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* 四獣の戦士達

日時: 2013/11/03(日) 17:58:11 メンテ
名前: TC1

すいません。更新が相当遅れました。


主要人物紹介

龍巳 蒼姫 (たつみ そうき)
ポニーテールがトレードマーク、由緒ある龍巳家一人娘
人知れず平和を守るため、平和を脅かす敵と戦う四獣部隊の一人
明るい性格で後輩にも先輩にも好かれやすい
四獣部隊では青龍の髪飾りで変身することができる
みんなから和服美人と言われており、変身後の姿も和服風のもの
愛刀『青龍』で戦う高校二年生


雑賀 奏 (さいが かなで)
四獣部隊の一人でありながら馴れ合うことを嫌う少女
仲間という認識をあまり持たない少女であり、四獣部隊の中では浮いた存在
部隊内では桁違いの強さで、統率者である博士の指示にだけ従う
変身は朱雀のイヤリングででき、武器は神弓『朱雀』
蒼姫とは違う学校だが、同じ高校二年生


戸高 紅葉 (とだか もみじ)
四獣部隊の一人であり、蒼姫の親友
少し抜けているところもあるが、頭のキレる子
男女問わずに好かれる性格のため、クラスの男子にも注目されている
変身は玄武のペンダントででき、武器は『玄武』の槌
しかし戦うことを相当恐れており、普段は戦闘に参加せずナビゲートをしている


霧野 菖蒲 (きりの あやめ)
四獣部隊の一人であり、蒼姫達の先輩
頼れる姉さんであり、実力も蒼姫、紅葉より上。加えてムードメーカー
しかしちょっと調子に乗りすぎちゃうこともたまに
変身は白虎の指輪ででき、武器は『白虎』の爪
複雑な家庭事情を持っているようだが……
高校三年生と四獣部隊で一人だけ年上でもある


湯本 美智子 (ゆもと みちこ)
四獣部隊の統率者であり、蒼姫達からは博士と呼ばれている
なによりも本部からの命令に絶対であり、情に流されることは殆どない
しかし蒼姫や紅葉、菖蒲のことをどこかでは心配に思っている
 
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* Re: 四獣の戦士達 ( No.11 )
日時: 2013/02/02(土) 00:36:39 メンテ
名前: TC1



そのころ、菖蒲は……。

蒼姫と紅葉は無事かな……。
いくら力をつけたといっても、いつだってあいつ等はあたしの可愛い後輩なんだから心配だ。
それにしても街中だっていうのにハイグレ人間達がいなくなってきたな。避難したのか。
そうとなれば都合がいい。敵兵はパンストしかいないわけだから、この地域の奪還も簡単に……。
「おい、そこのおっぱい大きいの」
広い公園に入ったところで、いきなりどこからか声をかけられた。
あたしが声のする方を振り返ると、金色の髪をツインテールにした、小学生低学年ぐらいのちっこい女の子が立っていた。
白Tシャツにミニスカートと冬には似合わない恰好だ。
それにしてもこいつ、可愛いな。
小動物みたいな愛くるしい顔立ちだし、目も澄んだ青色をしていて。
おっと、いけねぇ。
そもそもこんなところにいるなんておかしくないか。
いや、それ以上に年上相手におっぱい大きいの呼ばわりとか生意気じゃねぇか。
でもまぁ、こんなところで怒るってる場合じゃない。
「そこの女の子。ここは危険だぞ」
危険だぞと言ったところで途端に不機嫌そうな顔になる。
「む……私を子ども扱いするなんて生意気だぞ」
な、なんか怒らせたみたいだけど、できたら状況を考えてほしいんだよな。
「悪いけど、あたし急いでんだ……」
「よし……決めたぞ!」
女の子は自分のミニスカートを勢いよくおろす。
「うぇ!? 何して……って、お前」
スカートを下ろしたところで女の子は腕を組む。
それよりもあたしが驚いたのは姿の方だ。
ミニスカートの下にはTバックの水着を穿いていた。
正直小学生の体には刺激が強すぎる恰好じゃねぇか……?
「私、Tバックプリンセス! 魔王様三幹部の一人!」
「さ、三幹部だぁ? お前、魔王の手下だったのか」
Tバックプリンセスとかいう子は口を尖らせる。
「え、それぐらいも分からなかったのか? おっぱいに栄養行き過ぎて馬鹿に育っちゃったの〜?」
「こ、こいつ……」
あたしのことを馬鹿にしてんのか……。
「お前、菖蒲だったな」
「あたしの名前まで知ってやがるのか?」
「知ってるぞ、確かしじゅーぶたいっていうチームの一人」
四獣部隊の発音がおかしいけど、そんなことはどうだっていい。
「なぁ、親衛隊だか何だか知らないけど、できたら戦いたくねぇんだよ」
「……私が小さいからか?」
Tバックプリンセスはつまらなそうに片目を閉じ、あたしに聞いてくる。
だけどそういう訳じゃない。話の通じないパンスト兵達と違って、こいつは見たところ人間の女の子だ。
戦っていいものじゃない気がしてならない。
「そういう訳じゃ……」
「だったら私にちゅーせーを誓え!」
Tバックプリンセスがあたしを指さして高らかに言う。
「悪いけど、あたしはハイグレ魔王を倒さないといけねぇんだ。ここで止まるつもりはないぜ」
「じゃあ、このTバックプリンセスが直々に洗脳してやるぞ」
Tバックプリンセスは洗脳銃を構える。
「ちっ、小さい子に武器を向けるのは気が引けるけど、やってやる!」
あたしは白虎の指輪をはめる。
「四獣部隊、菖蒲、参ります!」
あたしの周りを旋風が覆う。
そのままあたしの胸にはさらしが巻かれ、襟の立った白コートが重ねられる。
下に白スカートが身につけられ、最後に白い鉢巻が額に巻かれる。
「白虎の菖蒲、変身完了!」
あたしが変身を終えると、Tバックプリンセスも交戦態勢に入る。
「菖蒲みたいな馬鹿乳女、私の椅子になるのがお似合いだぞ!」
「椅子? 誰がなるかよ!」
あたしが武器の爪で一気に斬りかかる。
以前に比べて攻撃の速度も威力も上がっているからパンスト兵達は一撃で葬れる。たとえ三幹部が相手だろうと……
だけどTバックプリンセスはあたしの視界から一瞬で消え、攻撃を外してしまった。
「遅いぞ、菖蒲!」
「何っ!?」
Tバックプリンセスは既に上空に跳び上がっていた。
「あはははは、おっぱい大きくて動きが鈍いのか?」
そのまま縦回転をしながら着地する。
くそ……あれだけ訓練して動きは相当早くなったはずなのに、あいつはもっと早いのか。
「菖蒲、諦めて降参しますって言えばすぐに気持ちよくしてやるぞ」
「誰が言うかよ!」
「ふむ、そうか」
Tバックプリンセスが光線銃を構えたかと思うと洗脳光線を乱射してくる。
「うわっ……」
あたしは右ステップ、左ステップ、バックステップととにかく素早い動きで光線をかわす。
大丈夫、光線の回避なら訓練であれだけやったんだから……。
「菖蒲、光線のかわし方はなかなか……だが、光線に集中しすぎだぞ!」
「うぇっ!?」
あたしとしたことが光線の回避に集中しすぎた。
Tバックプリンセスがあたしの隙をついて顔に飛びかかってきた。
駄目だ、こいつの動きが早すぎる……。
「うわっ!」
「あははは、菖蒲、捕まえたぞ」
「く、くそっ……」
あたしは情けなくもTバックプリンセスによって公園の地面に押し倒される。
振り払おうとしてもTバックプリンセスの力は想像以上に強く、あたしの体から降ろさせることができない。
あたし自身もスタミナ切れなのかもしれない……。
「こんなにでかいおっぱい垂れ下げて重くないのか〜?」
Tバックプリンセスはあたしを見下ろしながら無邪気に笑い、あたしの胸をさらしの上から撫でまわす。
「菖蒲、お前は面白いな〜」
そういうとTバックプリンセスは光線銃をあたしの頭に突きつける。
「そろそろ私の下僕にしてやるぞ」
このままじゃやられる……。
蒼姫や紅葉がいるのにあたしだけこんなところでハイグレ人間なんかにされていいのか。
あたしは……あいつ等より年上なんだ。しっかりしないと……。
あたしがあいつ等を守るって決めたんだからよ……。
動け……動けぇ、あたしの体!
「!!」
あたしが限界まで力を込めた途端、Tバックプリンセスは何かに気付いたようにあたしから跳ねるように遠ざかる。
「お、お前、まだそんな力を持ってたのか」
Tバックプリンセスはどこか焦っているようだった。
あたしは立ち上がり、自分の武器の爪をよく見ると雷を纏っていた。
だけど、この爪は連撃を積まないと雷は纏わなかったはずだぞ。
「ふむ、お前達の力はピンチになるほど強くなるのか」
Tバックプリンセスはなんだか納得いっているようだ。
ピンチになると強くなる……いや、ちげぇ。
あたしが蒼姫や紅葉のことを思ったら力が溢れてきやがった。
原理は分からねぇが、助かるぜ。
「よし、Tバックプリンセス。もう一度相手してやるぜ!」
爪を構え、再び戦闘態勢に入る。
そんなあたしの邪魔をするように上空にパンスト兵達が現れる。
それを見たTバックプリンセスがため息をつく。
「パンスト兵が来たってことは撤退命令だな……」
Tバックプリンセスはそのまま高く跳び上がり、公園内の木の上に飛び乗る。
「待ちやがれ。逃げる気か!」
「菖蒲、私はお前が気に入ったぞ。次に会うときは必ずハイグレ人間にしてやる!」
それだけ言うとTバックプリンセスは指笛を吹く。
指笛に応じて空からはオマルのような乗り物が降りてきて、飛び乗ると空へと消えていった。
あたし自身も体力の限界だったため、見逃すしかなかった。
「仕方ねぇか……それよりもあんな奴が他にもいたとしたらまずいな。蒼姫と紅葉は無事だといいが」


* Re: 四獣の戦士達 ( No.12 )
日時: 2013/02/02(土) 00:42:46 メンテ
名前: TC1



そのころ、紅葉は……。

「蒼姫と菖蒲先輩大丈夫かな……」
私が心配しなくても二人は強いと思うけど、どこか心配をしてしまう。
それにしても闇雲に走ってたから私の知らないところに来ちゃった。
私はどこかの小学校に迷い込んでいた。
人気もしない校庭。この学校、今日はお休みなのかな……。
「あらあら、可愛い女の子」
「だ、誰!?」
誰もいない学校に響く声。
私は声のした方を見ると、学校校舎屋上に一人の女の人が立っていた。
さらさらとした黒い長髪が風でなびいて、スタイルも良い綺麗な人に見える。
だ、だけど、あの人の恰好おかしい……。
上下ピンク色の下着を着ているだけだし、目にもピンクのブラジャーつけてるし……怖い。
「私はブランジャーシスター、ハイグレ魔王様三幹部の一人」
「ハイグレ魔王三幹部?」
「そう、魔王様の仕える忠実な僕。っと、それよりもあなたのお名前を教えてくれるかしら?」
屋上で腰に手を当てたまま、私の方を見下ろして聞いてくる。
目にあんなものつけていて私が見えているのかな……。
「わ、私は戸高 紅葉……四獣部隊の一人」
「知ってるわよ」
「え、え……」
知ってるって、じゃあ何で聞いてきたの。
そ、それよりも本当に私のこと知ってるの?
「混乱しちゃって。か〜わいい〜」
そのまま女の人は屋上から飛び降りてくる。
「わわわ……」
あんな高いところから飛んだら怪我する……。
私は反射的に目を伏せてしまう。
「あら、私のことを心配してくれたの? でも大丈夫よ。目を開けてごらんなさい」
女の人の言葉で私は顔を上げ、目を開ける。
そこには何食わぬ顔で私の方を向く女の人の姿があった。
近くになったことで女の人の姿がより分かりやすくなる。
女の人が身に着けている下着には小さなリボンなどがついていて、本当に普段つけるようなものだ。
何で下着だけの恰好で、しかも目につけてるの……スタイルもよくて綺麗そうな人なのに。
「紅葉だったわよね。さっきも名乗った通り、ブランジャーシスターよ。よろしくね」
ブランジャーシスターという女の人はただ私の方を向いたままだ。
「あぁ、いいわ。あなた、本当に従順そうで気に入っちゃったわ〜」
「な、なんですか……」
「紅葉、私だけのハイグレ人間にならない? 私がた……っぷりと可愛がってあげる」
ブランジャーシスターは舌なめずりをしながら甘い言葉をかけてくる。
「い、嫌ですよ。私はハイグレ人間なんて絶対に嫌です!」
「あら残念。まぁ、嫌って言ってもハイグレ人間にしちゃうんだけど」
ブランジャーシスターは光線銃を取り出す。
や、やっぱり戦う気なのかな……。
「紅葉……あなたを私のものにしてあげる」
「た、戦うつもりなら負けない! 四獣部隊、紅葉、参ります」
掛け声に反応して私の体は黒い旋風に包まれる。
私の制服は黒いライトアーマーへ姿を変える。
全身を包み込む薄めの黒い鎧に黒真珠の埋め込まれた羽つき兜を装備した状態で私の周りの旋風が止む。
「玄武の紅葉、変身完了です!」
「あらら、随分と可哀想な恰好ね」
可哀想な恰好って……。
「本当は戦いたくないのよね。可愛い紅葉に傷でもついたら大変だもの」
「だ、だったら……ここから退いて………」
「だ・め・よ」
ブランジャーシスターは人差し指を振りながら告げる。
「紅葉が私のものになるっていうならいいけどね」
「それはできません!」
「じゃあ戦うしかないわねぇ」
説得は無理なのかな……だとしても、私は負けられない。
「だったら私も戦います!」
* Re: 四獣の戦士達 ( No.13 )
日時: 2013/02/02(土) 00:43:08 メンテ
名前: TC1


私は黒くごつごつとした玄武の槌を構える。
「かかってらっしゃい」
ブランジャーシスターは光線銃を腰につけ直し、手をこまねいている。馬鹿にしてるのかな。
負けるもんか……。
「いきます!」
私は槌を大きく振り上げ、その場に勢いよく振り下ろす。
地面を叩いた時に起こる衝撃波がブランジャーシスターに向かって広がっていく。
校庭という広い場所だから衝撃波も大きく広がれる。
「可愛い攻撃ね」
「と、跳んだ!?」
ブランジャーシスターは何か道具を使ったわけでもないのにジャンプで高く跳び上がり、地を這う衝撃波は不発に終わってしまった。
「それじゃあ私の番ね。可愛がってあ・げ・る。ブラジャー乱舞!」
着地したブランジャーシスターは両手を高く上げて叫ぶ。
それに呼応して空から何かが降ってくる……。
って、降ってきてるのは……ブラジャー?
「うわわわわわ!」
私はやたらめったらに槌を振って、私に向かってくるブラジャーを振り払う。
「無駄よ。私の技からは逃れられないわ」
ブランジャーシスターの声なんて耳にも入らず、ただ振り払い続ける。
「なかなかやるわね。じゃあ、私から直接プレゼント!」
私が振り払い続けていると、ブランジャーシスターは自分のつけているものと同じブラジャーを取り出す。
「いくわよ、紅葉!」
その言葉でブランジャーシスターは私の目の前にまで瞬間的な移動を見せる。
「は、早い……」
「直接つけてあげる」
ブランジャーシスターはブラジャーを握った手を私の顔へと伸ばしてくる。
気付いた時には私の視界がピンク色でいっぱいになった。
「いやっ、何これ!」
「うふふ、とても似合ってるわよ」
「うぅぅ……外れない!」
私はブランジャーシスターによってブラジャーを目につけられてしまった。
外そうとしても全然外れない。
「無駄よ。私のブラジャーはそう簡単に外れないわ……捕まえたわよ、紅葉」
私は視界がピンク色のまま、ブランジャーシスターに捕まってしまった。
「私とお揃いのブラジャーをつけてくれて嬉しいわぁ。さぁ、こっちよ」
私の体はそのまま運ばれているけど、周りが見えない。
それになんだか体の自由も効かなくなってきている。ブラジャーをつけられたせい……?
「おっとっと、まずは変身を解除させないとね」
ブランジャーシスターは私のペンダントを奪い取る。
途端に私の服装が元の制服姿になった感覚を覚える。
「ほら、紅葉、ここに寝なさい」
私の体が横に倒される。
ここはベッドの上……?
「紅葉、もう逃がさないわよ〜」
仰向けでベッドに倒されている私の上にブランジャーシスターが乗ってくる。
抵抗しようにも体が上手く動かない……。
「あなたは私のもの。今からたっぷり可愛がってあげるわね」
「や、やめて……」
戦う力を奪われた私は懇願するぐらいしかなかった。
こんな自分が凄く情けなくて、惨め……。
「怖がらなくていいわよぉ」
頬にぞわっとした感覚が走る。
ブランジャーシスターの舌が私の頬をなめたんだ……。
「紅葉は恋愛経験あるかしら〜」
こんな時に何を聞いてきてるんだろう……。
「その様子を見るに経験はないのね。良かったわぁ」
その言葉のすぐ後に私の口にブランジャーシスターの口が重ねられる。
「んん……」
私の口の中にブランジャーシスターの舌が入ってくる。
そのまま私の舌へと絡んでくる。
「んんん……」
猶予もくれずに舌を絡めたまま、ブランジャーシスターの手が私の制服の中へ。
そのまま私の下着の中にまで入ってきて、弄り出す。
私……四獣部隊の一人として戦う戦士なのに。
みんなは今戦っているはずなのに、私だけ何もできずに敵に弄ばれてる。
私の弱さ、惨めさ……考えるだけで涙があふれてくる。
なによりも今まで体験したこともない恥ずかしさ……
私が泣いているのを確認してかブランジャーシスターは口を私から遠ざける。
「泣かせちゃった。紅葉のファーストキス……ごちそうさま」
「………」
もう言葉も出ない。
私はただ涙をこぼすことしかできない。
「さてと、それじゃあそろそろハイグレ人間になりましょうね。楽しみで仕方ないわ。これだけ嫌がってた紅葉が自分から私にすり寄ってくるようになるなんて」
「その必要はない」
突然に窓が割れる音が聞こえてきた。
中に誰かが入ってきたみたい……蒼姫?
「……あらら、邪魔が入ったわね」
ブランジャーシスターが私の体から離れる。
「朱雀の奏……本部の指示により、玄武の救出に来た」
奏……? 奏が私を助けに来てくれたの?
「残念だったわね。紅葉は私が犯しちゃった〜」
「玄武、洗脳はされてないか」
ブランジャーシスターの言葉に構わず、奏は私に聞いてくる。
私は何とか首を縦に振ることしかできなかった。
「それならいい。三幹部、容赦なくいくぞ」
「……んー、残念だけど、撤退命令が出ちゃったみたい。紅葉を手に入れられなかったのは残念だけど、たっぷり堪能したからいっか」
「逃がすか!」
何が起きてるんだろう……私の視界は完全に奪われ、体の自由も効かない。
「さっきの奴よりも早い……」
「私を見くびらないでくれる? それと……あなたの右腕、ボロボロね。可哀想」
「!!」
「じゃあね、奏。それと……私の可愛い紅葉」
誰かが割れた窓から出ていったみたい。
多分ブランジャーシスターだと思う。
「……戻るぞ、玄武」
「………」
「ペンダントなら隙を見て取り戻した。いや……あいつは返すつもりでいたかのようだったがな」
それだけ言って私に玄武のペンダントを手渡してくれた。
私……強くなったんじゃないの?
違うのかな……なんだか、意識が薄れてきて……。



