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* eight knights

日時: 2013/11/16(土) 10:43:35 メンテ
名前: RTI

長い事、放置していて申し訳ありませんでした
完結に向かって努力しますので、これからもお願いします
出来る限りの更新を心がけます


リーティス・エルギア
リアティーン出身、七騎士の一人で二刀の扱いに長けている
責任感の強い性格で、民のことを第一に考える騎士を志す
ヴィアの婚約者であるが、過去にリヴと関係を持っている


ユリレイ・ディアーネ
リアティーン出身、七騎士の一人で隊長、槍の扱いに長ける
気の強い性格でリーティスの師的存在
七騎士一の実力者でありながらも主への忠誠心は相当


ローディア・デュダル
リアティーン出身、七騎士の一人で近接武器の扱いに長ける
冷静な性格であり、ユリレイの後を追う程の実力の持ち主
リーティスの考えは綺麗事を並べてる程度にしか思っていない


リエン・フェンジュ
リアティーン出身、七騎士の一人で鎖鎌の扱いに長ける
初対面の人でも文句ははっきりと言う程、勝ち気な性格
リーティスの幼馴染で悩みの相談相手でもある


ヂュム・ディアーネ
リアティーン出身、ユリレイの妹
素直で努力家、リーティスのことをとても慕っている
元々は七騎士を目指していたが、ユリレイに反対されて諦めることになったが・・・


ライリシュ・メーティ
機械国マグナリート出身、七騎士の一人で銃の扱いに長ける
性格が合わないのか、リーティスの実力を認めていない。孤児の妹二人と一緒に生活を送っている
棘のある性格に見えるが、本当は心優しい


シャラン・マテリア
ラーテン出身、七騎士の一人で癒魔法の扱いに長ける
元より優しい性格でリーティスと同期であり、信頼している
自分の生命を削って癒しを与える治療魔法の類稀ないセンスを持っている


ティフィル・レーシュトラス
ラーテンの王女妹、七騎士の一人で光魔法の扱いに長ける
行動的な王女であり、勝利のためなら自己犠牲をも構わないと思っている
ラーテンの仕来たり故、光魔法の使い手として七騎士の一人になる


ヴィア・ヴァルキュリー
リヴの妹であり、リアティーンの王女
国のためという理由ながら、リーティスとは婚約相手同士
リヴが聖戦士の力を受け継いだため、ヴィアには力が微量しか受け継がれていない
優しい性格ながら、自分に力がないことに悩んでいる

 
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* Re: eight knights ( No.1 )
日時: 2012/01/01(日) 00:11:37 メンテ
名前: RTI




「ねぇ、・・・・・は私のこと守るっていつも言ってるよね。」
「はい、・・様を御守りするのが騎士である私の役目です。」
「えっと、えっと、じゃあ私が悪い人に襲われそうになったら助けてくれる?」
「勿論です。」
「じゃあ、私が悪い人にさらわれても助けてくれる?」
「当然ですよ。私は・・様を守るためでしたら、何でも致します。」
「本当?う〜ん、じゃあ私も・・・・・に守られてばっかりじゃ嫌だからぁ、何かしないと。」
「いいんですよ。・・様が笑顔でいてくだされば。」
「嫌!私も何かする。あ、私が・・・・・のお願い事叶えてあげる!何でも言って!」
「え、そんな急に言われても。」
「早く早く!」
「えーっと、それじゃあ・・様が立派に成長なさられた時にもお傍にいたいですね。私の主君は・・様ですから。」
「そんなことでいいの?それなら、何もしなくても叶えられちゃうや。」

「どんな時だって守ってね・・・・約束だよ。」




夕陽色に染まる 大国リアティーン
世界一の権力を握るこの国でも時間は全てと同じように流れて行く。
城下町を出た近くの丘、リアティーン城の見える高台。
その高台の一番乗り出した部分で後ろ髪を束ねた鎧姿の一人の若者がただ広い街並みを、高く聳えるリアティーン城を、青いマントをなびかせながら眺めている。
「・・・・・・・・・。」
とうとうこの日が来たか。
もう戻られないのですか・・・・・。
「どうした、リーティス。考え事か?」
背後から女性の声が聞こえた。
ゆっくりと振り返ると、鎧ではあるが、軽装備の短い金髪の女性が立っていた。
「ユリレイ様、どうしてここが・・・・。」
「お前はいつもここに来るからな。」
ユリレイ様は私の横に立ち、街の方を見つめる。
「明日の朝は婚礼の儀・・・・生涯の愛を誓い合う。ヴィア様との結婚、私は心から祝福しよう。」
ユリレイ様が私のことを祝ってくれている。
だけど・・・・・・
「・・・・・・・・・・。」
「どうした?なぜそんなに悲しそうな顔をする。」
ユリレイ様が私の顔を覗き込む。
「何でもありません。」
「・・・・・・そんなに彼女のことが気になるか。」
「・・・・・・・・・。」
ユリレイ様は彼女のことを言っておられる。
確かに私はそのことばかり考えている。
・・・・私はそれ以上に自分が罪を犯すことに恐れている。
婚礼の儀を終えた時、私は大罪を犯したことになる。
それが・・・・怖い。
「ふっ、お前が我々七騎士に選ばれた時は驚いたな。」
ユリレイ様は気を使ってか、話題を変える。
「私はただ・・・主君への忠義を通したまでです。」
「はははは、相変わらずだな。」
ユリレイ様が隣で嬉しそうに笑う。
「ユリレイ様・・・・あの方は帰って来られるでしょうか。」
「帰ってくる・・・リーティスがいつも言っていることだろう。」



リアティーン七騎士
類稀ない才能、血のにじむような努力
どちらも兼ね備えた者だけがなることができる
「リーティス、そろそろヴィア様の元へ向かったらどうだ。明日の儀の話でもするべきだろう。」
私に気を使ってくれているのだろう。
ユリレイ・ディアーネ、リアティーン七騎士のリーダー。
彼女は私の師であり、目標。
「いいのでしょうか・・・?」
「何を躊躇う。お前の婚約相手だろう。」
「・・・・・・・はい、それでは失礼します。」
高台を後にし、私の婚約相手であるヴィア様の元へと向かうべく、城下町へと入って行った。



リアティーン城下町
この世界で一番、活気ある街。
人口も遥かに多い・・・リアティーンはこの世界の中心とも言える。
「リーティス様!御結婚おめでとうございます!」
「リーティス様もヴィア様もまだ若いのに、本当におめでとうございます。」
露店の出ている街中を歩いていると、町人達が私の周りに集まってくる。
リアティーン七騎士だからと言うよりは、ヴィア様との結婚相手であるからだろう。
確かに、私もヴィア様もまだ結婚するには早すぎる年齢かもしれない。
だけど、私にとって、それは大した問題ではなかった。
「あ、あはは、ありがとうございます。」
沢山の人々がいきかう中をかき分けながら進む。
リアティーンの民達は皆、いい人ばかりだ。
こんな私ですら、七騎士の一人として信頼してくれている。
「リーティス、いい品物入ってるよ。今度見においで。」
「あ、はい!今度是非!」
多種多様な服を着こなす人々がこの国には多い。
流石にこれだけ広い国だ。他文化が入ってくるのはちっとも不思議でない。
これ程の人がいる中でも、見知った商人や知り合いの町人と出会う。
本当に賑やかな街だな。



リアティーン城
街が広くて、ここまで戻ってくるのに随分とかかってしまったが、まだ日は落ちていない。
城橋を渡り、城門をくぐる。
この城も目の前まで来ると、相当大きく見える。天高く続いている。
リアティーン七騎士はこの国の精鋭部隊に当たる。
勿論、七騎士以外の者達で作られた騎士隊がある。
そんなことを思いながら、城の見回りをする兵の前を通り過ぎる。
そのまま、城の扉を開き、中へと入って行った。

城内に戻ると、扉のすぐ近くに一人の少女が俯きながら立っていた。
赤と黒を基調にした布服にふわふわした長めの真っ白なスカートを穿いた彼女は城の中では少し浮いている。
何と言うか、正直、町娘の格好と言うべきだ。
「ヂュム?一体何をしてるんだ。」
私が声をかけると、少女はハッとして顔を上げる。
ユリレイ様の髪と同じ綺麗な金色の髪、両サイドに肩までかかる程、結んだ髪を垂らしているのが伺える。
髪につけた小さな赤い薔薇の花が彼女のお気に入りらしい。
ただ、どこか不安そうな彼女。
遠方を見定めるかのような青い瞳で私の方を見つめている。
「り、リーティス。」
「おいおい、こんなところまで来て、一体どうしたんだい。」
私は歩み寄ってくるヂュムを手で静止する。
彼女は不満そうながらも、足を止める。
「・・・・り、リーティス、お姉様と何か話していらしたんですか。」
真っ直ぐに私を見つめ、質問をぶつけてくる。
「いつもの七騎士についての話しさ。」
優しく言い返すと、彼女は再び俯いてしまう。
「明日は・・・・婚礼の儀ですね。」
「あぁ、そうだね。」
「やっぱり、リーティスはヴィア様のことが好きなのですか。」
ヂュムの言葉は凄く意味あり気だった。
こんなに幼い子に言われたことを強く受け止めちゃいけないのは分かっているが。
私は彼女の頭を優しく撫でる。
「ヂュムは私のことなんて気にしなくていいんだよ。」
「・・・・そうやって子ども扱いしかしないんですよね。いつも。」
一度顔を上げるが、何だか悲しそうな顔をして、目を反らしてしまう。
「そんなつもりはないんだけどな。じゃあ、ヂュムは私にどうして欲しいんだい?」
私が聞くと、ビクッと反応して、こちらを見る。
「い、いえ・・・・私は、その・・・・・何でもないです!」
ヂュムは焦り顔に変わり、走り去って行ってしまった。
ヂュム・ディアーネ、両親は既におらず、ユリレイ様の血の繋がった妹。
元々、ユリレイ様に憧れて七騎士所属を目指したらしいが、武具の扱いは並みの腕。
既に七騎士を目指すのは諦めたんじゃないか、確か。
まぁ、あんな幼いのに努力しようと決めたことに私は凄いと思ったが。
そう言えば、ユリレイ様に紹介されてから、血族のように慕ってくれたかな。
そんなことを思いながらも、私はその場を後にした。


* Re: eight knights ( No.2 )
日時: 2012/01/01(日) 00:14:48 メンテ
名前: RTI


聖域・・・それが、リアティーンの女王様の玉座がある場
高く聳えるリアティーン城の一番天に近い場所に位置している
「リーティス・エルギア、ただいま参りました。」
私は聖域の扉を開き、中へと入る。
中は一面白に覆われ、とても涼しくなっている。
奥には玉座に座る一人の女性。
綺麗な長髪の彼女は流れるような白いドレスを着ていて、とても神々しい。
何より、立っているだけで伝わる、風格。
黄金に輝くティアラはリアティーンの女王である証。
優しげな赤い瞳で私の方を見つめている。
私は玉座の前まで進み、跪く。
「リーティス、ヴィアは部屋にいますよ。呼びに行かせましょうか?」
婚約相手であるヴィア様、だけど、今は違う理由でここに来た。
「いえ、本日はあなた様に用があります。」
「私にですか。何でしょう。」
「国の為にヴィア様と結婚するのが本当に正しいことなのでしょうか。」
ヴィア様はこの国の王女。
民達の不安を抑えるためとしても、一人の騎士である私が婚約など許されるのだろうか。
「・・・・・・・・・。」
「お答えください・・・・Lisia-sya vallkyrie様。」
この国の女王、リシアーシャ様。
かつて、闇に包まれた世界を救った聖戦士様。
伝説通り、白いローブを身に纏い、輝く大剣を振りかざし、闇を断ち切った。
「・・・・・リーティス・エルギア。」
「・・・・・・・・・・はい。」
「あなたは・・・・まだ、あの子のことを思っているの?」
リシアーシャ様の顔つきが凄く悲しげなものに変わった。
彼女にとって、あの出来事は辛かったに決まっている。
「私は・・・・もう、彼女のことは・・・・・・・・・・。」
「無理しなくてもいいのですよ。あなたにとってもあの子は特別だったと思います。」
リシアーシャ様は私に何と言って欲しいのだろうか。
もしかしたら何も望んでないのかもしれない。
ただ、今のリシアーシャ様が悩み、苦しんでいることだけはわかる。
「それでも・・・・今はヴィア様のことを考えないといけないと思っています。」
「・・・あなたの言う通りです。私はあなたがヴィアのことを愛してくれるのなら・・・それで。」
本当は心のどこかで彼女のことを気にかけていた。
でも・・・・それは正しいことではない。
「私は・・・ヴィア様を生涯愛し続けます。」
恐ろしくとも、大罪を背負わなければならないことだった。



聖域を出て、自分の部屋へと戻る。
やはり心は晴れない。
リアティーン七騎士には城の中にそれぞれの部屋が用意されている。
今、三人の騎士はこの国にいないが。
部屋の中はとても綺麗、真っ赤な絨毯に、良質素材で作られたベッド。
私はベッド近くの椅子に腰をかける。
少し、落ち着いてきたところで部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「入ってもいいですか?リーティス様。」
この声・・・・・まさか、ヴィア様?
「はい、構いません。」
静かに扉は開けられた。
リシアーシャ様のように美しい長髪。
それでいて、ソフトなドレス姿の彼女は綺麗なリシアーシャ様と違って可愛らしい。
Via valkyrie・・・リシアーシャ様の後を継いだ者。
優しげな瞳をパチッと開くと、ヴィア様は声を発する。
「調子はいかがですか、リーティス様。」
「・・・何ともないです。」
「明日は婚礼の儀。私はとても嬉しいです・・・・。」
「はい・・・私もです。」
どうしても目を合わせずにしか話せない。
私の態度に異変を感じてか、ヴィア様の声に異変を感じられる。
「・・・・・・・リーティス様は私と話していても、他の何か考えていませんか?」
今にもその場から逃げだしたくなった。
私はヴィア様を愛する覚悟が・・・・できていない。

『リアティーン七騎士!直ちに聖域に集合せよ!』

「「!!」」
七騎士の緊急収集!?
あまりに突然過ぎる。
「リーティス様!私も行きます、早く聖域へ!」
ヴィア様が部屋から飛び出していく。
「ヴィア様!お待ちください!」
私はその後をすぐ追っていた。



再び聖域に戻ってきた。
部屋の中にはリシアーシャ様以外誰もいない・・・・。
玉座の前に立ち、七騎士を待っているようだ。
「リシアーシャ様!」
私が部屋に入ると同時にリシアーシャ様の名を呼ぶ。
リシアーシャ様は驚きもせず、ただ私の方を見つめる。
「リーティス・・・・・・。」
「何があったのですか。」
「直ちに城下町の入口へ向かいなさい。」
私の質問は気に留めず、リシアーシャ様は一言告げる。
「リシアーシャ様?」
「既に他の三騎士は現場へと向かっています。」
状況報告がないということは現状が芳しくないのか・・・・・?
「お母様、今の話だけでは状況が全くわかりません。」
ヴィア様が隣から一歩前に出てリシアーシャ様に訴えかける。
だけど、リシアーシャ様は表情を変えない。
「ヴィアは自分の部屋にいなさい。」
「お母様!!」
ヴィア様が更なる講義をしようとするが、私は目で止まるように合図をする。
「了解いたしました。リーティス・エルギア、直ちに城下町入口へ向かいます。」
私が振り返り、聖域を出ようとするが、リシアーシャ様に呼び止められる。
「リーティス、おそらく、これからあなたは苦しみに道を阻まれるでしょう。ですが・・・民を救ってください・・・・・。」
「・・・・・・・・・はい!」



