた3つ」

「あたしもまた1つ」
「僕は2つにするよ」

「じゃあ、あたしも2つだね。残りは――」
「うん、1つだけ。あーあ、僕の負けか」

 口ではそう愚痴りながらも、ユアンの顔はゲーム開始時と同じく嬉しそうに綻んでいる。

「で、アメリア。僕を負かしたって事は『コツ』についても説明できる?」
「う、うん、多分……。ユアンが言ってるこのゲームの『コツ』っていうのは、二人合わせて4つずつ取り出していく事なんだよね? だから相手に最後の1つが回る事を前もって想定して、最初から4つずつ取ったら1つ多い状態を作って相手に渡していけばいい、かな?」
「うん、正解だよ。やっぱアメリアは誰かさんと違って、頭いいなぁ〜。最初は分からなくてもしっかり考えて答えを導き出してくれるから、僕も出題する甲斐があるってもんだよ」
「あ、ありがとう。あはっ」
「えへへへっ」

 ここが戦時下の要塞である事を忘れているかのように笑う、無邪気な少年少女達。しかしアメリアの眼はどうしてもその笑顔の下で揺らめく、陽の光を避ける呪術士のローブへと向かってしまう。

「……ねぇ、ユアン」
「ん、なに?」
「ユアンってどうして、ドルイドになったの?」
「いきなりだね。どうしたの?」
「だって、やっぱり全然似合ってないんだもん。いつも明るくて元気なユアンが、闇魔法だなんて……。私はてっきり、サレフさんみたいに賢者の道に進むのかと思ってたよ」
「うーん。確かにそう言われれば、そうなんだけどさ……。――やっぱり、楽しみたいから、かな?」
「楽しみたい?」
「うん、そうさ。だって理魔法や光魔法についてはお師匠様に聞けば大抵の事は分かっちゃうんだけども、闇魔法はそうはいかない。それに世間では『闇魔法は難しい』って言われて敬遠されてるみたいだけど、本当にそうなのかなって思って。僕は、そんな誰も歩みたがらない道の、お師匠様とも違う道の先にある景色を自分の目で確かめてみたいんだ!」
「ユアンって、凄いね……」

 図らずも聞けた友人の秘めたる想いに、アメリアは言葉を失う。確かに自分も心に目標を掲げて……、デュッセル将軍の教えに従って少しずつ扱える武器を増やしてきたけれども、本当に自分の道を歩めているのだろうか? 

  ――誰のものでもない、自分だけの道……

 その言葉の意味は深く、そして重い。アメリアはそんな宛てのない問いを、自らの中で何度も繰り返していくと……。

「――アメリア? ねぇ、アメリアってば!」
「えっ? な、なに?」

 図らずも嵌り込んでしまっていた思考の渦から引き戻され、反射的に目を瞬かせるアメリア。目の前に広がっているのは、友の心配そうな顔。それは首元に影を宿しているからか、どこか寂しそうにも見えた。

「なんか、しんみりしちゃったね……。――じゃあ、気を取り直して! こないだ手に入れた新しい魔道書、アメリアに見せてあげよっか?」
「えっ、でも……」

 私なんかが見ても、分かんないよ……。そう続けて口を開く間もあればこそ、ユアンはもうくるりと反転して自分の荷物を漁りに行っていた。

(もぅ、いっつもマイペースなんだから……)

 そんな友の様子に心の中でひっそり嘆息すると、アメリアも彼に続いて黒炭で描かれた魔法陣を超え奥へ進む。

「これはねぇ、掘り出し市のおじさんによると『世界に二つとない貴重な品』なんだって」
「へぇ〜。それで、どんな魔法が使えるの?」
「それはだね……、見てからのお楽しみさ!」
「見てからの、お楽しみ……?」
「うん。だから、こうやって――」
「えっ……?」

  ――バサッ!

 相槌を打ちながら何気なしに歩み寄っていると、突然闇のローブがはためいた。翻った先には、術書を構える親友の姿。アメリアが状況を理解するよりも前に、突き出された掌からは桃色の弾丸が発射され倉庫を駆ける。

「――アメリアに使ってあげるよっ!!」
「き、きゃあぁぁぁっ!?」

  パァァァン――!