こうして四獣部隊とハイグレ魔王三幹部の初戦は幕を下ろした。

* Re: 四獣の戦士達 ( No.14 )
日時: 2013/02/09(土) 00:05:47 メンテ
名前: TC1


四獣部隊のみんなが廃ビルへ戻ったと聞いて、あたしも足を速めて帰還した。
だけど……戻ったあたしが菖蒲先輩から告げられたのは紅葉が深手を負ったということだった。
「紅葉!」
紅葉が運ばれた廃ビルの中の一部屋。
あたしは紅葉のいる部屋の前で名前を呼ぶ。だけど中から返事はない。
「蒼姫……気持ちは分かるけど、落ち着け」
部屋の前、壁にもたれかかりながら腕を組む菖蒲先輩が言う。
「菖蒲先輩……だって、紅葉が………」
「今博士が治療中だ。あたし達が中に入るのは許されてない」
目を閉じ、ギリッと歯ぎしりをする菖蒲先輩。
先輩も苛立ちを覚えているんだろう……。
「紅葉……」
あれからあたし達は待ち続けた。一秒一秒が長く感じた。
そして日が暮れ、空に月が出た時に紅葉と博士のいる部屋の扉が開かれた。
「「!!」」
あたしと菖蒲先輩はすぐに扉の方に向き直る。
中からは博士一人が出てきた。
「博士! 紅葉は無事なんですか!」
「大丈夫だよな! 博士……そうだろ!」
「二人とも落ち着きなさい……戸高は無事よ」
博士の一言であたしはその場に座り込んでしまう。
全身の力が抜けてしまったようだ。
菖蒲先輩も胸をなでおろし、やっと一息つけた様子だった。
「そもそも戸高に外傷はなかったわ。それよりも戸高につけられた下着みたいなものを外すために相当体力を消耗したというところね」
下着……? 何を言っているんだろうか。
「何よりもここは本部と違って治療用具がないの。だから戸高には強制的に玄武の力を発動させて、内側からの回復をさせてたわ。だからこそ体力の消耗が激しいの」
そっか……こんな廃ビルの中じゃあまともな治療はできないよね。
四獣の力を発動させて内側から回復とかはよく分からないけど、力に詳しい博士だからこそ紅葉は回復できたんだよね……。
「博士……それってハイグレ魔王三幹部とかいう奴等の仕業か?」
菖蒲先輩の口からぽろっと出た三幹部という言葉。
先輩が知っているということはあの女帝ハラマキ以外の三幹部と菖蒲先輩も戦ったってこと?
「ハイグレ魔王三幹部……そうね、雑賀が本部から聞かされた敵の幹部クラス」
「くそっ、やっぱり紅葉もあのちびっこの仲間と戦ってたのか……」
菖蒲先輩の表情は悔しさに溢れたものだった。
ちびっこ? 菖蒲先輩が戦った三幹部の一人だろうか。
「……龍巳、霧野、今日はもう休みなさい」
博士はこれ以上の話はしないとでも言わんばかりにあたし達に休むよう指示を出す。
「博士、今の状況とか教えてくれよ。このまま休めって言われてもよ……」
菖蒲先輩は休むことを渋っている。
正直あたしもそうだ。外傷はないと言っても紅葉があんな目に合ったんだ……今休めって言われても無理だろう。
「……明日からはあなた達二人を軸として戦ってもらうことになるわ。そのためにも今は休んでほしいの」
それだけ言って博士はあたし達の前から歩き去る。
「菖蒲先輩……」
「仕方ない、今は休もうぜ」
菖蒲先輩の表情は仕方ないと本当に思っているようには見えなかった。
だけど博士が休めと言っている以上、あたし達に選択肢はなかった。



「………」
不意に目が覚めた。
ここは廃ビルのために設備が整っているとは言えない。
あたしは博士に休むよう指示されてから壁もぼろぼろになった部屋で睡眠をとっていたけど、落ち着いて眠ることはできなかった。
「あれ……菖蒲先輩?」
あたしと菖蒲先輩は同じ部屋で休んでいたはず。
だけど目を覚まし、辺りを見回しても菖蒲先輩が部屋にいない。
廃ビルのためか窓ガラスはなく、窓の外された部分から外を見てもまだ真っ暗。
「………」
これ以上休むことはできそうもない。
あたしはそのまま部屋を出る。
廃ビルの中は本当に静かだった。
それもそのはずだ。あたしと菖蒲先輩と紅葉、あとは博士しかいないんだから。
あたしは廃ビル内を歩く。自然と足が動いていた。
「……博士はどこに行ったんだろう」
あたしが向かったのは博士のいるであろう部屋。
あたしと菖蒲先輩の休んでいた部屋と形状が同じで壁も床もぼろくなっており、本当に何もない箱の中みたいなものだ。
だけどその部屋に博士はいなかった。つけっぱなしのノートパソコンと色々詰められている鞄だけが置かれている。
仕方ないと部屋に戻ろうとした時だった。
「龍巳、まだ寝ていなかったの?」
入り口から博士が戻ってきたのだった。
「あ……その」
「そういえば朝から何も食べてないでしょ。軽食ぐらいならあるわよ」
博士が鞄の中から菓子パンをあたしに投げ渡す。
「それでも食べて明日まで休みなさい」
博士がノートパソコンの前に向かおうとする。
「あの……博士」
「……何か聞きたいことでもあるの?」
「………」
「……龍巳、少しいいかしら」
黙り込むあたしを見てか、博士がノートパソコンを閉じて、あたしの前にまで移動する。
「こっちにいらっしゃい」
博士の言う通りにあたしはついていく。
そして階段を上っていき、廃ビルの屋上へと移動する。時間は既に深夜なのか、夜風が冷たい。
それにこのビルが意外に高かったことに今更気付く。
「あれを見なさい」
博士が指さす先、そこにはどこかのビルに侵食しているようなピンクと緑のアート紛いなものが見える。
「あれは何ですか」
「魔王城」
博士は顔色一つ変えずに言い放つ。
「あれが……魔王城」
あたしの横で博士は煙草に火をつける。
「あの場所が四獣部隊の目指さないといけない場所。そして破壊しないといけない場所でもある」
煙草を吹かしながら言う博士。
それからはしばらく沈黙が訪れる。
煙草からもうもうと溢れる煙が夜風に吹かれて消えるだけだ。
「……博士、一ついいですか」
「何かしら」
「博士はあたし達のことをどう思っているんですか」
とても変なことを聞いてしまった。
だけどあたしは気になっていた。博士がここまでしてくれるのは本部からの指示? あたし達がこんな力を持っているから?
四獣部隊に入ってから紅葉や菖蒲先輩以外に一番近くにいた人だからか、
博士があたしを青龍の少女として見ているのか、龍巳蒼姫として見ているのか気になってしまっていた。
「………」
博士は吸っていた煙草を屋上の床に落とし、靴で火を消す。
やっぱりまずいこと聞いたかな……。
「私……以前にもあなたと同じ力を持つ子の監督をしていたの」
「博士が……?」
「青龍の力を持つ子。あなたの先輩にあたるわね」
あたしと同じ青龍の力を持つ人……。
正直な話、四獣部隊はあたし達で初めて作られたチームだと思っていた。
「あの子はとても優秀だったわ。何をやらせても成功させるくらいにね」
「………」
「だけど、私があの子を潰したの」
あたしは耳を疑った。
博士が潰したってどういうこと……。
「あの子のことを考えずに難題を押し付け、周囲の期待を向けさせてしまった」
博士は遠くを見つめたまま呼吸をゆっくりと整える。
「それでもあの子は期待に応えるために戦ってたわ。そこで私が気付いてあげるべきだった。あの子の体が限界を迎えていたことに」
「………」
「とうとうあの子は二度と使えない程の体になったわ。最後まで自分の身を削ってまで」
博士は見せたこともない悲しげな表情で真上を見上げる。
「だからこそ私は今も監督をし続けているの。それがあの子への罪滅ぼしになればいいと思って……」
「博士……」
「大体答えになったでしょ? 昔話はこれで終わり。さぁ、もう寝なさい」
博士はあたしの方を向いてにこやかに笑う。
だけどあたしの胸の内にはなんだかとれることのない閊えがあった。
「……博士はどうしてそんな話をあたしに?」
そう、博士が何で過去のトラウマでもあろうそんな話をあたしにしてくれたのか分からない。
「あなたがあの子に似ているからよ」
「え……?」
「あなたはあなたのままでいて……あの子と同じことにはならないで」
博士はあたしの横を通りすぎ、ビルの中へと入って行った。
今の博士は一体何を思っているんだろう……。
あたしは部屋に戻る前、遠くに怪しく存在を示す魔王城を見つめてビル内へ戻って行った。


* Re: 四獣の戦士達 ( No.15 )
日時: 2013/02/09(土) 00:06:26 メンテ
名前: TC1



魔王城玉座
ハイグレ魔王の前には三幹部の二人が報告のために揃っていた。
ブランジャーシスターが魔王に向かって報告を開始する。
「それにより女帝ハラマキが朱雀の奏によって倒されまして」
「随分とあっさりやられたのね」
「朱雀の奏の能力が高いこともありますが、女帝ハラマキの能力が及ばないことも大きかったかと」
「ふーん、それでこれからの考えはあるんでしょうね」
「勿論です。既に朱雀の奏は戦線に復帰が難しいでしょう。そうとならばなんとでもなります」
「いいわ。今回はあんた達のやりたいようにやりなさい。その代わり、負けは許さないわよ」
「ハイグレッ!ハイグレッ!お任せを、魔王様」
「………魔王様、ハイグレ人間にした敵は私がどうしたっていいんですか?」
ずっと黙って話を聞いていたTバックプリンセスが聞く。
「あんた達が洗脳した女子ぐらい好きにさせてあげるわ」
「了解でーす」
Tバックプリンセスはニッと笑った。
「さぁ、開始は明日よ」





「蒼姫〜、起きてるか〜」
菖蒲先輩の声……?
「ん……」
あたしは小さく声を出すと起き上がる。
すぐ横には屈んだ状態であたしを見ている菖蒲先輩がいた。
しかも超至近距離で。
「うわっ!」
あたしは体にかけていた布団を吹っ飛ばすように飛び起きる。
「おいおい、あたしの顔を見て『うわっ!』はないだろ」
苦笑いをして、あたしから少し離れる菖蒲先輩。
「だ、だって、あれだけ近い距離だったもので」
「あー、寝顔見てたからな」
「菖蒲先輩、普通に寝顔見てたとか言わないで下さいよ!」
「わりぃ、幸せそうに寝る蒼姫の顔が可愛くてな。それに『先輩〜』なんて寝言聞いたら放っておけないだろ」
急にあたしの顔は火照ってしまう。
そんな寝言いったのかな……。
「え、えっと、先輩、昨夜はどこに行ってたんですか」
話を変えるように聞くと、一瞬菖蒲先輩が戸惑ったような顔をする。
「あ〜、シャワーを浴びてきてたんだ。一応この辺りのパンスト兵は蹴散らしたし、来たってあいつ等程度には負けないしな」
菖蒲先輩の話し方、なんだか少しだけ焦っていたような……。
「もうすぐ博士から指示を出されるからよ。蒼姫もシャワー浴びてこようぜ」
さ、流石に冬のシャワーは寒い気がする……。
「ほら、行くぞ〜」
「うわわ……」
あたしは菖蒲先輩に手を引かれていった。



「龍巳、霧野、揃ったわね」
シャワーを浴びてきたあたしと菖蒲先輩は昨日指示を受けた部屋に集まっていた。
「二人とも、戸高はもう大丈夫よ。ただ、戦闘への参加は控えてもらうだけだから」
それだけ言うと博士は真剣な表情であたしと菖蒲先輩の方を見る。
「まずは現状について。ハイグレ魔王には三幹部がいる……うち一人は雑賀が撃破したわ」
女帝ハラマキって奴のことだろう。
菖蒲先輩は奏が倒してたのかと呟いていた。
「こちらは戸高が負傷。それと……雑賀がこれ以上の戦闘不可。今はどこかで治癒に専念してるわ」
「奏が戦闘不可って……」
奏がこれ以上戦闘に出られない……。
菖蒲先輩は驚いているが、あたしにはその理由が分かる。おそらく奏は右腕を壊してる。
「雑賀は昨日の時点で体はボロボロだったのに戦闘を行った……これで分かるわね」
菖蒲先輩も小さく頷いた。
「残る幹部は二人……あなた達にはその二人の撃破をお願いするわ」
二対二か……。
「戦いは苦しくなる。そこであなた達が持つ四獣の力の全てを教えるわね」
「あたし達が知らないことがまだあるんですか」
「えぇ、だけど実感はしたことあると思うの。従来四獣の力はあなた達の強い気持ちに比例して強くなるの。誰かを守りたいとか、ね」
博士の言葉に菖蒲先輩がハッとなる。
「昨日、急にあたしの能力が上がったのってそういう訳か」
「そうね。こんな大事なこと先に言っておくべきだと思ったんだけど、教えたら教えたで意識しすぎると判断して黙ってたの」
黙って話を聞くあたし達に博士が頷く。
「だけど気を付けて。気持ちが強くなるほど発揮できる力は強くなるけど、消耗はより激しくなるわ」
「強い力を出すから体に負担がかかるってことか……?」
「大体あってるわ」
「扱いには注意しないといけないですね」
「その通り……私からの説明は以上。だけど四獣の力をより強める時はコントロールしなさい」
気持ちに応じた力……か。
「説明が長くなったわね。もう幹部も動き出すはず……二人とも、お願いね」
「「はい!」」
あたしと菖蒲先輩は返事をする。
そして、廃ビルを出る前に一つの部屋へと向かった。
「……紅葉?」
紅葉の休む部屋へとあたし達は入る。
部屋の中で紅葉は毛布を体にかけながら床に体育座りをしていた。
「蒼姫……菖蒲先輩……」
「体の方は大丈夫か?」
歩み寄る菖蒲先輩に紅葉はただ頷く。
「そっか……無理するなよ」
「………」
紅葉は黙り込むだけだった。
やっぱり昨日のことを気にしているのかな……。
「紅葉……」
何かを言おうとすると、菖蒲先輩があたしの肩に手を置く。
そっとしておけって伝えたいんだろう。
「紅葉、行ってくるね」
「………」
あたし達はそれ以上何も言わずに部屋を出て、街へと向かった。
だけど紅葉の寂しそうな顔があたしの頭から離れずにいた。



「いくぜっ! 四獣部隊、菖蒲、参ります!」
菖蒲先輩が鉢巻を装備、さらしにコート姿と変身をする。
多量の車が行き交う大通り、あたしと菖蒲先輩は空から迫ってくるパンスト兵達と対峙していた。
当然車は走っておらず、道の真ん中に立つあたし達はパンスト兵達の撃退へ備える。
「蒼姫、いくぞ!」
「はい、四獣部隊、蒼姫、参ります」
あたしも振り袖姿へと変身をする。
次々と飛んでくるパンスト兵。あたし達はそれぞれ刀と爪を構え、撃退を開始する。
「お前等じゃ、あたし達の相手にならねぇんだよ!」
菖蒲先輩の爪撃が大量のパンスト兵を斬り刻んでいく。
気付くと菖蒲先輩の装備した爪がバチバチと音を立てて雷を纏いだしている。
「あたしだって……」
刀をためて、思い切り横へ振る。
蒼い竜巻がパンスト兵達を一掃する。
「ふむ……やっぱりパンスト兵では時間稼ぎにもならないか」
どこからか少女の声が聞こえてきた。
「どこから声が……」
あたしが辺りを見回すと、信号の上に一人の女の子が立っていた。
ツインテールにした金色の髪、Tシャツにミニスカート姿って……。
「お、女の子!?」
信号の上にいる女の子は見た感じ小学生ぐらいに見える。
「何事もないように現れやがったな」
パンスト兵達を片付けた菖蒲先輩があたしの横に着地すると、女の子の方を強く見定める。
「菖蒲、会いに来てやったぞ。それに……もう一人いるのか」
菖蒲先輩のことを知っている女の子はあたしの方を見てにやりと笑う。
「ふむ、お前もおっぱいでかいな」
「……は?」
あたしは呆気にとられる。
この女の子は何を言って……。
「何でもいいぜ。あたしが相手するからよ!」
菖蒲先輩は電撃を纏った爪を構える。
「流石は菖蒲、やる気満々だな。いいだろう、私が相手してやるぞ」
女の子は信号から飛び降りると、スカートを脱ぎ捨てる。
その下には過激なTバックの水着を着ていた。
「蒼姫、下がってな。あいつは三幹部の一人だ」
大体察しはついていたけど、本当にあんな小さな子が幹部なのかと疑問には思ってしまう。
しかしどうやら菖蒲先輩は一人で戦うつもりらしい……。
「菖蒲先輩、あたしも……」
「いや、ここはあたしに任せな。それよりも蒼姫は露払いの方を頼むぜ」
「露払い?」
あたしが菖蒲先輩に言われ周囲を見渡すと、パンスト兵達の援軍が向かってきていた。
「わ、分かりました!」
あたしは刀を構え、パンスト兵達の撃退の準備をする。
「いくぞ、菖蒲」
Tバックプリンセスは腰につけていた小刀を二本それぞれの手に構える。
「あぁ、いくぜ! Tバックプリンセス!」