私は急ぎ、城を出て城下町を目指す。
何が起きているのかはわからないが、そうも言っていられない。
城下町の方は人で溢れていた。
「落ち着いてください!慌てず、リアティーン城の方へ避難してください!」
住民の避難勧告が出ている・・・・?
それほどのことが街の入り口で起きているのか。
「あ、リーティス様。」
一人の兵士が僕の元へ駆け寄ってきた。
「現状の報告をしてくれないか。なぜ、民達に城の方へ避難勧告が。」
「私もよく分からないんです。ただ、他の三騎士様は皆、入口で敵と交戦中のようです。」
敵・・・?
リアティーンに攻めてくる敵なんているはずがない。
何より、秩序と平和を愛するリシアーシャ様はどこの国からも信頼されているお方だ。
「それで、ユリレイ様達が戦っているなら私も民の誘導をした方がいいんじゃないか?」
他の二人も強いが、ユリレイ様は七騎士リーダー。
剣技で彼女に勝てる者はおそらくいない。
だったら、民の誘導に動いた方が・・・・。
「どうやら、三人共、苦戦していられるようです。」
「!!」
バカな・・・ユリレイ様がいて、その上、他に二人の騎士がいるのに苦戦?
「・・・直ちに交戦場所へ向かう。しかし、これほどの民が移動している中をどう動けば。」
「こちらに来てください。七騎士様のための通路があります。」



兵に案内され、細道を通り抜ける。
長い道だけど、もうすぐ城下町の入口だ・・・・。
いくら苦戦していると言っても、心のどこかでは勝利を目前としていると思っていた。
「・・・・・・な、何。」



城下町入口
城下町の入口以外は高い魔法壁に囲まれていて、この位置から以外は入ることはできない。
だけど・・・魔法壁が数か所、壊れている。
あれはそう簡単に壊れるものじゃない。
すぐさま、建物の陰に隠れるが、何が起こって・・・・・。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
何だあれは・・・・・。
布切れ一枚だけを着せられた人々が大勢。
あの動作は何だ。それにこの奇妙な呪文も・・・・
よく見ると、あの人達はリアティーンの民・・・・・。
リアティーンの民達があのようなことをするとは考えられない。
何かされたのか・・・それとも・・・・・・。
「リーティス・・・来たのか・・・・・・。」
私の存在に気付いて近付いてくるのは・・・・。
「ユリレイ様!その傷は!?」
そこにはボロボロになった鎧姿のユリレイ様がいた。
軽装な防具だったにしても、ユリレイ様がこんな状態になるなんて。
装備している槍を杖代わりにして、立っているのも辛そうな・・・・
「心配するな。ほとんど外傷はない・・・・。」
確かに体に目立った傷は見当たらない。
だけど、ユリレイ様の体は致命傷でも負っているのかのようで、今に倒れてもおかしくない。
「リアティーンの民達に何があったのですか!」
「・・・・敵にやられたんだ。今まではやっとの思いで防いでいられたが。」
一瞬、よろけながらも再び口を開く。
「だが、もう・・・・食い止めきれない。」
私にとっては信じられないことを苦しそうに告げた。
「他の二人はどこですか!」
ユリレイ様は辛そうな体で、腕を上げる。
指さす先には二人の騎士が地に伏している。
「・・・・・・・・。」
その場で絶句した。
特化した能力を認められ、リアティーンを守る七騎士がこうも簡単に・・・・・。
「・・・・!!」
足音・・・誰かが来る・・・・・。
「リーティス・・・逃げろ・・・・・・勝てる相手じゃない・・・・・・・。」
その言葉を最後に、ユリレイ様はその場に倒れこんだ。
「ゆ・・・ユリレイ様?」
地面に倒れ伏すユリレイ様は目を開けない。
そうしている間にも足音は大きくなる。
ここで逃げるなんてできるはずがない。騎士ならば・・・・。
ユリレイ様をも倒した敵・・・・・何者なんだ。
隠れた状態で腰につけた二刀を左右の手でそれぞれ掴む。

「リアティーン七騎士・・・・選ばれた七人の戦士。」

聞こえてきたのは女声・・・?
油断しちゃいけない・・・相手は確実に強い。
二刀を構え、いつでも応戦できる姿勢に入る。
今なら・・・・やれる。
相手は建物の陰で死角にいる私の存在には気付いてないはずだ。
「ここで・・・・討つ!」
敵の死角である建物の蔭から飛び出す。
そのまま、二刀で斬りかかろうとするが・・・・
「!!」
刀を構える手が止まる。
心臓の鼓動が速くなる。
私の目の前にいる少女・・・・ユリレイ様達を倒した敵・・・・・・。
結ってある綺麗な長髪・・・・綺麗な瞳・・・・・。
そして・・・・真っ白なローブを身に纏った・・・・
「あなたは・・・・リヴ様・・・・・・・。」




* Re: eight knights ( No.3 )
日時: 2012/01/01(日) 00:17:26 メンテ
名前: RTI



間違いない・・・・この方はLiv Valkyrie様・・・・・・・。
動きを止める私に対し、私の顔を見たリヴ様は心の底からの笑顔を見せる。
「あなたは・・・・・リーティス様!!」
まさか・・・・こんな再会の仕方をするなんて・・・・・。
これは現実なのか・・・・
私は刀を下げる。
「なぜ、リヴ様がここに・・・・。」
混乱している頭を働かせ、やっとの思いで一言質問をする。
「私・・・・帰って来たんです。」
帰ってきた・・・・・?リヴ様が?
ずっと会えなかったリヴ様が、目の前にいる。
「この世界に帰ったら・・・・一番あなたに会いたかった。」
言葉が出ない・・・何を言っていいのか分からない。
でも・・・一つだけ確かに気になることがある。
なぜ、敵との交戦場所にリヴ様が・・・・・?
まさか・・・リヴ様が・・・・・そんなこと、あり得ない。
「私、聖戦士の力を使えるようになりました。もう、リーティス様に守ってもらうだけの私じゃなくなったんです。」
無邪気に嬉しそうに話しかけてくるリヴ様。
もし、この場でなかったら、どれだけ嬉しく・・・喜ばしいことだったか。
「リーティス様、どうしてそんなに難しい顔をしているのですか?」
「・・・・・リヴ様、ここは危険です。ユリレイ様ですら抑えることのできなかった敵が潜んでいます。それに、リアティーンの民達が、なぜか奇妙な衣服を着せられていて。」
私はそれだけ言うと、息をのんで、リヴ様の方を見つめる。
「リアティーン七騎士のリーダーであるユリレイ様が倒せない敵・・・・どんな方なのでしょう・・・・。」
リヴ様は淡々と話す。
その目はどこか焦点が合っていない気がしてならない。
「リヴ様、ここにいたのなら・・・・見たのではないですか。その敵を。」
私はどんな答えを求めている。
リアティーンの魔法壁を破壊できるほどの力・・・・そんなものが簡単にあるとは思えない。
「ふふっ、リーティス様は私に何て言って欲しいのですか?ユリレイ様を倒した敵を見かけたと言って欲しいのですか?民達をあの姿にした敵を見たと言って欲しいのですか?」
駄目だ・・・どうしていいかわからない。
リヴ様が一歩一歩僕の方へ近づいてくる。
「り・・・リヴ・・・・・・様?」
ジワジワと歩み寄るリヴ様が僕の恐怖心を煽る。
なぜ・・・リヴ様に恐怖を抱く・・・・・。
「リアティーン七騎士をも超える・・・・偉大なるハイグレの力を・・・・・・・。」
リヴ様が自分の身に纏うローブに手をかける。
「見せてあげます・・・・私の本当の姿。」
ローブを脱ぎ捨てる。
一瞬、視界が真っ白になる。
リヴ様の脱ぎ捨てたローブが地面へと散る。
綺麗な体のライン・・・かつて見た時とは違う、成長したリヴ様。
白く、美しい肌をしたリヴ様が私の目の前に立つ。
・・・私が知らない間にリヴ様は美しく成長していた。
しかし、彼女は白い布一枚だけを身につけ、あられもない姿を晒していた。
「やっぱりハイレグ姿が一番です・・・・。」
自分の哀れな姿を見て、嬉しそうなリヴ様。
あのような格好をリヴ様がするなど・・・
一体・・・・どうしてしまったんだ・・・・・。
「り、リヴ様・・・本当にユリレイ様達を・・・・。」
何かの間違いだ。
リヴ様がリアティーン七騎士と戦う理由なんてない。
「はい、本当ですよ。全てはこの世界をハイグレ人間だけの世界にするため。」
「ハイグレ人間・・・・・。」
ハイグレ人間とは何だ・・・・・。
何がどうなっているんだ。
「そんな不思議そうな顔をしなくてもいいじゃないですか。今、周りはこんなに沢山のハイグレ人間に囲まれてるじゃないですか。」
囲まれている・・・
そういえば、この奇妙な動作を続ける民達もハイグレと唱え続けている。
これがハイグレ人間なのか・・・・・。
一体何の為にこんな姿に。そして、こんな奇妙なことを。
「皆さんにはハイグレ人間になって頂きました。それだけですよ・・・・と言っても、リーティス様はハイグレ人間の素晴らしさ。まだわかっていないのですね。」
途端にリヴ様が足を外側に開き、膝を曲げ、腰を落とす。
「な・・・・何て格好を・・・・・。」
リヴ様は私の目など気にも留めず、自分の手を股に添える。
「これがハイグレ人間です・・・・ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
リヴ様は手を布の切れ込みに沿って動かす。
それと同時に、奇妙な呪文を唱える。
「・・・・・・り、リヴ様。」
このような行為、羞恥を覚えるなんてものじゃない。
胸を揺らし、股の間を強調するかのような、恥知らずな行為。
あのリヴ様がしているなど、信じられない。
「ハイグレッ!ハイグレッ!気持ちいい!」
リヴ様はただ幸せそうな表情で、あの羞恥動作を繰り返す。
そして、動作を止めたかと思うと、私の方を再び見る。
「これがハイグレ人間。快楽を素直に受け入れた、人間があるべき姿です。」
リヴ様は先程より高揚した顔つきで私に近づいてくる。
「リーティス様もハイレグを着てください。そして、ハイグレ人間となりましょう。」
リヴ様が見たこともない銃を取り出す。
「う、撃つ気なのですか・・・・・。」
「撃たないとハイグレ人間へ転向させられないんです。リーティス様もハイグレ人間になればわかりますよ。」
嘘だ・・・・こんなの違う。
「こんなことをするのはリヴ様じゃない!」
二刀を抜き取り、構える。
「・・・・・リーティス様、抵抗しないでください。一緒にハイグレ人間になりましょう。」
「ユリレイ様達を傷つけたのは抵抗したからですか?」
「いえ・・・・向こうから攻撃を仕掛けてきたので。仕方なく。」
「・・・・・そうですか。」
もう何も考えちゃいけない。
この方が本物のリヴ様のはずはない。
「・・・・・・私は聖戦士の力が暴走して、別の世界へ送られた。」
「!!」
聞き間違いだ・・・・・。
なぜ、その過去を知っている・・・・本当にリヴ様なのか・・・・・・。
「昔に起きたこと。今でも覚えています。」
「・・・・・・・・・。」
「さぁ、ハイグレ人間になってくださいね・・・・リーティス様。」
リヴ様が銃を僕に向ける。
いや。もうかわすことも・・・・・。
* Re: eight knights ( No.4 )
日時: 2012/01/01(日) 00:17:52 メンテ
名前: RTI


「リーティス!!」
突然、背後から押し倒される。
「ゆ、ユリレイ様・・・・・。」
私を庇ってくれたのはユリレイ様だった。
倒れこむのと同時に、頭上を銃から放たれた光が通り過ぎる。
「無事か?」
「・・・・は、はい。」
ユリレイ様が辛そうに立ち上がる。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ユリレイ様、リーティス様をハイグレ人間にする邪魔をしないでください。」
「リヴ様・・・・・申し訳ありませんが、私はその命令に従うことはできません。」
ユリレイ様が白く輝く槍を構える。
「ユリレイ様、一体何を!」
「リーティス・・・・お前だから任せられる。リアティーンを・・・・頼む。」
両手で聖槍を握る・・・・。
「ユリレイ様、まさか!いけません!」
「お前に止められるのか?」
言葉に詰まる。
確かに私が全ての力を使っても勝てるかどうかは分からない。
だからと言って、ユリレイ様が全ての力を使っても・・・・。
「リシアーシャ様から授かった聖槍の力、ここに開放する!」
聖槍にかつてない光が宿る。
普通ならば全ての力を使ったら、ただでは済まない・・・・。
「ハイグレッ!ハイグレッ!私は負けられない・・・・ハイグレ魔王様への恩を返すためにも!」
リヴ様の手には大きな剣・・・・あれは聖剣。
「聖槍よ!ユリレイ・ディアーネに力を!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレの快楽に逆らえる者はいません!」
聖剣から放たれる光、聖槍から放たれる光。
止めることもできず、二つがぶつかり合った時、激しい爆発が起きた。



「・・・・・・何が起きたんだ。」
爆発による煙で周りが見えない。
・・・段々と煙が晴れてくる。
しかし、煙が晴れた時にはユリレイ様の姿がなかった。
「・・・・・!!」
「・・・・・・ユリレイ様・・・・・やってくれました。」
リヴ様の苦しそうな声が聞こえた。
私の元へ、歩いてくるリヴ様。
右肩を押さえ、少し辛そうな表情を見せる。
「ゆ、ユリレイ様は一体何処に・・・・。」
「パンスト兵様の命によって、ユリレイ様はとある場所へ招待させて頂きました。」
聖槍の力ですら駄目なのか・・・・・。
「この体では、苦しいですけど。リーティス様にハイグレの素晴らしさを知ってもらうため、ここでハイグレ人間になってもらいます。」
戦うしかないのか・・・。
今戦わなければ・・・しかし・・・・・・。
「ハイグレッ!ハイグレッ!リヴ様、パンスト兵様から一時撤退の指示が。」
敵の術に掛けられたリアティーンの民がリヴ様に何かを告げる。
なぜリアティーンの民が・・・・・
完全に操られてしまっているのか。
「・・・・・・パンスト兵様の命令ですか。仕方ありません。確かに今の状態でリーティス様と戦ったらリスクも大きいですね。」
リヴ様は私の方を見つめる。
「残念です・・・・一旦、お別れですね。次の時は必ずハイグレ人間として・・・・・。」
リヴ様はそれだけ言うと、私に背を向ける。
「リヴ様!」
私が追おうとしても、リアティーンの民達が私の前に立ちふさがる。
「なっ・・・・。」
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
「そ、そこをどくんだ!」
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
駄目だ・・・完全に私に敵意を向けている。
私のことを敵と判断しているのか・・・・。
リアティーンを愛する者同士が・・・・こんな話があってたまるものか。
「リーティス様!援護に来ました!」
リアティーンの兵士達が私の援護に回ってきてくれたが。
こんなの・・・・・どうかしている。
リアティーンは、この世界はどうなるんだ・・・・。
これは終幕の始まりなのか・・・それとも・・・・・・