 稀代の重装兵であろうと、不意を突かれれば一溜まりもない。アメリアは鎧の重量もあって完全に回避するタイミングを逸してしまい、真正面から謎の発光体をその身に受けたのだった……。



 …………
 ……
 …


* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.13 )
日時: 2019/03/01(金) 22:56:06 メンテ
名前: 牙蓮


「――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 ギラギラと輝いていた超自然の光は退行し、繰り返される奇声だけが部屋の中に木霊していく。上擦ったあどけない声色、破裂音に感じられるシルバ村独特の地方訛り……。それはアメリアにとって最も、馴染み深い声だった。

「えっ……、えぇっ!? 何なの、これっ!? ――ハイグレッ!」

 辺りを見回して思わず発した大声の後にも、たちまち口を突いて出る「ハイグレ」という謎の言葉。先程までがっちり固めていたはずの重装備は一体どこへやら、アメリアは今や赤いハイレグ水着というあられもない衣装に包み込まれていたのだった。
 引き締まったウエストは更にキュッと絞られくびれを露わし、詰め込まれた胸の膨らみが腕の振りに合わせてこれ見よがしにプルンプルンと上下する。脚の付け根辺りで激しく食い込む股布は槍の切っ先のように鋭く大地を指し示し、がに股というはしたないポーズによって必要以上に誇張されていた。

「やったねっ! 大成功っ!!」
「ゆ、ユアンッ!? これって、どういう――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 目の前で歓声を上げる親友に半ば縋るような思いで問い掛けるも、やはり言葉は途中で遮られ「ハイグレ」という単語を宛てもなく叫び続ける。

「えへへ、これはね……。『ハイグレの魔道書』っていう、新しい魔法なんだ」
「は、ハイグレの魔道書……? ――ハイグレッ!」
「うん。実際に使ってみたのは僕も初めてだったんだけど、ここに書いてあるには『対象に単一的な動作を刷り込んで一定時間身体の自由を束縛する、状態異常の術』なんだって」
「ハイグレッ! ハイグレッ! ――じゃあ、今のあたしってその、状態異常にかかって……?」
「そうさ。魔道書にはあまりないタイプの術だけれども、まぁスリープやサイレスの杖と似たようなものって感じかな」
「うぅ……。――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 説明された言葉は何となく理解できるものの、到底納得できるはずもない。詰まる所、何の前触れもなく突然魔道の実験台にされたわけだし、腹が立つ上に悲しい。ただ、何よりもまず、この際どい水着と恥ずかしいポーズだけは何としても止めてもらいたかった。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ――そっ、それで、ユアンッ? ――ハイグレッ! ――その魔道書の効果って、一体、いつ終わるのっ? ――ハイグレッ! ハイグレッ!」
「うーん。ここに書かれてた型通りに発動させたから、ほんの小一時間くらいなんじゃないかな?」
「い、一時間もっ!? ――ハイグレッ! ハイグレッ!」
「まぁ、他の選択肢はないのかって言われたら、レストの杖もあるにはあるけれど……。今の僕じゃあまだ使いこなせないから、モルダさんかナターシャさんを呼んでくる事になるけど、それでもいい?」
「……よくない、かもっ。――ハイグレッ! ハイグレッ!」

 他の仲間の名前が出てきた途端にお股がキュッと引き締まって食い込み、アメリアは恥ずかしいのだと自覚する。男性であるモルダは論外として、ナターシャにこの姿を見られた場面を想像すると……。赤面して俯かれただけでも、しばらく立ち直れそうにない。

「じゃあそういう事だから、折角の機会なんだしアメリアもこの状況を楽しんでみようよ! 新しいトレーニングか何かだと思ってさ」
「うぅ……。こんなトレーニング、いらなっ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 頭ではいくら嫌だと思いながらも、体は相変わらず股間を指し示して処理の甘い股元を親友の目の前へ突き出していく。ちゃんと処理してから来ればよかったとアメリアは後悔するばかりであったが、ユアンは好奇心の赴くままにこの状況を楽しんでいた。

「そういえば、背中の方はどうなってるのかなぁ〜♪」
「えっ!? ちょ、ちょっと! そっちは駄っ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 なけなしの抗議もそこそこに、ユアンの姿はアメリアの視界から消え簡単に背後を取られてしまう。恐らくは前以上に剥き出しなんだろうと思うけど、どうなっているか分からない自分の後ろ姿。それを他人にだけ、見られるなんて……。ただでさえ火照っていたアメリアの体が、一層ヒートアップしていく。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「うわぁ。後ろはもっと大胆で、ほとんど紐みたいだ……。特にお尻の食い込みなんてホント、ギュッと切れ上がって穴まで見えそ――」