* Re: 四獣の戦士達 ( No.16 )
日時: 2013/02/09(土) 00:08:13 メンテ
名前: TC1



「………」
私はただ廃ビルの天井を見つめながらジッとしているだけ。
今頃二人は戦っているんだろうな……。
幹部に私だけ負けて、私だけ役に立てていない。
本当に私自身が惨めにしか見えてこない……。
「戸高……体の方は平気かしら」
沈黙の部屋の中へ博士が入ってくる。
「博士……はい、体に関してはもう大丈夫です」
「そう、良かったわ」
………。
結局はその会話だけで沈黙が訪れる。
「戸高、あなたが思い悩む必要はないのよ」
博士が小さな声で呟いた。
だけど沈黙の部屋の中ではしっかりと私の耳に届いていた。
そんなこと言われても、それは無理な話だと思う。
奏はあれだけの力を見せている。それに蒼姫も菖蒲先輩も今幹部と戦っているはず。
どうして私はこんなに弱いの……。
「あなたはよくやってくれてるわ。私の手伝いができるのは四獣部隊であなただけだもの」
博士が優しい言葉をかけてくれるけど、今の私にその言葉は戦闘では役に立たないけど、手伝いならできないことはないと悲観的に捉えてしまう。
「……あなたはどうして四獣部隊に加わったの?」
ずっと押し黙る私を見て、博士が急に厳しい表情になり、言い放つ。
私が四獣部隊に加わった理由……。
「戸高、あなたは龍巳の役に立ちたいって思ったんじゃないの」
博士の言う通り、私は蒼姫がみんなのために戦っていることを知って、役に立ちたいって思った。
その時に玄武のペンダントが私の手元で光ったんだ。
「龍巳にとってあなたの存在は心の支えになっているわ。本当に龍巳のことを思っているなら今は敗北を落ち込んでいる場合じゃないわよね」
「博士……」
「私の手伝い……頼めるかしら?」
「……はい!」
私にやれることをやる。
今はそれでいいはず……。



「戸高、ここをお願い」
「はい……あ、博士、こっちに入れられれば全部収まるんじゃないですか」
「それは盲点だったわ。流石ね、戸高」
私は博士の手伝いをしている。
ここで上手く情報収集やデータの回収ができれば状況を変えられる一手になるかもしれない。
加えて、ハイグレ魔王の城への侵入や攻勢をしやすくできる。
「……駄目ね。ここを開くには機材が必要よ」
私と博士はなんとか解決の糸口を見つけたけど、機材のないこのビルだと難しいみたい。
「戸高、私は急いで本部に戻ってなんとかしてくるわ。あなたはここで龍巳と霧野の連絡係をお願い」
「だけど博士一人で外に出るのは……」
「大丈夫よ。車を使うし、本部の方へ後退するわけだから安全よ」
「そ、それなら安心ですけど……」
「じゃあお願いね」
そのまま博士は部屋を出ていった。
なんとか上手くいきそう……私、博士の手伝いならできるんだよね。
博士が出ていってしばらく、私はようやく落ち着いて休憩ができていた。
「ん……あれは何?」
部屋の窓から青い空に浮かぶ無数の影が目に留まった。
その影がパンスト兵であることに気付くのはすぐだった。
それよりもパンスト兵達が一か所に集まっているのが気になった。
「もしかしてパンスト兵が集まっているところに蒼姫と菖蒲先輩が……」
博士はここで連絡係をしてと言ってたけど、二人が戦っているのにジッとしているなんて。
「あれ?」
私は違和感を覚えた。
窓から見える一か所にパンスト兵は集まっているけど、もう一つパンスト兵の大群が……こっちに向かってくる!?
そんな……この場所が気付かれてたの?
どう見ても私達の拠点となるビルに向かってきている。
どうしたらいいんだろう……逃げるしかないかな。
だ、駄目だ。私がこの拠点を放棄したら蒼姫と菖蒲先輩が帰ってきた時に……。
迎撃するしかない……。
私は玄武のペンダントを取り、部屋を出る。
ビルの中で戦うのは無茶だ。
急いで階段を駆け下り、ビルの外へと出る。
「紅葉の方から出てきてくれるなんて嬉しいわ〜」
ビルの立ち並ぶこの区画。
普段の大通りなのに車は一台として走っていない。
そんな道の真ん中に立つ女性を見て顔を引きつらせる。
ブラジャーを胸と目に装備した女性、間違いなくブランジャーシスターだった。
「どうしてここが……」
あれだけビルが並んでる中で私たちの居場所が気付かれるなんて。
「実は初めて紅葉と会った時に発信機をつけちゃってました〜」
ブランジャーシスターは小さく舌を出し、からかってくる。
それよりも発信機をつけられていたって……それじゃあ私がこの場所を敵に明かしちゃったってこと?
「紅葉、ありがとね〜。おかげで迷うことなくあなた達の拠点が分かったわ。あとは紅葉以外が出払うのを待つだけだったの」
「そんな……私、利用されて………」
「紅葉以外が出ていくのを待っていたのよ。そうそう、あの博士って言うのはパンスト兵達が襲撃することになっているから」
「博士が……?」
大変だ……この辺りは敵を倒し切ったから博士単独でも大丈夫だと思ってしまっていた。
ブランジャーシスターが立っている方向に博士がいるのだから嘘とも思えない。
……何もかも裏目に出ている気がする。
「紅葉……他人の心配している場合かしら」
他人の心配? 博士は私にとって他人なんかじゃない。
「そこをどいてください! 博士は私が助けに行きます!」
「紅葉のそういうところ大好きよ。仲間思いで一生懸命……だけど壊れやすい。誰よりも人間らしいところ」
「私は絶対に負けません。四獣部隊、紅葉、参ります!」
私を黒い旋風が包み、黒いライトアーマーが私の全身を包む。
そして武器となる玄武の槌を握りしめる。
「うふふ、何をしようとしても無駄よ。いきなさい、パンスト兵達!」
ブランジャーシスターが高らかに宣言すると、上空のパンスト兵が低空飛行へと体制を変えてくる。
「もう逃げ場はないわよ。おとなしくハイグレ人間になれば楽に……気持ちよくなれるわよ」
なんとか反撃するために槌を振り上げる。
「またその技? もう読めてるのよ」
「それでも!!」
私の振り下ろした槌は衝撃波を巻き起こし、意志を持っているかのようにブランジャーシスターの方へ向かっていく。
「なっ……昨日よりも速い!」
だけど寸前のところで宙を舞ったブランジャーシスター。
私の先制攻撃は失敗に終わった。
「ふふふ……やるわね」
ブランジャーシスターは全くダメージを受けていない。
だけどパンスト兵達は空中にいながら衝撃波の勢いに呑まれ、壊滅状態だ。
この戦い、絶対に勝って見せる。
「ブランジャーシスターさん、今度こそ私は負けません!」
「意気込んじゃって。無邪気で可愛い……」
ブランジャーシスターは不敵に笑い、自分の右手人差し指をぺろっとなめる。
さっきの衝撃波でブランジャーシスター以外は殆ど再起不能だ。
ここは一対一と考えていいはず。
「いくわよ、紅葉」
ブランジャーシスターの姿が消えたかと思うと、一瞬で私の目の前に現れる。
「私に大敗した昨日を忘れたの?」
速い……今までの私なら怯えて受け身の態勢に入っていた。
だけど今回は違う。博士を守るんだ!
「負けない!」
私は瞬間的に移動してきたブランジャーシスターへ槌を思い切り横へ振る。
「……おっとっと」
ブランジャーシスターはバックステップで槌をかわす。
威力は高い分、振りが遅くなるのが私の武器の欠点。
「へぇ、昨日よりも攻めてくるわね。心境の変化でこうも変わるなんて、やっぱり紅葉は感情豊かで可愛い……」
「馬鹿にしないでください。私……今度こそは勝ちます」
「良い顔ね。でも、その真剣な表情はハイグレをしながらの方が似合うわよ」
ブランジャーシスターは再び攻撃態勢に入る。また瞬間的移動をしてくるはずだ。
今度は真正面からくる? ……右? 左? それとも後ろ?
「考えすぎよ。隙だらけ」
「うっ……」
考えることに時間を使いすぎてしまった……。
真後ろに移動してきたブランジャーシスターの足技が私の背中を捕らえた。
* Re: 四獣の戦士達 ( No.17 )
日時: 2013/02/09(土) 00:09:12 メンテ
名前: TC1

「紅葉、やっぱりあなたはこの程度よ」
私は何とか振り返るけど、ブランジャーシスターは腕を組み、余裕の笑みを浮かべている。
「知ってるのよ。あなた達のチームが初めて魔王様と戦おうとした時に紅葉だけは戦えなかった」
「………」
「あなたは他の三人に比べて役立たずなのよ。みんな言わないだけで紅葉のことを足手まといって思ってるわ」
「そんなことない!」
私は思い切り目の前の地面を叩く。
衝撃波はブランジャーシスターへと向かっていく。
「単調な攻撃……さっきは不覚をとったけど、こんな力で私に勝てると思ってるの?」
ブランジャーシスターは私の放った衝撃波をガードで受け止める。
全くと言っていいほどにダメージを負っていない。
「くっ……」
「あなたが足手まといだと思われる決定的な証拠があるじゃない。あの蒼姫って子に見捨てられたのよ」
「蒼姫が私を見捨てるなんてありえないよ!」
「私と初めて戦った時、助けに来てくれたのは奏って子だったじゃない。それにその奏は上からの指示があったから。違う?」
確かに奏は自分の意志で私を助けてくれたわけじゃない。
だけど、蒼姫は他の幹部と戦っていたから来れなかったんだ。
「私は蒼姫のことを信じてる」
「健気ねぇ……幼いっていう方が正しいかしら」
少しだけ笑みを見せると、ブランジャーシスターは私の背後に回り込んでいた。
早すぎる……本当に私とは桁違いの力差。
「ちょっと言い過ぎちゃったかしら? ごめんね、紅葉。でも大丈夫よ。私の元へ来ればあなたの居場所はあるんだから」
ブランジャーシスターは私の背後に回り込んだものの攻撃をせずに一言告げる。
私の居場所?
「私の帰る場所は四獣部隊のみんなのところ!」
私は振り返って槌を構えなおす。
例え相手が強くても私にしかできないことがある。
必ず博士を救援に行く……。
「実力の差を見せつけられても諦めない……素敵ね」
「!!」
また背後をとられた!?
どうして……今度こそは見切れたはずなのに。
「でも、そろそろ終わりにしましょ」
ブランジャーシスターは両手を重ね、私に向けてくる。
この装備状態に加えて体勢も回避に移れるような状況じゃない……。
「ちょっと痛いわよ?」
ブランジャーシスターの重ねた手からは鋭い電撃が放たれる。
回避のできない私にただ食らいつく如く伸びてくる稲妻。
駄目……。
「きゃあぁぁあああ!」
敵の攻撃に完全に呑まれてしまった。
私……負けるの?
また、何もできないで。
私……本当に役立たずなんだ………。
蒼姫……。

憎悪体と戦い続ける蒼姫に対して何もできないままだった私。
ある日、そんな私に蒼姫が言ってくれたことがある。
「紅葉、どうしたの?」
「ごめんね、蒼姫……私だって四獣部隊の一人なのに自分だけ戦わないなんて、弱い子だよね、私」
「……紅葉」
「私は玄武の力を手に入れてから戦闘に参加したことなんて殆どないし、ナビゲートだって博士がやった方が適切な指示を出せると思う……」
「………」
「玄武の力を使いこなせる人なら探せばいつか見つかると思うの。だったら、私なんて四獣部隊には要らない……」
「……紅葉は役立たずなんかじゃないよ」
「だって……」
「あたし、紅葉がいたから救われたことだってあるんだよ」
「え……」
「紅葉のナビゲートはいつだってあたし達の身を案じてくれてるし、何より紅葉の声が聞こえてるのって凄く安心するの」
「蒼姫……」
「いつもあたしの親友が傍にいるみたいで怖いって感じが自然に抜けていくの。紅葉の声が聞こえなくなったらあたし……凄く不安」
「それでも……私が迷惑かけたら」
「紅葉……」
蒼姫が一呼吸おいて、私を静かに見つめる。
「情けない頼みだけど聞いて」
蒼姫がいつにない寂しそうな顔をしている。
「お願い、これからも傍にいて……」
蒼姫は真っ直ぐな目で私を見つめたまま言った。
「紅葉……あたしには紅葉が必要なの」

『……紅葉が必要なの』

その蒼姫の言葉……。
過去に蒼姫と話したことが頭の中に浮かんできた。
蒼姫が私を必要としてくれるから私は四獣部隊の一員として頑張るって決めたんだ。
誰かに必要とされる……蒼姫が必要と思ってくれる………。
「私……蒼姫のところに帰るよ。絶対!」
その時だった。私の首にかけたペンダントが大きく光り輝く。
「こ、これって何……」
「紅葉の力がどんどん高まってる……どうなってるの」
私の心臓音が直接耳に響いてくる。
これは……玄武の力?
今まで変身してるときは玄武の力が体を包んでいるようだった。
だけど今は違う。私自身の気持ちに呼応して玄武の力とシンクロしているみたい。
今なら……私、できる!

【大地の玄武、解放】

「うぅぅ……」
目を閉じ、私の中に入ってくる力を受け入れる。
目を開けた時には私の周りを緑色のオーラが舞っている。
全身が軽い。これって一体………。
「四獣の力……さっきまでとは桁違い?」
ブランジャーシスターは驚愕した様子で私の方を見ている。
「これは蒼姫や四獣部隊みんなの力だよ!」
私は玄武の槌を構える。
「ブランジャーシスターさん、私……本気でいくから! 蒼姫のいるこの街を守りたいの!」
私は槌を構えたまま、ブランジャーシスターの目の前へと移動する。
自分でも分かる……今の私の身体能力が異常なまでに上がってる。
私の飛躍的な移動能力の向上にブランジャーシスターも一瞬後退る。
「行きます!」
私は思い切り槌を振り下ろした。
「きゃあぁぁあああ!」
槌そのものは命中しなかったけど、衝撃波はブランジャーシスターを飲み込む。
威力も増大しているようで相手の体は傷だらけになっている。
「強い……本当に紅葉がここまでの力を出してるの?」
体の傷を押さえながら体勢を立て直すブランジャーシスター。
よし、ここで一気に攻めて短期決戦に持っていくしかない。
「これで決めます!」
私は再び槌を振り上げる。
さっきよりも強くためて、この一撃で決めて見せる。
「面白いわ。あれだけ弱かった紅葉が……ね」
ブランジャーシスターも両手を前に出し、攻撃の構えになった!?
「紅葉、私もあなたを過小評価したりはしない。本気で行くわよ」
ブランジャーシスターも本気の力をぶつけてくる……。
この一撃で押し負けた方が勝負そのものの敗者になる。
「覚悟しなさい、紅葉!」
「絶対に負けない!」
私の全力を込めた槌が放つ一際大きな衝撃波とブランジャーシスターの手から放たれる雷が激しくぶつかり合う。
蒼姫のためにも……みんなのためにも負けられない!
そう思った時、ぶつかり合っていた二つの力が目を覆いたくなるような閃光と共に一帯を破壊しそうなほどの爆発を起こした。
「きゃあぁぁあああ!!」
爆風に呑まれた私は後方へ強く飛ばされ、体を背中から強打する。
煙が晴れてきて、道路に仰向けに倒れる私の視界はビル間に広がる青空だけだ。
体中の力が抜けてしまったようだ。
鎧をつけていても体に受けていたダメージは相当大きかったみたい。
さっきまで体中が熱くなるほどに力で溢れていたのに。
蒼姫……蒼姫の居場所、守れたのかな……私。
「紅葉……驚いたわ。ここまでできる子だったのね、あなた」
「嘘……」
段々と近付いてくる足音。
足を引きずらせながら私へと歩み寄ってくる。
その声の主が間違いなくブランジャーシスターのものなのは分かる。
動いて……動いてよ……私の体。
あと一歩なのに。あと一歩で勝てるのに。
「さぁ、紅葉……こっちにいらっしゃい」
「い、嫌だよ……」
今度こそ蒼姫の役に立つって……。
今度こそ弱い自分じゃなくなるって……。
「ま、負けたくない……」
もう力こそ空っぽの体。
ただ負けたくないと思う。それだけで私は立ち上がった。
閉じかけの目を下へ向け、地面の落ちている玄武の槌へ手を伸ばす。
だけど持ち上がらない……もう力が残ってない。
玄武の槌は私にはもう振り上げられない……。
「紅葉……今、気持ちよくしてあげる」
ブランジャーシスターはぼろぼろながらも光線銃を取り出し、私へと向ける。
なんとか反撃しないと……でも、もう動けないよ……。
光線銃が私へと狙いを定めている。
嫌……あんなの………。
私、ハイグレ人間にされるなんて絶対嫌……。
だけど震える私を嘲笑うように容赦なく光線が向かってくる。
蒼姫……。
「いやあぁぁあああ!」
* Re: 四獣の戦士達 ( No.18 )
日時: 2013/02/09(土) 00:09:43 メンテ
名前: TC1