「・・・・ティリアお姉ちゃん、絶対に戻るから待っていてね。最後の使命を果たして。」



* Re: eight knights ( No.5 )
日時: 2012/01/06(金) 22:38:19 メンテ
名前: RTI




「報告します。敵を撤退させることには成功しました・・・ですが、ユリレイ・ディアーネ様は・・・・・・。」
「そうですか・・・・。」
「敵の呪術にかけられ、奇妙な姿にされてしまった民達は地下牢へと監禁することとなりました。」
「なぜ、あのような姿にされてしまったのでしょう・・・・。」
「わかりません。ただ一つ言えることは奇妙な呪文を唱え、奇怪な動作ばかりをする・・・言わば、精神操作の類かと。」
「・・・・・・・。」
「そうと仮定すれば、術にかかった民達を捕えようとした時、抵抗をされたのも納得いきます。」
「・・・・・わかりました。リーティス、もう下がっても構いません。」
「申し訳ありません・・・・私達、リアティーン七騎士が不甲斐ないばかりに。これで民達はヴィア様が聖戦士の力を使えないことに気付かれてしまったやも知れません・・・・・。」
「・・・・・・・それはあなたには関係ありません。」
「関係ないだなんて!ヴィア様は!!・・・・・・申し訳ありません、リシアーシャ様への無礼、お許しください。」
「構いません。一度休んで来た方がよいでしょう。」
「・・・・・・はい。」





「・・・・・・・・・・。」
私は何も考えられないまま、部屋で休んでいた。
「リーティス?・・・・入ってもいい?」
突然に聞こえてきた女声。
「・・・リエンか。構わない。」
静かに音を立てて、部屋に入ってきた一人の女性。
動きやすそうな、クロース姿の女性。
綺麗な赤みのかかった茶髪・・・・不安げな顔つきだが、彼女は私から見ても女性らしい。
リエン・フェンジュ、リアティーン七騎士であり、私の昔からの親友。
だが、騎士にしては軽装だ。彼女の肩や膝には防御用プレートが付いているが。
考え事をしている間にも、リエンは私の座る椅子の前にまで歩み寄っていた。
「リーティス・・・その・・・・・リヴ様のこと。」
何やら、覚束ない言い方なリエン。
私が彼女のことを考えているのはお見通しか。
「リエン・・・言いたいことがあるなら、はっきり言っていい。」
「え・・・・わ、私はそんな・・・・・。」
「これまで付き合って来たんだ。隠し事をされても分かるよ。」
私は目を合わせずに言うが、リエンが困っていることだけはよく分かる。
「ごめん・・・・私が弱かったから、ユリレイ様が・・・・・。」
「やっぱり気にしてたか・・・・。」
「だって、私はユリレイ様のように戦い続けることもできなかった。立ち上がることすらできなかった。」
それは私も同じだ。
それどころか戦うことでさえ躊躇っていた。
「リエン、過ぎたことを悔やんだって、何も帰っては来ない。」
「だけど!・・・・・・・でも、そうだよね。」
だが、これからどうすればいいんだ。
リヴ様のことですら、気持ちが整理できていないのに。
ユリレイ様を失って、これからはリアティーンをどう守ればいい。
リシアーシャ様にもリヴ様が私達に攻撃してきたとも言えず、黙っているままだ。
現状はかなり芳しいものではない。
リヴ様であろう、あの者が負傷をしていたことはわかっているが。
「リーティス・・・?」
リエンが不安そうに私を見つめている。
「あ、すまない・・・。」
「どうしたの?」
「いや・・・・これからどうすればいいか考えていた。」
情けないが、私はこの先のことが全く考えつかない。
「・・・・私はいつだって、リーティスの味方だから。」
リエンの反応に僕は驚いた。
振り向くと、リエンは僕に向かって微笑んでいた。
「リエン・・・・・。」
「辛い時は私に頼って・・・・私はリーティスに救われた。だから、今度は私の番。」
「ありがとう・・・・・。」
リエンは昔から変わらない。
私の力になろうと必死になってくれる。
「私、思うんだけど・・・敵はしばらくリアティーンに攻めてこない気がするの。」
私もリエンと同じ考えだった。
七騎士が大打撃を受けたのは間違いないが、敵側も痛手を負っている。
動くなら早急にするべきか・・・。
「リエン、リシアーシャ様の元へ急ぐぞ。」
「え・・・?」



聖域 主君、リシアーシャ様の前には私とリエンと、もう一人の騎士。
「リーティス・・・リアティーンは先の攻撃を受けたというのを知った上で言っているのですか?」
リシアーシャ様は驚きを隠し切れていない。
やっと平然を保っているが、無理もない話だ。
「敵の頭は負傷を致しました。リアティーンへの侵攻はしばらくないと読んでいます。」
確かに、他の兵力で攻めてくるの可能だ。
だけど、それだと決定打に欠ける。
もし、人々を操れるのだとしたら、敵側が戦力を集めるのは必須。
と、なれば・・・・・
「私はこの国に不在の三騎士、そして、他国の力になる者を呼び集める旨を報告に上がりました。」
「・・・・・・・。」
リシアーシャ様は何か考えている様子。
普通に考えれば、国の防御を手薄にするのは危険だ。
だけど、こうでもしなければリアティーンは陥落を待つだけだ。
「私も行きます。リーティス様の言う通り、リアティーンへの侵攻は停滞すると見込んでいます。」
リエンが一歩前に出る。
それは心強いが・・・そうするとなれば・・・・・。
「もし、リアティーンへ敵が攻めてきた場合はどうするのですか。」
やはり、そうなるな。
民を犠牲にするわけにはいかない。
リエンには残ってもらうしか・・・・。
「国は私が命に代えても御守りします。」
一歩前に出た鎧姿の女性。
茶色の髪をした長髪美女、ローディア・デュダル。
ユリレイ様を次ぐ剣術の腕前。
軽装なユリレイ様とは相反して、ローディアは相当なほどの防具をつけている。
赤く輝く鎧を身に纏い、赤く鋭い兜。そして、真紅のマント。
「先程は不覚を取りましたが、今度は何があっても御守りすると、重騎士の名にかけて誓います。」
ローディアが表情一つ変えず、淡々と話す。
リシアーシャ様も何やら覚悟を決めたような表情が伺える。
「・・・・・あなた方、三人の気持ちはわかりました。最早、私が判断することではないですね。いいでしょう、その提案を受け入れましょう。早急に汽車を手配します。」
「リシアーシャ様、感謝いたします。」
「できる限り、民には知られたくないです。夜間に移動を開始してください。時間は今から二時間後、汽車発着地点へ。」
私が言うと、リシアーシャ様は静かに告げる。
「「了解いたしました。」」



聖域を後にし、リエン、ローディアと肩を並べて下の階へと戻る。
「ローディア・・・・助かる。」
私が呼び掛けると、睨みの効かせた顔つきのローディアがこちらを見つめる。
軽蔑しているかのような目の彼女が冷たく言い放つ。
「黙りなさい。あなたなど、初めから期待してません。」
「なっ、デュダルさん、そんな言い方ないじゃないですか。あなただって、さっきはやられたじゃない!」
リエンがこれでもかと前に出て、ローディアに文句をぶつける。
「リエン、よせ。」
「だけど・・・。」
リエンがこちらを振り返り、納得いかなさそうな顔をしている。
悔しいことには違いないが、ここでローディアとぶつかり合っても良いことはない。
ローディアはそんな私達を見てか、冷めたような顔をする。
「そうですね、私は弱いです。それはわかっています。ですが、戦うことを躊躇うあなた達など、既に眼中にありません。」
それだけ言うと、ローディアは振り返りもせず、歩き去って行った。
何も言えなかった。
私の心の迷いをローディアは見透かしていた。
リエンもただボーっと立ちつくしているだけだった。


* Re: eight knights ( No.6 )
日時: 2012/01/06(金) 22:39:40 メンテ
名前: RTI



既にリアティーン入口方面には人はいない。
兵達が配置されているだけだ。
民は皆、リアティーン城のお膝元とでもいうべき程の場所に避難してもらっている。
リヴ様がいない限りは魔法壁を破壊して突入はできないに決まっている。
「さて・・・・発着場所は街の入口方面だったな。」
リエンは急に準備をすると言って飛び出して行った。
仕方がないから、先に一人で行くしかない。
時間が時間だけに人々は表には出ていない。
静寂の夜、地面を踏み締める靴音だけが響く。
「・・・誰か来る。」
遠くの方から靴音が聞こえてくる。
「そこにいるのは・・・・リーティスね。」
段々と顔がはっきり確認できてくる。
私より少し小さいぐらいの背丈。
ローディアやユリレイ様とはまた違った綺麗さを醸し出している彼女は・・・・。
「・・・・・フィリス。」
フィリス・ガロード、七騎士ではないにしても、腕の立つ剣士。
片サイド側だけに結んだ髪を垂らしているのには個人的な拘りを持っているのだろう。
だが、彼女の表情からして言いたいことに大体の察しはつく。
「どうして勝てなかったわけ・・・・・。」
拳を握りしめ、私にぶつけてきた言葉は強く震えていた。
「ヴィア様はvalkyrieの力を持っているんだから何とかできるでしょ!何でリアティーン七騎士だけが戦ってたのよ!」
一番聞かれたくないことを聞かれた。
ヴィア様が戦えないことを言う訳にもいかない。
「・・・・・・・私はもう行かなくてはいけない。」
そう言い残し、フィリスの横を通り過ぎようとする。
だが、フィリスは握りしめるかのような力で私の肩を掴んできた。
「答えなさいよ。ヴィア様は何で前線に出てこないわけ。」
「・・・・・・・・・・。」
フィリスの目を見ない。いや、見れない。
「何で答えないのよ!!出られない理由でもあるわけ!?それとも、自分達だけで勝てると思ってた!?」
何と答えればいい。
本当のことを言う訳にも・・・・・・・。
「ヴィア様は戦わないわけ?valkyrieは民を守るんじゃなかったの?その言葉を信じて国の民はvalkyrieの血族の下で生きてきたのよ。本当は騙してたの!?」
「ヴィア様の何が分かる!!」
振り返り、怒鳴りつけてしまった。
フィリスは一瞬ビクッと怯えた表情になるが、すぐに怒りに満ちた顔つきに変わる。
「な、何よ!守るって言っておいて何もしなかったくせに!」
「今回の件は私のミスだ。ヴィア様は関係ない。」
再びフィリスに背を向け、歩きだす。
「何よ、それ!弱いくせに出しゃばって・・・それで負けたわけ、そういうこと。」
「・・・・・・・・・。」
そういうことにしておく他ない。
私が不甲斐なかったのも間違いではない。
「今度は負けたから数合わせに他の三騎士を迎えに行くって?冗談でしょ?信じてた民をあんた達は裏切ったのよ!!」
後ろから怒りの籠った言葉がぶつけられる。
だが、私の耳にフィリスの言葉は入って来なかった。
義務を果たす。それが私の罪滅ぼしにもなるだろう。



リアティーン城から長く北に歩いたところにしか入口はない。
しかし、夜だとどの辺を歩いているのか分かり辛いな。
またか・・・夜闇に紛れて人影が見える。
兵士・・・?いや、それにしては小さすぎる。
「リーティス・・・・・。」
聞き覚えのある声。
よくは見えないが、ヂュムに間違いない。
「ヂュム!何で、こんな遅くに・・・・。」
私が声をかけると、ヂュムの影が私の元へ素早く駆け寄る。
私の目の前にきて、顔が伺える。
愛嬌のある顔立ちながら、どこか寂しげな表情を浮かべている。
「リーティス、私も連れて行ってください。」
突然の提案。
ヂュムの気持ちは嬉しい。
だが国を出るならば、どこから奇襲をされてもおかしくない。
そんなリスクを背負った状態でヂュムを連れて行く訳にはいかない。
「ヂュム、これは危険なんだ。ヂュムを巻き込めない。」
そう言い残して、発着地点へと向かおうとする。
ヂュムを連れて行く訳にはいかない・・・・。
「ユリレイお姉様・・・・・。」
「・・・・・・!」
私はつい、脚を止めてしまう。
「ユリレイお姉様は立派な方です。」
「何が言いたいんだい、ヂュム。」
「もう、巻き込む、巻き込まないとか、そういう話じゃないと思うんです。」
お互いの顔は見えない。
だけど、今のヂュムの言葉は重く感じる。
心を許せる姉を失った今、ヂュムは何を思っている。
私を怨んでいるのだろうか。それでも仕方ない。
「お願いです。連れて行ってください。」
それだけを静かに告げる。
「守りきれないかもしれないんだよ・・・・。」
「構いません。」
「強いな・・・ヂュムは。」
戦うことを躊躇い続けている私に対して、ヂュムは心を決めている。
私も踏ん切りをつけるべきだ・・・・。



既に時は深い夜を刻んでいる。
入口の方のためか、見回りの兵以外は誰もいない。
・・・・あそこが発着場か。
「マグナリートは世界一の機械国だ。蒸気機関車など、私達の生活に新たな発展をもたらすといわれている。」
「・・・・で、これが蒸気機関車ですか。」
そうか、ヂュムは初めて見るのか。
格言う私も一度か二度しか乗ったことはないな。
こんな状況で不謹慎かもしれないが、蒸気機関車を見て目を輝かせているヂュムは何だか無邪気で可愛い。
「リエン、遅いな。準備に時間がかかってるのか?」
「リーティス!」
噂をすれば、リエンが駆けてきた。
「リエン、何していたんだ。」
「汽車で話すよ。早く乗らないと・・・・。」



「リーティス様!待ってください!」
遠方から聞こえてきた澄んだ声。
一人の少女がこちらへと走ってくる。
目立たないようにドレス姿ではなく、城の倉庫にでもあるようなローブを纏っていた。
ヴィア様は息を切らせながら、私を見つめる。
「ヴィア様、どうしてここに。」
国の状況が状況だ。
こんな場所にいることは許されないはず。
「勝手に城を抜け出してきました。後でお母様には怒られてしまいますね・・・。」
徐に胸のポケットから何かを取り出す。
「御守りです・・・・リーティス様が無事に帰って来られるように・・・・・。」
ヴィア様は私の掌に小さな石を置く。
石から放たれている白い光・・・・温かい。
「私が幼い頃にお母さまから頂いたものです。」
「これは・・・凄く大切なものでは。」
「はい・・・・ですが、リーティス様は帰って来てくださる。信じていますから。」
ヴィア様・・・・そこまで私のことを。
「ありがとうございます・・・必ず、戻って参ります。」
「共にリアティーンを守りましょう。婚礼の儀を迎えるためにも・・・・。」
ヴィア様は複雑な気持ちを抑え、満面の笑みを見せてくださる。
「・・・・・・・・はい。」
その言葉を最後に私とリエン、ヂュムは蒸気機関車に乗りこむ。
ヴィア様の思いに応えるためにも、リヴ様の真意を掴むためにも
私に与えられた使命・・・・必ず、やり遂げる。