  ギイィィィ――

 しかし、彼はまだ気付いていない。女の尻に食い入る余り、背後の扉が軋んだ音を立てて開け放たれたという事実に……。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「ユアン、入るわよ〜? ねぇ、あなたに良い知らせと、悪い知らせがあるんだけれど、どっちから聞き、た……」
「…………あっ」

 後ろ手に戸を閉めたままその場で固まっている姉テティスに、その声でようやく状況を悟った弟ユアン。二人の視線が重なったその瞬間、ハイグレコールが響く倉庫内には稲光の如き緊張感がピリッと駆け巡っていた。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「……………………」
「……………………」

 …………、………………。

「…………や、やぁ、お姉ちゃん」
「……な、何やってるのよ、あなたはぁーーーーっ!?」

  バチィィィーーンッ!!



 …………
 ……
 …


* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.14 )
日時: 2019/03/01(金) 22:59:17 メンテ
名前: 牙蓮


「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「――っていう訳で、アメリアは今、『ハイグレ人間』って呼ばれる状態異常になってるんだ」
「はぁ、まったく……」

 長いようで短い、それでいて中身のない言い訳が終わると部屋にはアメリアのハイグレコールだけが淡々と響き渡る。手近な壁際に寄りかかって額に手を当てているのは、ユアンの姉でありジスト傭兵団の一員としてこの軍に参加している踊り子、テティス。いつもは妖艶な雰囲気を纏わせている彼女もこの時ばかりはしかめっ面で聞き及んだ事の仔細を反芻し、頬へ大きな紅葉を咲かせる実弟に向け言い放つ。

「あなたって子は、いつも魔法は人に見せびらかすものじゃないって、何度も言ってるでしょ? 身体に害のない類の魔法だからって、女の子にこんな恥をかかせる真似なんかして……。ちゃんと後でアメリアに謝って、その変な魔道書は処分しておくのよ」
「え〜……」
「返事は!?」
「…………は〜い」

 がっくしと頭を垂れ、全身で魔道書への未練を示し続けるユアン。こうしてローブを纏って俯いているだけなら正真正銘、一人前の闇魔道士に見えるのに……と、頭を抱えたくなる。テティスはそんな弟に一つ溜息を零すと視線を上げ、こちらへ背を向けたまま変態ポーズに勤しむ少女へと言葉を掛ける。

「アメリアも、ごめんなさいね。後でうちの隊に支給されている『毒消し』取ってきてあげるから、それまで辛抱しててね」
「あっ、ありがとうございます! ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「はぁ……。じゃあ、私は一旦引き上げるわね。後でちゃんと二人で話し合って、解決するのよ――って、ちょっと。聞いてるの、ユアン?」
「…………」

 去り際にもう一度念を押そうと振り返ったテティスだったが、尚も顔を上げようとしない弟につい親心が刺激されてしまう。ここで甘やかしてしまえば、絶対あの子のためにならない。後ろ髪を引かれる思いも分からないではないけれども、ここは心を鬼にしてあの魔道書を取り上げるのが彼のためだと再び部屋の中へ踏み出した刹那――。

「――なんてねっ!」
「えっ? ――きゃあぁっ!?」

 まさにその時を待っていましたと言わんばかりに、すくっと立ち上がったユアンの手元がキラリと輝き正対したテティスの体を桃色の光が襲う。

「きゃあぁぁぁ〜〜〜〜っ!? ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 球状に展開した発光体がバチバチと明滅し消え去ると、そこには変わり果てた姉の姿が……。おへそを出したセパレート型の踊り子衣装はもはや見る影もなく、質素な茶色のハイレグ水着を身に纏って股を開く変態ダンサーの姿がそこにはあった。

「ゆ、ユアン! あんっ……。あなた、最初からっ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「へへーん! どんなもんだい! この魔道書、見た目の割に結構高かったんだからね。そんな簡単に手放したりなんかしないよ」
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――分かったわっ。お姉ちゃんもちょっと、言い過ぎ、――ハイグレッ! ハイグレッ! ――だからまずは、このっ……! 変なダンス、やめさせ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「……じゃあ、もう捨てろだなんて言ったりしない?」
「あなたが、イタズラしなかったらねっ……! ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「うーん……。なら、もう少しそこでハイグレしててもらうよ」
「なっ……!? ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「ほら、やっぱり反省なんかしてない。お姉ちゃんも自分が悪いと思ったんなら、たまにはお灸を据えられるべきだと思うんだ」