私の抵抗も虚しくピンク色の光線は私を飲み込んだ。
私の体は自然に両手足を大の字に開いてしまう。
装備しているライトアーマーが少しずつ透けていっている。
そして私の体に少しずつ浮かび上がってくるハイレグ水着の形。
私……ハイグレ人間になるの?
そう思った時だった。ライトアーマーが消え去り、ぴちっと音を立ててハイレグ水着がはっきりとした形で私の体に吸い付いた。
「うぅぅ……」
私は光線から解放された。
だけど体の違和感にはすぐに気付いた。
私が着せられていたのは真っ黒なハイレグ水着だった。
首にかけられたペンダントと普段から履いている靴以外のものは消えてしまっていた。
「い、いや……こんな恰好」
「ふふふ、とっても可愛いわ……」
ブランジャーシスターは嬉しそうな顔で困惑する私を見つめている。
何なのこの恰好……分からない、凄く恥ずかしい………。
着たこともないこんな露出の高い水着……私は胸と股の間をそれぞれ手で庇う。
「紅葉、これであなたもハイグレ人間……私達の仲間よ」
「だ、誰が……」
「あぁ、もう無駄な抵抗しちゃって……」
ブランジャーシスターはにやっと笑い、私の後ろに回り込む。
「あなたのハイレグ映えする姿、自分の目でゆっくりと見なさい」
ブランジャーシスターが私の両手を掴み、バッと横へ広げさせる。
私は両手を広げさせられ、体を庇うこともできない。
「どうかしら、ハイレグを着用した自分の姿は」
両手の自由が奪われても私は自分の体を見ようとはしない。
こんな姿の自分なんて見たくない……。
「胸はまだまだ育ち盛りね。将来が楽しみだわ」
「放して!」
私は無駄な抵抗だとしてもこのまま弄ばれるなんて嫌。
自由に動かせる足をばたつかせて暴れる。
「抵抗しないで。段々と心からハイグレ人間になっていくから」
「絶対に嫌!」
「もう……焦っちゃって」
ブランジャーシスターは私の両手を放して、一旦距離をとる。
「私はハイグレ人間なんて嫌です!」
私も後退してブランジャーシスターから距離をとろうとした時だった。
「あ……」
全身に緊張のようなものが走った。
ハイレグが私の体をより強く締め付けてきていた。
初めて味わったその感覚に私はつい声を上げてしまった。
「あらら、紅葉一瞬気持ちよさそうな声出しちゃったわねぇ」
「そんなことない!」
「いやん、顔真っ赤にしちゃって可愛い……少しずつハイグレ人間に近付いて行っているのよ」
完全に私は敵の手中にあるかのように遊ばれている。
確かに相手はボロボロでも私はもう負けているってことなの……?
そんなはずない……四獣の力を信じれば勝機はあるはず。
絶対、こんな相手に負けるなんて許されない。
私は一歩動こうとする。だけど足に異変を感じた。
「あ、あれ……」
私の足が自然と外へ開いてしまう。
おかしい、何故か体が変だ。
「な、何で……」
「ふふふ、もうハイグレ人間化が進行してるのよ。さぁ、次は腰を落としなさい」
言われるがまま私は腰を下ろし、足も完全にガニ股になってしまった。
「い、いやぁ……」
抵抗を試みても体は言うことを聞かない。
嫌だ、助けて……。
「はい、次に手を切れ込みへ添える」
ブランジャーシスターの言葉通りに私の腕は股へと伸びていく。
このままじゃ……私………。
「さぁ、紅葉……あなたのハイグレポーズを見せて」
「嫌だよぉ……」
逆らえない……逆らえないよ………。
あんな恥ずかしいこと、絶対にしたくない……。
私の頬を涙が伝う。
私……もう………。
「……ハイグレ!」
私の体は抵抗しきれず、力強く腕を振り上げた。
ハイグレという叫び声がビルに反響する。
「素敵……素敵よ、紅葉」
一度ポーズをとった私は我に返る。
今、私はあんな恥ずかしいことを……。
「もうハイグレをしてしまった……これであなたもハイグレ人間よ」
「う、うぅ……蒼姫………」
腕を振り上げた体勢で蒼姫の名前を呼ぶと、ブランジャーシスターは軽く笑む。
「ハイグレ人間の証、ハイグレポーズをとった紅葉を四獣部隊とかいうチームの仲間が……蒼姫って子が受け入れてくれるかしら」
「え……」
そうだ……蒼姫はハイグレ魔王を倒すって言ってた。
蒼姫にとってハイグレ魔王は敵なのに私は敵の言いなりに……。
「嫌われちゃうでしょうね〜、可哀想な紅葉」
「い、嫌だよ、蒼姫に嫌われたくないよ……」
「ふーん。だ・け・ど、ハイグレもっとしたいでしょ?」
ブランジャーシスターの問いに対し、私は再び腕が水着の切れ込みへと動き出す。
あんな恥ずかしいこと、もうしたくない……。
蒼姫に嫌われるなんて嫌……。
「本当はハイグレ気持ちよかったんでしょ? 抵抗しちゃ……だーめ」
私の手が足の付け根に添えられる。
嫌、蒼姫には嫌われたくないけど、私………。
「は、ハイグレッ!ハイグレッ!」
私は思い切り、二度もポーズをとってしまった。
どうしよう、私が私じゃなくなっていく……。
「蒼姫みたいにハイグレを拒む子、間違ってるわ。私の所へ来なさい、紅葉。あなたの居場所はこっちよ」
ブランジャーシスターが私へ手を差し伸べる。
私は必死に首を横に振る。
私は蒼姫を裏切るなんて……。
「うふふ、まだだったかしら。ほら紅葉……もっとハイグレを見せて」
もう……駄目。
だってハイグレって気持ちいいんだって思っちゃったんだ……。
ごめん、蒼姫……。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私は一心不乱にハイグレポーズをとる。
長くなびく髪を揺らしながら激しくポーズをとる私。正直惨めに思えてくる。
だけど一回二回とポーズをとるうちに気持ちよさ以外にハイグレそのものに誇りを覚えてきた。
みんなが気持ちよくなるために私達の主へ忠誠のポーズをとる。
何でこれが間違ってるって言えるの?
「あらあら、こんなに激しくハイグレしちゃって。動くたびハイレグが馴染んできたでしょ?」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
ブランジャーシスター様の言う通り。
ハイレグが私の体に馴染んできているかのように更にぐいぐいと食い込んでくる。
気持ちよさのあまり私はハイグレを止められず、ブランジャーシスター様に頷いて返事を返すしかできなかった。
真剣にただハイグレポーズをとり続ける私をブランジャーシスター様は満足気に見つめている。
「紅葉、もう分かったわよね?」
「ハイグレッ!ハイグレッ!勿論です、ブランジャーシスター様!」
私はハイグレを一度止める。
そして今度はブランジャーシスター様の方を真っ直ぐに見つめ、手をハイレグの切れ込みに添える。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレ人間紅葉、只今転向完了しました!」
「……はい、よくできました。それじゃあもう一度聞くわね。私の所へ来なさい、紅葉」
「ハイグレッ!ハイグレッ!でも私、ずっと逆らって……」
躊躇う私にブランジャーシスター様が近づいてきて、私を強く抱きしめた。
「いいの、大事なのはこれから。私や魔王様に忠誠を誓い、配下に加わるなら今までのことなんていいの」
「……ありがとうございます。私、ハイグレのために頑張ります!」
私はハイグレ魔王様達のためなら何だってする。
ハイグレ人間の一員として戦ってみせる。
「ふふふ、それじゃあ作戦を手伝ってもらうわね……でも、その前に」
「!!」
ブランジャーシスター様が唇を重ねてくる。
「まずはあなたを堪能させてね……」
私はうっとりとした表情でブランジャーシスター様を受け入れた。
今、私はハイグレ人間へと生まれ変わった。


* Re: 四獣の戦士達 ( No.19 )
日時: 2013/02/16(土) 00:24:05 メンテ
名前: TC1



「Tバックプリンセス、さっさと決着つけようぜ!」
パンスト兵を散らすあたしの付近で菖蒲先輩と敵の幹部が戦っている。
私の目にそうそうと止まることのない動きで二人がぶつかり合っている。
「菖蒲、観念しろ!」
「それはお前の方だ!」
「!!」
あたしの目にも留まった。
菖蒲先輩の繰り出した爪撃がTバックプリンセスの頬を掠めた。
「くぅっ……やるな」
Tバックプリンセスは後退しながら応戦することが限界のようだ。
状況的には菖蒲先輩が有利に見える。
増援のパンスト兵も段々と減ってきている。
よし、このままいけば勝てる。
「むう、私は負けるわけにはいかない!」
Tバックプリンセスが高らかに宣言し、片手を上げる。
その宣言に反応するように完全に洗脳されてしまったハイグレ人間達がTバックプリンセスの遥か後方に現れる。
「マジかよ……」
あたしも菖蒲先輩も表情が優れなくなる。
それもそのはず。今までハイグレ人間が戦線へ出てきてあたし達を攻撃してきたことはあった。
そしてその時はあたし達の力であしらうことに成功していたが、今回は敵幹部が目の前にいる。
幹部の相手をしながらハイグレ人間を上手く抑えることは難しいはずだ。かなり苦しいかもしれない。
「菖蒲、これで形勢逆転だ!」
「良い気になんなよ、チビ助」
「ちびだと……私を馬鹿にすることは許さないぞ!」
Tバックプリンセスは怒ったみたいで菖蒲先輩に向かってくる。
いや、菖蒲先輩は相手をわざと怒らせたんだ。
少しでも自分の近くに敵が来るように……。
よし、あたしも応戦しないと。ハイグレ人間達の動きを遅れさせられれば……
その間にも菖蒲先輩とTバックプリンセスはそれぞれの得物を使って戦っている。
あたしは刀をため、蒼い竜巻を起こす。
加減はしているため、ハイグレ人間達が前進しにくい程度の風しか起こせていない。
だけどこれだけの人数だ。いつまで耐えられるか分からない。
「Tバックプリンセス、いい加減にしやがれ!」
「私は菖蒲に負けるなんて許されないのだ!」
「ったく、聞き訳がないにもほどがあるだろ!」
菖蒲先輩は爪を強く上へ掲げる。
いつの間にか爪は凄まじい電気を纏い、バチバチと音を立てていた。
「いくぜ!」
「うわわっ!」
菖蒲先輩は捨身のようにTバックプリンセスへ白虎の爪で斬りかかり、上着、右肩を切り裂いた。
「次は外さねぇ!」
「くっ……と、とりあえず目的は果たした。今日はこの辺にしといてやる!」
Tバックプリンセスは恐怖を感じたのか、後退するように高く跳び上がり、菖蒲先輩と距離をとろうとする。
「今度は逃がさねぇ!」
菖蒲先輩は逃げ出そうとするTバックプリンセスへ空中へと斬りかかる。
「し、しつこいぞ、菖蒲!」
「ここでキッチリ借りを返さないと気が済まねぇんだよ!」
地上で敵と交戦中のあたしは菖蒲先輩の援護ができない。
菖蒲先輩はそのまま空中でTバックプリンセスへ爪を伸ばす。
今度の菖蒲先輩の爪撃はTバックプリンセスの背を捕らえていた。
痛手を負ったTバックプリンセスは地上へと着地し、体勢を立て直しながら菖蒲先輩の方を振り返る。
「くぅっ……菖蒲、よくもやってくれたな! 次は必ず決着をつけてやるからな!」
「逃がすかって言ってんだよ!」
菖蒲先輩はTバックプリンセスへ追撃を行おうとする。
だけどあたしが食い止め損ねたハイグレ人間達が既にTバックプリンセスを庇うように菖蒲先輩との間に入ってきた。
「こっの……」
流石に洗脳された人へ本気で攻撃するわけにもいかず、菖蒲先輩は追撃しようとした爪を収める。
「あはははは、じゃあな菖蒲」
Tバックプリンセスは颯爽とその場から跳び上がり、遠くへとあっという間に逃げていった。
菖蒲先輩も悔しさを押さえながらハイグレ人間と距離をとる。
「蒼姫、すまねぇ……Tバックプリンセスを取り逃がした」
「菖蒲先輩、あたしこそ敵を押さえきれなくて……」
「って、反省してる場合じゃねぇよな。一旦退いた方がいいかもな……Tバックプリンセスの奴も完全に見失っちまったし」
あたしと菖蒲先輩はその場から引き上げるしかなかった。



「紅葉……一ついいかしら」
「ハイグレッ!ハイグレッ!なんでしょうか、ブランジャーシスター様」
私は精一杯にハイグレをする。
これまでのことを許されたとしても私は間違ったことをしていた。
それ相応の気持ちを見せないといけない。
「パンスト達があなた達の指揮をとっていた人間を発見したらしいの」
「博士をですか?」
「そう、その博士を見つけたらしくてね。あなたが直接洗脳してあげてほしいの」
ブランジャーシスター様からの命令。
こんな大事な役割……本当に私でいいのかな。
「やってくれるかしら、紅葉?」
「ハイグレッ!ハイグレッ!勿論です! 必ず成功させます!」
「ふふふ、頼もしいわね。その場所までは私が案内するわ。丁度パンスト達から逃げ回って前進できてないようだから、すぐに追いつけるわ」



「どうなってるの……どこもかしこもパンスト兵ばかり」
私は舌打ちをしながらもアクセルを強く踏む。
戸高を待たせている以上、早くしないといけない。
だけどそれを阻むかのようにパンスト兵達が私の運転する車を追ってきている。
何故……この辺りは龍巳達が奪還したはず。
それなのに何故パンスト兵がこれだけ押し寄せてきているのか。
「仕方ない……」
ハンドルを右に切る。
かなり遠回りになってしまっている。
寧ろ本部から遠ざかっているかもしれない。
パンスト兵と戦う術を持たない私では敵を避けながら向かう他に手段がない。
「!!」
違う角を曲がった時だった。
私は急ブレーキをかける。
「戸高!?」
曲がった時、目の前に立っていたのは戸高だった。
戸高は制服姿のまま私に背を向けて呆然と立っていた。
私は急いで車から降りて戸高の元へ駆け寄る。
「何をしているの、戸高!」
私の声を聞いて戸高は振り返る。
「博士!」
何故か戸高は嬉しそうだった。
拠点で待っているはずの戸高が何でここにいる?
「あなた、拠点で待機してるはずでしょ。どうしてここに……いえ、そんな場合じゃないわ。この辺りはパンスト兵だらけよ。早く移動しましょう」
私が戸高に車へ乗るように指示を出しても動こうとしない。
「戸高、何をして……」
「ハイグレ軍、紅葉、参ります」
一瞬で戸高は旋風に包まれた。
状況の整理ができないまま戸高を包む旋風が晴れる。
そこには玄武の槌を持ち、黒いハイレグを身に着けた戸高が立っていた。
「戸高……まさか」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレ人間紅葉、変身完了!」
戸高は私へ向かってハイグレ星人への従属の動作を行う。
もはや羞恥を全て消されたかのように戸高は変態行為を喜んでしていた。
しかし同時に私達への裏切りであることにも変わりなかった。
「正気なの……?」
到底信じられることではない。
私は変態行為を続ける戸高に信じられないまま問いかける。
「ハイグレッ!ハイグレッ!見ての通りです! 私、ハイグレ人間の一人として魔王様の僕になりました」
「あなた、自分で何を言っているか分かっているの? 四獣部隊の一人であるあなたが……」
「博士、私はもうハイグレ魔王様の僕になったんです。四獣部隊からは外れました」
「………」
龍巳の役に立ちたいといつだって悩んでいた戸高が自ら四獣部隊を抜けた?
奴等に洗脳されるとそこまで変わってしまうというの?
「だけど私は四獣部隊のみんなが大好きです。だからみんなハイグレ人間になればいいと思うんです!」
どう考えても正しいとは思えない提案を戸高は笑顔で言う。
「戸高……」
「博士、抵抗はしないでくださいね。私だって手荒な真似は嫌です」
戸高は玄武の槌を静かに構える。
下手な動きはするなということだろう……。
「戸高はそれでいいの? 龍巳のことを考えてもそれで……」
「ハイグレッ!ハイグレッ!博士、蒼姫もハイグレ人間にしてあげること。それが蒼姫にしてあげられる一番のことだって分かったんです!」
ここまでなのか……。
奴等の洗脳はここまで人の常識を変えてしまうのか。
戸高は間違いなく蒼姫のためにもハイグレ魔王を倒すと決意していた。
だけど今はそのハイグレ魔王のために戦おうとしている。
戸高の素直な気持ちをこうも汚く弄ぶのか、奴等は。
私は強い怒りを抑えられずに握った拳を震えさせる。
こんな感情的になったのはあの時以来か。
だけど今の状況を私は許せなかった。
「それじゃあ博士、まずはおとなしく捕まってください」
戸高が私へと近付いてくる。
抵抗をしたところで力を使っている戸高に勝るはずはない。
だったら逃げなくてはいけない。
龍巳達が洗脳された戸高のことを知らないなら尚更だ。
だけどこの状況では逃げることも難しいか。
「ふふふ、哀れな方……」
「っ……」
* Re: 四獣の戦士達 ( No.20 )
日時: 2013/02/16(土) 00:25:53 メンテ
名前: TC1


私の背後には既に敵が構えていた。
それも自分の目に下着のようなものをつけた……おそらくはハイグレ魔王の幹部だろう。
私の乗ってきていた車体の上に座り、余裕の笑みを見せている。
「折角可愛い紅葉がハイグレ人間にしたいって言ってるのに断るなんて……」
「あなたが戸高をハイグレ人間にしたの?」
「御名答〜。可愛いでしょう? 紅葉は私のものなの」
私は胸の内ポケットから拳銃を取り出し、敵幹部へ向ける。
戸高が反応しようとしたけど敵幹部が手を前に出して静止させた。
「そんな玩具で何をするつもり? 戦うつもりかしら」
「一つ聞かせなさい」
「あら、なぁに?」
「あなた達は本当にイレギュラーのような存在……そうでしょう?」
「私、難しい話は嫌いなんだけど……まぁ、別の世界から来たことがイレギュラーだとしたらそうなんじゃない?」
敵幹部はため息交じりに私の問いに答えた。
「それで……その玩具をいつまで向けてるの?」
「私はあなた達に降伏するつもりはないわ」
「……へぇ、なるほどね。撃ちたいなら撃ちなさい」
敵幹部は抵抗の姿勢も見せず、私の行動を待っている。
撃ったところで間違いなくかわされる。
私が引き金を引かないままでいると敵幹部は一息つく。
「一つ言っておいてあげる……あなたの可愛がっている残りの三人も私のものにしてあげる」
「……!」
今しかなかった私は引き金を引いた。
だけど銃弾は当然のように空を貫いた。
そして敵幹部は私の真横に現れていた。
「変身した紅葉でも見切れなかったんだから。普通の人間じゃ無理よ」
そのまま私の手をはたき、拳銃を弾き飛ばさせられる。
「くっ……」
「はい、残念でした。紅葉、この人を捕らえなさい」
「お任せください!」
先程まで止まっていた戸高が私の元へ近付いてくる。
「目を覚ましなさい、戸高!」
「それは博士の方です」
前には敵幹部、背後は戸高……逃げ場はないか。
「戸高、その技術者を献上なさい。そしてあなたが身も心もハイグレ人間になったことを証明するのよ」
「はい、ブランジャーシスター様!」
「さぁ、捕らえなさい!」
最後に私の視界は戸高の振り上げる槌で終わった。
ごめんなさい……龍巳。

「いい子ね、紅葉。じゃあ私はこの技術者を魔王様の元へ連れていくわ。あなたは……」





Tバックプリンセスとの戦闘終了後、あたし達は拠点とするビルへと戻ってきた。
休憩室と思われる二回の部屋には制服の上に厚手のコートを羽織った紅葉が座っていた。
なんだか紅葉の表情がさっきよりも明るいのが見て取れた。
「戻ったぜ、紅葉」
「蒼姫、菖蒲先輩、お帰りなさい!」
嬉しいことに紅葉は笑顔であたし達を迎えてくれた。
「元気が戻ったみたいだね……良かった」
「うん、心配かけてごめんなさい……でも、もう大丈夫」
「紅葉が笑顔で安心したぜ。だけどまだ無理はするなよ」
「はい!」
良かった。幹部を倒すことはできなかったけど紅葉がこう元気を取り戻してくれたなら、それに越したことはない。
なんだか毒素みたいなのが抜けたようで少し気持ちが軽くなるのを感じた。
「そういえば気になったんだけど博士は?」
紅葉の近くに博士はいない。
何故いないのかもあたし達にはさっぱりわからない。
「あ、そのことなんだけど、ちょっと話があるんだ」
紅葉は何かを思い立ったように立ち上がる。
「ついてきて。博士から指示があったの」
紅葉はそそくさと部屋から出ていく。
「だってさ。行こうぜ、蒼姫」
「はい」
あたしと菖蒲先輩も当然続いた。