* Re: eight knights ( No.7 )
日時: 2012/03/03(土) 00:01:22 メンテ
名前: RTI


汽車が夜闇をかき分けながら進んで行く。
目的地は機械国マグナリート
汽車に揺られながら、私とリエンは向かい合う席に座る。
当然、他の客は誰一人いない。
「あれ、ユリレイ様の妹さんは?」
「流石にこんな遅くまで起きていたんだ。今はぐっすり眠っている。」
「それはそうだよね・・・で、その三人の現在の居住場所は分かってるの?」
首を傾げて聞いてくるリエン。
「え、それが・・・・調べるにも資料がある部屋は既に閉まっていたし。」
「やっぱりぃ・・・・調べてきておいて良かった。」
一瞬呆れ顔になるリエン。
すぐさま笑顔で一枚の紙を取り出す。
「頼りになるな・・・って、さっきの準備ってこのためだったのか。」
「勿論。まぁ、閉まっていた部屋にこっそり入ったからね・・・・・。」
リエンが紙の方に目を向ける。
「ライリシュ・メーティ、前にリアティーンを出て、祖国マグナリートへ帰国。銃撃士としての腕あってだけど、今は修理屋を営んでいる・・・・。」
ライリシュの奴、メカニックになってたのか・・・・。
「問題はリアティーンを攻めてきた連中がマグナリートへ進行しているかしていないか。」
「リエンが言うその点は大丈夫だと思っている。」
敵が攻めてきた方角は北、マグナリートは南西だ。
リアティーンより北側に引き返して行った奴等がマグナリートへの侵攻を簡単にできるとは考えにくい。
「何でだろうね、リーティスがそう言うと、なぜか本当な気がする。」
「なぜかは余計だ。」
「ごめんごめん・・・・って、流石に眠いな。」
リエンが眠そうに瞬きをする。
「あぁ、そうだな。一つだけ寝室がついているから、リエンはそこで睡眠をとると良い。ヂュムもその部屋にいる。」
「え?リーティスは?」
「女性と寝る訳にはいかない。私はここで寝る。」
「別にいいのに・・・・。」
「何言ってるんだ。ほら、早く休んだらどうだ?私はもう寝るぞ。」
そう言って横になろうとする。
「う、うん。そうだ、毛布持ってくるね。」
リエンは慌てて毛布を取りに行くと、すぐに私の元へ戻ってきた。
「はい、じゃあ寝るね。」
それだけ言うと、リエンはそそくさと去って行った。
私もすぐに横になり、目を閉じた。



「リーティス様!」
「わかっている!!」
「あ・・・・うぅぅっ!!」
「何とかできないのか!!このままでは!!」



嫌な夢を見たものだ。
「リーティス!起きてください。」
ん・・・・ヂュムの声?
「もうすぐマグナリートに着くみたいです。」
「そうか・・・・そんなに寝てたのか。」
私も疲れていたみたいだな。
「リエンさんも起こしてきます。」
とてとてと走って行くヂュム。
機械国マグナリートか。
私は窓を開けて外を覗く。空は青く、とても清々しい。
しかし、先に見えるあの荒れた土地・・・あれがマグナリート。
私は・・・あの時に何ができただろうか。



マグナリート
「随分と荒れ地だね・・・・・。」
汽車を降りたところ、リエンが辺りを見渡す。
「ここに騎士様がいるのですか?」
「あぁ、間違いない。とりあえず、詳しい話をどこかで聞こう。」
「地形とかよく分からないけど、少し探索してみようか。」
リエンが歩き出す。
しかし、住人達の様子も至って異変はない。
ここにはまだ敵が来てないことは間違いないだろう。
リエンの後を追うように私とヂュムは横並びに歩く。
「リーティスー!こっちに酒場があるよ!」
随分と早いな、リエンが酒場を見つけたようだ。
確かに情報収集にはうってつけだろう。
「行くぞ、ヂュム。」



「・・・・・・・。」
酒場の中、ヂュムは少し怯えながら辺りを見回している。
確かに柄が悪そうな人達は多いな、ここは。
だけど、マグナリートの人々は良い人達ばかりだったはず。
「いらっしゃ〜い、あらら・・・随分と物騒なものを下げている、お客様だ事。」
私がカウンターの方へ目を向けると、女性に話しかけられる。
酒場で働いているからには街のことには詳しいだろう。
「あぁ・・・リアティーン七騎士のリーティス・エルギアだ。ライリシュ・メーティに話があってここに来た。」
「ライリシュの知り合い?・・・・例えお客様でも、余所者に話すことはできないね。」
女性は目を細め、私達を疑っているような目で見てくる。
「よ、余所者って、私達はリアティーン七騎士です!」
カウンターに身を乗りだし、女性に文句をぶつけるリエン。
もう少しだけ冷静に対処が出来ないものか・・・・。
「焦ってるわね・・・・もっと大人のレディを見習いなさい、お嬢ちゃん?」
「なっ・・・・。」
女性はいやらしげに笑いながら、リエンの額を突く。
「リーティス、どうするの?」
ヂュムが心配そうに腕を掴んでくる。
「どうするも・・・・すまない、どうしても重要な話なんだ。」
女性はカウンターに肘をつき、私の方へ視線を向ける。
「だったら、私にも話してくれない?内容によっては信じてあげる。」
リアティーンの状況下を話すのはまずいと思うが・・・・。
それ以前に信じてもらえるかもわからない。
「それとも話せないほど凄い話なの?だったら尚更聞かないと。」
交渉の上手い人だ。
これは教えなければライリシュに会えないかもな。
「は、話す必要ないわよ。そんな人に聞かなくたって、見つけられる。」
リエンが軽く目を閉じ、そっぽを向く。
「リエン、変に意地を張るな。」
「い、意地なんて張ってない。」
随分とこの女性のことが気に入らないらしいな。
それはそれとしても、リアティーンのことを他国の一般人に話してパニックは起こしたくない。
「すまないが、これは話せることじゃない。」
「あら、それでいい訳?」
「あぁ、自分の力で探し出す。失礼するよ。」
やれやれ、無駄に時間をロスしてしまった。
ライリシュが何処にいるかもわからないのに、困ったな。
「・・・・・・ライリシュは炭鉱近くの店よ。」
カウンターから小声で告げられる
「良かったのか?教えて。」
私は振り返り、問う。
「ふふっ、お礼は後に・・・ね。」
「すまない、助かる。」



酒場を後にして、リアティーンとはまったく違った雰囲気のマグナリートを歩き続ける。
作業用の服などを羽織った人々とすれ違う。
「リーティス、あれじゃないですか?」
ヂュムが何かに気付いたように、街の先を指さす。
・・・・確かに、炭鉱近くの店だ。
「本当だ。リーティス、早く行こう。」
足を止める私をリエンが急かす。
「あぁ、わかっている。」
なぜだろうか。
少し胸騒ぎがする。

* Re: eight knights ( No.8 )
日時: 2012/03/03(土) 00:02:26 メンテ
名前: RTI


人に溢れていた街中の先。人気が少なく、静かな場所に着いた。
結構な岩場に囲まれていて、マグナリートの地形の現状がわかる。
そんな中、炭鉱近くの店、工具などが乱雑に置かれている。
店の奥は暗く、本当にここで人が働いているのか?と思う。
「リーティス、ここにライリシュ様がいるんですか?」
ヂュムの発した声に気付いてか、私が答える前に奥から足音が近づいてくる。
随分と厚手な灰色のクロースを身に付けている。
作業用の布を額に捲いているのを見るに、メカニックなのは間違いない。
「はい、いらっしゃい。修理から改造まで何でも屋へようこそー・・・・って、あんたは・・・・。」
軽く吊りあがった目つきの女性。
振り返り、こちらの顔を見た途端、彼女の表情は驚いているようにも嫌そうにも見える。
「久し振りだな、ライリシュ。」
「お客様、お帰りください。」
「おいおい・・・随分な挨拶だな。」
「何の用よ。あたしからリアティーン七騎士の称号を回収しに来たわけ?だったら勝手にどうぞ。別にあたしも持ってたい訳じゃないからね。」
妙に尖った言い方するな・・・・相変わらずだ。
「称号を奪うのとは逆のつもりで来たんだ。」
「そんな遠まわしに言わないで、さっさと言いたいことは言って欲しいんだけど。営業妨害?」
お見通しってわけか。
「・・・・・リアティーン七騎士に戻って欲しい。」
「・・・・・・・・・・・。」
ライリシュは目を瞑り、一息つく。
「断るわ。」
「ちょ、そんな言い方・・・・。」
リエンが前に一歩踏み出す。
「リエン、下がってくれ。」
「え?リーティス?」
「ライリシュとの話は私がつける。リエンはヂュムと一緒に汽車の方角へ戻っていてくれ。」
「で、でも・・・。」
納得いかないような顔でリエンは私を見つめてくる。
「リエン、気持ちは嬉しいよ。私に任せてくれ。」
私が微笑みかけると、リエンの顔もパーっと明るくなる。
「わかった。行こう、ヂュム。」
「・・・・はい。」
リエンとヂュムは横に並びながら、歩き去って行った。
「・・・話を戻そう。ライリシュに断られるのは大体予想できていた。」
そう、ライリシュも意味なくリアティーンを去った訳じゃない。
「だったら帰ってくれる?あたしはあんたに用ないし。」
目を瞑り、長い髪を払う。軽蔑するような態度のライリシュ。
「これはリアティーンだけの問題じゃない。マグナリートにも関わることなんだ。」
ライリシュがピクンと反応する。
私に続きを問いてくるよう、それでいて軽蔑した態度も崩さない。
少しの間をおき、ライリシュは口を開く。
「・・・・それで?」
「敵方にヴァルキュリー様がいる。」
ライリシュの顔が一瞬凍りつく。
「・・・・・ふ、ふん、何を言い出すかと思えば。ヴァルキュリー様が敵方?冗談にしても笑えないわよ。」
「・・・・・こんなヴァルキュリー様への冒涜を意味する冗談を言うと思うか。」
途端にライリシュは言葉に詰まる。
歯を食いしばり、目もどこか焦点が合っていない。
「・・・・・・確証もないじゃない。」
「だけど・・・・。」
続きを言おうとした時、大地も揺るがすような大きな鐘の音がマグナリート中に響いた。
「な、何の音だ!?」
「マグナリートの警報・・・・・。」
ライリシュの表情は何かに怯えている?
「マグナリートの警報って・・・?」
「何か・・・・警報の出るほどのことが・・・・・・。」
ライリシュはただ呆然と立ち尽くしている。
突然の警報音・・・まさか、奴等か!?
「ライリシュ!敵がマグナリートにまで来たんだ!」
目の前で何を言っても、ライリシュはボーっと街の方を焦点に捕えている。
「ミルル・・・・リルー・・・・・・。」
彼女はか細い声で呟いた。
「ライリシュ・・・・?」
「急がないと・・・・・・。」
ライリシュはそのまま振り返りもせずに走り出す。
「ライリシュ!!」
叫んで呼び止めようとしても、ライリシュは走り去っていく。
「くっ・・・どうなっている。」
私も全力でライリシュを追いかけて行った。



「ヂュム・・・・?」
リエンは辺りを見回す。
だけど、ヂュムはどこにもいない。
先程、突然に鳴り響いた鐘の音。
マグナリートの人々は急に移動を始めたり、街の空気は一変した。
その波に呑まれ、リエンの気付いた時にはヂュムはいなかった。
「どうしよう・・・・ヂュム。」
「リエン!!」
そこに一人の騎士が走ってくる。リーティスだ。
「リーティス!」
リエンの元に着くや否や、リーティスは不思議そうな顔をする。
「あ、あれ?ヂュムは・・・・?」
「そ、それが・・・・さっきの鐘が鳴った後、人波に呑まれて・・・・・気がついたら・・・・。」
リエンが申し訳なさそうに目を反らす。
「わかった。リエンは蒸気機関車の発車準備をしてくれ。」
「リーティス?ヂュムはどうするの。」
「私が探す。」
「え・・・・探すって、どうやって。」
「とにかく、自分のやるべきことだけ気にかけてくれ。」
そう言い残し、マグナリートの街中を駆けて行く。



「リーティス!リエン様!・・・・・どうしよう。」
ヂュムは大通から少し外れた茂みの近くにいた。
辺りをきょろきょろと見渡すが、見慣れない土地だ。右も左も分からない。
先程、リエンと逸れてしまい、途方に暮れていると、背後に小さな影が二つ。
「お姉ちゃん、どうしたのー?」
「わわわわっ!!」
後ろから声を掛けられ、ビクッと反応する。
すぐさま後ろを振り返る。
二人の幼い子が手を繋いでヂュムを見つめていた。
女の子二人は茶や灰色を基調とした地味めな布服。
明るい茶の髪、くりっとした瞳、二人は相当似ている。
「あなた達・・・誰?」
ヂュムが驚いたような、何とも言えない表情で二人に向かい立つ。
「私ミルル!」
「私リルー!」
二人はほぼ同時に笑顔で元気よく名を名乗る。
「よろしくね、ミルル、リルー。」
そんな無邪気な二人を見てか、ヂュムもニコッと笑う。
だけど、すぐに現状を思い出し、困惑する。
「お姉ちゃん、困ってるの?」
ミルルとリルーはヂュムの顔を覗き込む。
「う、うん・・・でも、大丈夫。」
『敵よ!早く子供達を避難させて!』
遠くから叫ぶ声が聞こえてくる。
ヂュム達の耳にも届く。
「敵?もしかして、さっきの鐘って・・・・。」
「お姉ちゃん?」
ミルルとリルーは不安げな顔になる。
二人は鐘の意味を知らないようだ。
だけど、ヂュムは敵の襲撃を聞き、危機を察知したようだ。
「ミルル、リルー。一緒に来て!」
ヂュムは二人の手を取り、叫び声が聞こえた方へと走ろうとする。
おそらくは向こう側が大通だ。
「!!」
ヂュムはすぐに方向転換をし、元の場所へ戻ろうとする。
その表情は恐ろしいものでも見たかのようだった。
「お姉ちゃん、どうして戻るの?」
二人に聞かれても、ヂュムは答えずに逆走をする。
少し走ったところで、茂みへと飛び込む。
ヂュムはやっと、そこで二人の方を見る。
「敵がいたの。でも、大丈夫、気付かれる前に逃げれたから。」
そう言って微笑むが、ヂュムの顔はどこか怯えてるようだった。
確かに敵には気付かれていない。
だけど、こちらに来ないという確証はなかった。
「こっちに・・・来る。」
しばらく三人は茂みに身を隠していたが、気付いた時には敵が近くまで来ていた。
まだ三人とは距離がある。
ヂュムはふと、近くの小屋に目を付ける。
「あの中に入れば・・・・・。」
ヂュムはミルルとリルーに小屋に向かう合図を手で行う。
二人は一瞬戸惑うが、静かに首を縦に動かした。
ヂュムが先導し、足音を殺しながら小屋の中へと向かう。
「隠れて。」
小屋の前まで来ると、ミルルとリルーを流れ込むように入らせる。
すぐにヂュムも続いた。
「物置小屋・・・?」
ヂュムは飛び込んだ小屋の中を見渡す。
特に役に立ちそうなものもない。
「どうしよう・・・・。」
しかし、考える時間も与えられない。
外にいたパンスト兵が小屋の扉を開けようとしているようだ。
扉は強く叩かれ、すぐにも壊されそう。
「・・・・・・・。」
ヂュムはただ扉の方へ目を向けるだけだった。