 そう言うとユアンはフードを目深に被って歩みだし、ハイグレポーズに勤しむテティスの脇をすり抜けていく。

「じゃあ、そういう事で。折角アメリアも一緒に居るんだから、二人でしっかり楽しんでね〜」

  ――ガチャッ

「ま、待ちなさい、ユアン! ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 テティスの呼び声も虚しく、ユアンは二度と振り返る事なく部屋からの逃走に成功する。残されたのは互いに一歩も動けず立ち尽くす、哀れなハイグレ人間二人だけだった。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――はぁ。うちの子がごめんなさいね、アメリア。あなたも今日の戦いで疲れてるでしょうに、――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「い、いえっ。あたしこそ……。テティスさんまで、巻き込んじゃって。――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 二人とも部屋の奥を向く形で――、アメリアのちょうど真後ろにテティスが並ぶ形でハイグレポーズに勤しんでいるため、直接顔を合わせ話す事はできない。激しく動く肩甲骨周りに、一呼吸毎に瑞々しく跳ねる素っ裸のお尻。自分もこんな無様な姿を戸口へ晒しているのだろうと思いながら、テティスは水着を食い込ませていく……。



 …………
 ……
 …


* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.15 )
日時: 2019/03/01(金) 23:02:54 メンテ
名前: 牙蓮


  タッタッタッタッ……

「おい、どうしたんだ? そんなに慌てて」
「すみません、急いでるんでっ!」

  タッタッタッタッ……

「危ないじゃないですのっ! レディに失礼ですわ!」
「ごめんなさい、気を付けます!」

  タッタッタッタッ……

 石造りの廊下へ響く、慌ただしい足音。仲間達に声を掛けられ、注意を受けながらもユアンは一向に足を止める事無く砦の中を縦横無尽に駆け巡っていた。ほとぼりが冷める頃まで、どこかに隠れなきゃ……! その一心で人気のない場所をあてどなく探し求め、遂には指揮官であるエイリークが本陣を置く最上階から一つ下のフロアに位置する、小ぢんまりとした一室へ駆け込んでいった。

  ――バタンッ!

「ふぅ……。ここなら誰にも見つからずに、やり過ごせそうかな……?」

 膝に手を当て前屈みに息つくその口からはそんな独り言が漏れ出してくる。今のユアンを包み込んでいるのは全力疾走の疲労感よりも、上手くやってやったという一種の達成感。憎たらしく吊り上がる口端を抑えられないまま勢いに任せて扉を閉じてしまうと、嵐の如き逃避行は瞬く間に静寂の中へと消えていった。
 ――刹那、漂ってくるのは底冷えを誘う夜更けの空気に、どこか懐かしさを覚える古びた紙の匂い……。今更ながらにして顔を上げてみると、左右からはギザギザと不気味な陰影をその身に連ならせた巨大な獣が来訪者を見下ろしており、体内に蓄えた知の魔力を以て圧倒してくる。刺激される修練に費やした日々の記憶、ユアンはようやくここが書庫なのだと認識する。
 すると――。

「――どなたですか?」
「えっ? う、うわぁっ!?」

 自身とは余りにも対照的な、抑揚を感じさせない呼び声が飛んできて思わずその場ですくみ上がる。薄闇の中改めて目を凝らすと整然と並べられた椅子や机よりも更に奥に見える、明かり取り用の大窓の麓に一つの影がぼんやりと浮かび上がっていた。

「えっと、君は……?」
「名乗る必要がありますか、ケンジャサレフノデシユアンさん?」

 ゆったりと窓辺に腰掛け、月明かりで読書するローブ姿の少女。その声は徹底して淡々としており、問いかけに眉一つ動かす様子もない。そんな彼女のエキセントリックな言動はもはやこの軍ではすっかりお馴染み、稀代の天才魔道士少女ルーテの姿がそこにはあった。

「もうっ、またそうやって僕の事からかって! 僕の名前は『ユアン』なんだって、何度も言ってるじゃないか」
「そうでした。それでユアンさん、私に何か御用でしょうか?」
「いやぁ、別に何か用があるって訳じゃなんだけれども……。ひょっとして、邪魔しちゃったかな?」
「はい。今は読書中ですから、全ての物音が雑音に違いありません」
「そ、そっか……」