「こっちに来て。早く」
ビルを出て、あたし達は紅葉に指示されるがまま街中を歩いていた。
幸い敵はいないようだけど、こんな事態にどこへ行こうというのだろうか。
なんだか段々とあまり使われない埋立地の方へ進んでいるようだけど。
「紅葉、何をしに行くつもりなんだ?」
あたしと同じように気になった菖蒲先輩が紅葉へと質問をする。
「え? えっとねぇ……」
コンテナに囲まれたエリアに着いた辺りで先導していた紅葉が後ろを振り返り、あたし達の方を見る。
「ちょっとあっち見て」
紅葉があたし達の背の方を指さす。
紅葉に言われた通りにあたしが振り返ろうとした時だった。
「蒼姫、危ねぇ!」
「うわっ!」
あたしは菖蒲先輩に突き飛ばされた。
最初は何が起こったのか分からなかった。
だけどあたしの居た所をピンク色の光線が通り過ぎたのを見て事態が分かった。
あたしは誰かに狙われていたんだ。でも、誰に?
「……どういうつもりだ」
菖蒲先輩が声を震わせながら見つめる先……。
その先には光線銃を構えた紅葉がいた。
どういうことかな……どうして紅葉が光線銃なんて持ってるの?
「折角蒼姫をハイグレ人間にしてあげようと思ったのに……」
「………」
あたしは耳を疑い、そして何も言えなかった。
ハイグレ人間? 確かに紅葉はそう言って……。
ばさっと音を立て、紅葉の羽織っていたコートが地面に落ちる。
そしてあたしが着ているのと同じ制服をも脱ぎ捨てる。
そのまま紅葉の白い肌が露わになる。
あたしと菖蒲先輩は言葉を失ってしまった。
紅葉が下に身に着けていたのは下着ではなく、真っ黒のハイレグ水着だった。
「えへへ、私もハイグレ人間にして頂いたんだ。ハイグレッ!ハイグレッ!」
紅葉はすぐさまガニ股になると、コマネチをしながらハイグレと叫び出す。
嬉しそうに変態行為をする紅葉にあたしは愕然としてしまう。
ぴっちりとしたハイレグは紅葉の体にフィットしていて、可愛らしく見えるが、やってる動作はどう見ても変態でしかない。
「紅葉……冗談だろ」
「ハイグレッ!ハイグレッ!気持ちいいよ〜……蒼姫も菖蒲先輩も仲間になりましょう!」
紅葉の掛け声でコンテナの影に隠れていたパンスト兵達が次々に姿を現す。
「罠だったのかよ……」
菖蒲先輩が愕然とする。
あたしだって何が起きたのか分からない。
紅葉がハイグレ人間? そんなの嘘に決まってる。
そうだよ、紅葉がハイグレ人間のはずがない。
「ハイグレッ!ハイグレッ!作戦は失敗しちゃったけど仕方ないよね。パンスト兵様!」
紅葉がコマネチをしながら言うと、そこら中のパンスト兵達は光線銃をあたし達へ向けてくる。
もう八方塞がり……どうしたら。
「……ふざけんな」
* Re: 四獣の戦士達 ( No.21 )
日時: 2013/02/16(土) 00:26:31 メンテ
名前: TC1


「菖蒲先輩?」
あたしが絶望しかけた時、菖蒲先輩の小さな声があたしの耳に届いた。
その表情はいつにない程の怒りに満ちていた。
「よくも……紅葉を」
菖蒲先輩の握りしめた拳が震える。
「四獣部隊、菖蒲、参ります」
白い旋風が巻き起こり、菖蒲先輩が変身後の姿へ変わる。
変身を完了させると鋭い目つきで敵の方を見定める。
「絶対に許さねぇ!!」
その言葉を最後に菖蒲先輩は攻撃を開始する。
だけどあたしが目を疑ったのは菖蒲先輩が動き出したと思った時には一人目のパンスト兵が爪の餌食になっていたことだった。
速すぎる……菖蒲先輩の気持ちが白虎の力とシンクロしてるってこと?
そして一体二体と倒したところで菖蒲先輩は足を止める。
「覚悟しろよ……てめぇら!!」
そして両爪を高く掲げた。
既に爪は激しい雷を纏っており、菖蒲先輩の咆哮と共に爪の雷は意志を持っているようにパンスト兵達を一体残らずに狙って放出された。
一瞬でこの辺一帯が電撃のドームに覆われたようだった。
四獣の力がこんなに恐ろしいほどの力を出せるなんて知らなかった。
電撃を浴び、ばたばたとパンスト兵達が地面へと倒れ伏していく。
残ったのは紅葉だけだった。当然、電撃が紅葉を狙うことはなかった。
「……パンスト兵様」
紅葉は悲しそうに倒れるパンスト兵達を見つめる。
「紅葉、目を覚ませ!」
敵を倒し切った菖蒲先輩が息を切らしながら紅葉へと呼びかける。
「……菖蒲先輩、これが本当の私なんです」
「ちげぇよ……本当の紅葉をあたしは知ってる。目を覚ましてくれ」
「目を覚まさないといけないのはハイグレにならない人達です! ハイグレッ!ハイグレッ!」
紅葉は菖蒲先輩の呼びかけにも構わずハイグレポーズを見せつけてくる。
表情も真剣で完全にハイグレに心を満たされているかのようだった。
「紅葉、あたし達……一緒にハイグレ魔王を倒そうって言ったでしょ」
ずっと言葉の出なかったあたしもやっとの思いで紅葉に喋りかける。
だけど紅葉の返事はあたしの期待を裏切る。
「それは全部間違いなんだよ、蒼姫。全ては魔王様のために! ハイグレッ!ハイグレッ!」
「も、紅葉……」
紅葉の言葉は心が籠っていた。
魔王に従順な配下に変わった紅葉……そんな紅葉の姿はあたしの心を抉った。
「畜生……紅葉をどうやったら元に戻せるんだよ」
菖蒲先輩は歯痒い思いを持ったまま悔しそうに顔を歪ませる。
「蒼姫、菖蒲先輩、ハイグレ人間になりましょう」
ハイグレを止め、あたし達に手を差し伸べる紅葉。
「紅葉、あたしは絶対にハイグレ人間にはならない!」
「あぁ、絶対に紅葉を助けるぜ!」
「………」
紅葉は残念そうな表情を浮かべる。
そして何かを決断したような顔つきに変わる。
「ハイグレ化して分かってもらうしかないんだね……。ハイグレ軍、紅葉、参ります!」
紅葉の周りを黒い旋風が包みこむ。
旋風の消えた後には紅葉の前に大きな槌が姿を現す。
あの槌は今まで紅葉が使ってた玄武の槌に違いない。
ハイレグ姿にされても四獣の力を扱えている? 確かに胸元にはペンダントがある。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレ人間紅葉、準備完了!」
紅葉が力強く槌を握り、あたし達に向けてくる。
「行きますよ!」
紅葉が槌を高く振り上げる。
紅葉は本当にあたし達を攻撃してくるつもり……?
「蒼姫! あたしの後ろに来な!」
「は、はい!」
あたしは慌てて菖蒲先輩の背に隠れる。
それと同時に紅葉の振り上げた槌が下ろされ、衝撃波が真っ直ぐにあたし達へ向かってくる。
「やられてたまるか!」
菖蒲先輩は両腕をクロスさせて前に出し、衝撃波を受け止める。
少し辛そうにするも菖蒲先輩は衝撃波を体でしっかり受け止めていた。
「あ、菖蒲先輩、大丈夫ですか! どうしてあたしの盾に……」
菖蒲先輩に何か考えがあると思って後ろに隠れたけど、まさか自分の体で受け止めるなんて思わなかった。
あたし自身、申し訳なさでいっぱいになる。
「気にすんな、これぐらいどうってことねぇ。それよりもあたしには紅葉と戦うなんてできねぇよ……」
菖蒲先輩はちらっと後ろにいるあたしの方を見る。
「四獣部隊としては許されないかもしれないけど……それでも逃げていいか?」
ハイグレ魔王軍と戦うあたし達が敵との戦いから逃亡することなど容認されないはず。
だけどあたしは菖蒲先輩と同じ気持ちだ。
紅葉と戦うことなんてできない……
「はい、菖蒲先輩」
「よし、あたしが合図したら全力で逃げるぞ」
あたしは菖蒲先輩の提案に頷く。
「蒼姫、今だ!」
合図と同時にあたしと菖蒲先輩は紅葉に背を向けて走り出す。
「逃がさないよ!」
紅葉が逃げ出すあたし達へ玄武の槌が放つ衝撃波で追撃してくる。
「くそっ、簡単には逃がしてくれねぇか!」
菖蒲先輩があたしに向かって飛び込み、そのまま菖蒲先輩はあたしを庇うように地面に伏す。
「うぐっ……」
「菖蒲先輩!」
紅葉の放った衝撃波が菖蒲先輩の背を飲み込む。
あたしは庇われていたためにダメージはない。
「大丈夫だ。立てるな?」
「は、はい」
「走るぞ! 全力だ!」
菖蒲先輩は立ち上がると、あたしの手を取る。
「逃げても無駄だよ!」
紅葉の次の攻撃が来る前にあたしは体に残った体力を振り絞り、ひたすらに走った。
「……はぁ」
「なんとか逃げ切ったな……」
あたしと菖蒲先輩はなんとか紅葉から逃げ切った。
紅葉の武器は玄武の槌。攻撃力が高い分、重い武器だったから移動速度も低下して逃げ切れた。
「だけどこれからどうするか……拠点の廃ビルには戻れねぇよな」
紅葉が敵側にされてしまったのにその点には触れない。
言わなくたって分かる……今はそのことを話していい状況じゃない。
「あの拠点が敵に割れた以上、別の場所に行かないといけねぇな……」
「菖蒲先輩、元々使っていた港の拠点はどうですか」
あたし達が元々憎悪体と戦っていた時に使っていた拠点、あそこなら多分大丈夫。
「いい考えだ。よし、急ごうぜ」
菖蒲先輩はあたしの考えに賛同し、一緒に港の倉庫へ向かって言った。



走り続けたあたし達はやっとの思いで港の拠点まで辿り着いた。
道中にも敵はいたが、やはりパンスト兵程度では相手にならなかった。
「とりあえず中に入りましょう」
あたしと菖蒲先輩は周囲を警戒しながら拠点内へと入っていく。
「さて……と、これからどうするか」
中へ入って菖蒲先輩がどこか違う方向を向いたまま思案する。
「博士がどこにいるか分かればな……」
そう小さく呟いた。
考えてみれば博士は紅葉といたはずじゃなかったっけ。
だけどこの状況で紅葉の名前を出すのは良いとは思えない。
正直、今は紅葉のあんな姿を思い出したくない。
「通信機も通じねぇし……」
菖蒲先輩は困り顔で通信機を見つめる。
さっきから博士にかけようとしてもうんともすんとも鳴らない。
まさかとは思うけど、博士もハイグレ人間にされたなんてことは……。
「何にしてもこれからのことを考えていかねぇとな」
腕を組んで何かを考えだす菖蒲先輩。
紅葉が敵に操られて博士も無事か分からない。奏に関してはどこにいるか不明。
かなり危機的状況に置かれていることが分かる。
「博士がどこにいるか分からないのに街中を駆けまわるのも危険ですよね……」
「……なぁ、蒼姫。あたしがこの辺を探してくるから待機していてくれないか?」
菖蒲先輩は何かを思いついたらしくあたしに提案してくる。
だけど菖蒲先輩がさっきから連戦をしていて消耗しているのは知っている。
「でも菖蒲先輩は戦ってばかりで疲れてますし……」
「あたしはタフだからさ。任せとけって」
歯を見せて笑いかける菖蒲先輩だけど、今回ばかりは心配だ。
なんといったって紅葉が敵になってしまった以上、菖蒲先輩だって戦い辛いはず。
「あ、あたし、菖蒲先輩にばかり戦わせるのは嫌です」
「気にするなっての」
「嫌です!」
あたしが意見を曲げないことに菖蒲先輩は一瞬目を丸くする。
だって仕方ない……菖蒲先輩までいなくなったらあたしはどうしていいか分からない。
「蒼姫……」
「あ、あたし……」
「……分かった、一緒に行こう。蒼姫の気持ちも考えるべきだったな」
「はい!」


* Re: 四獣の戦士達 ( No.22 )
日時: 2013/02/16(土) 00:27:00 メンテ
名前: TC1



あれから私は魔王様の城へと向かった。
「……魔王様、四獣部隊の一人だった子をお連れしました」
「よくやったわ、通しなさい」
「はっ、紅葉、入ってらっしゃい」
玉座の間から入ってくるように指示が聞こえ、私は中へと進む。
玉座には仮面と黒マントを身に着けたハイグレ魔王様が立っている。
「あなた、以前に一度会ったわね。まぁいいわ、自己紹介なさい」
私は大慌てでガニ股になり、魔王様に向かってポーズをとる。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレ人間紅葉です。先程に転向を完了させ、魔王様の元へお呼びいただきました」
「ちゃんと挨拶できたわね。それで……あたしに一生の忠誠を誓えるの?」
魔王様の一つの問い、私にとっては聞くまでもないことだった。
「ハイグレッ!ハイグレッ!勿論です! 私は一人のハイグレ人間、魔王様の僕として働きたいです!」
「……いいわ、期待してるわよ」
私が力強くハイグレをすると魔王様は機嫌よさそうに言い放った。
嬉しい……私もこれで正式に魔王様の配下に加わることができたんだ。
「それでは魔王様、あの技術者はいかが致しますか?」
「当然ハイグレにしてしまいなさい」
「はっ、準備ができ次第早急に……それで魔王様、残りの三人はどうするおつもりで?」
ブランジャーシスター様が魔王様に聞く。
「当然、三人共ハイグレ人間にしてあたしの下僕にするわ」
「魔王様、その役目、私にやらせてくださいますか?」
「ブランジャーシスター、あんたが四獣部隊の一人をハイグレ人間にしたんですものね。いいわよ、任せるわ」
「はっ、お任せを」
ブランジャーシスター様が私の方を見る。
「紅葉、私の指示通りにお願いね」
「ハイグレッ!ハイグレッ!了解です!」





「畜生、どこもかしこもハイグレ人間かパンスト兵ばっかで殆ど身動きが取れなかったぜ……」
あたし達は港の拠点内に戻っていた。
博士を探して街中を動き回ったはいいけど、手掛かりもなしに見つけられるはずがなかった。
既に日も傾き、余裕がなくなってきている。
完全に手詰まり状態……。
そして結局は拠点への退くという答えに行き着いた。
先行きの見えない今のあたし達には体力の消耗を考えると一度撤退するほかなかった。
「……博士までやられたんじゃ」
あたしはつい失言を言ってしまった。
慌てて手で口を塞ぐ。
「蒼姫、別にいいぞ。この状況だったら誰だってそう思うさ」
菖蒲先輩は壁にもたれかかり、明後日の方向を向きながら言う。
「……すいません」
「謝るなって、今はこれからのことを考えねぇと。本部に戻るのが得策か。博士が戻ってる可能性があるしな」
確かに博士がおらず、指揮をする人がいないのは良い状況ではない。
「よし、今すぐって言いたいけど、流石に蒼姫も疲れてるよな」
「いえ、あたしは大丈夫です」
正直体力は結構消耗している。
だけど今は我儘の言える状況じゃない。
「疲れが顔に出てるぞ。移動は明日の早朝だな。明日の朝、本部に戻る。奏に会えれば何か分かるかもしれないしな」
菖蒲先輩はあたしに笑いかける。
無理をしているのは分かってる。だけどあたしには何も言えない。
中途半端なことを言っても菖蒲先輩を傷つけるだけだからだ。
「さてと、この拠点内になら保存食があったはずだ。飯食ってさっさと寝ようぜ」
「はい!」
あたしと菖蒲先輩は軽食を取った後、明日が早いためにすぐに眠ることに。
あたしは拠点内の壁に寄りかかりながら座り、タオルケットをかけて目を瞑る。
早く寝ないと……明日は早朝から行動を開始するんだから。
だけど眠ろうにしても紅葉のことばかりが頭に浮かんでくる。
もしかしたら紅葉を助ける方法があったんじゃないか……そう考えて後悔ばかりがあたしを責めてくる。
「あれ……?」
あまりに眠ることができず、目を開けたあたしはまた菖蒲先輩がいないことに気付く。
さっきまでは向かいの壁にもたれかかりながら座っていたのに、そこには誰もいない。
そういえばさっき、扉の音が聞こえたような気もする。
もしかして菖蒲先輩は外に……?
あたしは体を起こすと、菖蒲先輩がいるであろう外へ出た。
ただでさえ人気の少ない港。それも夜となれば誰もいないだろう。
しかし拠点を出たあたしの耳に聞こえてきたのは誰かの掛け声。
「菖蒲先輩の声?」
あたしは声の聞こえてきた方へと足を運ぶ。
「はあぁぁあああ!!」
声のしていた方、そこには拠点とは違う倉庫の中だった。
間違いなく倉庫内に菖蒲先輩がいる。でも、何をしているんだろう。
あたしはそーっと菖蒲先輩がいると思われる倉庫を覗く。
「てやあぁぁあああ!!」
中では菖蒲先輩が変身した姿でドラム缶などの倉庫内にあるもので訓練をしていた。
もしかして……昨日の夜、廃ビルで目が覚めた時に菖蒲先輩がいなかったのはずっと特訓していたからだったのかもしれない。
そんな菖蒲先輩の様子を見て、あたしは倉庫の扉を開ける。
「菖蒲先輩……」
あたしが声をかけると菖蒲先輩が驚いた様子であたしの方を振り返る。
「蒼姫!? 寝てなかったのか!?」
「あ、その……菖蒲先輩もですよね」
「ま、まぁ、確かにな……」
菖蒲先輩も急すぎて苦笑いを見せる。
「菖蒲先輩は何で今に訓練を?」
「……あいつらをぶっ倒すためだ。今度こそ決着つけてやる」
怒りの籠った言葉だった。
「菖蒲先輩、あたし……」
これ以上の言葉が出ない。今のあたしは戦うのが怖い。
どうしていいかわからない。
そんなあたしを見てか、菖蒲先輩は物悲しそうな顔をして近付いてくる。
そして、そっとあたしを抱きしめてくれた。
「菖蒲先輩……?」
「紅葉のこと……辛いだろ」
菖蒲先輩はあたしを抱きしめたまま耳元で囁いた。
「こんな状況で正直な気持ちなんて出せないよな……だけど、今ぐらい無理すんじゃねぇよ」
本当に小さな声であたしの耳に告げる菖蒲先輩。
その声は小さくても感情が込められていて、本当にあたしを励ましてくれている。
あれ……何でだろう。心が痛い。
分からないけど、あたしの中の大切なものが抜けていったような……。
「あ、菖蒲先輩……あたし………」
「蒼姫、今は耐えなくていいぞ………」
菖蒲先輩の一言であたしはもう抑えることができなくなった。
「う……うわあぁぁあああん!!」
涙が止まらない……あたしのせいで紅葉が。
強くなったはずなのに、守れなかった。あたしの親友を守れなかった。
あたしは涙を溢れさせながら声をあげて泣いた。