「ヂュム!どこだ!」
街中を走るが、ヂュムはいない。
住人達も家の中に閉じこもりだす者、私とは反対方向へと逃げ惑う者のどちらかだ。
敵は私が向かっている方向から来ているのか。
今のマグナリートに奴等を抑える力があるとは思えない。
ヂュムのことが心配だが、このままではマグナリートが・・・。
「止めて!こっちに来ないで!」
悲鳴?間違いない、この先だ。
見捨てる訳にはいかないか・・・・・。
ヂュム・・・・無事でいてくれ。



* Re: eight knights ( No.9 )
日時: 2012/03/17(土) 00:35:50 メンテ
名前: RTI


「・・・・・くっ。」
物置小屋の中、ヂュムは扉を必死に押さえている。
「お姉ちゃん・・・・。」
ミルルとリルーはヂュムの近くで今にも泣きそう。
「大丈夫・・・・・絶対に守ってあげるからね。」
そうは言うが扉の方を向いたままだ。押さえるのに精一杯なのは目に見えている。
「うぅ・・・・。」
何とか押さえきろうとしたが、ヂュムの力では限界があった。
とうとう力負けし、扉は破壊された。
そこにはパンスト兵達が三人程、銃を構えている。
「ミルル!リルー!」
ヂュムは二人を庇うように屈みこむ。



激しい銃声。
気付くと、ドサッと音を立て、ヂュム達に一番近いパンスト兵が倒れこむ。
「え・・・・銃撃?」
「妹達に近付かないでくれる?」
小屋の外。二つの拳銃を握り、睨みを利かせる女性が残り二人のパンスト兵へと歩み寄ってくる。
「あ、あの人・・・・。」
ヂュムはその女性を見つめるかのように顔を出す。
パンスト兵二人は後ずさりながらも光線銃を構えようとする。
「遅い。」
一瞬の隙。それを見せたパンスト兵二人の手からは光線銃が弾き飛ばされていた。
女性の持つ二丁拳銃は完全にそれぞれのパンスト兵の手を捕えていた。
二人にパンスト兵が反撃に出れないことを悟り、ライリシュは銃の構えを緩める。
「終わりかな。それじゃあ、眠っててくれる?」
再び響く激しい銃声。
その後には二人のパンスト兵が地面に伏していた。
「急所は外しておいたから。なんてね。」
「「ライリシュお姉ちゃん!」」
ミルルとリルーは小屋から飛び出し、ライリシュの元へ駆け寄る。
ライリシュは安堵した表情で二人を抱きしめた。
「リルー、ミルル、良かった・・・・ありがとね、お嬢ちゃん。」
二人を抱きしめたまま、ヂュムの方を見てお礼を言う。
ヂュムはぺこりと頭を下げた。
「あれ・・・お嬢ちゃんはもしかして、リーティスと一緒にいた・・・・・。」
「あ・・・初めまして、ヂュム・ディアーネです。」
ライリシュは立ち上がり、ヂュムに近付くが、表情は不思議そう。
「ん・・・・ディアーネ?」
「は、はい。何かありましたか?」
ヂュムも疑問を抱くかのような顔でライリシュを見る。
「・・・・・・いや、それよりも現状を何とかする方法を考えるべきか。」
ライリシュは顎に右手を置き、思案顔を浮かべる。
「このままだと、マグナリートは・・・・だけど、ミルルとリルーを連れたまま戦う訳にもいかない・・・・それでも・・・・。」
ライリシュはヂュムの方に向き直る。
「あなたに頼みたいことがあるの。」



「あれがマグナリートに攻めてきた本隊か。」
あの奇妙な兵士達だけの部隊のようだ。
人数からしてもリアティーンへの襲撃より規模が小さい。
撃退は不可能ではないが、こちらは人数が足りな過ぎる。
『こ、来ないでぇ!』
「しまった!」
逃げ遅れたマグナリートの民が撃たれる。
くそっ、距離が遠い。間に会わない。
「あんた、情けなさすぎ。」
素早く撃ちこまれた弾丸。
敵の動きの要となるであろう位置の兵士だけを撃ち抜いた。
ここまで瞬時に敵の型を壊すことができるなんて。
遠方から歩み寄る、銃弾を放った彼女は・・・・
「ライリシュ・・・・?」
「また会ったわね。」
つまらなそうに私の目を見つめる。
「あたしがいるのが不思議とでも言いたそうな顔ね。」
「そんなことはないが・・・。」
内心、少し戸惑っている。
ライリシュは何を思って私の援護に来てくれたんだ。
「これでも七騎士の一人よ・・・・誇りまで失くした覚えはない。」
ライリシュが銃を高く掲げる。
「甘く見ないで。お手製の銃・・・・ライリシュ流カスタムの力、見せるよ!」
ライリシュは右手拳銃を腰に付け、左手拳銃に付いている歯車を回す。
「ちょっと火力を強くしすぎたかな?下手すりゃ、暴発するね。」
左手拳銃からパンスト兵達の密集場所に弾丸が放たれる。
パンスト兵達はすぐさま直撃を避けようとする。
「避けても無駄。爆破しな。」
ライリシュが勝ちを確信したかのように鼻で笑うと同時に弾丸が爆発し、付近のパンスト兵達を吹っ飛ばした。
「ちょっと荒かった?自業自得だよ。」
あれがライリシュの実力か。
以前、リアティーンにいた時より格段に強くなっている。
「・・・マグナリートはあたし達の故郷。あんた達になんて渡すもんか。」
敵の前衛部隊を殲滅。
市民の救出をすると、私の元まで戻ってきた。
「何で、まだここにいる訳。」
棘のついた言葉を私にぶつけてくる。
「敵に襲撃されている場から逃げるはずないだろう。」
「・・・・ふーん。」
ライリシュは再び敵部隊の方へ振り返る。
「あんたが戦うって言うなら勝手にすればいい。いないよりはましだからね。」
戦わなくてはならない。
だけど、ヂュムが心配だ・・・。
「・・・・・・あんたと一緒にいた子なら無事よ。」
「え・・・・?」
私の考えが読めてでもいるのか?やれやれ、ライリシュは変わらないな。
だが、これで安心して戦える。
「あぁ、私も戦う。マグナリートを守るぞ。」
「あんたと肩を並べて戦うのも随分と不服だけどね。」
こんな時まで何を言っているのやら。
だが・・・・奴等のような兵士達に負ける要素はないな。
「行くよ!」
「行くぞ!」




* Re: eight knights ( No.10 )
日時: 2012/03/17(土) 00:36:20 メンテ
名前: RTI



「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
この世界の北の大地。
もう使われなくなり、荒れた城の中、白いハイレグを身に纏った私はただハイグレを続けていた。
今は回復を優先しなければいけない。
そう、全ては魔王様のため。魔王様の偉大さを知らしめるため。
「ハイグレッ!ハイグレッ!リヴ様、準備ができました。」
私の元に一人の女の子がやって来て、ハイグレをする。
先日、リアティーンでハイグレ人間へと転向することができた女の子。
この子の他にも、沢山の人達がハイグレ人間へと転向を済ましている。
後は私が回復さえ済ませば、リアティーンの人々全てをハイグレ人間へと転向させることができるはず。
でも、その前にやることがある。
私は先導する女の子の後に付き、城の地下へと向かう。

「ハイグレッ!ハイグレッ!お久しぶりですね、ユリレイ様。」
薄暗い地下の監禁室。
絶えそうな呼吸音、強く縛られた鎖、一人の女性が監禁されている。
リアティーンの時と同じ軽装のまま、身動きが取れない。
私の声に気付くと、ユリレイ様は顔を上げる。
「・・・・・・・・・・。」
ユリレイ様はただジッと私の顔を見つめる。
「本当に・・・リヴ様なのですか?」
ゆっくりと発せられた言葉はその一言だった。
「はい。私は魔王様の僕、ハイグレ人間リヴです。」
「・・・・・・・・・・・・。」
再びユリレイ様は視線を落とし、黙り込んでしまう。
「どうして黙ってしまうんですか?」
「・・・・あなたは聖戦士様なのですよ。」
「はい、そうですね。私は聖戦士の力を受け継ぎました。」
私が微笑むと同時にユリレイ様は顔を上げ、私を鋭い目で見つめる。
「ならば!なぜあなたはリアティーンの民達に剣を向けたのですか!」
「・・・・・私も本当は辛いです。」
・・・・私だって剣を構えるのは辛い。
でも、今は仕方ないんだ。
これは魔王様のため、そして、全ての人のため。
「ですが、ハイグレが素晴らしいものだということを理解してもらいたいんです。」
「違う!そんなこと間違ってる!力をもたない民達に武力をもって従わせるなど、間違っている!」
ユリレイ様・・・それは間違いではありません。
例え、今はどう思われたとしても、
「これ以上話していても仕方ないです。どうか、あなたもハイグレを受け入れてください。」
右手に握る光線銃をユリレイ様に向ける。
「リヴ様・・・・あなたはリーティスのことを・・・・・。」
放たれた光線はユリレイ様を包む。
「うぅぅぅう・・・・。」
ユリレイ様の体は点滅し、段々とハイレグ姿へと変わっていく。
苦しみながら、光から解放されると黄色いハイレグ姿となった。
ユリレイ様は自分の姿を見て、驚きを隠せていない。
「・・・・くっ、何だこれは。」
「ハイグレッ!ハイグレッ!あなたもその姿になったことで気付いたはずです。」
「気付いたことなど何もない!」
ユリレイ様は視線を自分の体から私の方へ向ける。
「今はそうでも、次、ここに来る時までには転向を済ましていると思います。それでは失礼します。ハイグレッ!ハイグレッ!」
私はハイグレを終えると、監禁室を後にした。

「すまない・・・リーティス・・・・・・。」



私が向かった先は古城の大広間、そこにはハイグレ人間へと転向を済ませた人々がハイグレをし続けていた。
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
このハイグレコールが魔王様やお姉ちゃんに届きますように。
私も人々の中に混ざり、ハイグレを始める。
使命を背負っていても、それ以前に私は一人のハイグレ人間。
ここで、ハイグレ魔王様のためにハイグレを捧げ続ける。



「ライリシュ、平気か?」
「ふん・・・あんたの方が動き悪かったじゃない。」
「相変わらず減らない口だな。」
青い空。
私とライリシュは地面に倒れこみ、ただ空を見つめている。
「だけど、ライリシュは強いな。」
「何を今更。あたし、あんたよりは強いつもりよ。」
「・・・・リアティーンに戻ること、考えなおしてもらえないか?」
「・・・・・・・・・。」
きっぱり断りをいれず、押し黙る所を見るに、ライリシュもことを深く考えてるようだな・・・。
「ラーテンに行くんでしょ、あんた。」
突然に言葉を掛けられた。
私はそうだ、とだけ伝えた。
「ヂュムちゃんだったよね。あの子、本当に勇敢だなと思ったよ。あの子を見てたら、あたしもやらないとなって感じた。」
「ヂュムが・・・か。」
ライリシュがヂュムと何があったかは知らない。
だけど、ライリシュと力になってくれたんだろう。
「・・・・・あんたはまだまだね。ま、最低限の実力があるぐらいかな。」
ライリシュは立ち上がると、私の顔を見て、鼻で笑う。
やれやれ、手厳しいな。
だけど、ライリシュが味方についてくれたのは本当に心強い。
「でも・・・・ミルルとリルーを危険な目に会わせたくないの。」
誰だろうか・・・・。
「血は繋がってないけど、あたしの妹よ。母親も父親もいないから、あたししかあの子たちを守れない。」
なるほど、ライリシュがマグナリートを出れない理由はそれだったのか。
「でも、そんなの間違いだってわかってる。本当に二人を守りたいなら、リアティーンに行くべきだって。」
ライリシュ・・・・思っていた以上に現状を把握していたんだな。
「だから、ラーテンから戻るときにまたここにきてほしい。」
「え・・・・?」
「あたし、リアティーンへは行く。でも、ミルルとリルーは守りたいの。」
そうか、これから向かうラーテンが安全な保証はない。
つまりはリアティーンへ帰る時にライリシュ達を迎えに来ると、そういうことか。
「わかった。約束しよう。」
「・・・・・ありがと。」
「リーティス!!」
ヂュムが私を呼んでいる。
ライリシュを疑ってたわけじゃないが、無事で良かった。
さて・・・・ラーテンに向かおう。





「ローディア殿、どのようなご用件で?」
「できれば、聖戦士様について書かれた書物を拝見したいのですが。」
「書物ですか・・・・わかりました。」

「・・・・やはり、読めませんね。」
城の書庫。
現状が現状のため、誰一人としていない。
過去の書物・・・・これを読める者はおそらく、今生きていない。
これさえ読むことができれば・・・・。
「あの本は・・・・?」
一冊だけ妙に埃を被った本が。
日記・・・?この筆跡はどこかで・・・・・


* Re: eight knights ( No.11 )
日時: 2012/03/30(金) 22:32:18 メンテ
名前: RTI



「いい?ちゃんと帰って来ないと許さないから。」
「「行ってらっしゃーい、お姉ちゃん!」」
汽車の発着場、ライリシュ達に一言もらい、マグナリートを後にした。
汽車はラーテンを目指して走っている。
日はもう真上に昇っている。
私が窓から流れる外の景色を見ていると、向かい合って座るリエンとヂュムが何やら話している。
「リーティス、ヂュムちゃん、無事で良かった・・・・汽車の準備をしていても気が気じゃなかったよ。」
「ごめんなさい・・・。」
「あ、ち、違うよ。ヂュムちゃんが悪いんじゃなくて、私がもっとしっかりしてれば良かったのよ。ね、ねぇ、リーティス?」
・・・・あれが本物のリヴ様であることをまだ信じてはいない。
だが、本物であろうとなかろうと、聖戦士の力を持っているのは確かなこと。
どう戦えばいいのか・・・・
「ちょっと、リーティス聞いてる?」
気付くと、リエンがジッと私を見ていた。
「あ、すまない。少し考え事をしていた。」
「だ、だから、ヂュムちゃんは偉いよねーって。」
リエン、どうしたんだ?表情が慌てているようにも見えるが。
「そう・・・だな。確かにヂュムは努力家だと思う。」
「そうそう、ヂュムちゃんは本当に頑張り屋なんだから!」
「え、あ・・・ありがとうございます。」
こんな状況なのに笑い合って話せている。
不謹慎と言えばそれまでだが、私達が諦めていない証拠だ。
ラーテンの二人にも早く会って事情を説明しないと。