 それっきり会話はパタリと途絶えてしまい、気まずい沈黙が場を満たす。鳴り響くのはただ一つだけ、ページをめくった時に立つ微かな紙擦れ音のみ……。

「……ね、ねぇ」
「はい、何でしょう?」
「僕もこのまま、この部屋に……。いちゃ駄目、かな……?」
「別に構いません。私の邪魔をしないのであれば、無理に追い出す必要もないでしょう」
「そっか。ありがとう……」

 何とも要領を得ない答えだとは思いながらも、ようやく許しを得た事でユアンは恐る恐る手近な椅子へと腰掛ける。再び訪れた静謐の中何か暇潰しになる物はないかと改めて部屋の本棚を見回してみるも、殆どが軍事関連のタイトルばかりでイマイチ興味を惹かれない。かと言って窓際のルーテへ視線を戻した所でそのアメジスト色の瞳と見合う事はもうないのだから、退屈な事この上ない。
 そのルーテはというと、ユアンへの興味を失った今ただ脈々と本の文字列へ目線を注ぐばかりであり、まるで同席者がいる事さえ忘れてしまったかのようだった。

  ――それはまさに、「構ってください」と言わんばかりの無防備状態……

 静寂に飽きてぶらぶらと足を揺すっていたユアンの中で、悪い癖が再び鎌首をもたげつつあった。

「…………ねぇ、ルーテ?」
「はい、何でしょう?」
「ルーテはさ、新しい魔道とかにも詳しかったりするんだよね?」
「えぇ。私、優秀ですから」
「じゃあさ……。『ハイグレの魔道書』って、知ってる?」
「……『ハイグレの魔道書』?」
「うん。こないだ古本市に寄った時、偶然手に入れたんだ。ルーテはいつも闇魔道の事を『天敵』って言って警戒してるから、今後の研究のためにも一度見せてあげようかなぁ〜って思ってさ」
「…………そうですか」

 返答はちゃんと与えてくれているものの、その言葉からはイマイチ感情というものが読み取れない。そんな彼女の冷めた様子に半ば業を煮やして、ユアンは飛び出すようにして立ち上がった。

「もうっ! ちゃんと僕の話、聞いてるっ!? 一度しか見せられないから、どうなっても知らないよ?」
「…………」
「ちゃんと伝えたからね! じゃあ早速、――えいっ!」

  パアァァァ――

 無言で流されているうちに自ら油を被ったかの如く勝手にいきり立っていったユアンは、問答無用にハイグレの魔道書を発動させる。いいさ、ぶっきらぼうでいられるのも、今のうちだよっ! 君はどんな姿でハイグレしてくれるんだい……!? そんな妄想に胸を高鳴らせ、いつも澄ましたルーテのあられもない姿を思い浮かべながら駆け抜ける桃色の弾丸を喜色満面で見送っていくユアン。
 しかし――。

「――えい」

  ――パチンッ!

「!!?」

 そんな彼の目の前で、信じられない出来事が起こった。つい先程まで確かに本のページを捲り終え、弛緩し切っていたルーテの右手。そのすらりとした細腕が着弾の間際に持ち上がって、徐に突き出されたかと思うと、何と! 命中するはずだったハイグレ光線を鏡か何かのように受け止め、その掌で跳ね返してみせたのだった。

「な、何で――。うわあぁぁぁっ!?」

 そう呟く間もあればこそ。勢い衰えず、いや、却って加速した桃色光線は瞬く間に書庫の暗がりを飛び越え、呆気に取られる哀れなドルイドを呑み込んで炸裂したのだった……。



  …………
  ……
  …


* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.16 )
日時: 2019/03/01(金) 23:07:05 メンテ
名前: 牙蓮


「――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 ギラギラと輝いていた超自然の光は退行し、繰り返される奇声だけが部屋の中に木霊していく。声変わり前のあどけない声色、「イ」の音に感じられるポカラの里独特の言い回し……。それはユアンにとって最も、聞きたくない声だった。