「初めまして〜、私は戸高 紅葉!」
「え、えっと……」
入学初日、初々しさの抜けない教室であたしは戸惑っていた。
だけどそんな空気の中、あたしに話しかけてくれた少女。それが紅葉だった。
「あ、あたし蒼姫。龍巳 蒼姫」
「へー、そうきって読むんだ。あおひめって凄い名前だなって思っちゃった」
少しぎこちなく名乗るあたしに対しても無邪気に笑う紅葉。
なんだか登校初日の緊張が一瞬で抜けていった気がした。
「これからよろしくね、蒼姫!」
紅葉はニコッと微笑んだ。
あたしはどれだけ紅葉の笑顔に救われただろう。



「う……うぅぅ………」
あたしはもう声を上げることもできず、菖蒲先輩にしがみついてすすり泣いていた。
菖蒲先輩が片手をあたしの頭の上に優しく置いた。
「大丈夫だ……あたしがついてる。絶対に守ってやる」
「菖蒲先輩……」
「今ぐらい安心して休みな」
温かい……菖蒲先輩があたしの前にいる。
あたしのことを思ってくれる先輩が。
なんだか急に眠くなってきた……。
「おやすみ、蒼姫……」


* Re: 四獣の戦士達 ( No.23 )
日時: 2013/02/16(土) 00:27:27 メンテ
名前: TC1



あの後のこと、あたしは眠った蒼姫を連れて拠点へと戻った。
既に蒼姫は奥で深い眠りについている。
相当疲れてたんだろう。安心しきった顔だったな。
だけどあたしの心は晴れない。
紅葉のことがあたしを悪戯に掻き乱している。
何であたしは紅葉を守ることができなかったんだよ。
「……くそっ」
つい感情的になりすぎて壁に思い切り拳をぶつけてしまう。
蒼姫を不安にさせないために平静を装っていたけど、本当はハイグレ魔王達を今すぐにでも八つ裂きにしないと気が済まねぇ。
だけど今のあたしが突っ込んでいったところで幹部二体にハイグレ魔王の計三体もの強敵がいる。確実に返り討ちだろう。
一人になって考えれば考えるほど、あたしは冷静さを失いそうになる。
あたしの心の支え……大切な二人の後輩。
あたしは蒼姫と紅葉のためなら何だってできるって思ってた。
なのに……あたしは。
「………」
何でだろうな、こういう時に限って嫌なことを思い出しちまう。



「菖蒲、ごめんね……」
「お母さん……?」
「………」
「待って……待ってよ、お母さん!」
小さな時の微かな記憶。小学生の時だったか。
母さんはいつでも優しくて、あたしは大好きだった。
だけど今のあたしに残っている母さんの記憶はあの日のことだけ。
仕事が上手くいかず、性格の変わってしまった親父の暴力に限界を感じた母さんは家を出ていった。
そう、あたしを置いて……。



それからのこと、母さんに置いて行かれてかなりの日が過ぎた。
母さんが家を出ていってから何年経っただろうか。
その時はもうあたしは16歳になっていた。
「……ただいま」
あたしの帰ってくる家……表札には既にあたしの名前と親父の名前しか書かれていない。
玄関には寂しいほどに靴が殆どなく、並べられずに転がっている。
あたしはそのまま家の中にあがり、リビングへ向かう。
リビングでは髪もぼさぼさな中年のおっさんがソファへと寝転がりながら酒を飲んでいる。
あたしの親父だ……。
「親父……これ」
あたしは給料の入った袋を親父に渡す。
「金か。そこに置いとけ」
あたしは言われるがままに封筒をテーブルに置く。
親父はだるそうに体を起こすと、テーブルに置いた封筒を手に取る。
そして封を乱雑に切ると、中から札を取り出す。
「バイトじゃこんなもんか。どんなことをやってるかは知らねぇけど」
「………」
あたしが下を向いたまま黙っていると舌打ちが聞こえてきた。
「ほらよ、お前の生活費」
親父が札をあたしへと投げつける。
札はそのまま宙を舞いながら床へと落ちる。
あたしは黙って屈み、床に散らばった札を拾い集める。
「あのさ、親父……」
札を拾い集めたあたしは親父の顔が見えない屈んだ体勢で声をかける。
「あ、あんまり酒飲むなよ……体に良くないし、それにお金も………」
親父に意見することが結果的にいいことに繋がらないのは分かっている。
だけど金にも限界がある。
酒に使えるほどに金の余裕はないはずなんだ……。
「……おい」
親父は立ち上がり、あたしに近付いてくる。
あたしは怖くなり、その場を離れようと立ち上がり、背を向けようとする。
「待てよ。お前、俺の金をどうしようと勝手だろ。一々うるせぇんだよ」
親父は部屋から出ようとするあたしを振り向かせ、胸倉を掴みかかる。
「黙ってりゃいいんだよ!」
強い痛みがあたしの頬へ叩きつけられる。
あたしの頬は親父の拳で思い切り殴られたのだ。
あたしはそのまま床に倒れこんでしまう。
何であたしが殴られなきゃいけないの……。
親父はあたしをなんだと思ってるの……。
悔しい思いをこらえ、歯を食いしばる。
「……ごめん」
それだけ言ってあたしは逃げるように部屋を出ていった。



「畜生……」
嫌な記憶でしかないものを何で思い出すんだろうか。
「白虎」
「奏!?」
拠点の扉が開かれたかと思うと入り口には奏が立っていた。
あー、止め止め、奏の前で暗い顔とか見せられねぇ。
それよりも何で奏がここにいるんだ?
「奏、何でここが分かったんだよ」
「拠点としていた廃ビルが落とされていたからな。お前達が向かえる場所はここしかないと踏んだ」
「……そうか」
「湯本が行方不明のようだな」
「……奏も博士がどこに行ったか知らないのか」
奏は小さく頷く。
「奏なら何か知ってると思ったんだけどな」
奏も博士の行方を知らないのか……。
本部に戻っていてくれればいいんだけど。
「悪いな」
その言葉で沈黙が訪れる。
無音の倉庫内、あたしと奏はただ時間が過ぎるのを待つだけだ。
「なぁ、博士から聞いたんだけどよ、奏はもう戦線には立てないって。それは本当なのか」
沈黙を破り、あたしが質問をする。
「……そんなはずある訳ないだろう」
目を閉じ、奏は静かに壁に寄りかかるとハッキリ言い返す。
「だけどよ……」
「幹部一人も倒せないお前に言われる筋合いはない」
「んだと、こっちは心配してるのに」
食い下がらないあたしに奏もイラついたのか、目を開いて睨みつけてくる。
「余計な世話だ」
「そうかよ。じゃあ勝手にしろ」
「そうさせてもらう」
奏は何か諦めたかのように拠点出口から出ていった。
なんだかいつもの奏とは違っていた。いつもよりも感情的な感じだった。
そういえばあたし達がここにいると知っていて何で奏も来たんだ?
いつだって一人で解決するあいつがあたし達に会いに来たってことは……。
「くそっ!」
あたしは慌てて拠点から出る。
だけど既に奏の姿はなかった。
「……あいつ、何か抱えてるのか」
何か引っかかることはあった。
だけどあたしが気にしたところでどうにもならねぇか。
蒼姫と紅葉が部隊に加入する前からあいつは一人でいることを好んでたからな。
そうだ、あたしはあたしでやらないといけないことがあるんだよな。
紅葉を助けるためにも、蒼姫を守るためにも、あたしがやらないと!


* Re: 四獣の戦士達 ( No.24 )
日時: 2013/03/16(土) 00:17:37 メンテ
名前: TC1



魔王城
私が目を覚ましたのは監禁室のような場所だった。
既に体は鎖で拘束されていて身動きが取れない。
「気分はどうですか、博士?」
「戸高……」
部屋の中に黒いハイレグ姿の少女が入ってきた。
ハイグレ人間となった戸高だった。
「喜んでください、博士。魔王様が直々にお話ししてくださるとのことです」
「………」
もはや戸高は完全な敵の服従者。何を言っても無駄だ。
私はただ戸高に連れられ、監禁室を出た。

「ハイグレッ!ハイグレッ!魔王様、こちらが四獣部隊を統率している湯本美智子という人間です」
ハイグレ魔王の居る玉座、私はその部屋へと連れられてきた。
異質なオブジェなどの置かれた部屋内に立つのは仮面とマントをつけたハイグレ魔王……。
「よくやったわ。それであんたが……ねぇ」
ハイグレ魔王が物珍しそうに私を見つめてくる。
私は表情一つ変えずにハイグレ魔王の方へただ視線を向けるだけだ。
「どうかしら、あたしの元で働くつもりはない?」
「それなら死んだ方がいいわ」
奴の言葉を途中で遮るように言い返すと戸高が横目で私の方を見てきた。
「……それがどれくらいの気持ちなのか確かめてあげるわ。洗脳してやりなさい。あなたなりに自由にね」
「ハイグレッ!ハイグレッ!お任せを!」
ハイグレ魔王は鼻で笑いながら指示を出す。
こいつは戸高に私を洗脳させることを楽しもうとしているのか。
戸高はさも当然のように私へ光線銃を向けてくる。
「これで博士もハイグレ人間になれますね」
「………」
入り口には見張りのパンスト兵なども配備されていて脱出なんて考えられる状態ではない。
私はこのままハイグレ人間へと変えられるだろう……。
奴等の洗脳は強力なものだ。おそらく私も戸高のようにされてしまう。
だが諦めることは許されない。私には彼女たちを守る義務があるのだから……。
「ハイグレ人間になってください!」
「きゃあぁぁあああ!」
容赦なく浴びせられた洗脳光線……私の体は光に包みこまれている。
両手足を広げさせられ、私の着る白衣は姿を消していく。
そして私の体が自由になったと思った時には体の違和感を覚えた。
例外なく私もハイレグ姿へと変わっていたのだ。
紫色のハイレグが逃さないように私の体を締め付けていた。
「………」
私は自分の姿を見て羞恥よりも惨めさに言葉を失った。
私自身も年齢が年齢だ。こんな恰好にされたのは誰が見ても無様としか思わないだろう。
水着なんてものはもう何年も着ていなかった。それ故にここまで露出の高い自分の姿に嫌気までも感じる。
「うわぁ……博士、似合ってますよ!」
戸高が目を輝かせながら私の哀れな姿を見てくる。
「くっ……」
「博士、そんなに怖い顔しないください。私達はもう同じハイグレ人間同士……一緒に魔王様への忠誠のハイグレをしましょう!」
戸高がハイグレ魔王の方へ向き返り、足を開いてガニ股になる。
そのまま躊躇いもなくハイレグの切れ込みに手を添えると。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレ魔王様万歳!」
嬉しそうにハイグレポーズを取り出す。
完全なハイグレ人間……直に私もこうなってしまうのか………。
「ハイグレッ!ハイグレッ!さぁ、博士も一緒に」
「はうぅ……」
どれだけ拒もうとも私の足が自然に開いていく……。
体の自由が奪われたかのようだ……どうすれば。
私の考えも無駄かのように足は開かれ、膝も曲げてしまう。
完全に戸高と同じ体勢になってしまった。
「うぅ……くっ」
体がいうことをきかない。
私の力では到底逆らいきれない……。
逆らえない私はハイグレをする体勢になるべく腰を落としてしまい、ハイレグが食い込んでくる。
「あ……はぁ………」
無様な声をあげてしまった……。
「ハイグレッ!ハイグレッ!もうすぐ同じハイグレ人間ですよ」
戸高は私が変わっていく様を嬉しそうにしながら動作を続ける。
死んだ方がいい……このままだったら他の三人を私が苦しめることになる。
だができない。もう体は殆ど自由が奪われてしまっている。
加えてどれだけの抵抗を見せたとしても私は少しずつハイグレ人間へと向かっている。
放っておけば私もハイグレが絶対の服従者に変えられる。
まだ自分を保っていられる間に何とかしないと……。
「ハイグレッ!ハイグレッ!さぁ、博士も一緒にしましょう!」
「くっ……」
何とかしようにも頭までおかしくなりそうだ。
駄目だ、しっかりしろ。
私はこんなところでただの奴隷の一人になってる訳にはいかない。
そうは思っても味わったことのない感覚、ハイレグ水着が私の体をただキツク締め付け、段々と冷静さを欠いていく。
冷静さを失ってきた私に一つ分かるのは私の手は足の付け根に添えられ、あとは最後の動作をすれば私もハイグレ人間と同類と化す。
それだけは避けなくてはならない。
あの子達に顔向けできない……私が指揮官として導かないといけない。それなのに。
それなのに駄目だ……。
「すまない……ハイグレッ!!」
私はハイグレ魔王に向かってハイグレを行ってしまった。
「わぁ、博士のハイグレ、色っぽいですね」
戸高の声が聞こえる。
私はあの子達を導く統率者として失格だ。
侵略者の奴隷であるハイグレを自ら行ってしまった。
私はもう奴等に従うことしかできないのか。
こんな無様な姿に龍巳達は失望するだろうか。
様々な考えが渦巻く。だけど。
だけどそれ以上に……気持ちが良い………。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私は大きく腕を動かし、とにかくハイグレコールを強く叫ぶ。
体を強く締め付け、動作をする度に得も言われぬ快感に溢れる。
羞恥行為だとしか思っていなかったハイグレがこれほどまでに気持ちの良いものだとは誰が思ったことか。
一心不乱にハイグレを続ける。
「あらあら、そんなに激しく胸を揺らしちゃって、みっともないわねぇ」
「ハイグレッ!ハイグレッ!申し訳ありません、魔王様」
魔王様の言葉に返事をする。
私はハイグレという行為をとにかく続けたい思いで溢れていた。
「いいわよ。もっと続けなさい」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私は仰せの通りにハイグレをとにかく続ける。
自分の体なんて関係のないこと。
私はただ自分のありのままの姿で。
魔王様を倒すことが正義だと思っていた。
私は今まで自分の行いこそが正義だなどとおこがましい考えをしていた。
人間にこれほどまでの快楽を与え、まして私達を導いてくださる魔王様が悪だなど、ふざけた話だ。
「ハイグレッ!ハイグレッ!湯本美智子、ハイグレ人間への転向を完了しました。私は魔王様の指揮下に加わりたく、この場で魔王様への忠誠を誓います!」
「いいわ、認めてあげる。本当に従うならね」
魔王様に忠誠を誓い、忠実な配下に加わること、それは龍巳達と対峙すること。
いや、違う。龍巳達を正しい道へ導くことでもあるのだ。
ハイグレがいかに正しいものか教える義務が私にはあるはずだ。
「ハイグレッ!ハイグレッ!魔王様の仰せのままに」
必ずあの子達もハイグレ人間に……。


* Re: 四獣の戦士達 ( No.25 )
日時: 2013/03/16(土) 00:19:10 メンテ
名前: TC1



翌日のことだった。
蒼姫を起こしにあたしは拠点内の奥へ進む。
「蒼姫〜、起きろ〜」
あたしは蒼姫の寝ている場所へと足を運んだ。
「………」
奥では蒼姫がスースーと可愛い寝息を立てながら眠っていた。
髪をポニーテールにしているリボンも解いており、蒼姫のサラッとした綺麗で長い黒髪が少し揺れる。
可愛い……どうするか、なんか起こすのも悪い気がする。
あたしはそっと頭を撫でた。
「ん……あ、菖蒲先輩……?」
蒼姫が目を開けた。その瞬間、あたしと目が合ってしまった。
「いや、悪い。寝顔が可愛くて、つい……」
あたしは苦笑いをして立ち上がる。
「さぁ、本部に向かおうぜ。もしかしたら博士だって戻っているかもしれない」
「そ、そうですよね。きっと博士も戻ってますよね」
「よし、出発だ!」





「蒼姫、シートベルト締めたか?」
「はい」
「よし、行くぜ」
あたしはアクセルを踏み、車を走りださせる。
あたしの通う教習所から車を一台引っ張ってきたけど、そのことについては何とかなるだろう。
博士から車の免許は取っておけって言われて全額負担してくれてまで取った免許だ。ここで使わないとな。
まぁ、まだ仮免だけど、この際迷ってる時間はない。
この辺りは奪還地域のためにパンスト兵もいないから大丈夫だろう。
それよりも紅葉と遭遇する方があたしにとっては苦しい。
蒼姫も紅葉と戦えるはずがない。
何より早く本部に帰らねぇと……奏だって戦える状態じゃない。
考えてみれば何であたしは昨日、奏をあのまま追い払ったんだよ。
あいつが負傷しているのを知っていて一人で怒りだして……あたしは何で。
もしかしたらあいつはあたしを頼ってくれたのかもしれない……それなのに。
「菖蒲先輩」
助手席に座る蒼姫があたしに呼びかける。
「ん、どうした」
流石によそ見はできず、真っ直ぐ向いたまま蒼姫に聞き返す。
「……ごめんなさい、何でもないです」
「そうか……」
その後はただひたすらに本部を目指した。