私達は途中、汽車を止めてもらい、歩いてラーテンを目指す。
景色は荒れた地から静かな森に変わっていた。
「リーティス・・・何で歩くことにしたの。」
リエンが私の後をとぼとぼとついてくる。
「仕方ないだろう。ラーテンは魔法国、汽車の発着場なんてないんだ。」
「え・・・そうなの?」
「まぁ、もうすぐつくさ。この森の奥にラーテンがあるからな。」
ラーテンが既に陥落したなんてことはないだろう・・・。
そんなことを考えながら、私は足を止めた。
「ん?どうしたんですか、リーティス。」
ヂュムが私の横に立ち、首を傾げる。
「誰かに見られている。」
気配だ。間違いない。
数は・・・・三人か。
「そこの者達、止まれ。」
その声が聞こえた時には私達の目の前にローブ姿の者が三人立っていた。
「わわっ、いつの間に・・・・。」
ヂュムが私の後ろに隠れる。
緑の色をしたローブ・・・ラーテンの魔導師達か。
「お前達は何者だ。先の奴等の仲間か。」
フードを被っているため、顔が見えないが相当警戒している。
それよりも、先の奴等と言ったな。
リアティーンとマグナリートを襲撃してきた奴等としか思えない。
リエンにここは任せろと眼で合図を送り、前に出る。
「私はリアティーン七騎士、リーティス・エルギア。先日から現れた奇怪な集団の事をフレア姫にお伝えに参った。どうか、取り次いで頂けないか?」
「無理だ。今、この国には誰も入れられない。例え、リアティーン七騎士であろうと。」
「このままではリアティーンもラーテンも滅ぶ道を選ぶことになってしまう。」
「無理なものは無理だ。諦めろ。」
くっ、ラーテンがここまでの厳戒態勢を要されていたとは。
相当な被害を受けているのかもしれない。
だが、強行突破などできるはずもない。
『いけません、その方達は私のお客様です。』
突如魔導師達の後ろに現れた一人の女性。
あの青いローブは間違いない・・・・・。
「シャラン・・・・・。」
「御久し振りですね、リーティス様。」
青単色ローブ姿の女性はフードを外す。
ローディアとはまた違う、ふわっとした茶色の長髪。
優しげな澄んだ青い瞳、以前会った時よりも女性らしくなっている。
「しゃ、シャランさん、いくらなんでもここを通すわけには・・・・。」
「責任は私が負います。」
「・・・・・・仕方ないですね。我々はフレア姫様に報告してまいります。」
それだけ言うと三人の魔導師達は消え去った。
「ふぅ・・・お待たせしました。フレア姫様とお話しをするんですよね、私が取り次ぎますのでついて来てください。」
シャランはほっとするような微笑みを見せると、振り返り歩き出す。
「もう大丈夫みたいだ。行くぞ、リエン、ヂュム。」
「い、今のが七騎士の一人?」
リエンが目の焦点も合わないまま私に聞いてくる。
「あ、あぁ、そうだが、どうしたんだ。」
「凄く綺麗ね・・・あの人。外見だけじゃなくて、凄く目が澄んでた・・・・。」
リエンは見惚れてでもいたようだ。
確かにシャランは綺麗だが・・・・
「置いて行かれる。早く後に続くぞ。」



シャランの後を追って歩き、ラーテン国内に入った。
私達三人は慣れないラーテンの街中を歩いている。
ほとんど自然の中に家がある状態で、街と言うよりは村に近い。
だが、遠くに見えるのは大きな城。
あそこにこの国を統べるフレア姫がいる。
しかし、一つ気になるのは襲撃を受けたにしては一般人も普通に出歩いていることだ。
「シャラン、本当にラーテンへ襲撃があったのか?」
聞きたいことを素直にシャランへぶつける。
シャランは振り返り、悲しそうな顔をする。
「説明致しましょうか?」



「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
城の道から反れ、ラーテンの端とでもいうべき場所。
そこには魔導師達によって張られた結界があった。
そして、結界の中には大勢の人々が布一枚の姿で奇妙な動作を繰り返している。
そうか・・・・犠牲になった人々はここに隔離されていたのか。
「ハイグレッ!ハイグレッ!全ては魔王様の為に!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!諦めてハイグレ人間になりなさい!」
結界の内側からは操られた人々の声が聞こえてくる。
・・・・精神が完全に曲げられてしまっている。
結界の張られている場所、その目の前で地面に膝をつけ泣いている少女がいた。
「ひっく・・・ひっく・・・・・。」
「あの女の子は?」
「・・・・お母様を失った方です。」
私の問いにシャランは小声で告げた。
「そうか・・・・ラーテンでも被害は大きかったのか。」
私が結界の方に目を向け直すと同時に泣いている少女に石が投げつけられた。
「っ!!」
石の飛んできた方を見ると、少女と同じ年くらいの子供達が投げつけていた。
「・・・・・・・・・。」
少女は呼びとめる暇もなく、泣きながら走り去って行った。
「止めなさい。」
私が気付いた時にはシャランが子供達に近付き、注意を促していた。
「だって・・・あいつの母親がお母さんを奪ったんだ・・・・。」
操られた人は仲間を増やすかのように他者を襲う・・・・。
泣いていた少女の母親は先に操られ、他の人を攻撃したのだろう。
随分と残酷なことを強いるものだ。
「・・・・・・・・・・。」
シャランはしゃがみ込み、軽く微笑み、頭を撫でる。
「そうだね、あなた達もお母さんやお父さんがいなくなって辛いんだよね・・・・でもね、あの子も同じなの。だから、酷いことしないであげて。」
子供達は小さく頷くと、シャランの前から去って行った。
「シャラン・・・・・・。」
「辛いのは戦っている方達だけではありませんから。」
シャランは辛い気持ちを抑えて微笑んでいる。
彼女は民のことを考えられている・・・・。
「それでは、城へご案内します。」
シャランが歩き出すが、リエンだけ明後日の方向を向いて立っている。
「リエン、行くぞ。」
「・・・・私、あの子を探してくるね。」
「リエン・・・?」
「ごめん、現状は分かってる。だけど、ごめん。」
リエンは私の制止も聞かず、走り去って行った。
「リーティス様?」
シャランがこちらを振り返り、止まっていることを不思議そうに見てくる。
仕方ない。後で合流すればいいか・・・・。





ラーテン城、シャランがいるだけで入ることも容易だった。
もっと疑われるものかと思ったが、シャランは相当に信頼が厚いようだ。
城の廊下を歩く中、ヂュムがシャランに話しかけている。
「シャランさんも七騎士の一人なんですよね?何魔法が得意なんですか?」
「あ、私は・・・特化した魔法はないんですよ。」
・・・・・?
特化した魔法がない?だったら、現在も七騎士でいられるはずがない。
以前は治療魔法の使い手としてリアティーンにいたが、フレア姫からラーテンに帰るように指示をされた・・・・
「シャラン、まさかとは思うが。未だに治療魔法を使ってはないだろうな。」
「・・・・当たり前ですよ。それよりも早くフレア姫様の元へ行きましょう。あまり時間はないかもしれません。」
そう言ってシャランは足早にフレア姫の元へと歩き出す。
シャラン・・・・まさか、まだ治療魔法を・・・・・



* Re: eight knights ( No.12 )
日時: 2012/03/30(金) 22:34:05 メンテ
名前: RTI




「フレア姫様、リーティス・エルギア様を連れて参りました。」
扉越しに言葉を発するシャラン。
それに答えるように扉が開かれる。
「ヂュムはここで待っているんだ。」
「はい。」
ヂュムを残し、シャランと二人で入る。
長い髪、真っ赤なドレスに身を包んだ女性。
魔法国ラーテンのプリンセス、フレア・レーシュトラス様が玉座に座る。
「ようこそいらっしゃいました、リーティス・エルギア。私はこの国の姫である、フレア・レーシュトラス。本日はどんなご用件でしょうか。」
フレア姫は私が何の話をしに来たかは知っているだろう。
私は一歩前に出る。
「本日はフレア姫様に戦力をリアティーンに終結させる旨をお伝えに参りました。そのため、ラーテンの人々の力が必要となります。」
私の申し出にフレア姫は思案顔を浮かべる。
「おそらく、あなたは七騎士である二人も連れに来たのでしょう。ですが、それは少し難しい話です。わかっていますね?シャラン。」
「・・・・・・・・・・。」
フレア姫の言葉にシャランは黙りこむ。
「まさか、シャランはまだ治療魔法の扱いを・・・・・?」
フレア姫は黙って頷いた。
そうか・・・やはり、まだ使っていたのか。
「ですが、フレア姫様・・・・私は・・・・・・。」
シャランはどこか取り乱したかのように前に出る。
「シャラン、下がりなさい。あなたは既に戦闘に参加できる者ではありません。」
「・・・・・・・・。」
シャランは黙って入ってきた扉から出て行った。



「・・・姉さんは今の状況がわかってる訳?」
フレア姫の後ろの扉から一人の少女が現れる。
フレア姫と似た、優しい顔つきの短髪少女。
妹・・・?いや、姫の妹でありながら黄色いローブを着ているだけなのは少しおかしい。
ローブ姿の少女は私の方を向く。
人形のように整った顔立ちで非常に可愛らしい。
年齢はヂュムよりいくつか年上と言ったところか。
「私、フレア姫の妹、ティフィル・レーシュトラス。あなたがリーティス?」
「ティフィル、あなたは下がっていなさい。」
フレア姫が叱るようにティフィルに下がれと言う。
だけど、ティフィル様は不機嫌そうな表情になる。
「・・・・・どうしようが私の勝手でしょ。リーティス、先に言っておくけど、ラーテンも一回目に受けた襲撃で大打撃を受けているの。次の攻撃からは守りきれるかもわからない。」
そう言いながら、ティフィル様は私の元に歩み寄る。
「ティフィル、いい加減にしなさい。」
「姉さんは黙っててよ!」
ティフィル様は止めるフレア姫に怒りをぶつけ、私の目の前にまで歩み寄ってきた。
そして、私の手を取る。
「リーティス・エルギア様。」
ティフィル様はジッと私の顔を見つめる。
「この世界を・・・・共に守りましょう。七騎士の一人である私、ティフィル・レーシュトラスも全力を尽くします。」
「七騎士の一人・・・・?」
確かにラーテンの指揮系統を担っているのはフレア姫だ。
だが、ティフィル様もフレア姫の妹ならば、七騎士であることはおかしい。
「ティフィルは・・・光魔法の正統後継者です。」
フレア姫が諦めたかのように言葉を発する。
光魔道士・・・ラーテンの中に一人しかいないと言われている、魔導師の中のエース。
その使い手は自分が戦えなくなる時、一番魔力のセンスを高く持つ者に受け継いでいくと言われる、最高クラスの魔法・・・・。
それをティフィル様が受け継いだというのか・・・・?
「知っての通り、光魔法の使い手はリアティーン七騎士の一人になることは当然と言っても過言ではありません。ですが、ティフィルは自分の立場が分かっていない。」
「わかってないのは姉さんの方!こんな時に身分とか関係ないでしょ!」
・・・自分の立場のせいで二人がぶつかり合っている。
なるほど・・・・確かにシャランもティフィル様も連れ出すのは難しい話だ。
「フレア様!一大事です!」
突然に一人の魔導師が入ってきた。
「先の敵部隊が再び攻めて参りました!それも、規模が先程の数倍です!」
「もう攻めてきましたか・・・。」
フレア姫も予想はできていたことだろうが、対策がない。
間を入れずに攻めてきたということは確実にラーテンを潰しにかかってきたと考えるのが妥当か。
「行きましょう、リーティス。」
「ティフィル!!」
「うるさい!!姉さんは民のことなんて何も分かってない!!」
ティフィル様が駆けて部屋を出て行く。
「リーティス様、すぐに魔導師達を送ります。ティフィルをお願いします!」
ラーテンの姫の妹君が戦線に立つのはまずい。
フレア姫も相当に焦っている。
告げられた言葉に私は力強く返事をした。





「あ、いたいた。」
私はさっき走り去って言った女の子を追いかけていた。
少し走ったところ、湖の畔に女の子は俯きながら座っていた。
私が近づいてきたことに気付いた女の子は逃げようとする。
「待って!」
走りだす女の子に私は追いついた。
女の子は走るのをやめて、後ずさりする。
「逃げないで。私は何もしないよ。」
「来ないで!」
反応するかのように女の子の周囲に水柱が・・・・
この子・・・・水魔導師。
「うっ・・・・。」
水柱を諸に受けてしまった。
「ま、待って・・・・。」
「来ないでよ!」
先程より強い水柱に襲われる。
「うぅっ!お願い、私の話を聞いて。」
「嫌!嫌!!」
完全に人を拒絶してる・・・・。
相当酷いことをされたんだろう。
「私はあなたの味方だよ。」
「嫌!!!」
「ッ!!」
水でできた鋭い槍が私の腹部に命中していた。
「う・・・・・げほっ・・・げほっ・・・・・。」
流石に今のは結構効いたな・・・・。
その場に膝から倒れこみ、呼吸を整える。
「お、お姉ちゃん・・・何で避けないの・・・・・。」
女の子は私のすぐ横に駆け寄り、心配そうにしている。
「あはは・・・こうでもしないと信じてもらえないかなって・・・・・。」
女の子に笑いかける。
「ごめんなさい・・・・・。」
「いいよ、謝らなくて。あなた、名前は?」
「ナル・・・・。」
「ナルちゃんね。私はリエン。」
* Re: eight knights ( No.13 )
日時: 2012/03/30(金) 22:39:26 メンテ
名前: RTI



「そう・・・お母さんが見回りに行っている間に敵に攻撃を受けて・・・・・。」
「お母さん・・・・戻って来た時にはおかしなことをし出して・・・・はいれぐ?を着なさいって、追いかけて来たの・・・・。」
そうか・・・・この子のお母さんが敵の手先にされたんだ・・・・・。
「私は逃げられたんだけど・・・・お母さん、ラーテンのみんなを襲って・・・・・・。」
今の話を聞くに、おそらくはナルのお母さんにラーテンの人達は攻撃を受けた。
完全にナルのお母さんが悪役にされているってことか。
「お母さんは・・・お母さんはそんな酷いことしないもん・・・・・・。」
「ナルちゃん・・・・。」
ナルは俯きながら、今にも泣き出しそう。
私はそっとナルの頭を撫でた。
「大丈夫。お姉ちゃんが守ってあげるから。」
この子を見てると、昔の自分を思い出す・・・・。