「う、うぅ……。どうして、こんな事に、――ハイグレッ! ハイグレッ!」

 信じられないと首を振りながらも、たちまち口を突いて出てくるのは「ハイグレ」というたった一音のみ。先程までの幾重にも重なった闇のローブは今や見る影もなく、好奇心旺盛な彼は女物の真っ青なハイレグ水着一枚という情けない姿で立ち尽くしていたのだった。
 光線の作用は男性であろうと関係ない。まだ未発達ながら少し厚みの出てきた胸板は女性とはまた違った意味で薄い布地を下から押し上げ、ピンと一対の突起を浮き立たせる。くびれのない腰から容赦なく食い込む急角度の足刳は腕の上下運動と共にここを見てくださいとばかりに股元へ寄り集まっていき、その先端にぶら下がる可愛らしい膨らみをユサユサと見せつけていた。

「――ふむ。やはり、仕掛けてきましたね」
「ハイグレッ! ハイグレッ!?」

 トン、と軽やかに棧を降り、ルーテが淡々と言い放つ。

「あの様な謳い文句を真に受けて、自分こそが絶対だと信じて疑わなかったからです」
「ハイグレッ! ハイグレッ! ――ど、どういう、事……!?」
「あの魔道書を買い求めたのは何も、あなただけではなかったという事です」

 粛々と刻まれる歩の一音一音が、妙に耳に突き刺さって離れない。そんな中彼女は月明かりから僅かに身を逸らし、先程まで読んでいた書籍の表紙をユアンにも見えるよう分かり易く掲げてきた。
 闇夜に浮かぶその装丁は、歪な楕円形に青と黄色のけばけばしい配色。それはまごう事なき、ユアンが先程まで手にしていた『ハイグレの魔道書』と何一つ変わらない特徴的な紋様だった。

「どうして君が、その魔道書をっ!? ――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「いいですか、商売人というものは何よりもまず、自分の商品を手に取って見てもらいたいものなのだと『カルチノ商人魂』第一章第一節に書いてありました。ですからあの商人はああやって手段を選ばず、『世界に二つとない貴重な品』だと煽って珍品を手当たり次第に売り捌いていたんです」
「ハイグレッ! ハイグレェッ!?」
「そしてあなたはまんまとその気にさせられて、珍しいとはいえある地方の愛好家達の間で細々と受け継がれてきたマイナー魔道書を言い値で買わされてしまったのです。……近頃で言えばフォルデさんの顔に落書きする姿を見ていましたから、二人っきりになった地点で襲撃してくるという事は容易に予測できます。たとえ私の扱えない闇魔法であろうとも、こうして手元に文献があり解析を終えた術式であれば簡単に対応策も立てられたという訳です」

  ――私、優秀ですから

 その有無を言わさぬ確固たる響きに、ユアンはただただ言葉を失うしかない。天賦の才能を持つと師に認められ、世界を巡り行く連戦にも参加させてもらった実績も今は昔。上手く世渡りできるようになったと密かに抱いていた自信が、ガラガラと音を立て崩れ去っていく。

「さて、それでは折角の機会ですので、隅々まで観察させて頂きます」
「ハイグレッ! は、ハイグレェッ!?」

  ――ギュッ

 そう言ってルーテは向かい合う距離まで至極真面目な顔で歩んできたかと思うと、突然ユアンの股元へ手を伸ばしピンと張りつめたハイレグ水着を掴んだ。その場所は当然、彼女にとっては未知の領域であるもっこり膨らんだアソコ……。その感触に「ふむ」と感じ入っている傍ら、膨らみはどんどんと盛り上がってその姿形をはっきり浮き上がらせ、肉棒の先からツンと鼻を突く香りを部屋中に撒き散らした。

「ハイグレッ ハイグレッ ――あぁ……。ハイグレェ……」

 対するユアンのハイグレコールはそれまでの勢いがみるみるうちに削ぎ落とされ、絶頂の余韻を感じさせる。水着越しに感じた、女の体温。それが彼の中で一気に膨れ上がり、ハイレグ水着に束縛される圧力を快感に変えて烈火の如く爆発したのだった。

「やはり、触れられただけでイキましたか。『ハイグレ魔道書』第三章二節に記載されていた通り、ハイグレ人間となった事で性的感覚が増長されているようですね」

 ぺろりと染み出て自らの右手を汚した白濁液を舐め取り、ルーテは真顔で尚も語る。

「では続きまして、第三節の記載通り足刳の食い込みだけで連続絶頂が可能かどうか、実際に試して――」
* Re: ファイアーエムブレム短編集 ( No.17 )
日時: 2019/03/01(金) 23:10:51 メンテ
名前: 牙蓮


  ――バタンッ!