「……確かこの辺りだったな」
あたし達は本部の近くである海辺で車を止める。
大体この辺りから入れたはずだ。
あたしと蒼姫は車から降りて辺りを確認する。
「おっ、ここだ。蒼姫、急ぐぞ」
自然のものとも思える巨大な岩。
これは人工のもので指紋認証用の機械だ。
あたしが手を岩に添えると地下への階段が岩の下から現れる。
あたし達はそのまま本部内へと急いだ。
階段を駆け下りていくと沢山の装置に囲まれた大きな部屋へと辿り着く。
あたし達の本部……研究所だった。
「霧野と龍巳?」
一人の研究員があたし達に気付く。
「みんな、霧野と龍巳が帰ってきたわよ!」
あっという間にあたし達は研究員達に囲まれる。
「連絡が取れなくなった時はもしかしてって思ったんだけど無事で良かった……」
みんな思い思いに安堵した旨を伝えてくる。
だけどそこに博士の姿はない。
「あの、博士はいないんですか」
思い切って蒼姫が尋ねた。
その言葉で研究員達はどよめく。
「二人と一緒じゃないの?」
「……いえ」
研究所内が一瞬で静まり返る。
博士が本部にいないということはもう……。
「さ、雑賀や戸高は?」
「………」
研究員の新たな問いは追い打ちをかけるようだった。
蒼姫は紅葉のことを気にかけている。
そのまま蒼姫は俯いてしまった。
「あ、詳しい話ならあたしがするからさ。蒼姫は休ませてやってくれないかな」
あたしが明るく振舞いながら聞くと研究員達も察してくれたようで頷く。
「ほら蒼姫、部屋で休んで来いよ」
「でも……」
「いいからさ」
あたしが軽く背中を押すと、蒼姫も一人の研究員に連れられて行った。
「さてと、それじゃああたしから詳しいことを話すよ」
あたしは仕方なく今までの経緯を話そうとする。
「霧野、それよりも大事なことがあるの」
「大事なこと?」
現状の説明よりも大事なことなんてあるのか?
「ここでは話せないの。ちょっとついてきてくれない?」
「あ、あぁ、それはいいけど……」
あたしは研究員達に連れられて移動をする。
だけど何故かあたしを誘導する研究員達は一人でなく何人もいた。
何でこんな大勢で移動する必要があるんだ?
そう思ったあたしは広くて何もない部屋へ連れてこられた。
「あれ……ここって」
この部屋は間違いなくあたし達の力を試す訓練室だった。
あたしが研究員に何でここに連れてきたか聞こうとした時だった。
「ふっふっふ……ブランジャーシスターの言う通りだ」
「!!」
あたしは自分の目を疑った。
部屋の奥から一人の子供が出てきた。
その姿はあたしが何度も目にした子供のもの。
「……お前」
「驚いたか、菖蒲?」
Tバックプリンセス……敵の幹部があたしの前にいた。
何でだ……ここはあたし達の本部だろ。
「私の奴隷達にこの部屋へ案内させたのだ。ここなら戦闘用の部屋だから頑丈だし、決着をつけるのにいいと思ったのだ」
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
突然にあたしを案内してきた研究員達がハイグレコールを始める。
あたしがTバックプリンセスに気を取られている間に全員ハイレグ姿になっていた。
「さて、菖蒲。今度こそお前を私の奴隷にしてやろう」
「待てよ」
「ん? 何か聞きたいのか?」
「これは罠だったってことか?」
「それ以外に何があるのだ。お前達がここに来るとブランジャーシスターが教えてくれてな。お前達が昨夜に休んでいた間にここを落としておいたのだ」
……あたし達の行動は後手ばかりで空回りかよ。
「まさか蒼姫は!!」
これが罠だということは蒼姫が危ないんじゃないか……。
「察しがいいなぁ。今頃ハイグレ化しているかもしれないぞ〜」
「くそっ!!」
蒼姫が危ないのにこんな奴に構っていられるか。
あたしはTバックプリンセスに背を向けて部屋を出ようとする。
だけどその直後に背後から飛んできた小刀があたしの頬を掠った。
「っ!!」
背後には今までとは明らかに目が違うTバックプリンセスの姿があった。
「菖蒲、私もこれ以上ハイグレ化を失敗させると魔王様から罰を受けるのだ。他人のことを心配している余裕はないと思った方がいいぞ」
いくら見た目は子供でも幹部は幹部か……。
逃げることは間違いなくできない。
早くこいつを倒さないと蒼姫が……。
「四獣部隊、菖蒲、参ります」
あたしは静かに言うと白い旋風によって変身を済ます。
戦う気を見せたあたしにTバックプリンセスは嬉しそうに笑う。
「さっさとてめぇを倒して蒼姫の所に行く」
「その必要はない。菖蒲はここでハイグレ人間になるんだからな!」
「やられてたまるかよ!」
「まずは奴隷達、菖蒲の相手をしてやれ」
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!了解です、Tバックプリンセス様!」」」
Tバックプリンセスの言いなりになった研究員達がハイレグ姿であたしへ襲い掛かってくる。
仕方なくあたしは一旦ハイグレ人間達から距離をとる。
「菖蒲、早い所諦めた方がいいぞ。どうせ人間には攻撃できないのだろう」
「………」
あたしはTバックプリンセスの言葉に構わず右爪を床へ叩きつけた。
爪が床へ触れたとき、爪から周囲へ放電を開始した。
放たれた電撃でハイグレ人間達は悲鳴を上げて倒れた。
「ッ!……お前、ハイグレ人間にまで攻撃を!?」
Tバックプリンセスが驚いたように一歩退いてあたしを見てくる。
「あたしも本気なんだよ」
目の前に倒れるハイグレ人間達は大丈夫だ。
力を限界まで抑えた。ここまで力を制御するには負担がかなり大きいから易々と使えるものじゃないが。
「小細工は無駄か……だったら私がやるしかないな!」
Tバックプリンセスがあたしへと勢いよく斬りかかってくる。
「悪いが急いでんだ!」
あたしの爪とTバックプリンセスの小刀が激しくぶつかり合う。
大丈夫だ、あいつよりはあたしの方が優勢だ。
実力で競り勝っている今なら速攻で決着をつけられる!
「これでどうだ!」
「!!」
今しかないと、あたしの爪撃がTバックプリンセスの腹部を切り裂いた。
そのまま後方へ飛ばされ、仰向けに倒れる。
勝ったのか……?
「私は……」
Tバックプリンセスが立ち上がってくる。
あの一撃でも倒れないか……見かけによらずタフってところか。
「私はもう負けられないんだ!」
「!?」
あたしの体が一瞬硬直する。
Tバックプリンセスの様子がおかしい。完全に目の色が変わっていた。
* Re: 四獣の戦士達 ( No.26 )
日時: 2013/03/16(土) 00:20:41 メンテ
名前: TC1


「これ以上の負けは許されない……本当の本当に本気で行くぞ!」
あいつもこの戦いに賭けてきているってことか。
完全に気迫の変わった相手に戸惑い、あたしが防御に出ようとした時だった。
Tバックプリンセスが壁に、床に、天井に足をつけては蹴り、縦横無尽に飛び渡っていく。
あまりに素早く変則的な動きに迷いを見せてしまった。
「足ががら空きだぞ!」
「うわっ!!」
Tバックプリンセスが壁を蹴り、勢いよくあたしの足元へ斬りかかってくる。
なんとかジャンプをしてかわしたが、体勢を崩してしまった。
「追撃だぞ!」
「あぐっ!」
勿論相手があたしの体勢を崩したところを見逃す訳なかった。
Tバックプリンセスは攻撃を外した体勢をすぐに立て直し、小刀で空中にいるあたしの足を切り裂いた。
「くそっ……」
足の痛みを抑えてなんとか着地する。
「菖蒲、本当はそんなものなのか?」
「………」
まだまだだ……早くこいつを倒さないと蒼姫が危ない。
なんとしてでもこいつを……。
「焦りすぎじゃないのか、菖蒲」
Tバックプリンセスは小刀をそれぞれ逆手に持ち替えたかと思うと、にやりと笑う。
あたしの攻撃を誘ってるのか?
「どうした? かかってこないのか?」
どうやら自分から動いては来ないようだ。
時間がない。あたしからいくしかないな!
「あぁ、いってやるよ!」
ここは天井が低い……あまり高く跳び上がることはできない。
あたしは軽く跳び、角度をつけて降下しながら斬りかかる。
「ぬるいぞ、菖蒲!」
Tバックプリンセスはその身軽さからバク転で軽々とかわす。
あたしの爪は空振り、床を切り裂いた。
あたしもすぐに立ち上がり、体勢を立て直す。
「ほらほら、このままだと蒼姫って奴がハイグレ人間にされるぞ」
「くっそ!!」
Tバックプリンセスにただただ向かっていき、敵へ爪を振りかざす。
あたしは焦っていた……焦りで完全に攻撃一辺倒。
相手の一手先を読んだ攻撃ではなく、ただ目の前にいる敵への直接的な攻撃だけを考えた戦い方。
Tバックプリンセスはあたしの攻撃をひょいひょいと後退しながらかわしていく。
その表情は余裕でいかにも遊んでいるかのようだった。
それがあたしを余計に焦らせた。
「菖蒲、今までに比べて動きが雑だな。そんなにあの蒼姫って奴が気になるのか〜?」
「黙りやがれ!」
何度も目の前の敵に斬りかかる。
こいつさえ倒せば蒼姫を助けに行ける。
今度こそ……今度こそあたしの大切な人を守ってみせる!
「ふむ、冷静さを失った人間はこの程度なのだな」
Tバックプリンセスは目を閉じて軽く息をつく。
「余裕ぶりやがって!」
あたしの爪先がTバックプリンセスへ届こうとした時、その腕は止まってしまった。
それもそのはず。Tバックプリンセスがあたしの腕を掴んでいたのだ。
「何!?」
「安心していいぞ、殺しはしないからな!」
突然に腕を掴まれ、あたしはすぐさまもう片方の腕の爪で反撃するに至れなかった。
そして生んでしまった一瞬の隙、Tバックプリンセスはその隙を捕らえていた。
「づっ!!」
Tバックプリンセスはもう片方の握った小刀であたしの胸部を切り裂いていた。
あたしはTバックプリンセスの手を振り払い、痛みを堪えながら後退する。
大丈夫、掠っただけだ……大したことはない。
「そろそろ倒れてもらうぞ、菖蒲」
「!!」
距離をとったはずなのにTバックプリンセスがあたしの目の前に現れた。
駄目だ……次の攻撃をかわせない。
「食らえ!」
Tバックプリンセスの小刀の斬り上げにあたしの体は宙へと投げ出され、床へと叩きつけられる。
くそ……こんなことって………。
Tバックプリンセスが見せた本気……あいつだって幹部の一人。甘く見れる相手じゃない。
「今度こそ終わりだな、菖蒲」
少しずつ近付いてくるTバックプリンセス。
あたしは今危機的な状況だ……。
こいつとの初戦もそうだった。
あたしが負けそうになって、でも蒼姫や紅葉のことを思ったら自然に力が湧いてきた。
自分の体に鞭を打つように立ち上がってあいつに向かって行った……。
だけどもう体中が重くなっちまった。
想像以上にあたしの体にもガタがきてたみたいだ。
どうしてあたしはこうなんだろうな……体裁だけ良くて中身がない。
あたしの偽善心みたいなものか。


* Re: 四獣の戦士達 ( No.27 )
日時: 2013/03/16(土) 00:21:23 メンテ
名前: TC1



「あたしはもう親父の世話にはならない。あんな奴、あたしの親じゃない」
それが博士に言った最初の言葉だった。
その時のあたしは誰も信じちゃいなかった。
だって、母さんが迎えに来るって言ったことをあたしはずっと信じて待ってたんだ。
親父は母さんと離婚してからずっと狂ったように酒に溺れてあたしに虐待ばかり……。
それでも母さんは帰ってこなかった。
あたしは母さんに見捨てられたんだと後になって気付いた。
だからいつの間にかあたしの心は母さんへの信頼が消え、親父への怒りだけになっていた。
許せなかった。怖くて何もできないあたしを馬鹿にするかのように殴ったり蹴飛ばしたりする親父。
本当に許せなかった。
この白虎の力を手に入れた時に考えたのは親父への復讐だった。
だけどあたしが道を間違えなかったのは蒼姫と紅葉のおかげだったんだ。



あの日、蒼姫と出会ったのがきっかけだった。
「霧野」
「ん、博士? 何か用?」
いつもの拠点であたしは博士から指示が出るまで待つためにボーっとしていた。
そこに博士があたしの顔を覗き込むように現れる。
今日はどんな指令なのやら……。
「言っておいたでしょう。青龍の力を使うことのできる子がいたって」
「あぁ、言ってたな……」
「しばらくの間はあなたが面倒を見てあげてって話だったでしょう」
「ん、そうだっけ?」
確かに新入りは来るって聞いてたけどあたしが世話するんだっけ?
まぁあたしがやらないなら奏がやることになるもんな。
流石に奏に新入りの面倒は想像できない。
「とにかく紹介するわね。ほら、入って」
博士から呼ばれておずおずと奥から出てきた一人の女の子。
「きょ、今日から四獣部隊に加わる龍巳 蒼姫です! よろしくお願いします、先輩!」
「あ、あぁ……」
恥ずかしげに自己紹介をしてきた女の子。
その時のあたしにとっては正直どうでもいい相手だった。
元より憎悪体との戦いは一人でするもの……他の人との干渉は必要性も感じなかった。
だけど蒼姫はあたしの価値観を変えた。
事あるごとにあたしに話しかけ、あたしを慕ってくれた。
なんだか分からないけど蒼姫と話してるうちにあたしは毒を抜かれたかのような感じになって行った。
何故か蒼姫と話していると楽しく思えて……荒んだ心のあたし自身が救われるようだった。
「あたし、菖蒲先輩みたいに強くなりたいです」
「え? あたしみたいに……?」
ある日、突然に蒼姫が発した言葉……。
先輩と後輩という関係ならそういうことを言われてもおかしくはないことなんだろう。
だけどあたしは蒼姫からそんな風に言われるとは思っていなかった。
「あたしって何の取り柄もなくて……もし誰かの役に立てるならそれ以上のことはないんです。だから菖蒲先輩みたいに人のために何かできる自分でありたいんです」
蒼姫の言葉が胸に突き刺さる。
あたしが人のため……?
確かに四獣部隊にいるんだから人助けをするためにいると思うのが普通だ。
だけどあたしが加わった理由は違った。
あたしは親父への怒りや憎しみで動いていた。
親父に復讐してやるって気持ちで強くなろうとしていた。
だけどこんな素直な子があたしみたいな奴に憧れているなんて申し訳なさで押しつぶされそうだった。
「蒼姫だったな?」
「あ、はい!」
「いや、何でもない」
「えー、何ですか」
「何でもないっての」

それからも蒼姫はあたしのために他の人のために全力を尽くしていた。
そんな後輩の姿を見て思ったんだ。
あいつらの本当の憧れの先輩になりたいって。
だからあたしは親父の所からも逃げなかった……これ以上眩しすぎる蒼姫達に対して惨めなことをしたくない。



偽善だってなんだっていい……。
あたしの中身が汚れていたとしても、この思いだけは変わらない。
あたしはゆっくりとその場に立ち上がる。
「……まだ立ち上がれるのか」
「あぁ、倒れるつもりもねぇ」
「何故そこまでできるのだ……もうお前の体は限界のはずだ」
確かにあたしの体は今にもぶっ壊れそうだ。
だけど痛みなんかよりも力の方が湧き上がってくる。
そう、今のあたしがあるのは……。
「可愛い後輩のためだ」
それ以上の理由なんて要らない。
あいつらはあたしにとって代わりなんていない大切な人。
「今度の今度こそ決着だ。Tバックプリンセス!」
「ふむ、いいだろう……菖蒲!」
瞬時にあたしもTバックプリンセスも真っ直ぐに向かって行く。
互いが得物を持って真っ直ぐに……そして、爪と小刀が衝突する。
刀同士が鎬を削るかのように力がぶつかり合い、押し負けた方が実質の敗北になる。
「何でだ……何でここまでの力が残っている………」
「負けるか……負けてたまるか!」

【雷鳴の白虎、解放】

あたしの思いに応えるように体中に稲妻が走っているかのような感覚が覆ってくる。
この力……これがあたしの持つ白虎の本当の力!
「そんな! また菖蒲の力が上がった!?」
「Tバックプリンセス、お前の本気を見てお前も抱えてるものがあるのは分かった」
「ぐっ……」
あたしの爪がどんどんとTバックプリンセスを押し返していく。
「だけどな、あたしはそんなものには負けやしねぇ……」
白虎の爪にあたしの全てを注ぎ込む。
そして今までにない雷を纏う。
「あたしは可愛い後輩のためなら……大切な人のためなら負けねぇんだよ!!」
「そんな!?」
あたしの全力を込めた最後の爪撃。
それは完全にTバックプリンセスの体を切り裂いていた。
Tバックプリンセスはそのまま床に転がる。
「う……うえぇぇぇえええん!! ごめんなさーい!!」
それだけ言うとTバックプリンセスは消えていった。
死んだわけじゃないだろう……ただ、一人目の幹部が倒された時の話曰く、戦線には戻ってこれないはずだ。つまり……
「……あたしの勝ちだ」
だけど勝利の喜びを味わう間もなく、戦闘での疲弊があたしの体を襲う。
白虎の力を最大限に発揮したからか……博士が言ってた通り、反動が大きい。
殆どいうことの利かなくなった体を引き摺るように部屋の出口へと向かう。
「蒼姫……待ってろ………………」
畜生……もう視界も近いか………。
蒼姫、無事でいてくれ……今、行くからな。
耐えてくれよ……あたしの体。


* Re: 四獣の戦士達 ( No.28 )
日時: 2013/11/03(日) 17:55:32 メンテ
名前: TC1



「………」
なんだか騒がしい気がする。
あたしは研究員の人に個室へ案内されたけどなんだか違和感がある。
どこかから物音がする……それも誰かと誰かが戦っているような。
まさか菖蒲先輩が? いや、でも戦う相手なんていないよね。
「なんだか落ち着かない……」
あたしは部屋の扉に手をかけ、部屋を出る。
部屋の前の廊下も馬鹿に静かだった。
みんなどこへ行ったんだろう。
私はメインの大きな研究室へと足を運ぶ。
少し誰かと話をしたい……何故か今の本部内は不安になる。
あたしがそのまま研究室の扉を開こうとすると、扉の向こうから声が聞こえてきた。
あたしはその声を聞いて動くことができなかった。
間違いなく研究室内から聞こえてきたのは……。
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
……ハイグレ人間の証であるハイグレコールだった。
あたしは恐怖から声も出せずに一歩下がる。
まさかそんな……本部が既に占領されていたなんて。
どうしよう、逃げないと……でも菖蒲先輩を置いて逃げるなんてできない。
なんとか菖蒲先輩と合流してここを出ないと。
他のことを考えるのは後だ。とにかく打開策を……。
「蒼姫、部屋から出てきちゃったのかぁ。作戦失敗だね」
「!!」
あたしの背後。
退路を断つ位置から声をかけられた。
しかもその声の主はあたしのよく知る相手。
「……まさか本部を落としたのって」
「私とTバックプリンセス様だよ」
「そんなの……そんなの嘘だよね、紅葉!」
私は咄嗟に振り返って聞く。
研究所内の通路。その通路を塞ぐように立っていたのは紅葉。
黒いハイレグを着せられ、ハイグレ人間となってしまった紅葉。
「ハイグレッ!ハイグレッ!」
「……!」
紅葉は何の躊躇もなくハイレグ姿でコマネチをする。
もう紅葉は完全なハイグレ人間……その様子にあたしの心は痛んだ。
「ハイグレッ!ハイグレッ!はぁ、気持ちいい……ハイグレって最高だね」
「紅葉……」
「ハイグレッ!ハイグレッ!さぁ、蒼姫……一緒にハイグレしよう。ハイグレ人間になろう!」
「嫌だよ……」
ハイグレ魔王の手先であることに喜びを感じている紅葉。
嬉しそうに変態行為をする紅葉だけど表情には違和感がない。
否定できない……紅葉はハイグレ人間であることを嬉しく思ってる。
あたしの中の紅葉との記憶が心を引っ掻き回す。
あれは本当の紅葉じゃない……洗脳されているだけ、操られているだけなんだ。
でもそう思っても胸が苦しい……。
「大丈夫だよ、蒼姫……」
紅葉があたしへと近付いてくる。
武器も持たずに歩み寄ってくることに呆気をとられ、接近を許してしまう。
紅葉の顔があたしの目の前にまで来る。
まだ高校生の紅葉だけど体のラインを強調させるハイレグに黒という色が紅葉から色気までも感じてしまう。
紅葉は愛おしそうな表情であたしをジッと見ている。
「私、蒼姫のことが大好き……蒼姫のために四獣部隊に加わっていたんだから」
「あたしのため?」
「うん、蒼姫の役に立ちたくて」
「あたしの役に……」
紅葉はニコッと笑う。
その笑顔はいつもの紅葉に変わりなかった。
「蒼姫……蒼姫は私のこと、好き?」
紅葉が真っ直ぐに聞いてくる。
そんなこと聞かれなくたって。
「当たり前でしょ。あたしだって紅葉のこと……」
「蒼姫……」
紅葉があたしに優しく抱き付いてくる。
「紅葉……?」
「私と蒼姫は敵同士になってる……だけど、こうやって思ってることは一緒なんだね」
「………」
あたしはどうしたらいいのか分からない。
紅葉をハイグレ魔王から救いたい……こんな形じゃなくて、もっと自然に大好きって言ってあげたい。
「だからね、私はもう蒼姫と敵同士でいたくない。そのために蒼姫をハイグレ人間にしてあげる」
「え……?」
どこからか紅葉が取り出した光線銃があたしの頭の横に突きつけられる。
「ごめんね、蒼姫。ハイグレ人間になったら絶対に分かってくれるはず……だから今は本当にごめんね」
何で……何であたしと紅葉がこんな風に向かい合わなくちゃいけないの。
普通に一緒に学校に行って、くだらない話で笑いあったり、時には喧嘩もしたり……。
そんな普通の生活があたしにとってどれだけ大切なものだったか。
何でそんな大切な親友とこんなに辛いことにならないといけないのよ……。
でも、あたしは紅葉の家族がハイグレ人間になっていたのを目の当たりにさせてしまった。
それを考えるとあたしの心は罪悪感でいっぱいになって動けない。
「蒼姫、それじゃあハイグレ人間にしてあげるね……」
もう駄目……撃たれる。