「何の音かな・・・・。」
今、妙な物音がしたような・・・
何より、酷く胸騒ぎがする。
隣ではナルが首を傾げながら私の方を見ている。
そこに突き刺すような悲鳴が聞こえてきた。
「!!」
予想通りか・・・・間違いなく敵が攻めてきている。
「ナルちゃん、あなたは急いで悲鳴が聞こえた方とは逆方向に逃げて。」
「え・・・・で、でも・・・・・。」
「いいから!私の言うことを聞いて。」
悲鳴の聞こえて来た方から何かが迫ってきている。
すぐにここも発見される。
ナルは私の態度で状況を悟ったのか、その場から離れようとする。
「よし・・・・ここは何が何でも通させはしない。」
いくら私でも兵士如きにやられはしない。
「きゃあぁぁああ!!」
だけど、悲鳴は背後から聞こえた。
ナルが奇妙な銃器を持った兵士達に襲われそうになっている。
そんな・・・・確かに敵は私の前方から迫ってきているはずなのに。
既にこの湖付近は敵で囲まれている!?
そう考えるのが妥当だけど・・・それじゃあ、包囲網の突破経路がない・・・・。
いや、それよりも今は!
「ナル!!」
すぐさま兵士達とナルの間に入る。
「お、お姉ちゃん・・・・・。」
「大丈夫、絶対にあなたを守る。」
兵士達は銃器を構え、すぐにでも撃ってくるつもりだ。
私はコート裏に隠しておいた鎖鎌を両手に握る。
鎖鎌使いである私なら・・・広範囲の敵に攻撃できる。
「見せてやるよ・・・七騎士の一人としての戦いを・・・・・。」
私が投げた鎌は兵士達の銃器を真っ二つに裂き、手元に戻る。
「相当な切れ味よ、これは。あんた達如きの手には負えない。」
「お姉ちゃん!後ろに!」
次は後ろか・・・・!!
「くっ・・・・左右からも!」
全方位から敵の兵士達が・・・・。


* Re: eight knights ( No.14 )
日時: 2012/03/30(金) 22:40:00 メンテ
名前: RTI



「こ、これぐらいで倒れる私じゃないんだから・・・・。」
敵に食らいついていくかのように飛び回る鎌。
左手で鎖を緩め、右手で鎌を手元に戻す。
鎖鎌の扱いでこんな兵士どもに負けはしない。
意志を持ってるかのように鋭く、兵士どもを斬り裂こうとする刃。
敵に反撃の隙なんて与えるものか。
私の武器は多数を相手にしても融通が利く。
私が全力でぶつかる限り、兵士どもに勝ちの見込みはないだろう。
例え、大部隊でも私とナルの周囲を守ることぐらいなら・・・・
あっという間に敵の銃器を切り捨てる鎌。
敵だって勝ちの見込みは持てないはず・・・・さっさと諦めて撤退すればいいものを。
まだ私のミスを誘ってるのか。
「私のミスを待っているなら・・・・無駄よ!」
ナルは怯えながら私にしがみついている。
ナルを守る・・・そのためなら、自分のことなんてどうなったって!
「リエンさん・・・見つけましたよ。」
「!!」
遠くから聞こえた少女の声。
兵士達とは違う・・・強い力を持ってる何かが近づいてくる。
「女の子を守るため・・・リエンさんは本当に優しい人ですね。」
この声・・・・間違いない。
まさか、もう回復していたなんて。
「ラーテンに来ているとは思いませんでした・・・・。」
鎖を引き、手元に鎌を戻す。
その後、すぐに白ローブを纏った少女が私とナルの元に歩いてくる。
フードを被り、顔を見せない少女。
「リエンさん達はリアティーンの守りを続けていると思っていたのですけど・・・戦力を集めていたんですね。」
鎖鎌の射程圏内に入ったところで少女は足を止める。
周りに残っている兵士達も攻撃を仕掛けてこない。
おそらく、さっきまでの攻撃は私をここに居続けさせるための時間稼ぎ。
「あなたの真意は何ですか・・・リヴ様。」
「真意?それは勿論・・・・。」
リヴ様はローブを脱ぎ捨てる。
それと同時に白い、はいれぐと呼ばれる布に肌を包まれたリヴ様が姿を現す。
後ろを結った綺麗な髪、以前に見た時よりも女性らしく成長した身体、それが羞恥を覚えないはずがない姿と相乗して、色気をも感じさせる。
「勿論、ハイグレ魔王様への恩を返すため。そして、全ての人をハイグレ人間にし、この快楽を感じてもらいたいだけです!ハイグレッ!ハイグレッ!」
リヴ様は足を外に開き膝を曲げ、脚の付け根にある奇妙な衣服の切れ込みに沿って手を動かす。
無様としか言えない動作を真剣な表情で繰り返すリヴ様を見ると、心が痛む。
精神操作をされ、したくもないであろう行為をさせられている・・・許せない。
「ハイグレッ!ハイグレッ!リエンさん、あなたは七騎士の一人。聖なる騎士であるあなたは私に傷を与えることができる・・・あなたが攻撃をするつもりならば、私も戦わなくてはいけない。それは・・・辛いです。ハイグレッ!ハイグレッ!」
動作を続けながら話し続けるリヴ様。
「・・・・どっちにしても、無理やりリヴ様と同じ姿に変えようとするんですよね。」
「リエンさんが抵抗するなら・・・仕方がないんです。ハイグレッ!ハイグレッ!」
戦いは避けられない・・・・か。
「わかりました・・・戦いは避けられません。ですが、この子は・・・助けたい。」
ナルは私の後ろで怯えている。
この子を守る・・・それだけは何があっても。
「・・・・・それはできないです。」
「なっ・・・・。」
「その子もハイグレ人間となる義務があります。魔王様の望む世界は全ての人がハイグレ人間に生まれ変わること。」
「でも・・・・・・。」
「ごめんなさい、リエンさん。今、その子を助けることを約束しても、いずれは必ずハイグレ人間に転向する。だったら、早く気持ちいいことを知った方がいいじゃないですか。ハイグレッ!ハイグレッ!」
最後は笑顔で動作を繰り返しながら私を見つめる。
「・・・・・・・・・。」
自分の右手で力強く鎌を握り、臨戦態勢に入る。
「どうしても戦うんですか・・・?」
「・・・・・・・・・。」
私は覚悟を決め、構える。
目の前にいるのは私達の信じる聖戦士様じゃない。
違うに決まってる。
彼女をリヴ様と思ったら駄目だ。
「・・・・リエンさんと戦うなら、私も力を使うしかないですね。」
空から現れる大剣、聖戦士のみ持つことを許された剣。
私で勝てるか・・・いや、相手になるのかどうかも・・・・・・。
「・・・・・・・・。」
怯え続けるナル・・・私が負けたらこの子は・・・・・。
「負けられない!」
勝算がどうのとかの話じゃない。
私の右手から離れた鎌は聖戦士へ向かって食らいついていく。
「私も・・・負けられないんです。」
聖戦士は大剣を大きく振りかざす。
だけど、ワンテンポ速い・・・鎌には命中してな・・・・・。
「!!」
聖戦士が大剣を振り切った刹那、私達に向かって突風が吹きつけた。
鎌は風圧に負け、飛ばされ、地面に刺さる。
私とナルは想定外の力を持った風に吹き飛ばされる。
「ナル!」
私は飛ばされる瞬間、ナルを抱きしめた。
そのまま吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「な、ナルちゃん・・・怪我はない?」
「う、うん・・・・・。」
左腕を強く打った。
けれど、ナルは怪我がないみたいだ・・・良かった。
心配そうに見つめるナルに優しく微笑む。
「リエンさん・・・・もう止めましょう・・・・・・これ以上は苦しいです。」
「私にだって守りたいものはある。」
再び立ち上がり、地面に刺さった鎌を手にとる。
左腕は使いものになるか分からないけど・・・関係ない。
「・・・・・・長引かせるわけにはいきませんね。」
そう言った直後には私の目の前に聖戦士はいた。
「速い!?」
「ごめんなさい。」
気付くと、私は地面に背中から叩きつけられていた。
「うっ・・・・くっ・・・・。」
動きの速さ、身のこなし、桁が違う。
私の力じゃ・・・・及ばない・・・・・・。
「お姉ちゃん・・・・もう止めて・・・・・。」
ナル・・・・・。
でも・・・・終われるもんか。
左腕を抑えながら立ちあがる。
誰も・・・・いない。
鈍い音が響く。
「あ・・・・あぁぁ・・・・・・。」
背中に突き刺さる痛み。
いつの間にか聖戦士は私の後ろにいた。
大剣は私を確実に捕えていた。
「酷い痛みを感じたでしょうが、外傷はないはずです。許して下さいとは言いません・・・ですが、後になれば理解してもらえるはずです。ハイグレッ!ハイグレッ!」
聖戦士は残念そうに言うと、大剣の刃先を地面に刺し、奇妙な動作を始める。
「お、お姉ちゃん・・・・。」
「うぅぅ・・・・・・。」
意識が・・・・消えていく・・・・・・。
私は何のために七騎士になったのさ・・・・・。
こんなに弱い自分のままで・・・・・・。
もう何も見えなくなって・・・・・

* Re: eight knights ( No.15 )
日時: 2013/09/07(土) 00:59:58 メンテ
名前: RTI



私は敵と魔導士達の交戦地点へと向かっている。
シャランはティフィル様を追いかけて戦線へ向かって行ったらしい。
ヂュムには城に待機してもらっているから大丈夫だろうけど、二人の身は危険な状況だ。
リエンの事も心配だ。少女を追いかけていったようだけど、無事であることを願う。
「……!」
前方で小さな爆発が起きたように見えた。
あの辺りが交戦場所か。
私が駆け付けた時には粗方の敵は片付けられていた。
「リーティス様!」
戦線で待機していた魔導士達と合流に成功した。
「大体の敵は殲滅が終わったように見えるが」
「まだ安心してはいけません。いつ第二波が来るか分かりません」
そうか、敵の規模は相当なものだからな。まだ後ろにどれぐらい控えているか分からない。
「……そうだ、ティフィル様とシャランは?」
まだ敵が残っているならば早く二人とも合流しなければ。
「ティフィル様? ティフィル様が戦線に立たれるはずがありませんよ」
どうやらティフィル様は戦線には姿を現していないようだ。
だとすれば、ここよりも前方か……。
「私はこの戦線より前へ偵察をしてくる」
「それは危険です!」
「すまないが、止まってる時間はない」
魔導士の静止も聞かず、私は先へと進んだ。
魔導士達の防衛ラインを少し進んだところ、いつ、敵が攻めてきてもおかしくない位置で一人の少女は遠くの空を見つめていた。
「ティフィル様!」
私の呼びかけに応え、こちらを振り返る少女。それは杖を構えたティフィル様だった。
「リーティス、来てくれたのですね! もうすぐ敵が来ます。構えてください!」
「後退しますよ、ティフィル様」
「リーティス、あなたも姉さんの味方なのですか」
「そういう話ではありません。私が言いたいのは……」
「もういいです! リーティスには頼りません!」
私に構わず、ティフィル様は前方へと駆けていく。
「ティフィル様!」
とにかくティフィル様の後を追い、ラーテンの森を走り続ける。
「止まってください!」
やっとの思いでティフィル様に追いつき、彼女の腕を掴む。
「どうして止めるんですか。私だって七騎士の一人です! 戦えます!」
「……」
「そんなに私が頼りないですか。私はそんなに役に立たないですか」
「……ください」
「……え?」
「いい加減にしてください! あなたは七騎士を何だと思っているんですか! 七騎士は自殺行為をするための称号ではありません!」
私の怒声にティフィル様は一瞬、縮こまってしまう。
「あなたが本当に七騎士であるならば、戦局を見誤ることなど、許されません」
「……」
「戻りましょう、ティフィル様。我々七騎士の力は必要なのです」
ティフィル様は私の手を取った。戻ってくれる気になったようだ。
「ありがとう……私を七騎士として認めてくれて」
きっとティフィル様は七騎士になることを周囲から反対され続けたのだろう。
だから他者との連携ができないほど、不器用なのだ。
私はティフィル様を連れ、交戦地点まで撤退をした。

「ティフィル様! 御無事で!」
交戦地点に戻るや否や、シャランがティフィル様に駆け寄る。
「シャラン、無事だったんだな」
「はい。ですが、ティフィル様を見つけることが出来なくて。リーティス様が見つけてくださってよかった」
シャランは心底安心した様子でティフィル様の方を見つめていた。
「リーティス!」
「ん……ヂュム?」
そんな私達の元へ駆けてきたのは城で待機してるはずのヂュムだった。
「大変です! リエンさんが……」
「何だって?」



「リエン!」
ラーテン城へと戻った私達は救護室で横になっているリエンを目にした。
外傷はないにも関わらず、絶えそうな呼吸をしている。
「一体、何があったんだ!」
「……リーティス。聖戦士がラーテンに……いる」
……リヴ様がラーテンに?
「リーティス、大変です! 交戦地点の方で怪しげな光が!」
ティフィル様が部屋の小窓から身を乗り出し、ラーテンの森の方を指差している。
私としたことが敵方にリヴ様がいないと決めつけ、魔導士達に戦線を任せてしまっていた。
相手が怪しげな兵士達だけならば問題ないが、リヴ様がいるならば勝ち目はない。
急いで魔導士達の増援に向かわなければ。
「シャラン、ヂュムはリエンを頼む。ティフィル様は私の支援を頼む!」
私はティフィル様と部屋を出る。
しかし、ラーテン城を出ることすらままならなかった。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
既にラーテン城以外は突破されてしまったらしい。
城へと攻め寄せてくる魔導士達……いや、ハイグレ人間にされた魔導士達。
城の守りをする魔導士が食い止めてくれているが、リヴ様が姿を現せば突破は容易にされるだろう。
「リーティス、どうするんですか」
「駄目だ……無駄な犠牲は出せない。フレア姫の元へ向かい、早急にこれからのことを話す」
「分かりました」
私とティフィル様は急ぎフレア姫の元へと戻った。



「……なるほど。分かりました」
フレア姫の元へ早急に戻った私達。
フレア姫は何かを決心したように私達の方へ向き直る。
「他に手段はありませんね……あれを行います。ティフィル、手伝いを」
胸元から何かの宝石のようなものを取り出すフレア姫。
「これはお父様から授かったもの。国の危機が訪れた時に使えと」
「姉さん……それは」
「これに魔力を送れば、国の外にまでなら異動できる魔方陣を作れます」
国の外へ脱出か……それは、つまり。
「ラーテンを放棄します。直ちに残存の魔導士達を集めなさい」
国を捨てるということだ。
もはや反は意味をなさなかった。これ以上被害が広がるのを見ていても何もならない。
それぞれが思うことはあったが、他の魔導士達を集め動き出した。

「ヂュム、シャラン!」
私は初めに二人の部屋へと赴いた。
「リーティス!」
「り、リエン!?」
リエンが元気に溢れた声で出迎えてくれた。
先程までの傷が嘘みたいに治っていた。だが、あれだけの怪我がすぐに治るはずがない。ということは……。
「シャラン、治療魔法を使ったのか……」
「ごめんなさい。でも、リエンさんは私達にとっても重要な方ですよ……」
リエンの力が必要だからと言っているが、シャランの性格からして放っておけなかったというのが正しいのだろう。それに、今はシャランを責めてる場合じゃない。
「三人共、脱出準備だ!」