 ルーテの実験宣告もさることながら、突如鳴り響いたけたたましい物音にユアンは戦慄する。内の熱気がたちまち吸われていき、代わりに取り込まれた廊下の空気が剥き出しの背中をひやりとくすぐっていく。そしてその勢いに負けじと慌ただしい足音を立てて、二人の女性が駆け込んできた。

「ユアン、ここなんでしょうっ!? もうっ、私までハイグレ人間なんかにして、まったくあなたは……!」
「あたし、今日は前線続きでへとへとだったのに、ひど――って。えぇっ!?」

 ハイグレの呪縛から解き放たれ、自由と尊厳を取り戻したテティスとアメリア。彼女達は一時間を苦難の乗り越え互いの無事を確認し合うとユアンの後を追ってここまで来たのだが、踏み入った書庫の惨状を目の当たりにして思わず絶句する。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 沈黙の中響き渡る、ユアンのハイグレコール。その静寂を破ったのはもちろん、忖度とは到底無縁のルーテその人であった。

「こんばんは、アメリアさん、テティスさん。その口振りからするともしかして、あなた達もハイグレ光線を撃ち込まれたのですか?」
「『あなた達も』って、まさか……。あなたも、この子のイタズラに?」
「はい。ですが、予め想定していましたので、私の魔力も上乗せした弾丸を本人に浴びてもらいました。ですから彼はきっと、定型の一時間よりもずっと長く、一晩程はハイグレ人間のままでしょう」
「そ、そうなんだ。さすがルーテさんっていうか、何て言うか……」

 今の言葉で先程の不意打ちを思い出したのか、アメリアはびくびくとした様子でルーテに問い掛ける。

「それで、ルーテさんは、今……。何、してたの?」
「はい。これは唯一無二の機会と言っても過言ではないため、魔道書の文脈に従って射精実験をしていました」
「しゃ、射精っ……!?」

 うぶな彼女らしく、その言葉を聞いただけで耳まで真っ赤にして燃え上がる。しかし、

「じゃあ、あなたはハイグレ人間になって身動きできないユアンにイタズラし返してたって事?」

 幼い頃から海千山千な人生を送ってきたテティスにとって、その程度の言葉は驚きに値しない。状況を見極めつつある彼女は逆に、ルーテに聞き返したのだった。

「イタズラとは心外です。これはまだ効能のはっきりしていない、この魔道書を解析するための立派な研究活動です」
「ふ〜ん、研究活動、ねぇ……」

 彼女の言い分を聞いたテティスはしめたとばかりにそう呟く。そして軽快な足取りで部屋の中へ踏み込んだかと思えば、旗色悪しと引きつった笑みを浮かべるユアンへ向けてもったいぶったように囁きかける。

「ねぇ、ユアン? お姉ちゃん、良い話ともっと良い話があるんだけど、聞きたい?」
「ハイッ……! ハイグレェッ!」

  ドピュッ――

 耳元へ吹きかけられる吐息にくすぐられ、彼のイチモツは再び大爆発を巻き起こす。実の姉に欲情して、射精する。それ程までに彼はハイグレの魔力の虜となり、水着の締め付けだけで簡単に達せられていた。

「お姉ちゃん、ルーテの研究を手伝おうと思うの。だって、彼女はこの軍一の魔道士と言っても過言ではないと思うし、信頼できるもの。今後どうするかは別として、ちゃんとその魔道書について調べてもらって、知っておくに越した事はないわ」
「ハイグレッ! うぅ……。ハイグレェッ!」
「そして、もう一つ。イタズラ好きな坊やには、ちゃんとしたお仕置きが必要だわ。本当はお尻ペンペンとかで許してあげようと思ってたんだけど、まさか自分が仕掛けたイタズラによって懲らしめられる機会ができるなんて、フフッ……。そうしたらきっと、一杯、いーっぱい、反省するわよね?」
「ハイグレェッ! ハイグレェッ!!」

  ドピュゥッ――

 一つひとつの言葉によって体を小刻みに震わし、三度目の射精を行うハイグレ人間ユアン。その余りに弱々しい姿からは普段の快活さは微塵も感じられず、復讐心を秘めた女性達の心は次第に昂らされていく。