『蒼姫! 大丈夫、私がついてるよ!』

紅葉の声が頭の中に流れる。
いつだってあたしを励ましてくれた紅葉の声が聞こえる。
そうだよ、正義感に溢れていた紅葉がこんなこと……おかしいよ!
あたしは咄嗟に紅葉を振り払う。
突然にあたしが動いたことで紅葉もあたしから離れるように後退する。
「蒼姫……何で拒むの。ハイグレ人間になればまた一緒にいられるんだよ」
紅葉が悲しそうな瞳であたしを見つめてくる。
だけど違う……あたしは本当の紅葉と一緒にいたい。
「紅葉、あたしは……」
「蒼姫!!」
あたしが自分の胸の内を明かそうとした時、背後にある研究室への扉が破られて一人、あたし達の立つ通路へと入ってきた。
「菖蒲先輩!」
変身姿の菖蒲先輩だった。
だけどその姿は戦闘を行っていたかのようにぼろぼろになっていた。
「無事か……間に合ったみたいだな」
「菖蒲先輩! その傷は……」
「ちょっとチビ助と遊んでただけだ……」
無理をした笑顔を見せてくれるけど、菖蒲先輩の消耗は相当激しい。
「Tバックプリンセス様がやられたってことですか……」
「あぁ……」
紅葉に菖蒲先輩が答える。
見ると菖蒲先輩の後ろには研究室。そこにはさっきあたしが確認したハイグレ人間の研究員達が倒れていた。
どうやら気絶させられているだけのようで少し安心した。
「……紅葉、もうこんなことは止めろ」
「菖蒲先輩の方こそ、もう抵抗はやめてください……」
「目を覚ましてくれ……元の紅葉に戻ってくれよ」
菖蒲先輩と紅葉の会話が続く。
紅葉は完全に洗脳されてしまっている。
お互いの信念が合わさることはあり得ない……。
「……分かりました」
紅葉が仕方なく槌を構えようとした時だった。
「霧野は力を開放したことで弱っている。もう戦闘のできる体じゃないわ」
紅葉の後ろの方から近付いてくる一人の女性。
段々とその姿がはっきりしてくる。
少しだけ荒れた長い髪をした、あたしもよく知る相手……。
「は、博士……」
あたし達の統率者である博士だった。
そう、紫色のハイレグを着せられてしまった博士……。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「………」
焦りの色を隠せずにいる菖蒲先輩。
無理もないはず……いつだって冷静にあたし達を導いてくれていた博士があんな水着姿で変態行為をしているのだから。
博士のような大人の女性があれだけ過激なハイレグで締め付けられている様は色っぽい。
だけどあんな落ち着いていた感じの博士が辺りに構わず胸を激しく揺らしながらポーズをとっていることには哀れさも感じてしまう。
「博士、何のつもりだ」
いつまでも戸惑っているわけにもいかず、菖蒲先輩があたしの前に一歩出て博士に向かい合う。
「何のつもりって……霧野、私はもう魔王様の配下。意味は分かるわよね」
「………」
「戸高、今の霧野になら必ず勝てるわ。あなたの手でハイグレ人間にしてあげて」
紅葉が小さく頷き、あたし達の方へ槌を向けてくる。
どうしたらいいの……菖蒲先輩は無理しているけれど、体の方がぼろぼろなのは一目瞭然だ。
ここはあたしにしかできない。あたしがやらなくちゃ菖蒲先輩までやられてしまう。
だけど博士は何で余裕そうに笑みを見せているの?
おかしい、凄く胸騒ぎがする……。
「良いことを教えてあげる」
博士が不敵な笑みを浮かべながらあたし達に向かって口を開く。
「もうすぐここに援軍が到着するわ。それも相当数のね……」
「「!!」」
援軍が来る……しかも相当数。
あたしはともかく菖蒲先輩はもう殆ど戦えないはずだ。
増援が到着したら勝ち目がないことは歴然。
「そういうことでお喋りは終わりよ」
「ハイグレッ!ハイグレッ!蒼姫、菖蒲先輩、降参してください」
博士の余裕はもう勝ちを確信しているからか。
紅葉があたし達を倒しきれなくても時間さえ稼げればそれで終わり。
こんな危機的状況……どうやって突破すればいいの。
あたしの考えがまとまる前に菖蒲先輩が何かを決断したような表情で博士達の方を見定める。
「博士……頼む、少しだけ考える時間をくれ」
「菖蒲先輩?」
* Re: 四獣の戦士達 ( No.29 )
日時: 2013/11/03(日) 17:56:04 メンテ
名前: TC1


あたしにとって予想外の言葉だった。
時間がない、こんな時に何を考えるつもりなの。
「私はいいわよ。戸高も問題ない?」
「はい、良い返事を待ちます」
博士が許可を出し、紅葉が槌を下ろすことを確認した菖蒲先輩はあたしの方に向き直る。
その表情は哀愁に満ちており、そしていつもの優しい先輩の笑顔だった。
そして後ろの二人に聞こえないように小さな声で話し出す。
「蒼姫、よく聞け。この研究所には非常脱出口がある。そこから脱出すれば何とかなる」
「でも、紅葉を振り切るなんて……」
非常脱出口を使うにしてもロックされた部屋などを通らないと到達はできない。
紅葉から逃げながらパスワード入力などの動作を行うことができるはずもない。
「あたしが時間を稼ぐに決まってんだろ」
「な、何言ってるんですか。菖蒲先輩、そんな体で……」
菖蒲先輩は軽く肩をすくませる。
「だからこそだ。この体じゃあ逃げ切るなんて無理」
「でも……!」
そのお願いはあまりに残酷すぎる。
あたしの大切な人を犠牲にするということなんだから。
「時間がないんだ」
「嫌です。菖蒲先輩を置いてなんて!」
「………」
菖蒲先輩は自分の手を優しくあたしの頭の上に乗せる。
「蒼姫、お願いだ……今度こそあたしの大切な人を守らせてくれ」
菖蒲先輩の気持ちが痛いほどに伝わってくる。
紅葉を助けられなかった……それはあたしも同じだから。
「奏のこと……蒼姫なら力になれるはずだ。あたしにはできなかったこと」
「あ、菖蒲先輩……」
自然に涙が溢れてくる。
何でか分からないけど、涙が止まらない。
「泣くなって。大丈夫、あたしは負けねぇよ」
菖蒲先輩は小さくあたしの額を突くと、博士達の方を振り返る。
「行け、蒼姫」
背中を見せたまま小さな声で指示をする菖蒲先輩。
気のせいか、少し涙声に感じた。
「頼んだぞ……」
あたしは『はい』と言い返せなかった。
「答えは出たの?」
「あぁ、ここはあたしだけで相手するってな」
「……本気で言ってるの?」
「いつだって……本気だぜ!」
菖蒲先輩の白虎の爪が雷を纏う。
「行け、蒼姫!」
だけど菖蒲先輩の指示が出ても動けない。
ここであたしが逃げたら菖蒲先輩までもがいなくなってしまう気がするからだ。
「何やってんだ。早くしろ!」
「ハイグレ人間、紅葉、参ります!」
紅葉が菖蒲先輩へ攻撃を開始する。
菖蒲先輩はギリギリのところでかわすことには成功したけど、動きにキレがない。
「蒼姫!!!」
菖蒲先輩の怒声が飛んできても動けない。
逃げるなんて……できない。
「龍巳、あなたの行動は間違ってないわ。さぁ、こっちに来なさい」
「蒼姫、逃げなくていいんだよ。菖蒲先輩と一緒にハイグレ人間になろう」
紅葉と博士の声があたしの頭の中を駆け巡り、引っ掻き回す。
このまま菖蒲先輩を置いて逃げる……そんなことをしたらあたしは。
「奏を一人にする気かよ!!」
「!!」
「あいつは助けを待ってるんだよ!」
菖蒲先輩の言葉が強く胸に刺さる。
奏が助けを求めてる?
「あいつを助けられるのはあたしじゃない。蒼姫にしかできないんだ!」
あたしにしか……?
「あたしが負けるはずないだろ……行け」
「………」
あたしは涙ながらに頷くと、その場に背を向けて走り出す。
菖蒲先輩の言葉を信じて……。





「さて、蒼姫は行ったか……」
「霧野、自分を犠牲にするつもり?」
「どうだろうな。ただ、ここから先には行かせないぜ」
あたしは白虎の爪を構える。
絶対にここから先には行かせない。
この体も十分保ってくれた……。
あと一度……あと一度だけ耐えてくれ。
「頼むぜ……白虎!」

【雷鳴の白虎、解放】

再び稲妻が全身を駆け巡る。
これならもう一度戦える……。
「なっ……Tバックプリンセスとの戦闘であなたの体はもう戦えないはず……」
「へっ、他人にあたしの限界を決められてたまるかよ」
最大まで力の込められた爪……。
この一撃で決めてやる。
「蒼姫、奏……先行くぜ」


* Re: 四獣の戦士達 ( No.30 )
日時: 2013/11/03(日) 17:57:17 メンテ
名前: TC1


「………」
あたしは遥か遠くの研究所本部をただ見つめる。
援軍が到達したのか、本部上空には無数の点が浮かんでいる。
ここまで遠くに来たのだから逃げ出すことには成功した。
だけど……菖蒲先輩の姿は見えない。
本当にこれで良かったのだろうか……。
いや、きっと菖蒲先輩は無事だ。
今のあたしにできることはここから遠ざかって奏と合流すること。
それが菖蒲先輩との約束だから。





「………」
ビルの谷間、私は呼吸を整えていた。
拠点で白虎と別れてからはまともな休息をとれていない。
それもそのはずだ。パンスト兵が街中に溢れかえっているのだから。
玄武の脱落の今がチャンスと言わんばかりに押し寄せてくるハイグレ魔王の配下共。
私の体は悲鳴を上げ、もう戦闘を続けるほどの力が残っていない。
回復する時間も場所もないのだから力が戻らなくて当然だ。
いつ敵に襲われるか分からないというのに、朱雀の力を上手く発動させられるか分からない。
こんな非常時に弱気になっている場合じゃない。すぐに体勢を整えて戦闘に取り組まないと。
……玄武が敵に回ったことで青龍達は精神的に追い詰められている。
まして湯本の不在は混乱を強めているだろう。
敵も青龍達の欠点をついてくることが予想できる。
……本当は昨日のあの場で白虎と現状の相談をすべきだった。
白虎に情けをかけられるのが私に苛立ちを覚えさせ、詰まらない意地を張ってしまった。
随分と情けない話だ。無駄なプライドを捨てて青龍と白虎と合流しようとしたものの、すぐさま白虎とぶつかり合うなんてな。
それでいいのか。元より私に仲間なんて……。

『さぁて、ここまでは事は順調ってところかしら』

「誰だ」
ビルの上から現れた一つの影。
素早く舞い降り、私の前に立ちはだかる。
両目に下着をつけたような気味が悪いとも言える姿のこいつは間違いない。
「御機嫌いかが、奏ちゃん。会うのは二度目ね。私はハイグレ魔王様三幹部最後の一人、ブランジャーシスター」
「何の用だ」
「何の用?」
私が睨みを利かせながら聞くと、ブランジャーシスターの静かな笑い声が聞こえてくる。
「邪魔なのよね、あなた。どこまでも私達の妨害ばかりで」
ブランジャーシスターが冷酷なまでに言い放つ。
まぁ、幹部が態々ここまで来た理由は一つだからな。能書きは要らないだろう。
「邪魔なら黙らせてみろ」
「……可愛くないわね。私が好きなのは素直な子なの。あなたはどうして本心を隠すのかしら」
「四獣部隊、奏、参る」
私は変身を完了させ、マントを翻す。
その様子にブランジャーシスターはため息をついて、苦笑いをする。
「いいわ。私があなたを紅葉のような子に教育してあげる。勝負と行きましょうか、奏ちゃん」
ブランジャーシスターが私に背を向けず、後退していく。
ビルの谷間を抜け、開けたところで戦うつもりか。
「あぁ、相手になってやる」
私が駆けていくと、開けた場所で待ち構えるブランジャーシスター。
「さぁて、始めましょう……奏ちゃん」
「………」
弓を構え、敵の攻撃に備える。
奴の力は不明だけど、ハイグレ魔王と似た点が多いはず。
直接的な打撃武器はない。稲妻のような攻撃をしてくる……。
間合いを取り過ぎずに攻めればいける。
「右腕……以前よりも痛んでない? うふふ」
「お前に心配される筋合いはない!」
炎を纏った矢がブランジャーシスターへ放たれる。
最初は攻撃を一気にかけていく。奴みたいなタイプの敵には時間を与えれば与えるほど不利になりかねない。
「うふふ、私をハラマキと同レベルに見ないでね」
ブランジャーシスターは右手を前に出し、稲妻を放つ。
そこまでは予測できていた。
だけど、奴の稲妻によって私の放った矢が何事もなく相殺されてしまっていた。
「っ!?」
朱雀の矢と奴の稲妻が同威力だっていうのか?
「どうしたのかしら。まさかもう万策尽きちゃった?」
「……なめるな」
私は上空へと跳び上がり、弓の先を下方へ修正をかける。
「……今」
その状態から連続で矢を放つ。
炎を纏った矢が上空からブランジャーシスターへと降り注ぐ。
これなら……。
「なかなかやるわね……だけど、私も負けないわ」
ブランジャーシスターも手は抜いていない。
おそらく本気で来る……!
注意深く構えていたつもりだった。
だけど奴の手から放つ稲妻は私の矢を全て呑みこんで消えていった。
「ちっ……」
決して加減はしていない。
今放った矢も私の力を強くこめていた。だが、奴に消されてしまった。
負傷したこともあってか、総合能力的に劣っている。
これは相当分が悪い……。
「うふふふ、所詮はその程度だったのね」
「見くびるな……」
確実に私の能力は低下している。
もはや私が無力だと判断したのか、ブランジャーシスターが余裕の笑みを見せつけてくる。
「まだ諦めないのね。でも、これはかなり……痛いわよ!」
かわせない……。
私が防御に入ろうとした時だった。

「四獣部隊、蒼姫、参ります!」

突然に蒼い竜巻が私とブランジャーシスターの間に巻き起こる。
「なっ……」
これは予想出来る訳もなく、ブランジャーシスターは体勢を崩す。おかげで距離をとることができた。
だけど、この竜巻を起こせるのは……。
「奏、手伝いに来たよ!」
「青龍……」
青龍の衣服を身に纏った少女が私の前に現れる。
体は所々傷つき、戦闘を行っていたように見える。
「……あら、少し誤算ね。その様子だと菖蒲って子しか捕らえられなかったのかしら」
ブランジャーシスターが少し不可解そうな表情を見せる。
だが、今ブランジャーシスターが言ったことは本当なのか……白虎がまさか。
「ブランジャーシスター、紅葉を元に戻しなさい!」
青龍が刃先をブランジャーシスターへ向け、問う。
だけど肝心の奴は何故か嬉しそうに笑っている。
「蒼姫……あなたも紅葉のように澄んだ目。汚れも知らないで純粋そうな子」
「何言ってるのよ。あたし……本気だから」
「あらあら、紅葉とはまた違った可愛さね……あなたのことも気に入っちゃった。私のものにしてあげる」
ブランジャーシスターが攻撃態勢に入る。
「青龍、奴は電撃の他に身体能力が向上する」
「あなたは黙ってなさい!」
ブランジャーシスターの手から雷が放たれ、意思を持っているかのように私へと伸びてくる。
迂闊だった。手負いの状態での軽率な行動は……。
「奏!!!」
私は青龍と共に地面へと倒れ込む。
まさか、瞬時に私の横まで移動して庇ったというのか? 私の体力が万全でも動けるか分からない距離だぞ?
その様子をブランジャーシスターは不思議そうな表情で見据えていた。
「……紅葉の時と同じ。急な能力の向上」
「ブランジャーシスター! あんたの相手はあたしだよ!」
「やっぱり面白いわ。紅葉も、あなたもね……」
ブランジャーシスターはふわりと宙を舞うと、私達から距離を取る。
「勝負はお預け。奏ちゃんのことを思うなら悪い話じゃないわよね」
青龍は私の方をチラッと見て、小さく頷く。
「物分かりがよくていいわぁ。どこかのおバカさんとは大違い」
「……」
「また後に会うことになるわ。それじゃ……ばいばーい!」
そのままブランジャーシスターは空へと消えていった。
今の私はそれを見届けることしかできなかった。
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