「残存の魔導士達を集めました。後は下の階で敵の攻撃を食い止めている者達だけです」
再びフレア姫の元へ戻ると巨大な魔方陣が床に描かれていた。
「急ぎ、異動を開始します」
両手を広げ、魔方陣の起動を始めようとした時だった。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
敵の配下となった魔導士達が乗り込んできた。
「……ここまで突破されたか」
私が二刀を抜き取り、臨戦態勢に入る。
「あなたが戦う必要はありません」
次の瞬間には敵に堕ちた魔導士達はドーム状の結界に包まれていた。
その結界を張ったのは間違いなくフレア姫だった。
「フレア姫!」
「リアティーン七騎士、行きなさい。あなた達はやるべきことがあるのですから」
フレア姫は先に行けと言わんばかりに敵の前へと移動し、両手を前に出す。
「姉さん、魔方陣が起動する! 早く!」
「魔方陣を起動するには、外から発動しないとならないのです。魔方陣を起動できるのは私だけ。つまり、私は異動できません。何よりも、彼女達はラーテンの民。私が見捨てることなどできません」
最初から自己犠牲を問わなかったのか……フレア姫。
「嫌! 姉さんが犠牲になる必要なんてないはず!」
「こんな時まで我儘なんだから……リーティス・エルギア、ティフィルとシャランをお願いします!」
「姉さん、待ってよ!」
魔方陣の起動音と共に私達はラーテンを後にすることとなった。
多大な犠牲の上に、騎士達はリアティーンへ集まろうとしていたのだ。



* Re: eight knights ( No.16 )
日時: 2013/09/07(土) 01:00:25 メンテ
名前: RTI



リアティーン書庫。
ローディアは置いてあった一冊の日記に目を通していた。

5月9日
今日はとても嬉しい日になった
あの人と私の第一子が誕生したのだから
あの人ってば、嫌われないか心配しちゃって、親バカなんだから
それに、もう名前は決めてあるでしょ
この子の名前は……イリス

「イリス? 聞いたことがありませんね」
ローディアは次々にページをめくる。
そして、あるページで目を止めた。
イリスという少女が生まれてから何年も経った日の記録。

9月14日
今日、イリスに将来は何になりたい?と聞いたら
元気よく、お嫁さん!だって
見たいなぁ、イリスの花嫁姿……
そういえば、あの人が今日、大事な用事でお城に行くって言ってたけど、何なのかしら

9月15日
今日の話、私は信じられなかった。
どうしてイリスなの? どうして他の人じゃダメだったの?
あの人も別人のようになってしまい、イリスに厳しく当たっている
イリスは今日も部屋で泣いている
ごめんね、私はもう、あなたのことをイリスって呼んであげられないの

「……何があったんでしょう」
ローディアはまたページをめくる。

9月18日
今日、イリスは友達ができたらしい。少し笑っていた
だけど、私や、あの人の顔を見るなり、辛そうな表情をしていた
聞いた話だと、もうすぐ私達はイリスと引き離されるらしい
どうしてなの……どうして、イリスと一緒にいることも許されないの

「あとは真っ白ですね……しかし、この日記は一体?」
『リーティス様達が帰ってきました!』
外から聞こえて来た騎士の声にローディアはピクッと反応する。
「……エルギアが?」





「遅れて申し訳ございません、リシアーシャ様」
ローディアが聖域へと足を運んだ。
その時には既に五人の騎士が待機していた。それぞれが違う表情を浮かべていたが、事態の深刻さを理解していない者は一人もいなかった。
「これで全員ですね……よくぞ三人の騎士を呼び集めましたね、リーティス、リエン」
リシアーシャからの褒めの言葉にも、ただ弱い返事しかできない二人。
「気を落としてはいけません。ラーテンの人々のためにも七騎士に敗北は許されません」
ラーテンは陥落した。場の空気からローディアは読み取っていた。
「さて……これで六人の騎士が集まりましたが、あと一人欠けています」
ユリレイのことであると、全員分かっていた。
勿論、ライリシュ達も事情を知っているようだ。
「それでは、あなた達に紹介しましょう、ユリレイに変わって七騎士に加わる者を……」
「……ユリレイ様に代わる者がいるのですか」
若干、低めの声で、疑うかのような質問をぶつけるローディア。
「はい。寧ろ、彼女でなければユリレイ様の代わりにはなれません」
奥から姿を現す、リシアーシャの選んだ七人目。その姿を見た六人は唖然とした。
赤と黒のクロースに、真っ白なロングスカート。金色の髪を二つ結びにして、情熱の薔薇を付けている少女は間違いなく見知った顔だった。
「ヂュム・ディアーネです。クラスは魔法剣士、主に火炎魔法を扱えます」
「ユリレイ様の妹……?」
一番初めに口を開いたのはローディアだった。他の騎士たちが状況を把握しきれていない中、ローディアはヂュムの実力に不服があるような態度だった。
「ローディア、安心してください。彼女の力は既に私も認める程のものです」
「……」
ローディアは黙って頷く。
「ヂュムの実力が……?」
代わりに驚きの声を漏らすリーティスを気にかけず、リシアーシャは凛とした様子で七人に視線を向ける。
「……私から、七騎士への命を与えます。三日間、この城を守り続けてください」
リシアーシャの一言に皆、不思議そうな顔をする。
「私から告げることは以上です。七騎士よ、今は休みなさい。来るべき戦いに備え……」
彼女は何を思っているのか分からない。だが、七騎士は応じるしかない。頭の整理がつく前に、彼女達は各々の部屋へと戻って行った。何より、本当に辛い戦いは始まってすらいないのだから。


* Re: eight knights ( No.17 )
日時: 2013/11/16(土) 10:41:52 メンテ
名前: RTI


ラーテンの陥落を機にリヴ・ヴァルキュリーの攻撃は激化。
マグナリートを始めとした辺境の地からリアティーン周辺まで、瞬く間に陥落していった。
もはや残された希望は、この世界で一番の力を持つリアティーンのみだった。



緊急連絡、偵察部隊が敵部隊を確認。
規模は一個小隊レベル。
以上で報告を終了いたします。

「全員揃ったな。今から我々はリアティーン防衛戦線を張る」
七騎士の小さな集会部屋に全員が集まっていた。
私は机の上にリアティーン内の地図を広げて見せる。
「作戦の前に、まずはリアティーンの地理についてだ。ティフィル様は知らないでしょうから」
皆が黙って話に集中しているのを目視すると、地図のリアティーン城を指差す。
「ここ、リアティーン城は国の中でも最南端に存在する。ちなみに、この城より南には崖しかなく、その先には海が広がっている。敵が攻め込んでくる可能性はないだろう」
次に東と西を交互に指差し、最後に北を指差す。
「となれば、私達が守らないとならないのは西と東、それと大打撃を受けた北のエリアだ」
「東と西は魔法壁から城までの間に二つほどの居住区画があるため、距離がある。北のエリアは大規模な居住区画が一つだ」
ティフィル様が理解したとい顔を見せたところで周囲に目を配る。
「次にリアティーンの現状。北の入り口は聖戦士の力で突破されてしまった。こうなれば、敵は北から攻めてくると考えるべきだ」
これは推測でしかないが、魔法壁の破壊もされていない東と西から攻めてくる確率は低い。
「それでは作戦だ。七騎士の配置について話す。まずはシャラン」
「は、はい!」
「シャランは城内で怪我人の治療を」
「了解です!」
「次にティフィル様とリエンはそれぞれ、西と東のエリア防衛を頼む。いくら敵が攻めてくる確率は低いと言っても、がら空きには出来ないからな」
「分かりました」
「了解!」
「残ったヂュムとライリシュ、ローディアは私と一緒に北の防衛を」
「はい!」
「分かったよ」
「………」
「各自、時間が来たら配置場所につくように! 以上だ」





『作戦の指揮はあなたに任せます。リーティス・エルギア』
あの時、私はリシアーシャ様から指揮官として指名された。何故ローディアでなく私なのか、彼女の口から説明されることはなかった。
「敵の小規模勢力が北方向から接近中!」
「七騎士、出るぞ! ヂュム、ライリシュ、ローディア!」
これ以上考える余裕は与えられず、私達四人は敵からの襲撃を受けた北へと向かった。

「リーティス様! こちらです!」
兵士に呼ばれ、私達は北門の防衛ラインに到達。
「報告を」
「まだ住民たち全員の避難が出来てないんです」
「……何?」
確かに辺りを見回せば移動中の住民達が何人も伺える。
「前方の敵を目視! まもなく攻撃が開始されます!」
「仕方ない、迎撃態勢に移れ! 手の空く者は住民の避難を手伝え」
いつの間にか接近してきていた敵の空中部隊が襲撃をすべく、急降下を開始する。
「ローディア、ヂュム、敵をおびき寄せろ!」
私の指揮でローディアとヂュムの部隊は両翼に展開。左翼ヂュム、右翼ローディア、そして中央に私がいることで、敵の意識は三方にばらける。
「今だ! 撃て、ライリシュ班!」
伏兵となっていたライリシュの部隊が辺りから集中射撃。敵部隊は目先の敵を狙う事ばかり考えており、こちらの作戦は上手くいく。
かなりの敵をライリシュの部隊が殲滅した。だが……。
「リーティス、敵の数が多いよ!」
「きゃあぁぁあああ! ハイグレッ!ハイグレッ!」
「いやあぁぁあああ! ハイグレッ!ハイグレッ!」
ライリシュの声が届いた時には、敵の攻撃で兵士や逃げ遅れた住民が哀れな姿へと変えられる。
「動揺するな! 第二班、迎撃開始!」
ライリシュ班の銃撃、ヂュムとローディアの班の挟撃がそれぞれ敵兵を殲滅していく。
今回は怖くなる程に敵兵の数が少なかったことが気がかりだったが……。

* Re: eight knights ( No.18 )
日時: 2013/11/16(土) 10:42:42 メンテ
名前: RTI


「敵の殲滅を完了。兵士達は即座に住民の退避を手伝え」
かなりの小規模だった敵部隊のため、最低限の犠牲で撃退は出来た。だが、それでも犠牲は出てしまったのだ。
私は急ぎ、付近でうずくまっている少女へと近付く。
「大丈夫か」
少女は伸ばそうとした私の手を冷たく振り払う。
「すぐに兵士たちが避難誘導をする。少し待って……」
「あなた達のせいで……」
「……?」
「あなた達のせいでお母さんが!」
涙をこぼしながら、少女は走り去って行ってしまった。
そうか……あの子のお母さんは。
私は近くに、敵へ忠誠のポーズを取る女性がいることに気付く。
「あの……」
私が意識をそちらに向けていると、背後から声を掛けられた。二人の親子みたいだ。
「ああ、怪我はありませんでしたか」
出来る限りの笑顔で答えると、母親の方が深くお辞儀をする。
「おかげさまで。ありがとうございました、聖騎士様……」
「ありがとう、騎士様!」
私が微笑むと、親子は居住区画の方へ、ゆっくりと歩き出していった。
しかし私の手を振り払った少女の事を思うと、素直に笑うことは出来なかった。

「報告します。敵部隊が小規模だったため、犠牲者は少なく撃退に成功しました。敵大隊の動きは掴めません。引き続き調査を致します」




「……」
その日の夜。私は一人、城内の一階にある食堂で休んでいた。
確かに初日の防衛は成功した。だが、敵の部隊はほぼ偵察のようなものだった。奥で構えている本隊は、リヴ様はどう動く。
これ以上の犠牲を出す訳にはいかない……。
「リーティス、隣に座るよ」
「……ライリシュ?」
「調子悪そうね。んぐっ……」
突如現れ、私の隣に座ったライリシュは豪快に酒を飲みだす。
「何で酒を飲んでいるんだ?」
「酒を飲むのに理由がいるの? 強いて言うなら美味しいからってところじゃない?」
「いや、ライリシュは酒なんて飲まないと思ってたからさ」
「あんまり飲まない方だけど、飲みたくなったの」
「そういうものなのか?」
「そういうものなの。こんな状況なんだから、小さな幸せに憧れるものなの」
そう言って再び酒を飲みだす。
「何を悩んでるか知らないけど、マグナリートの住人達がリアティーンに避難できたのはリーティスのおかげでしょうに」
「だが、それでも不幸になったものはいる。同じ住民なのに、犠牲になったものと、助かったもの」
ライリシュも落ち込んだ様子で下を向いていたかと思うと、パッと明るくなる。
「でも、それはあたし達も同じでしょ」
「え?」
「ぷはーっ……やっぱり酒は美味いわねぇ」
「はぐらかすことないだろう。私達も同じとはどういうことだ」
「……あたし達だって、他の人達と同じように幸せになる権利があるってこと」
「?」
「不思議そうな顔をされても困る」
「ああ、すまない」
「あんただって、ヴィア様との婚約があったのにリヴ様が帰ってきたら混乱すると思う。今もリヴ様の事を思ってるんでしょ?」
「……」
私の表情が暗くなってしまったのか、ライリシュがやや困り顔を見せる。
「ま、まあ、あたしの場合は姉として、妹達とマグナリートで平和に暮らしていけたらな……とか思ってる」
ライリシュ、気を使ってくれているのか。
「ありがとう、ライリシュ」
「す、素直にお礼を言われたからって、何も出ないから」
ライリシュは照れ隠しに、酒を一気飲みする。
「ほら、あんたも飲みな」
酒を手渡される。こうなったら付き合うしかないか。
「う、苦っ……」
「あっはははは!案外、飲めないんだな!」





食堂でライリシュと別れ、私は街外れの泉に来ていた。
周囲は木々に囲まれ、殆ど人は訪れない場所。
敵の襲撃が起きようとしている今、体を清められるのは今しかない。
私は重い鎧を丁寧に外す。その下からは以前よりも膨らんだ胸が現す。
「……」
私は服を全て脱ぐと、足をそっと、泉へ浸からせる。
今、世界は変わってしまっているが、ここだけは変わらない。
本当の姿の私を受け入れてくれる。
泉を見つめると、私の姿が映し出されている。
この髪、この体……誰が見ても、今の私は男ではない。
……私は女なのだ。
ある時から男として育てられた。それもヴィア様と偽りの婚礼の儀を行うためだ。
ヴィア様は聖戦士の力を微量しか持っておられない。そうなれば、聖戦士の力を受け継ぐ子孫はそう簡単に作れないのだ。
その時、私が選ばれた。次代の聖戦士が生まれないことを知り、民が混乱を起こさないため、偽物の婚約者として私が抜擢されたのだ。
生まれた時が悪かったのだ。国は私が偽りの婚約者になるために誕生したと思うほどの時期だった。
そして私は恐れていた。敵の攻撃を受ければ、私は鎧を剥ぎ取られ、布一枚の醜態を晒すこととなる。
そうなれば、私が女であることは気付かれてしまうだろう。
その時、ヴィア様は何を思うだろうか。
国のために性を偽られ、愛すらも偽物であると知った時……彼女は何を思う。
皮肉なものだ。その醜態を晒させようとする者がリヴ様だということが。
私の大切な方に狙われる……これ以上に辛いことなどあるのか。
しかし、私がリヴ様に狙われるのも仕方がないのかもしれない。かつて守ると言っておきながら、守り切れなかったのだから。
「……」
もう一度水面を見つめる。
幼かった時と違い、女の体に育った私が水面から消えることはなかった。
どう足掻こうとも無駄……何を言っても、私は所詮、一人の女でしかない。


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