「フフッ、昔は私が洗ってあげてたのにね。ちっちゃくて可愛いオ○ンチンが、こんなに膨らむようになっちゃって♪ アメリアはどうかしら?」
「あはっ。エッチなのはあんまり好きじゃないですけど、偶にはユアンにイタズラしてみるのもいいかもっ♪」
「ハイグレッ!? ハイグレッ!? ハイグレッ!?」

 いくら首を振って抵抗の意思を示そうとも、がに股に開かれた脚は一向に動いてくれない。右側には蠱惑的な笑みを浮かべる姉の姿。左側にはこの場に不釣り合いな笑みを浮かべる純真無垢なアメリア。女物の水着姿で美女に囲まれた哀れな少年は完全に逃げ場を失い、魔道書を広げた天才賢者の下知が無情にも言い渡される。

「では、お二人の了解も得られましたので、改めてハイレグ水着の食い込みによる連続絶頂検査を行います。テティスさんは右側の足刳を掴んで、アメリアさんは左側から一斉に引き上げてください」
「えぇ、分かったわ」
「あはっ、楽しみ♪」
「ハイグレッ!? ハイグレッ!?」

 ピタッと両側から異性のきめ細かい手先が素肌に触れて、ユアンの男根はみるみるうちに膨張していく。

「では、せーのっ――」

  「それっ!」
  「えぇいっ!」

「ハイグレエェェ〜〜〜〜ッ!!?」

  ドッピュウゥゥゥ――

 元ハイグレ人間達の食い込みは一切容赦がなく、切れ上がった足刳は遠く胸元辺りの高さにまで引き上げられる。糸のように細くなった青い股布、締め上げられる股間……。そしてポロリと溢れ出た勃起チ○ポからは、純白の放物線が宙に描き出される。

「ふむ、先程までの射精と違って、今回は勢いがありますね。やはりハイグレ人間にとって水着の食い込みというものは、一味違うという事ですか」
「はぁ、はぁ、――ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ――もう、やめさせ、て……」
「……冗談はやめてください。『連続』と銘打った以上、一回で終わるはずがありません」
「そ、そんなぁ……。――ハイグレッ! ハイグレッ!」

 必死の懇願にも全く取り合おうとしないルーテを止める手立ては、彼にはない。そんな中、二度目の快楽がすぐそこまで迫ってくる。

「ほら、ユアン。行くわよ〜」
「あはっ、なんだか楽しくなってきちゃった」
「ふ、二人とも、ごめんなさい……! もうイタズラしたりしないから、許――」
「それっ――」

  「せーのっ!」
  「せーのっ!」

「ハイグレエェェ〜〜〜〜ッ!!?」

  ドッピュウゥゥゥ――

 再び湧き起こる、白い大噴水。その質量は未だ衰える事を知らず、足元の精液溜まりはまた一回り大きくなる。

「まだまだこれからです。書には『連続三八回射精も記録されている』とありますので、どんどん食い込ませてください」
「分かったわ♪」
「あはっ♪」
「ハイグレッ!? ハイグレッ!?」

 こうして並々ならぬ復讐心と好奇心によって形成された秘密の矯正折檻は、夜が明けるまで続いていったのだった……。




Page: [1]
 
BBコード
テキストエリアで適用範囲をドラッグし以下のボタンを押します。
装飾と整形

フォント
この文字はフォントのサンプルです
リスト
標準  番号付  題名付

スマイリー
表とグラフ
データ入力
ファイルから入力(txt/csv)
要素の方向:
横軸の数値:
横軸の値 例:2009,2010,2011,2012
直接入力
凡例
カンマ区切り数値 例:1,2,3
横軸の値 例:2009,2010,2011,2012
オプション
出力内容
グラフタイプ
区切り文字
縦軸の単位例:円
横軸の単位例:年度
マーカーサイズ
表示サイズ
確認と適用
Status表示エリア
プレビュー
絵文字
連続入力
外部画像
  • 画像URLを入力し確認ボタンをクリックします。
  • URL末尾は jpg/gif/png のいずれかです。
確認ボタンを押すとここに表示されます。
Googleマップの埋め込み

  • 説明
  • 説明
確認ボタンを押すとここに表示されます。
HELP
題名 スレッドをトップへソート
名前
添付FILE 文章合計600Kbyteまで
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

※必須

   クッキー保存